GRACE UNDER PRESSURE

Released 05/1984



DISTANT EARLY WARNING
AFTERIMAGE
RED SECTOR A
THE ENEMY WITHIN

THE BODY ELECTORIC
KID GLOVES
RED LENSES
BETWEEN THE WHEELS



彼方なる叡智が教えるもの

平原の街々を横切って
凶風が舞い上がり、やってくる
重水の中、泳ぐものはなく
酸性雨の中、歌うものもない
緊急事態だ
警戒警報

回転ドアをくぐり抜けながら
それでもずっと一緒にいるのは、難しい
僕たちには、誰か話ができる人が必要
そして、論破できる誰かが
まだ足りない
不完全

世界のことが、ひどく気になる
でも、僕は何をするために存在しているのか
おまえのために、僕は時々狂いそうになる
でも、おまえのことが心配なんだ

わかっている、おまえがどんな経験をしようと、何も変わりはしないことは
でも僕には、氷山の先端が見える
だから、おまえのことが心配なんだ

レーダーのもとで巡航し
衛星から観察しながら
基本マニュアルに基づいてやるといい
常に、それを忘れないように
緊急事態だ
警戒警報

道の右側と左側
若者たちの正義と悪
真実が真実ではないという認識を
受け入れられる人は、いるだろうか
それは、陳腐なもの
そして、絶対的なもの

アブサロム
アブサロムよ



アフターイメージ

突然、
君は逝ってしまった
残されたのは、ただ 君がたしかにいたという、その痕跡だけ

覚えている
朝もやに煙る夜明けまで
夜通し語り合い、飲み交わしたことを
──君の声が聞こえる

夏の濡れた芝生の上
水際を走った
──君の足跡が見える
覚えているとも──

──君はそう感じているだろう
その同じ思いを、僕も感じている
──君と同じように、感じている

信じようとした
でも、それはちっともいいことじゃない
これはどうにも、ひどく理解しがたいことだ

覚えている──
森を抜け、スキーをした
その歓喜の叫びを
──こだまが聞こえる

君がその生命を愛していたことは知っている
君が感じただろう思いを感じる
──君の存在を感じられる
覚えているよ──

君と同じ思いを感じている
ただ、どうしても納得できないんだ



レッド・セクターA

できるのは、ただ生き延びることだけ
自分自身をここから救い出すために、できることは
ただ、生きているということだけ

うち捨てられたぼろぼろの、灰色の骸骨が
ぎざぎざのラインのように散らばっている
叫びを上げる守護兵と火を吹く銃が
運の悪い何人かを、その仲間に入れるだろう

指から血が流れるまで
鉄条網をぎゅっと握り締める
治ることのない傷
感じることを忘れた心
恐怖が薄らいでくれたらと願い
明日には──みんな解放されるようにと願いながら

あまりの狂気に気分が悪くなり
異教の神に祈りを捧げる
日々が、数週間が、数ヶ月が過ぎていく
空腹を感じるな
泣くにも弱りすぎている

刑務所の門のところで
銃声を聞いた
解放者たちが、ここに来たのだろうか
期待するべきか、恐れるべきか
父さんと兄さんは、もう手遅れだ
でも、母さんを助けなければ
まっすぐ、怖れずに立ち向かおう

僕らは唯一の生き残りなのだろうか?
僕らは生き残った唯一の人間なのだろうか?



内なる敵へ

闇の中、何かがうごめいている
そんな想像が昂じて
君の末端神経に針を突き刺し
肌の上をクモが這うような、寒気を感じさせる

こめかみは激しく脈打ち
アドレナリンが吹き出す
あらゆる筋肉が緊張する──
内なる敵を防御するために‥‥

僕は屈しない
圧力のもとでの安全なんかに
逃すつもりはない
冒険の約束を
あきらめるつもりはない
現実離れした夢でも
極限への体験
極限の体験

怪しい顔つきのよそものが
君に危険な一瞥を投げかける
窓を横切る影
ただ木が風になびいているだけだろうか

呼吸は静かな興奮に満ちて
舌に残る鉛の味
感情を殺した目には
内なる敵が隠されている

君にとって──それは動きなのか、(積極的な)行動なのか?
それは接触か、ただ反応しただけか?
君にとって──革命なのか、それとも、ただの抵抗?
生きているのか? それとも、ただ存在しているだけなのか?
そう、君だ──もう少し、がんばってやり続ければいいんだ
立ちあがって、先に進みたいのなら



ボディ・エレクトリック

人造人間の逃亡者が一人
逃走中のアンドロイドが一人
孤独な砂漠の太陽のもと
自由を探して

プログラムの変更を試み
モードの変更を試みて
暗号を解け
イメージは対立し
データはオーバーロード

1−0−0−1−0−0−1
S.O.S
1−0−0−1−0−0−1
遭難中
1−0−0−1−0−0

メモリーバンクをアンロード
バイトはビットに分解する
ユニット1にトラブル発生
それは恐ろしさにすくみあがる

ガイダンスシステムは故障中
存在するための苦闘
抵抗するための──
握り締めたプラスティックのこぶしの中で
消えゆく力が鼓動を刻む

それは来る日も来る日も繰り返す
数百年に渡るルーティンを
そしてすべての機械の母に
頭を垂れて、祈りを捧げる



キッド・グラブス

争いのたえない世界
感動を忘れた世界
あらゆる物に圧倒されながら
それでも、さらに多くを求め続ける

愚かな欲求不満というべきだろう
怖いもの知らずの空威張りというべきだ
お互いにののしりあってみるといい──
無礼な調子で──荒荒しい声で
そうすれば君は教訓を得るだろう
強いということは、かっこいいことだと

扱いに気をつけろ
気をつけて扱うんだ
そうすれば君は教訓を得るだろう
学校で教わることだけでは、足りないということを
皮手袋をはめろ
皮手袋をはめるんだ
そうすれば君は教訓を得るだろう
強いということは、クールなことだと

無関心の世界
頭も心も余裕をなくしている
絶え間ない小競り合いの結果を
まったく気にも止めない

怒りは剥き出しのこぶしに込められ
怒りは愚かな振る舞いをさせる
怒りは茨の冠をかぶる
黄金律をひっくり返せ
そうすれば君は教訓を学ぶだろう
クールでいることは、大変なことだと

扱いに気をつけろ
気をつけて扱うんだ
そうすれば君は知るだろう
武器と、手荒くぶちのめすやり方を
皮手袋をはめろ
皮手袋をはめるんだ
そうすれば君は教訓を得るだろう
クールでいるのは、難しいことだと



赤色の映像

赤が見える (頭に来た)
頭痛がする
前にどこかで読んだ気がする

それは君の鼓動の色
上りゆく夏の太陽
破れた戦──それとも勝利の
たちまち過ぎていく流行
そして情熱の脈動

赤い色が広がる
頭の中に
真実はしばしば厳しい──
(それゆえ)口に出されないで終わる

赤だ、赤だよ
諸経費のことを考えている──
食べ物が十分にない人たちのことも
──そんなことじゃなしに、何かほかのことを話し合えないか?

地平線に火星が上る
あれは国家の真夜中の星だ
(そうとも!)
君が信じるものは、君そのもの
一足の舞踏靴──
ソヴィエトは憂鬱だ──

赤軍だ
君のベッドの下
暗闇の中に横たわっている
君の真正面に

そして水銀柱は上がっていき
気圧計は下がり始める
僕らみんなを悩ませる
君もわかっているだろう
赤を感じる
まだ──前進している
君は黒と白を見る
そして僕は赤を見ている
(青ではなしに)



ビットウィーン・ザ・ホィールズ

岩と固い地面の狭間に生きる
時代の狭間に──
ゴールデンアワーを堪能し
陰極線に浸りながら

僕らの時代の
二つの戦争の狭間に生きる
リアルタイムで生活している
幸せな時間を過ごし
昨日にすがりつく

わかっているだろう
スピードを上げて走る車輪の下で、ウサギが感じている気持ちが
鮮やかな光景が、ひらめいては過ぎ去る
一匹のハエにぶつかっていくフロントガラスのように
破滅への上り坂で凍りついて──
でも時の車輪は──
ただ、君のそばを通りすぎていくだけ

(車)輪は君を引きまわす
(車)輪は君を切り捨てる

にわか景気が不景気に移行することもある
夢が一握りの塵になってしまうこともある
ロケットの赤い炎から
『兄弟よ、節約しよう』というところまで
落ちてしまうこともある
また新たな戦争が──新たな荒廃した国土が
そして、また新しいロストジェネレーションが

まるで水のように
君の手の間から滑り落ちていく
このリアルタイムでの生活は
セルロイド(のフィルム)に巻きとられた
目のくらむような一生

一流志向の世界にうちのめされ
混み合った通りを歩き──
シーツの下に隠れて
空虚感を埋めようとしている




あくまで私的解説

DISTANT EARLY WARNING

 タイトルは、SDI以前のアメリカでの『対空早期警戒システム』の名称だそうです。(かつてTHE SPHEREの掲示板で、話題にもなっていました)
 『レーダーのもとで巡航し』など、歌詞の航空用語は、おそらくここからきていると思われます。そう言えばこの曲のプロモビデオは、 ミサイルに載って飛ぶ少年でしたっけね。(ちなみにこの少年、Geddyの息子のJullianだという説が一般的でしたが、FAQによると、違うそうですね)

 ちなみに、レッドブックは、The Sphereの掲示板で指摘されていましたが、いわゆる「赤本」もしくは、「軍事マニュアル」的なものだということです。 Sweep the floorが、床を掃除するという意味ではないということも、既出でした。『おーい、掃除が不充分だぞ!』と言うわけではないのですね。

 最後の歌詞、『アブサロム』はRUSH FAQに言及がありましたので、そちらを参照されるとよいかと思います。究極の哀れみの表現だそうです。
 聖書のダビデとアブサロムの物語を、個人的にも少しまとめておきました。
 ☆ ダビデとアブサロム

 ところで、"you"は、何をさしているのか、何(もしくは誰)を心配しているのでしょう。若者たち? 世界? 指導者たち?  それとも子供たちなのでしょうか?



AFTERIMAGE

 この曲は、Le Studioのエンジニアであり、バンドの友人でもあった、Robbie Whelanの追悼のために書かれた曲だといいます。 彼は事故で突然、なくなってしまったのだそうです。
 タイトルは『残像』──実体はないけれど、網膜に残った像を意味します。誰かを失うというのは、そういうことなのですね。 もう実体はなく、生きている本人を見ることも言葉を交わすこともできない。すべては残像──記憶の中にのみ、死者は生きつづけるわけです。

 冒頭のフレーズはDifferent Stagesのインナースリーヴにも書かれていました。JacklineさんとSelenaさんへの追悼の言葉として。 死はそれを見送る人たちにとって、『ただ本当に、とても理解できない、受け入れられないこと』なのだと思います。



RED SECTOR A

 『アフターイメージ』は個人の悲劇ですが、『レッドセクターA』は、人類の悲劇といった感じです。SF的でもありますが、過去にも戦争捕虜の収容所や、 ホロコーストなどで、似たようなことが起きたのではないでしょうか。そう言う人類の狂気が生み出した悲劇、 それを目の当たりに見、己の無力さに苦しみ、ついには立ちあがろうとする。NeilがインタビューやFAQで言っていた通り、 これは時代を超えた人類の悲劇なのだと思います。

 そう言えば、Geddyのご両親はアウシュヴィッツ強制収容所の生存者だったそうですから、ある意味彼にとってNeil以上に実感の 湧く心象風景かもしれないですね。収容所の地獄から解放されたとき、Weinrib夫妻は思ったそうです。 「世界で生き残ったのは、私たちだけだろうか」と。極限状態の中では、外の世界と言う認識は抜け落ちてしまうのでしょう。この心境が、"Are we the last one left alive"という歌詞に反映 されていまのだと思います。(本当に最後の生き残り、と言うわけではないと)

 タイトルのRed Sector Aというのは、メンバーがスペースシャトルの打ち上げを見学したエリアの名称だそうです。 で、そのタイトルと歌詞の意味のずれというかギャップは、何か意味があるのでしょうか? テクノロジーがまた新たな地獄を作り出す可能性を生むとでも?  (いやいや、これは深読みし過ぎですよね)



THE ENEMY WITHIN

 なぜか逆順に製作された「FEAR三部作」のPart1です。FAQによれば、アイデア的にまとめやすい順番らしく、「Mystic Rhythms」(以下「MR」)によると、 本質、つまりパート1は一番中にあり、2、3と行くにつれて同心円を描くように、外側へ広がっていく。それを外から描いて行ったからだろう、 と記述していました。言い方は違いますが、意味は同じような気がします。恐怖というものの、目に付きやすい一番外の円から内側の、 より本質的な部分へとさかのぼっていく、それゆえ逆順にできてしまったのだ、と。

 ENEMY WITHIN──内なる敵、それが恐怖の正体というわけです。「MR」に興味深いたとえがあったので、紹介します。
 昔のアメリカのテレビシリーズに『プリズナー』という番組があったそうです。ストーリーは、おおよそ次の通りです。 ヴィレッジと呼ばれる隔離されたコミュニティに閉じ込められた主人公が様々な苦闘を経て、ついにヴィレッジの支配者、 『ナンバー1』を倒します。彼自身があらたな『ナンバー1』となるわけですが、支配権を手にした後、彼はもとの『ナンバー1』 に対面します。相手は仮面をつけていましたが、彼がそのマスクを取り去ると、なんとその下にあったのは、自分自身の顔 だったのです。ヴィレッジの支配者は、彼自身でした。あらゆる苦難、制限、恐怖のすべては、自分自身が生み出した世界に 過ぎなかったのです──。

 恐怖は私たちの行動や考えを脅かし、苦しめます。苦痛の恐怖は実際の苦痛以上に恐ろしかったりするわけです。 誰もいない場所に人の気配を感じて恐ろしく思うのも、相手がよからぬ考えを抱いているのではないかと怖れるのも、結局自分自身の心というわけです。

「幽霊の正体見たり、枯れ雄花」──
 心の中のファントムを打ち破るには、極限への体験も必要なのだ。恐れず積極的に行動する勇気も必要なのだ──それが、この曲の主張であると、「MR」では結論付けられています。
 心を強く持たないと、内なる恐怖は破れないということなのでしょう。



THE BODY ELECTORIC

 歌詞をそのまま読むと、ロボットが自分で制御を取り戻そうと苦闘する話ですが、Mystic Rhythmsによると、ロボット自身が実は人間、 自分の意思を持たないロボット人間のことだそうです。そう言えば、この曲のプロモビデオの主人公って、人間でした。 (個人的にけっこう好み──あっ、まったくの余談ですみません) 一緒に働く同僚や管理者たちのほうが、みんなロボットのようでした。
 つまりは、没個性集団の中で『個』に目覚めること、自分を持とうとすること、それを阻む社会システムとの軋轢、苦闘、そう言うものを描いている。 RUSHの普遍的なテーマの一つであると言えるでしょう。

 サビのリフレイン『1-0-0-1-0-0-1』が、アスキーコードで「I」つまり、『私』という意味があることは、決して偶然だとは思えないのですが。 語呂がいいから、と言うのも当然あるのでしょうが、アイン・ライドの小説「ANTHEM」(2112のもとネタとなったとされている)の主人公が発見した言葉が 「I」──すなわち『私』であるということとの類似性を感じてしまいます。



KID GLOVES

 皮の手袋といっても、レザーでなく、キッドですから、軟らかいものですね。Handle A with kid glovesというのは、 Aを気をつけて扱えという成句ですから、この場合、Aに当たる部分が抜けていても、意味は同じだと思います。手袋をはめてそっと、 壊れないように、と言う感じでしょうか。で、何を気をつけて扱えばいいのか、いわゆるAに当たる部分ですが──なんでしょう。 怒りでしょうか。フラストレーションでしょうか。
 そこにもう一つの『皮手袋』の意味が生きてくると思うのです。皮の手袋をはめて殴り合う。力と力のぶつかりにおいて、 強いことはかっこいいことだと思い知る。でも、かっこよくありつづけるのは、さらに厳しいということも知るわけです。力は万能ではない、と言うことでしょうか。

 ちなみに黄金律とは、『沈黙は金なり』と言うあのことわざのことで、『雄弁は銀なり』と続くわけです。『茨の冠』は、 イエス・キリストが磔刑の時にかぶせられた、文字通り茨で編んだ冠のことで、人々は彼を自分で王と名乗ったのだからと揶揄して、かぶったら血がだらだらの痛い冠を、 わざとかぶせたわけです。でも怒りが茨の冠をかぶるというのは、どういう意味でしょうか。痛みを伴う苦い勝利、それとも嘲笑なのでしょうか。
 いずれにせよ、困難な時代だからこそ、怒りや欲求不満が暴走しないようにする必要があるのでしょう。



RED LENSES

 I see red ── 直訳すると『赤を見る』ですが、『頭に来る。怒る』と言う成句です。ここでも、怒りなわけですね。 赤いレンズをかけたら、世の中真っ赤に染まって見えます。
 赤は何を象徴しているのでしょう。カラー心理学によると、赤は生命力、情熱、活力、短気を意味するそうです。 血の色からの連想なのでしょう。牛は赤い色を見ると、興奮するらしいですし。「アカ」と言うと、共産党や、いわゆる左系の団体を指しますし、 『赤軍』はゲリラです。対照的に使われる『青』の方は、落ちつき、冷静さ、理性を示すと表わすといいます。「憂うつ」と言う意味もあります。
 そして、白は純粋さ、善、黒は不純、邪悪、不正を意味する(そう悪い意味ばかりではないけれど)──特に、black and whiteという対比で 使われる場合、そうですね。この言葉、『Distant〜』にも出てきました。

 なんだか少々混乱したような気分を感じる歌詞です。余談ですが、ソヴィエトって、今はもうないですね。ロシアは憂うつ?



BETWEEN THE WHEELS

CATHODE RAY TUBEと言うと、ブラウン管のことなので、PRIME TIME(日本流に言うと、ゴールデンタイム。今ではプライムタイムでも通じますね)とともに、テレビ用語ですね。 「セルロイドの(フィルム)に巻き取られ)という一節ととともに、現代情勢をテレビ的に見たもの、のちのTEST FOR ECHOに通じる見方もあると思います。

 車輪の間──走っている車の車輪の間にいるウサギ──歌詞に出てくるこの一節が、タイトルの由来でしょうか。いつひき潰されるかわからないこのウサギは 私たち自身、現代社会の象徴で、猛スピードで転がる車輪は、運命──いや、この場合、戦争かもしれません。『ロスト・ジェネレーション』というのは、 第一次大戦後に、戦争によって今までの価値観を失ってしまった人々のことを指すわけですから。
 現代は二つの戦争の間を生きている──今のところ、第二次大戦以降世界規模の戦争は起きていませんが、これから起きる可能性があるというのでしょうか。

 全体として、このアルバムは終末イメージの強い作品です。この曲は、『レッド・セクターA』と並んで、その際たるもののような気がします。ちょうど この作品がでた年、1984年が、ジョージ・オーウェルの同名タイトル小説と同じだったことが影響したのか、と「MR」に書いてありました。 でも『1984』はたしかに救いのない世界が描かれていますが、世界の終焉ではありません。このアルバムを作った時のバンド内での 軋轢とか試行錯誤が作品のムードに反映したという記述もありました。個人的には、思わず『ノストラ〇ムスの大予言』が頭を掠めました。

 問題の年は無事過ぎましたが、『また新たな戦争』が起きないことを祈るのみです。



アルバムについて

 全体の印象は前作「SIGNALS」の延長線上というか、前の作品でつかんだ方向性を、さらに煮詰めたような感じです。 このあたりから、随分聞きやすい作品になってきたな、という感じを受けたものです。テーマは重いのですが、音はそれほど重さは 感じさせません。全体には非常にクールな印象を受けます。

 個人的には、ファンになって最初に出た新アルバムであり、今では唯一の来日公演もこの時期だったので、かなり思い出深い アルバムです。エピック・ソニーもこの時期かなりプロモーションに力を入れていたらしく、テレフォン・サービス(指定の番号へ かけると、レコード会社お勧めのシングルのさわりが聞ける)で「AFTERIMAGE」が、『かっこいい曲でしょ?』と、紹介されて いた記憶があります。




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