Part 3 of the Sacred Mother's Ring - In the Abyss of the Worlds

第7章 甦りゆく世界 (4)




 それから一年が巡り、また過ぎていった。万能ロボットの汎用プログラムも十二種類完成し、あとはスーパーコンピュータのみとなった。放射線の影響もかなり薄まり、春から秋までの日中はアーケードのシャッターが開けられ、新しく設置されたガラスのドアだけになった。屋根を覆っていた灰色のシェルターも外された。アパートの窓に張りついていた灰色の非常用シャッターも昨年からやっと開けられ、日中は明るい日の光が差し込んでくる。まだ窓は開けられないが、スフィア内に入ってくる日の光は人々の心を照らし、勇気づけ、明るくしてくれるようだった。
 世界はゆっくりと再生している。子供たちも増えていく。愛するわが子たちも、この秋には四才になる。巡りゆく日々の中、エステルをなくして再び一人の人生に戻った僕だけれど、二人の子供たちは、いつも大いなる慰めと喜びを与えてくれる。二人は、僕の最大で最後の希望だ。だが、僕はいつまでこの子たちの力になってやれるだろう。この子たちの保護者として、いつまで守ってやれるだろう? 外の危険はもうあまりなくなっても、内なる危険は消えない。子供たちはゆっくりと増えていくが、大人たちは減っていく。子供たちが増えるのを上回るペースで。今やシルバースフィアにいる大人たちの数は、三千人に満たないのだ。


 六月末のことだった。僕はその夜、子供たちが眠ってしまってから、今までつけていた記録ノートを取り出した。書き込もうとして読んでいるうちに、僕はノートの最初の一冊から読み返していた。ぱらぱらとページをめくっての、拾い読みだが、遠い過去のこだまが聞こえてくる。その思いは、不思議に切なく温かい。
 ふと気づくと、もう午前三時を回っていた。僕はノートを閉じ、机の引き出しにしまうと、支度をしてベッドに横たわった。そして傍らの子供用寝台に眠るエヴィーとアドルの微かな呼吸の音を聞きながら、僕は眠りに落ちた。
 眠りは浅かったのだろうか、深かったのだろうか。よくわからない。その夜はかなり蒸し暑く、寝苦しかったことは確かだ。いくらも眠らないうちに、僕は別世界にいた。

 僕は混沌とした夜の闇を歩いていた。空には一面に星が瞬き、でもその他には、まったく何も見えず、足元にも虚無の空間が広がっている。しばらく歩くうち、前方に光が見え、次第に明るくなっていった。遠くから、無数の笑い声が聞こえる。光の中から、たくさんの子供たちが飛び出してくる。笑いながら、はしゃぎながら。どのくらいいるだろう。数百人、いや、もっとかもしれない。
「どこへ行くんだい?」
 僕は呼びかけた。でも彼らには僕が見えず、声も聞こえないようだ。彼らは星の瞬く空間に伸びた、細い光の路を歩いていく。飛んだり跳ねたり、小走りになったりしながら。笑いのさざめきが、無数の鈴が鳴るように響く。
「どこに行くの?」
 僕はもう一度呼びかける。子供たちは振り返らない。
 子供たちの大群が通りすぎていく。まるで洪水のように。彼らは光から生まれ、再び光の中へと消えていくように遠ざかっていく。
「光の子供たちに話しかけたってダメだよ。彼らは違う次元を走ってるんだ。ここから呼んでも、聞こえないよ」
 僕の背後で、聞き覚えのある声がした。僕は振り返り、驚いて声を上げた。
「エアリィ! アーディス・レイン・ローゼンスタイナー。本当におまえなのか?!」
 彼はゆっくり頭をめぐらせて僕を見た。もう生前の名残は、あまりないような表情だ。髪はふわっと広がっているが、ウェーブはほとんどなくなり、腰のあたりまでのびていて、きらきらとした光を放ちながら、後光のようにすっぽり上半身をおおっている。青い髪の束が両側に、半インチほどのラインになってすっと走っていた。未来世界で着ていた寝間着のようなふわりとした白い服をつけた彼は、ふっと微笑んだ。
「久しぶり、ジャスティン」
「本当に、とか言ってるなよ。これって……」
 僕は狼狽を感じながら、思わず周りを見回した。
「別におまえが死後の世界につっこんだわけじゃないから、大丈夫だよ」
 彼はちょっと笑って、首を振る。
「それならいいけれどな……」思わず、ほっと溜息が漏れた。
「とはいえ、ここに来れるようじゃ、ちょっと危ないかな」
「えっ?」僕はぎくっとして、再びあたりを見回す。
「ここは?」
「まあ、言ってみれば宇宙空間の一つだよ」
「本当に天国じゃあ、ないんだろな?」
「だから、違うって。ただ、ここは普遍的な宇宙空間とは、ちょっと違うんだ。異次元の、真宇宙とでも言うべきだろうか。次元的には、あの世と同じ場所に属してる。物質世界じゃないところ。で、この子たちは、光の子供たちなんだ」
 僕らのまわりを、相変わらず輝く子供たちが通っていく。僕は彼らを目で追いながら、漠然とその言葉を繰り返した。
「光の子供たち……?」
「そう。光へと向かう子供たち。アルバムタイトルのまんまだよ。だけど、今おまえが見ているこの子たちは、おまえたちの種族じゃないんだ。地球人類がこの段階になるには、まだかなりかかるな」
 彼は子供たちを目で追いながら、言葉をついだ。
「僕らがこの段階に入るまでに、光の路が出来てから一億三千万年、この段階になってから七千万年過ぎた。トータル二億年。あと十万年もすれば、進化が完成する。御子は母になる。本当に長い時間だったよ」
 彼は何を言っているのだろうか? さっぱり意味がわからない。あの幻影の言葉以上に。だいいちなぜ彼は、「おまえたち」と「僕たち」を呼び分ける?
「最初から説明しなきゃ、ダメかな」エアリィは再びふっと笑った。
「これも、プログラムの一環なんだ。だから、僕がおまえを呼んだ。おまえがここまで来れる状態になった今。普通、説明するのはヴィヴァールの役目なんだけれど、ここだけは違うんだ。現世でかかわりあうことになった関係上さ」
「おまえが……呼んだ、僕を? って、あの世へ連れていくわけじゃないだろうなぁ」
「違うって。僕は死神じゃないから。ただこのエリアは、言ってみればトワイライトゾーンみたいなところで、あの世とこの世がクロスできる場所、凄く特殊なエリアなんだ。僕らの側からは資格がいる。そっち側からは、資格を持って呼ばれること、それと同時に、かなりこっち側に近い状態になってることなんだ。だから最初に言ったんだ。ここに来れるようじゃ、ちょっと危ないかなって」
「えっ、ということは……今の僕の状態は良くないのか?」
「良いとは言えないな」彼は小さく首を振った。
「そうなのか……」
 僕は少し寒気を感じながら、頷いた。そしてふと思い出した。アデレードが彼の忘れ形見を出産する直前に、似たような状況で彼に会ったと――。
「アールとオーロラが生まれる前、アデレードさんにおまえが話したというのも、ここでなのか?」
「いや、彼女はここには来れないから、あれは僕が彼女の夢に入ったんだ。ちょっと違う形だよ。だから、ほとんど話す時間が取れなかったんだ。今は彼女もこっちに来たから、僕も時々行って話してるけど」エアリィは微かに笑って、肩をすくめた。
「今も、あまり無駄話をしてる暇はないんだ。おまえがここにいられる時間は、限られているから。だから、最初から説明するよ。なぜおまえに今、知識を知らせなければならないか。なぜヴィヴァールの幻影がおまえに見えるのか、それはおまえが『選ばれた四人』の一人だから。運の悪いことに、っていうと、怒られそうだけど」
「選ばれた四人?」
「そう。それで後継の光と影は、キーライフの生が終わりに近くなるたびに、こうやって知識のおさらい、というか受け継ぐべき知識を語られるんだ。僕たちがそうだったように」
「後継の光と影……知識のおさらい? そういえば、僕はあの幻影の後継者だといわれていたけれど、それなのか?」
「うん。それで正解だよ」
「で、僕のパートナーは……おまえじゃなくて、アールなんだな。おまえは起源子で……じゃあ、おまえはどういう関係なんだ? あの幻影とは。そしてアールと僕とも……」
「僕はヴィヴァールのパートナーなんだ。そして僕たち四人が、選ばれた四人」 
 エアリィは小さく頭を振り、言葉を継いだ。
「ジャスティン。最初に、僕はおまえが問いかけた質問に答えなきゃならない。『僕はどこから来たのか』その答えは、魂は別の星から。身体の方も、ほとんど別の星からって感じになるけど。僕は一代前まで、ずっと別の星で生きてきた。だから一言で言ってしまえば、僕はアクウィーティアンで、地球人じゃない」
「ええ?!」
 たしかに薄々感じていた疑問ではあったが、いきなり正面から否定されると、驚くより他にない。
「ただ、身体の方は十五パーセント程度、地球人の因子が混ざってたけどね。そうしないと、地球に適応できないから」
 僕の驚きを受け止め、彼はちょっと肩をすくめて笑う。
「でも、そんなに驚くことはないじゃないか、ジャスティン。この宇宙には一千億の銀河に、それぞれ一千億の星がある。実際は、それよりちょっと少ないけど、地球だけが唯一無二の生命の星だとは言えない。きっと異星人は存在している。ただ、証拠がないだけだ。そういう風に考える人は、地球人にだって多いじゃないか。異星人っていうと、自分たちとは姿形が違うと思ってる人が、ほとんどだけどね。でもさ、そういう人たちは生命の発生が、すべてランダムな偶然だと思っているから、そういうイメージになってしまうんだよ。だけど、そうじゃない。生命は大いなる創造主による、意図的なデザインなんだ。バリエーションはあっても、基本的にはどの星もさほど違いはしない。高等生命が発生する『生命の星』はね。地球も僕の母星も同じ生命の星だ。だから基本的には、ほとんど同じ進化を遂げてきたんだよ。違うところは、僕らの母星は海が多いから、水中でもある程度長くいられるようになっていることと、性染色体を持たなくて、思春期になるまでは、男でも女でもない状態だってことくらいなんだ。まあ、分化前でも将来どっちになるかは、わかるんだけどね。ほんの少しだけ、形状が違うから。それと、あともう一つ、僕らのDNAは塩基の種類が六つあること。未来世界でいう、PXLP因子さ。それくらいかな」
「本当なのか……おまえは……本当に宇宙人なのか?」
 僕はただ唖然と繰り返すだけだ。
「イメージの宇宙人と違う? ていうか、宇宙人って言い方、好きじゃないんだ、僕は。出身の星は違うけど、それは地球だと、国が違う程度のものでしかないから。それに、言ったじゃないか。高等生命はみな同じ意図的なデザインで作られているから、地球人も他の星の人間も、見た目はたいして変わらないって」
 エアリィはぱさっと髪を振って、少し抗議するように言う。
「でもさ、僕も最初の十六年間は地球人のつもりでいたけどね。自我が目覚めた時には、地球にいたんだから。でも、あの時思い出した。覚えてる? ジャスティンもあの場にいただろう? インドの寺院で」
「ああ! あの時か!」
「そう。あの時に思い出したんだ。僕は以前誰だったのか、どこから来たのか、何のために……それがあんまり衝撃的だったから、あんなパニックに陥ってしまったんだ。それまで地球人としての自我しかなかったからね。文字どおり、天地が引っ繰り返った感じだった。あの時、彼女は言っていたんだ。あなたはわたしで、わたしはあなたなのです。怖がらないでって。僕は最初、いや、無理無理って思ったけど。でも徐々に、統合されてきた。あの三週間の間に」
「ああ、おまえが行方をくらましていた時か。でも彼女……なのか。おまえの内なる人が女の人だって言うと……やっぱりおまえの本質は女……が正しいのか?」
「そう。元々僕は、最初の起源が女だったからね。前世も本体も女だし。女らしいタイプじゃなかったけど、元々。今の僕の表面自我は一応、男の意識を持ってたけどね。ここでは男の子として育ったから。女では不可なプログラムだったから、多少不完全でも男にならざるを得なくて。でもまあ、男とか女とかっていうのは、僕らの段階ではもう大した問題じゃないんだ。でも、みんなはまだまだ元の自我意識を持っていられるけど、僕は彼女の意識に戻らないといけないんだ。この姿の僕は、一時的な仮の姿だから。転生を繰り返すと、魂は枯れない花になる。その姿とすべての記憶を保って、両方の世界を行き来することになるんだ。でも、ま、今は自分でおまえに話が出来てよかったと思ってる。約束を果たすまでは、この意識のままでいるつもりだけど」
「約束って……?」
 僕の問いに、彼は少し驚いたように僕を見た。
「忘れた? ロビンと約束したじゃないか。またこっちの世界で一緒に演ろうって」
「ああ!」僕は思わず膝を叩いた。
「そうだ! そうだった。じゃあ……」
「そうだよ。つまり、おまえが来るのを待ってるんだ、ジャスティン」
 彼は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「かと言って、早く来いなんて言わないけどね」
「でも……おまえはその約束を果たしたら、戻ってしまうんだな。アーディス・レイン・ローゼンスタイナーの心は消えてしまうんだな」
「いや、消えはしないよ。僕は元々彼女だから、というか、僕は彼女でもあるわけだから。彼女が言ったとおり、僕らはつながってるんだ。表面的な人格は少し変わるだろうけど、それはバリエーションに過ぎない。基本は変わってないんだ。彼女はもう一億年以上、咲き続ける花になってるから。僕はちょっと変形した彼女なんだけど、元に戻っても、僕であることには変わりないさ。彼女が言っていたように。僕は彼女で、彼女は僕だって」
「その彼女って、いったい誰なんだ? おまえの本体って……アルフィア……アルフィアさまって、あの幻が呼んでいたが、それがそうか?」
「そう、アルフィアってのは通称で、本名はアルフィアル・アルティスマイン・レフィアスっていうんだ。同じ姿で、同じ名前で、記憶もすべて保ったままで、彼女は変わらない、ずっと、昇華するまで。そして彼女は僕でもあるんだ。まあ、シャドウが加わらないうちは、完全形じゃないけど」
「シャドウ?」
「そう、影。ユングの心理学にもあったけど。表に出ないもう一人の彼女。これはかなり、僕よりさめてて、理知的な奴なんだ」
「もう一回生まれる? おまえの影が?」
「ああ。僕の自我に入りきらなかった自己が、現身の姿をとって現れるはずだよ。最後の仕上げをするために。アルシス・リンク・ローゼンスタイナーとして」
「ああ、夜明けの大主か!」僕は思わず声を上げた。
「そう、後世ではそんな通称らしいね」
「知っていたのか、おまえ?」
「いや、現世では知らなかった。っていうか、潜在的には知ってたけど、あえて未来を見ようとは思わなかったから、意識には上ってこなかったんだ。でも元は同じでも、アルシス・リンクは僕じゃない。うーん、なんて言ったら良いかな。花びらの一枚から咲いた別の花? で、その一枚以外の花が僕……そんな感じかな。自己はつながってるけど、自我はリンクしてないんだ、分体とは。アルフィアル・アルティスマイン・レフィアスは僕自身でもあるけれど、そのシャドウ分が統合されないと、完全形じゃない。でも僕は彼女の転生だし、身体の方も、九割近くは以前の彼女のものなんだ。残りの地球人因子は、アリステアさんのだけどね。地球人の因子がなければ、地球に適応できないから。僕の身体はヴィヴァールに生み出されたハイブリット・クローンだった。前世の僕自身を母体にして、アリステアさんの遺伝子と、少しヴィヴァールのも混ぜた。言ってみればこの三人が僕の親なんだけど、厳密には親とは言えないかな。僕に父親はいないし、母親もいないことになる。母さんはヴィヴァールの催眠誘導で、僕を自分の子だと思って育ててくれた。でも血縁的には本当は、どうなるんだろ。僕はお祖父さんの因子が混ざってるわけだから、ちょっと遠い姉弟のようなもの? エステルも本当は妹じゃないわけだけど、戸籍の上だけじゃなく気持ちの上でも、やっぱり母さんは母さんだし、エステルは妹なんだ。でも遺伝子的には、僕の基本はアクウィーティア海洋人女性のクローンだから、こんな外見になっちゃったんだ」
「クローン……おまえが? 異星人を母体にして、地球人の因子を少し混ぜたハイブリット・クローンだって……?」
「そう、地球でもある程度は技術が確立されて、倫理問題を議論されてた、あれだよ。僕は地球の技術じゃ作れないけど。ヴィヴァールの力あってこそなんだ。だから僕には胎内記憶がない。光に包まれてた感覚しか。それは受精卵から赤ん坊に育つ時に、ヴィヴァールに与えられたエネルギーだったから。でも、そもそもどういう風に作られたか、なんていうのは二次的な議論だよ。肉体は魂の入れものに過ぎない。一回魂が入って生きてしまえば、人間なんだ。みんなと変わらない人間なんだって思ってる」
「そうだよな……うん、そうだ。生きている……人間なんだ」僕は深く頷いた。
「でもエアリィ、僕はまだ、よくわからない。あの紫の幻影とおまえは、同じ星の出身なのか? 身体の方じゃなく、魂のおまえ自身として……アルフィアというおまえの本体とヴィヴァールというあの幻影は、同じ星から来たのか? アクウィーティアン……アクウィーティア人っておまえは言っていたが、それが星の名前なのか? それはどこなんだ?」
「うん、そう。アクィーティア・セレーナが僕らの故郷。でも、地球人は誰も知らないと思う。僕らが地球を知らなかったように。なんたって、離れすぎているから。六億光年くらい距離があるんだ。地球では十八年前にやっと認識番号がつけられた遠い銀河にある、小さな星の第三惑星なんだよ。太陽のスペクトル型も同じで、惑星の大きさも太陽との距離も、ほとんど地球と同じ。公転周期も自転周期も似通っている。季節は五つあるんだ。黎明から始まって、春、夏、秋、冬。もちろん呼び名は違うけど。地球でも季節の呼び方は、それぞれの国で違ったように、アクウィーティアでもそうなんだ。意味はその通りなんだけどね。それで、各季節には第一と第二の二つのフェーズがある。で、一フェーズは三六日なんだ。アヴェレットやセディフィがそんな言いかたをしてただろ? 黎明の二フェーズ、十七日生まれ、とか。それが僕らのカレンダーだから。僕らは月っていう呼び方はしない。だって、月は一つじゃないから。二つの月のからみ具合で、季節とフェーズを決めているんだ。僕らの一年は三百六十日だけれど、一日の長さが地球より二十分くらい長いから、本当に長さ的には、似たようなもんだよ。空や海は青いんだけど、もうほんのちょっと水色がかって見える。見せてあげられたら手っ取り早いんだけど、今は時間がないから無理だね。アクィーティア・セレーナっていうのは僕らの標準語で、祝福された水の星って意味だよ。祝福って意味のセレーナがくっついたのは、グランドパージの一万年くらいあとからだけど」
「グランドパージって……?」
「みんなのいう、カタストロフのことだよ。世界の終わり」
「ええ! じゃあ、おまえの星でも世界の終わりが……?」
「あったよ。ちょうど地球と同じように。今から二億年前に」
「二億年前だって……!?」
「ああ。ちょうどそのころ、僕らは地球と同じ進化段階にあったんだ。アクィーティアの太陽系は今だいたい五十億才。地球年で言えばね。僕らの一年も、ほとんど長さは変わらないけど。地球の太陽系より何億年か早く生まれているから、生命の発生もその分、少し早かったんだ。だから僕らは、現在はそれより進化してる。ヴィヴァールがおまえに『発生が早かったために進化した人類だ』って言ったらしいけど、その通りなんだ。僕の本体も進化人類なんだ。ヴィヴァールみたいな。でもそのまま地球に転生しても、完全に浮いちゃうから。だからハイブリットの身体が必要だったんだ。これは僕だけじゃなくて、どの起源子も、そうやって生まれてきたんだよ」
 エアリィはしばらく言葉を止め、かすかに笑うと再び話し出した。
「僕らは地球より二億年ちょっと早く、アクィーティアの高等生命として生まれた。そして長い準備期間を経て、進化する魂を得た。僕の場合は適合子、アルディーナ・マディフィスとして。女の子だよ。十三人のうち、三人しかいない女の適合子の一人。次に転生したのがアヴェレット。インドで僕が覚醒した時、ちょっとおまえも会ったっけ。これは男だけど。男に転生したのは数えるほどだけれど、この時はアルディーナの生を終わる時、女は嫌だって思っちゃったせいかもしれない。女ゆえのデメリットっていうのを、結構味わっちゃった感じだから。それで、アルディーナとアヴェレットの間に、アクィーティアの初期文明は終わった。だから僕は、母星ではグランドパージを経験していないんだ。生の狭間で休息中だった」
(私たち影は、最初のグランドパージには会う。でも、二度目は見守っているだけです。逆に陽の立場の光たちは、最初はやりすごします。そして二度目に遭遇するのです。先行して起こる、このタイムリープもそうです)
 未来世界で見た夢――あの暗闇の中から響いてきた声が言っていたこと。それをふいに思い出した。あれは、時々僕の前にも表れる、そして僕とエアリィだけにしか見えない、あの紫の幻影が言っていたこと。その意味が今、わかったような気がした。影は最初のタイムリープとカタストロフに会う。でも二度目は見守るだけ。光は、最初はやり過ごし、二度目に遭遇する。僕が後継の影だとしたら、たしかに今、後継という立場で、僕は体験している。未来へのタイムトリップも、世界の終わりも。でも先達の光だというエアリィは、母星でそれを経験していないと言う。そして今、この地球で経験した。彼は、未来世界でこう言ってもいた。まだ覚醒前だったから、はっきりとした自覚はなかっただろうが――デジャヴだ。以前聞いた話を追体験しているようだ。ディテールは違う気がするけど、と。彼はきっと昔――かなり遠い昔に、その話をあの紫の幻影の人から聞いていたのだろう。彼の母星でのタイムリープ話を。
 そして後継の光がアールだとすれば、たしかに彼もここでそれを経験していない。彼はカタストロフの次の年に生まれたから。彼もやがて、はるかな未来でどこかの星の起源子となり、そこで遭遇するのだろうか。そして僕は、それを見守っているのだろうか。あの幻影のように――。
「うん。それで正解だよ。僕がその話を聞いたのは、ヴィヴァールからじゃないけど」
 言葉に出さなくとも、エアリィは僕の思いをわかっているようだ。彼はちょっと肩をすくめてから、言葉を継いだ。「だからこそ、おまえは後継の影に選ばれたんだろうし、最強の影でもあるんだろうな」と。
「どういう意味だ?」と、僕は問い返したが、彼はただ、「それは後で、説明できたらするよ。可能ならね」と言っただけだった。
「話がそれたね。元に戻すけど……アクウィーティアの新文明の下で、僕はそれから数え切れない人生を生きたけど、八千万年がたったころ、セリース・アルフェディアスとして生まれ、クィンヴァルス・アルティシオンに移住したんだ。覚えてる?『クリスタル・カセドラル』を」
「ああ、おまえのお祖父さんの遺稿で、おまえが初めて映画に出た、あれか?」
「そう。あの話は、そのまま僕の過去の歴史だったんだ。あの映画で演じたセリスは、昔の僕だった。一億二千万年前のね。だからなりきるのに、わけはなかったんだ。あれはヴィヴァールの悪戯なんだよ。遺伝子交差の時に、ほんのちょっとだけ僕本体の記憶のかけらを、あの人に落としたんだろう。ただ、ちょっと不完全な記憶として伝わったようだけどね。クインヴァースじゃないよ。クィンヴァルス・アルティシオン。英語で言えば、聖戦の達成っていう意味なんだ」
「そこは、どんなところなんだ?」
「かなり遠いよ。アクィーティアほどじゃないけど、三億七千万光年の距離がある。そこは連星の、第五惑星なんだ。大きさは地球とあまり変わんないし、自転周期も二七時間弱、大気構成もほとんど同じ。けど太陽は連星系だから、二つあるんだ。白とオレンジのと。公転周期は結構長くて、地球年で言えば十二年ちょっと。でもなんたって連星系だから、かなり季節の変動が激しいんだ。夏には気温が七十度くらいに上がっちゃうし、冬にはマイナス八十度近くまで行っちゃう。春や秋には結構快適なんだけど、夏も冬も地球で言えば二年半くらいは続くわけだから、普通に住むにはちょっときついよ。ある程度の文明をもって移り住むんじゃなきゃ、高等生命の自然発生はかなり難しい星なんだ。原始的な動植物はいるけどね。あの映画に出てきた、マールっていう小さな白いボールみたいな生物、覚えてる? あれと同じようなのは、本当にいたんだ。映画の通り、自然のパワーのガイド役のようなものとしてね。クィンヴァルスがパワースポットっていうか、宇宙の気が集中している星だっていうのも本当なんだ。だからここを取る時、あんな激しい戦いにもなったんだよ」
 エアリィは追憶するような眼になり、しばらく黙ってから、また言葉を継いだ。
「生きてる間、時おり夢に見た。自分自身に目覚める前にも、何度か夢に出てきて、そのたびにちょっと不安になったっけ。アクィーティアの風景、クィンヴァルスの風景。特に後の方は異質すぎてさ、ちょっと変な感じがいつもしたよ。なのに、なんで懐かしく感じるのかって。いつかさ、未来世界で見た夢をおまえに話した時、なんだか凄く懐かしくて帰りたくなったって言ったのを、覚えてる? あの風景は春のクィンヴァルスだったんだ。神殿のそばに広い花畑があって、その花を僕らは食料にしていた。子供の頃は、よくそこで遊んだしね。ヴィヴァールと僕と、兄妹みたいに育って。あの頃は怒りとか嫌悪とか恥とか、そんなイヤな感情なんて一度も感じたことはなかった。ただ天国みたいな、無上の幸福感しかない世界でさ。だから、ちょっと天国みたいでやばいな、なんて夢を見たあと思ったりもしたんだけど。自分の正体がわかったあとでも、そういう過去世の夢は、見るたびに違和感だった。現実に自分の生きてる環境とのギャップがすごくて。いつかおまえに言ったみたいに、別の世界だから、何もかも。もう二度と戻れないんだなって思うと、すごく切ないし、悲しくもあった。僕は異邦人だ。心の底では、いつもそう思ってた。子供の頃から、昔未来世界へ飛んだ時以上の違和感を、抱き続けてきたんだ。なぜ、僕はここに居るんだ。この世界は、僕には異質すぎるって。見知らぬ世界に一人で放り出されたようで、頼りなくて、少し怖くもあったんだ」
「エアリィ……」僕は思わず一歩前へ踏み出した。手を取ろうと差し出したが、空しく宙をかいただけだった。わかっているはずだったが。彼は今、僕と同じ次元にはいないことを。僕は言葉を継いだ。
「おまえはいつも、心の中では僕らの世界から隔絶されていたのか? おまえはいつも、一人だったのか……? 僕は一人だ、寂しい、せつないって、あの時僕に言ったように」
「うーん、それはたしかに否定できないし、そういう気分に振れちゃう時もたしかにあったけど、全体からすれば、ほんの一部だから。僕は一人じゃないって、わかってたから。ヴィヴァールもいるし、アクウィーティアの仲間たちも見守ってくれる。その存在を感じることはできたし、それに僕は地球でも多くの仲間たちに恵まれたなって、思えたから。たしかに闇は多いけど、地球も好きだよ、僕は。そこに住んでる人たちが、って言った方が、いいかも知れないけど。基本、楽しかったし幸福だったと思う。本当、短かったけど、密度は濃かった。いろんな体験が出来た。だから僕は最後に地球に転生できて、良かったと思ったんだ。だから、僕が起源子じゃなかったらって、何度も思ったけど、でも起源子じゃなかったら、地球に生まれることはなかったんだろうって思うと、難しい問題だな」
 彼はもう一度首を振り、言葉を継いだ。
「これ以上は、今は言えない。そういえば昔、言ったっけな。ランカスター草原で。何が起きたのか教えてくれっておまえに言われて、死んでも言えないって答えた。ホントだな。死んでも言えない」
「どうしてなんだ?」
「なんて言うかな……それがプログラムだから。本当はもう最初からどーんとすべてを話したって問題ないのかもしれないけど。どうせ生まれ変わったら、一回知識はリセットされるし。でも、やっぱり段階があるんだよ。いっぺんには重いから、少しずつ明かしていこう、って感じなのかもしれない。あとね、僕の中にずっと引っかかってる思いがあるんだ。なぜ、こんな定めなんだろうって。ほんとに、いつも思ってた。だから、場合によっては反応が怖いってのもあるから、明かせるのがここまでで、ほっとしてる部分もあるんだ。地球上であと四十年くらいたったら、もう少し詳しく話せる時が来る。ただその時には、知識を受けるのはアールの番になるけど。そして彼に、その知識を向こうでおまえに話すように、頼むことになるんだ。だからその時には、もう少し詳しいことがわかるよ」
「そうか。僕とアールは、光と影のパートナーなんだな。今はあまりピンと来ないけど」
「現生ではそうだろうね。でも本来おまえたちは、もっと密接な関係なんだ。でもこの生だけは少し遠くなる。起源子が……まあ、僕なんだけど、光のパートナー的な役割で入ってくるから。でも、本当に今回だけなんだよ。次の生からは、おまえたちの関係はもっと深くなるはずだ。前世がそうだったように」
「ああ。僕とアールは前世では、ヨハン神父とアリステアさんなんだな。そう思うと、なんだか変な気分だな。でも前から不思議に思っていたんだけれど、後継者っていったい何なんだ? それにおまえたちは、なぜ地球に来たんだ? それも、わざわざ地球に転生して。おまえたちが進化人類なら、地球人なんて、言ってみれば原始人みたいなものだろう?」
「うん。それは否定しないけどね。だから、ギャップがすごかったわけだし」
 エアリィはちょっと笑って首を振った。
「でも、僕らは別に地球征服に来たわけじゃないよ。聖なる母からの神託を受けたからなんだ。聖なる母は、僕らの神。宇宙の秩序を司る、唯一神だ。聖太母神。僕の前世は、その神の神託を受ける神官だった。いや、前世だけじゃなくて、ほとんどずっとそうだけど。ともかく、僕らの唯一神が告げたんだ。『時が来ました。行って、後継の星に輪をつなぎなさい』って。その神託を受け取った時、うわ、とうとう来ちゃったって、一瞬すごくたじろいだけど。もう穏やかな幸福に満ちた人生も終わりかって。でも、仕方ない。それが僕らの宿命だから。後継の星のパイロットになるっていうのが」
「後継の星のパイロット?」
「そう。飛行機じゃなくてね、水先案内人。光の路を開くために」
「おまえは、やっぱりあの幻影が言っていた起源子、なんだな。何度もそう言っていたし。それが水先案内人……でも、何の起源、なんだ?」
「新たな路の起源、っていうべきなのかな。先達の星から後継の星への、輪の接点。でもおまえは、起源子にはならないけど、ジャスティン。これは光側の役目だから」
「そうなのか」
「起源子には、ならないほうがいいよ。その点じゃ、おまえはラッキーだったと思う。選ばれた四人になったことは、アンラッキーでも。とんでもなく重いから、起源子は。だから僕も、最初は負いきれないと思った。覚醒した時、思わずそう言っちゃったように。アールもきっと大変だろうな」エアリィは小さく頭を振り、少し自嘲気味に笑った。
「でも思うんだけど、影のパートナーって、ヴィヴァールにしてもおまえにしても、結局は巻き添えなんだな。適合子の巻き添え。そう思うと、アンラッキーさは増すかも。ジャスティンも現役時代、散々僕の巻き添えになっちゃったけど、結局そういう宿命なんだな、って言うとおまえに怒られるかもだけど」
「まあ……適合子の意味はよくわからないが、なんとなくわかるよ。怒りはしないが」
 僕も苦笑した。
「適合子っていうのは、たまたま超アンラッキーな体質を持って生まれた人。いや、ラッキーなんだってヴィヴァールやヴェリアは言ってたけど、エルファヴィースは、それはたしかに真実だろうけど、同時にアンラッキーと思えるのも理解できるって言ってた。同じ立場だと、やっぱりわかるんだと思う」
「ヴェリアや……エルファ……ヴィースって?」
「ああ、僕の母星で、今のヴィヴァールと僕の立ち位置にいた人たちだよ。で、適合子が光側。影はその時選別されるんだ。だから巻き添え。適合子が出るってことが、聖太母神に選ばれた星になるってことで、その人を助けるために、もっともふさわしいと神が選んだ人が、影のパートナーになる。だからジャスティンの場合は、正確には僕の巻き添えじゃなくて、アールの巻き添えになるのかな。ただ、おまえは歴代の影の中では、相当アクティヴな役をやることになるけど。たぶん、歴代最強の影だと思う。だから、元の素質というのも、かなりありそうだな」彼は少し言葉を止め、軽く頭を振ると、続けた。
「聖太母神に選ばれた星になることは、祝福だってヴィヴァールは言う。究極の進化への道を許された選民だからって。でも僕にはどうしても、同時に犠牲じゃないかって思えてしまうんだ。祝福であり、犠牲でもある。神に選ばれた星は、全宇宙で二億年に一つずつしか生まれない。アクィーティアは十二番目の、神に選ばれた星の民だった。十三番目が地球なんだよ。僕らの後継の星は、地球なんだ。だから僕は、地球に転生した。進化の道のパイロットとして。それでおまえとアールが、後継の星、地球側から選ばれた二人になるんだ。光と影のパートナー。そしてグランドパージが起きて、新世界が生まれた。これは第一段階だ。最終ステージは四千年後だよ。その時に、ヴィヴァールと僕の天命も完成するんだ」
「四千年後……? でも、僕はさっぱりなにがなんだか……」
「わからなくて良いよ。今はちゃんと説明できないことだから。四千年たって、その時が来たら、答えがわかる。いやでもね。それは最後の質問で、最後の答えだ。僕がもう一度現世に転生して、ヴィヴァールとアールとおまえと四人が揃った時、すべてが明らかになるんだ。今は、それ以上説明できない。一つだけ言えば、これは連鎖する輪だってことだよ。聖なる母の輪。あの、僕らのバンドロゴにもなっている、あの二つの文字の意味するところ。僕らもその中の、鎖のひとつなんだ。アクィーティアでは、今の僕と同じ立場の起源子がエルファス、本来の姿はエルファヴィースで、ヴィヴァールと同じような役をしている、そのパートナーがヴェリア。僕とヴィヴァールは、彼らの後継者の定めを持っていた。ちょうど今のアールとおまえのように。何度か転生して彼らの最終ステージに立ち会った時、すべての真実を知って、僕は震えが止まらなかった。怖くて、ほんとにやばいと思った。僕は歴代の適合子の中では、一番感情的らしいから、結構取り乱したな。もっとも、その頃は僕じゃないか。セディフィだったから。『どうしよう。怖いわ』って感じだよ。いつか、おまえを気色悪がらせたようにさ」
「気色悪くはなかったけどな。妙にはまっていたから」
 僕は思い出して苦笑いした。エアリィもちょっと笑い、肩をすくめて再び話し出した。
「ま、ともかく……それから長い長い時がたって、ついに恐れていた時が来ちゃったんだ。その間にアクィーティアの民は宇宙にゆっくり広がって、三千以上の銀河に百万以上のサテライト……植民星を作った。地球でも、エスポワール一三号が飛ぶ頃には宇宙移民が始まってるけど、僕らもちょうどそれくらい、グランドパージのあと五千年たったくらいから、他の星への移住を始めたんだ。それで、そこまで広がった。でも宇宙全体の銀河の広がりからすれば、まだまだ狭い範囲だね。元々百億も種がないんだ。動物から進化してくるのや、分割を入れても、せいぜい五百億がいいところだから、無制限には広がっていけない。ピークを過ぎれば、数は減っていく宿命にあるしね」
「どうしてだい……?」
 あまりにも天文学的な数字に頭がくらつくのを感じながら、僕は思わずそう問い返した。
「進化の究極に達した魂は、もう転生しなくなるから。彼らは光へ向かう子供たちになる。そして統合される。どこへ、その答えは四千年たたないと言えないけど。だからアクィーティアには、もう人は残っていない。人間にはなれなかった動物たちしか。クィンヴァルスには、僕らが後にしてきた聖都フィディスティアに、百二十人くらい。そのうちの七十人が神殿で働いてる。今の地球以上にガラガラ状態だよ。移住先の星のほとんども完全に無人化して、また僕らが移住する前の環境に戻りつつある。今も人が残っているサテライトは、二千くらいしかない。一番多い時で四百八十億人いたアクウィーティアンも、今は全部で十万人程度しかいないんだ。ああ、十二万人くらいは闇に落ちて、途中脱落しちゃったけど。あの映画、クィンヴァルス争奪戦の敵方だった悪の帝国――あれも実在したんだけれど、元は同じアクウィーティアンだ。最後には闇に落ちてしまった人たちが築いたものだ。でもそれ以外は、あと十万年くらいたつころには、みんな昇華して、いなくなってるよ。僕らの種族全体の進化も、完全な究極に近づいてきてるんだ」
「完全な究極って何だ?」
「光の子供たちが行きつく先。さっき言ったように。それが何か、それは最後の質問だから、四千年後に話すよ」エアリィは首を振り、それ以上は答えなかった。




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