Part 3 of the Sacred Mother's Ring - In the Abyss of the Worlds

第7章 甦りゆく世界 (3)




 再び一人になった僕の部屋。赤ん坊の子供たちが病院からここに来るまでの数日間、僕はこの底知れない孤独に耐えられるだろうか。部屋へ帰るのが怖い。
 エステルを埋葬して二日後、アランとジョセフが、アパートの居室に帰ってきていた。アランは妹の死を悼むために、そしてジョセフは僕を気遣って、だと思う。その晩、僕たちは三人でリビングに座り、長い間、話をした。
「ジャスティン君。正直なところを、一つだけ聞きたいんだ」
 もうそろそろ研究室に帰ろうというころに、アランは僕に向き直って、問いかけてきた。
「君は本当に妹を愛していたのかい? それとも、君の予言とやらの成就のために、エステルが必要だったのかい? 本心を聞かせてくれないか」
 僕は驚き、義兄を見、ついで激しくかぶりを振った。
「違う、義兄さん! 僕は、本当にエステルを愛していたんだ!」
「妹は幸福だっただろうか、君といて」
「エステルちゃんは幸せそうだったぞ、アラン。そんなことがわからないほど、君の目は節穴だったのかい?」ジョセフが僕のかわりに、そう答えてくれた。
「自分の弟だからと弁護するつもりはない。でも本当に、ジャスティンとエステルちゃんは幸せそうなカップルだった。ステラさんとはまた違う意味で、アツアツだったぞ。僕はたまにしかここにこなかったが、それでもそれだけは、はっきりわかった。君には、それがわからなかったのかい?」
「……わかっていたさ。つまらないことを聞いたね、悪かった。ただ、どうしても解せない、というか、気持ちの上で納得できなかったんだ。子供ができなければ、彼女はまだ生きていたんだろうと思うとね。いや、だからと言って、子供がいなければいいというわけではないんだが……結婚したら、当然視野に入るだろうからね。だがその結果こんなことになってしまって、それに君たちの、『未来の娘からの手紙』の話も知っているから、まるで妹一人が貧乏くじを引いてしまったような思いが、どうしても抜けなかったんだ」
 アランはふうっと長いため息をついて、首を振っていた。
 僕はそれに対し、答える言葉を見つけられなかった。確かにそう取られても仕方のない部分も、あるのかもしれない。それは僕自身、時々自分に投げかける問でもあったからだ。それは運命なのか? 回避は可能だったのか――? 双子だったことも。
「まあ、君の気持ちも、わからないではないさ、アラン。エステルちゃんは君の唯一の身内だったからね、今となっては。君も小さな妹を大事に思っていたのだろう」
 ジョセフがいくぶん慰め顔で、その肩を軽く叩いていた。
 そうだ――僕は自分の悲しみばかりを考えてしまっていた。エステルを肉親として、僕よりも長い間愛していた兄――もう世を去ってしまった、僕の友でもある兄のほかにもう一人、今も生きている兄、アランがどれだけ妹の死を辛くとらえているかに、考えが至らなかった。普段あまり、というかほとんど感情を表にあらわしたのを見たことがないだけに、余計だったのかもしれない。だからこその、非難だったのだろかもしれない。改めて、そう思えた。
「ああ。僕なりに彼女を愛していたさ。兄として」
 アランは頷き、ついで再びため息をついた。
「今でもはっきりと覚えているよ。エステルとメイベルが生まれた時のことを。今から二十四年半前の四月十八日、晴れた日だった。継母はお母さんと呼ぶのも抵抗があるほど、若くてきれいな人だったし、あの頃の僕はかなりひねくれていたから、当時は他人行儀に『貴女』としか呼びかけたことがなかったけどね。かわいげのない継子だったよ──双子で、それに継母は以前負った怪我の影響で、正常分娩の体勢をとり続けることが難しかったようだし、骨盤の開きも十分ではない可能性があるということで、帝王切開になったんだよ。それで、エステルとメイベルが生まれた。僕は、すぐには継母と妹たちに会いには行かなかった。父とアーディスは、継母に付き添っていたけれど。繰り返すけれど、僕は当時、どうしようもないほどひねくれものだったんだ。アーディスがモデルになったあの小説に出てきた、継兄そのものさ。彼にはひどくつらく当たった。彼が何を言っても、同じ答えしか返さなかった。『寄るな、話しかけるな。おまえなんか赤の他人だ』と。継母にも心を開きたくなかった。話しかけられても無視した。用があった時に、短く命令口調で言うだけだった。あのころの僕は人間不信と自信喪失で、ひどくひねくれていてね」
 その台詞は聞いたことがある。継弟の方も、同じことを言っていたから。『いつもそう言われた』と。そして義兄がこれほど饒舌になっているのは、初めてだった。追想に浸るように彼は軽く目を閉じ、再び目を開いて話し出した。
「まあ、ともかくね、そんな僕でも、妹が生まれるという事実は重大だった。でも、歓迎していたわけじゃない。小さい子が家にいると、煩くてわずらわしいだろうという思いと、父と継母の子が生まれるということで、その子たちが錨となって、継母と継弟はこの家に本格的にいついてしまうだろうという絶望感だった。勝手だったんだよ、僕も。でも継母が家に赤ん坊の妹たちを連れてきた時、僕は赤ん坊たちに感動したんだ。なんて小さくてかわいらしいと。そう、僕は妹たちを愛しいと思った。ずっとネガティヴな気持ちしか抱いてこなかった僕が初めて感じた、前向きな思いだった」
「君はそんなに父親の再婚が、おもしろくなかったのかい、アラン? まあ、君も当時は難しい年頃だっただろうけれどね」ジョセフがちょっとからかい気味にたずねた。
「ああ。でも僕がひねくれていたのは、父の再婚以前からさ。僕の産みの母が僕を捨てて他の男と出ていってから。父は研究がすべての人で、家のことは何も出来ない、自分のことすらできない人だったから、家にオタワから父の姉、トロントでもうちの家政を見ていてくれた、ミリセント伯母が来てくれた。祖父母もその頃はまだ元気で、二人でオタワに住んでいたからね。ミリセント伯母は悪い人じゃない。だけど僕の心のケアを、それほどやってくれたとは思えない。彼女は子供の扱いが、特に母親に捨てられて傷ついた子供の扱いには、まったく不慣れだった。それに、想像力も欠けていた。いつも、『かわいそうなアラン』と言って、僕のやりたいようにさせ、でも僕がしてほしかったことは、やってくれなかった。その時の僕に必要だったのは、継母の事故後、アーディスがエステルにやったようなことだったのだと思う。寄り添い、共感し、痛みを癒してくれること。遠巻きに放っておかれることではなくね。父にも僕にも出来なかったことだから、仕方がないが。ステュアートの家の連中は、どうもそういうことは苦手のようだ」
「……ああ」
 ジョセフと僕は頷いた。ともかく、あまりに順風満帆な子供時代を過ごした僕たちには、そうでない人たちの話に共感はできても、それ以上のことが出来なくて、もどかしい。
「でも、ようやくその環境にも慣れてきた十三の頃、父が再婚するというので、ミリセント伯母はオタワへ帰ったのさ。ちょうど祖父が病気になったこともあって、父の再婚は渡りに船だったのだろう。それで、僕の不満は一気に爆発した。大人は勝手だ。新しい母なんて信じない。また僕を捨てるだろう。血のつながっていない子なら、なおさらだって。おまけに新しい母には、僕より六歳年下の連れ子がいるという。どこの馬の骨ともわからない奴が、いきなり弟になる。そのことだけでも、僕は頭に血が上ったよ。おまけにその弟ときたら、パーフェクトだ。およそ、これ以上ないってくらいね。アーディスは僕の求めてかなわないものを、すべて持っていたと言ってもいい。彼がどんな奴なのかは、君たち、特にジャスティン君はよく知っているだろうから、繰り返しては言わないけれどね。おまけに、そう、僕は勉強だけは、誰にも負けない自負を持っていた。僕は州公認のギフテッドなんだ。そのための学校に時々行って、あとは家で勉強していた。十五になったら、大学に行こうと思っていた。父と同じMITに。父はオタワ生まれで、高校まではカナダで学んだんだが、大学でアメリカに行ったんだ。スクールの先生は、充分可能だろうと言っていた。僕なら、かなり上位に行けるだろうとも。それが僕は誇らしかったし、ミリセント伯母も誇りに思っていたようだ。実際、口に出して何度もそう言った。父も『おまえの才能を大事にするといい』と、認めてくれた。それが僕の、唯一の自負心だった。だがアーディスは、その僕の最後の自負さえ打ち砕いた。彼はギフテッドじゃない。性格に偏りは、まったくないからね。オールマイティ型のスーパー天才だ。しかも七歳にして、もう学力はハイスクール並みにあるという。でも彼は小学校に行きたいと言い、五年に入った。僕はそれを、嫌みだと受け取った。周りを見下したいのだろうと。僕は彼の教科書や宿題のレポートを破いたり、焼いたりしたが、彼はほとんど気にしていないようだった。教科書は一度友達に見せてもらえば事足りたし、宿題は学校で、直前の休み時間にやっていたようだからね。彼には友達も多く、僕にはそれも面白くなかった。家に連れてくると僕が苦情を言うから、外に遊びに行っていたが。初めのころは、せめて勉強だけは彼の上を行きたいと思っていたが、すぐにあきらめた。次元が違う、と。アーディスは本当に、頭に関しては異人種だ。僕は彼に『僕の本には絶対触るな』と言い渡し、彼もそれを守っていたようだが、父の本は自由に読んでいた。父も『読んだら必ず元の位置に戻してくれ。それが守れるならいい』と、許していたからね。そうして一年もしないうちに、大学院生も顔負けの知識と学力を身につけてしまった。どんな難しい理論でも、ぱっとページを数秒眺めて記憶し、理解する。しかも忘れない。そんな奴に、どうして僕が対抗できるというんだ」
 その思いは、僕もいやというほど味わってきた。思わず苦笑がこみ上げた。
「聞きしに勝る天才ぶりだな。僕から見れば、君もじゅうぶん異人種だと思えるけれど、アラン。その上がいたとは。ミュージシャンにならなかったら、とんでもない学者になっただろうな。そうすれば、ロボット研究も楽だっただろう」
 ジョセフもため息をついて、そんなことを言っている。
「アーディスがもしあの時死なずに、ここへ来ることができていて、僕らの研究を手伝ってくれたら、たぶん半年もしないうちに、すべての設計図が完成するよ」
 アランはちょっと肩をすくめた。
「ただ、彼は科学方面に進むのは、元から乗り気じゃなかったようだ。今から十一年ほど前、まだエアレースが現役で、ものすごい勢力を誇っていたころのことだ。大学の研究室で、僕もこういう性格だから、敵も多かった。上の連中がある日、僕への嫌がらせに、とても解けないような難題を出したんだ。フェルマーの定理並みにね。上の奴らにも解けないものだったが、僕なら出来るだろうなんて、にやにやしながら。でも僕でも、何日考えても、答えが出なかった。その時にアーディスがエステルを連れて、たまたま僕の下宿に遊びに来たんだ。それで、話をしているうちに、その難題の話になり、『見せて』というから、見せた。そうしたら彼はそれを一分ほど見て、『えー、これ答え出ないの、当たりまえだよ。ここが破綻してるから』と、一箇所修正した後、その修正解を紙に書いていった。破綻の根拠も証明して見せた。見事にね。僕が数日間さんざん頭を悩ませた難問を、ものの一分で解いたんだ」
「はあ……しかし、アーディスくんはジャスティンと同じで、大学へは行かなかったのだろう? ハイスクールは主席だったらしいが……」
「言っただろう? 彼は読んだら理解できるし、忘れない。学校の授業なんて、彼にとっては単なる暇つぶしだ。他の人と交流したいから、学校に行っているようなものなんだ。彼は千冊以上の数学理論を読み、理解していた。父の書斎の本も一年もしないうちに読破したし、僕の下宿に来るたびに、僕の蔵書を読んでいた。分厚い数学書をパラパラめくって、一冊十分か十五分、そんなもので」アランは苦笑を浮かべ、肩をすくめた。
「それで、僕は言ったんだ。おまえは絶対に科学者になるべきだ、とね。彼がミュージシャンとしても空前の器だったことは知っている。でも、それは科学者としても同様だった。おまえが科学者になったら、今おまえが音楽界でやっているような旋風を、きっと科学界でも巻き起こしただろう。ロックシンガーは一生やれるような仕事じゃない。少なくとも若い頃のペースで、年を取ってからもやれはしないだろう。その時でも遅くはないから、科学者に転向したらどうだ、と僕は言ったんだ。そうしたら、アーディスはちょっと笑って、こう答えた。『でもそれって、フェアじゃないから』と」
「フェアじゃない?」
 奇妙な言葉だ、僕はそう思った。向いていないというなら、わかるが。
「そう。僕は『どういう意味だ?』と聞いたら、彼は言った。たとえば、もし今の時代の科学者が原始時代に行ったとしたら、その人は当時の人たちにとっては神様みたいに見えるだろうって。でも、それは背景になっている時代が違うだけで、その人の本当の能力じゃない。だからそれはフェアじゃない、ゲームでいうならチートみたいなものだって言うのさ。僕はちんぷんかんぷんだったが、『それでは、おまえは未来から来たとでも言うのか?』と、半ばジョークで言ったんだ。彼は『まさか!』と、笑った。僕もアーディス流のジョークだと思って、それ以上考えなかった。要は、その気じゃないということさ」
「エアリィは時たま、妙なことを言っていたからなあ」僕も思わず苦笑した。
「でも、義兄さん。貴方は……その……ステュアート博士の再婚当初は、人に心を開かなかったって言っていましたよね。でも、今はとても良い方だと思います。エアリィとも最初はひどく仲が悪かったそうですが、僕が知っている限り、あなた方の仲は悪くなかったですよね。よく僕らのコンサートのバックステージにもいらしてましたし、彼があなたの下宿に遊びに行って、そんな話をしたくらいですから。いつ頃からなんですか? 貴方の人間不信が治って、彼との関係が今のように改善されたのは?」
「僕が十五くらいの頃だったかな。父と継母が結婚して二年ほどたった頃だ」
 アランは僕を見、かすかに苦笑を浮かべた。
「小さな天使のような妹たちと、僕の人格を尊重してくれつつも、気にかけてくれた継母と、そしてどれだけはねつけても意地悪をしても、その時には怒ったり気分を害したりしながら、それでもこんな僕を兄弟として、オープンに無邪気に、好きでいようとしてくれた継弟と、彼らの『家族』の力が、僕の心の氷を、徐々に溶かしていったのだろうと思う。僕が自分の変化に気づいたのは、妹たちが生まれた翌年、アーディスがその当時の野球監督とのトラブルに巻き込まれた時だった。僕は普段、学校には行かない。ギフテッドとして、特別なスクールに、月に二、三度行っているだけだった。でもその時には、小腹がすいて、スーパーに買い物に行っていた。そう、僕はあまり、みなと一緒に食事をしなかったんだ。出来合いのサンドイッチなんかを食べて、勝手にやっていた。本当に、かわいげのない継子だったと思う、継母にとっては。それで、その時も買い物に行って、家に帰ってきた時、そいつが彼の手を引っ張って、強引に車に乗せようとしていた。僕は、最初は放っておこうと思ったが、出来なかった。彼は真っ青になって、震えていた。たぶんここで見捨てたら、僕の残る生涯、その表情に悩まされそうだったから、僕はそいつに向かって言った。弟に何をするんだって。思わずそう口から出たんだ。その男は驚いたようで、その隙にアーディスはそいつの手を振りほどいて、こっちに来たから、僕はとっさに彼を後ろにかばった。その男は舌打ちをし、馬鹿にしたように言ったがね。『おやおや、本当に兄弟なのかい。まったく似ていないね』と。だから僕は言い返した。『血はつながっていないからね。僕らは連れ子同士だから。でも彼は僕の弟だと思っている』と。その男が行った後、アーディスは僕に抱きついてきて、泣き出した。『アラン継兄さん! ありがとうー!』と。僕は……そうだな、そこで突き放すほど人でなしにはなれず、降参することにしたんだ」
「ああ、そういえばその話は、彼からも聞いたことがあります。すごく感激したって」
「そう。あの事件が僕らのターニングポイントだった。それからだ。僕が新しい家族と打ち解けられるようになったのは。妹たちも最初は、僕にはあまり懐いているとは言えなかったが、アーディスと一緒に、妹たちと遊んでやったりするうちに、彼女たちも多少は懐いてきてくれた。僕はアーディスに引っ張られて、彼の友達、『ローディ・ギャングス』の仲間入りも出来た。トニー、エリック、ジョーダン、フィル、それにパティとメアリ。彼らはみな良い奴らで、僕をも受け入れてくれた。彼の友達は年上ばかりだから、僕も年齢的には、それほど問題はなかったんだろうね。僕らはあまり自分と同い年の集団にいたことがないんだ。同級生はみな年上で、年齢とともに、ますますそのギャップは開いていくからね」
「天才の世界では、そうなるだろうな……飛び級やらがあるから」ジョセフが頷く。
「あの頃が、僕の生涯で最良の時代だった。僕には子供の頃から、友達というものがいなかった。友達と遊んだこともなかった。ただ勉強だけが生きがいのようなものだったんだ。そんな僕に、新しい世界が開けた。大学があったので僕はボストンにいたが、週末や長い休みの時に帰ってきて、地元の友達と遊んだ。野球やフットボールを見に行ったり、ストリートバスケやスケートをしたり、公園で踊ったり。まあ、僕はスポーツも踊りも苦手だが、見ているだけで楽しかった。誰かの家や公園でお茶を飲んで話したり、ゲームをしたり、勉強会をしたり……アーディスも僕も、『天才って奴は、教えるのは下手だな』と、よくからかわれたが。そして家に帰ると、若い継母が笑顔で迎えてくれ、小さな妹たちが駆け寄ってきた、あの数年間が。だが事故で継母とメイベルが死んで、父は招聘されてアーディスとエステルを連れ、トロントへ移った。僕はその時、もうすでにMITの大学院にいたから、そのままボストンに残り、僕はまた一人になった」
 アランは遠くを見るような目で、ふっとため息をついた。
「僕は孤独には慣れていると思った。また勉強に集中すれば良いと。だが一度人と触れ合う幸福を知ってしまうと、よけいに辛く感じるものだ。長期休暇で家に帰っている時だけが、唯一の救いだった。だからその一年後、アーディスからトロント大学の特別推薦をクラスメイトに譲った、その子は家の事情でどうしても地元から通う必要があったから、と聞かされた時、僕は言った。馬鹿だな、お人よしにも程がある。そんな土壇場で推薦を譲ったら、特別枠で他のところへ行くのは難しいぞ。もうほとんど締め切っているだろうから、と。だが、五月半ばになって、ふと思い出した。その年のMITの特待枠が、まだ空席だったことを。それに、祖母が亡くなってミリセント伯母がもう一度家に来るなら、アーディスは家を離れた方が気楽だろうとも思い、僕は言ったんだ。それならMITに来ないか。五月中に書類を送れば、最終選考に間に合う。おまえの成績なら、十分入れると。彼はそうすると言い、僕は嬉しかったんだが……そう、その時の僕にとって、そして今も、アーディスはもっとも心を許せる人間だったから、彼がそばに来てくれれば寂しくない。それに彼は社交的な性格で、すぐに友達を作るから、間接的にその人たちとも知り合える。ロードアイランド時代のように、そう思ったんだ。だが……まあ、土壇場で蹴られたのは、知ってのとおりだ。あの時ほど落胆したことはなかった」
「すみません」僕は思わず謝った。
「まあ、仕方がないのだろう。書類を送る前だったから、高校にも大学側にもダメージはないし、僕の個人的な事情だけだからね。彼には早く独立したいという思いがあったようだ。父が義理の仲で、母はもういない、そんな事情の中だから、父に自分の扶養を負わせるのは遠慮があったのだろう。父は法的に後見人となっていて、成人するまで自分の保護下に入れるのは当然と考えていたし、ミリセント伯母にしても、そのつもりでいたようだがね。まあ、彼女は一見厳しいように見えるが、実は面倒見はいい人なんだ。だが、アーディスの側からしたら、気になったのだろうし、僕も同じ立場だったら、たぶんそう思うだろう。仮に父が死んで継母が残ったら、と思うとね、よくわかるんだ。だから彼はハイスクールでも完全奨学生で、テキストすら買わなかった。友達に見せてもらえば事足りたからね。大学も学費の要らない特待生でいくつもりでいたようだが、もっと早くに完全独立できる機会がきたから、不安定な業界ではあるものの、そっちへ行ったのだろう。それがわかっていたから、僕も何も言えなかった」
「そうなんですか……」
 僕は頷いた。自分はあの時、親からの反発ばかりが気になった。たぶんロビンやジョージ、ミックもそうだろう。おそらく僕らとは対極にあるだろう、エアリィの環境の特殊さや彼の想いには――だから彼はPCもCDプレイヤーもゲーム機も持たず、テキストも買わずにいたのか。あの最初の一年間は――僕は思い至らなかった。すべて自分を基準に考えていた。お坊ちゃん育ちと言われるわけだ。
「僕はアイスキャッスルへ来た時、なんとなく嬉しかった。父とエステルと三人で、一緒にどこかへ旅行する、というのは初めてだったからね。そもそも僕は、父と一緒にどこかへ行った記憶がない。向こうではアーディスとも合流できるし、プロヴィデンスの友達も来るという。最初は三日だけのつもりが、こんなことになったが。まあ、いろいろ不自由ではあったが、実は僕は、それほどいやではなかった。ロードアイランドの頃に、少しだけ戻ったような気がした。父と一緒に研究して、父をとても身近に感じることも出来た。しかし、アイスキャッスルでアーディスが死に、研究半ばで父が死に、そして今、エステルが……僕の唯一の家族、心を許せる人間たちが、すべて逝ってしまった。もう本当に、何もなくなったような気がする。甥や姪は生まれたが、僕はどうも子供の扱いがわからなくて、苦手なんだ。妹たちにだって、僕一人では、ほとんど何もしなかったからね。一度エステルと二人でマインズデールに行った時も、僕は何を話していいかわからず、自分からは話しかけなかった。でもエステルは良くしゃべってくれたから、彼女の話を聞いているだけで、楽しかったがね。その妹も、もういない。今、僕に残ったのは、研究だけだ」
「友達が、まだいるじゃないか。その頃の友達が、二人残っているだろう?」
 ジョセフがいくぶん慰め気味に言った。
「ああ、トニーとパティがね。エリックとジョーダンはここへ来る時の先発隊で行ったせいか、二、三年前に亡くなってしまったが。そういえば、先発隊の人は、ほとんど今は誰もいないね。やっぱりそれだけ大変だったんだろうと思う。だが、それはともかく、僕は女性が苦手だ。パティとも、それにここには来なかったがメアリとも、実際ほとんど言葉を交わしたことがない。何を言っていいか、わからないんだ。話しかけられれば返事はするが、それだけで終わってしまう。トニーは会えば言葉はかけてくれるが、僕が研究三昧になっている間に、他に多くの友達を作ってしまったようだよ。彼は元々気さくな奴だからね」アランは自嘲気味に笑った。
「そうか……申し訳なかったな」ジョセフが言い、僕も頷く。
「それは君も同じだろう、ジョセフ。まあ、君は僕より、人付き合いはいいが」
「そうだな。僕は君のような天才じゃない。だからその分、普通なんだろう。でもな、アラン。忘れてないか? 君には僕が、まだいるぞ。君の家族のかわりには到底なれないが、ここへ来てずっと研究パートナーだったんだから、もうそろそろ友達と認めてくれないか。僕は君より五歳ほど上だが、君はいつも年上の中にいたのだから、その辺は問題ないだろう」ジョセフは肩に手をかけ、にっと笑った。
「……そうだな」アランは少し驚いたように一、二度瞬きをした後、兄を見た。
「それに、君には義理の弟の、ジャスティンもいるぞ。エステルちゃんを失くして悲しいのは、君もそうだが、彼もそうだ。お互い共通の悲しみを持っているのだから、わかり合えることも出来るはずだ。それに彼も君と同様、いや、君よりは多少表面的には社交的だが、本当の友達はあまり多くない。それで二人しか親友がいなかったが、そのうちの一人は君の継弟さんだ。そういう点、君たちはもっと分かり合えるはずだと思うぞ」
「あ……あ、たしかに」
 アランは僕を見た。僕も少し照れを覚えながら、改めて義兄を見た。
「さっきはひどいことを言って、すまなかったね」
「いいんですよ、義兄さん。今日はいろいろ話が出来て、嬉しかったです。これからも、時々こうして話せればいいですね」僕は義兄の手を取った。
「ありがとう」
 アランは頷いて立ち上がり、研究室へ帰っていった。ジョセフも僕の肩をぽんと叩くと、あとへ続いた。
 
 一人になった僕は、ふっとため息をついた。現実が、再び戻ってきた。兄たちがいて、いろいろ話をしていた間は、悲しみを紛らわすことができた。だが一人になると、再びそれはあふれ出してくる。周りを取り巻く静寂に、圧倒されそうになる。アデレードは子供たちを連れ、もう寝てしまったようだ。ロブとレオナも兄たちが来た時に部屋に引っ込み、やはり眠ってしまったのだろう。
 時計の音だけが響くリビングで、僕はソファに座り続けた。自分の部屋に入るのは、怖かった。
 思いはいつしか、幸せだった時代に飛んでいった。僕の最良の時代は、ステラと二度目の仲直りをし、バンドが再始動したあの時から、世界が終わるまでの五年間。あの頃が、人生の至福の時だった。それは、かつて在りし日の至福だ。世界が壊れてからは、悲しみばかりが続いた。しかし、エステルと結婚してからの一年半は、幸せだった。この世界の中での、歓びの時だった。あまりに短く、せつない。僕はソファに突っ伏した。悲しみが、突然堰を切ったように溢れてきて、涙が止まらなかった。
 長い耐乏生活の中でも明るさと希望を失わなかった僕の若い妻は、結婚してから一年半の間、常に僕の心の光明であり、支えだった。でもその幸せの期間は、わずか十八ヵ月。短い結婚生活の中で多くの美しい思い出を残して、彼女は二人の我が子と引き替えに逝ってしまった。ステラの時とは違う、しかし激しい悲しみが、胸に吹き荒れている。
 でも、僕はすべてを失ったわけではない。一年半の幸福な日々の思い出と、彼女が生命をかけて残してくれた二人のわが子がいる。エヴェリーナとアドルファス――二人が病院から帰ってきて、僕の部屋のベビーベッドに並んで寝かされた時、僕は喜びの感情が急速に胸の中を満たしていくのを感じた。そう、この部屋にいるのは、僕だけじゃない。僕とエステルの分身、彼女の命を引き継ぐ二人のわが子、エヴェリーナとアドルファスがいる。
 僕は薄いピンクの産着に包まれた娘をベッドから抱き上げ、そっと胸に抱えた。クリスを初めて抱いた時と同じ、たしかな命の重みと息吹を感じた。そしてあの時とは違い、もう未来に壁はない。僕は娘に頬をくっつけた後、そっとベッドに寝かせ、白い産着に包まれた息子を抱き上げた。同じく、そっと頬を寄せる。この子たちには、未来の枷はない。今の環境はあまり恵まれているとは言えないけれど、それでも広がる未来がある。
 希望がよみがえってくるのを感じた。妻はこの子たちを僕に残してくれた。僕は一人ぼっちではない。愛するものが残されている。この子たちが生きているかぎり、エステルもまた生きていると言える。彼女の生命は子供の中に受け継がれ、決して消えることはないだろう。
 僕はこの時、未来のエヴェリーナの手紙に、母親の記述がなかった理由がわかった気がした。エヴェリーナの母は、ステラではなかった。エステルだ。でも、その時十七歳だった僕に、その事実は混乱と驚きをもたらすだけだっただろう。その当時、わずか六歳だったエステルに対し、今のように素直に向き合えなかったかもしれない。だから、エヴェリーナは母の記述を書かなかったのかもしれない。その母が、自分が生まれた数時間後に、世を去ってしまったことも。
 僕は娘に感謝した。未来の事実は、時にはあまりに残酷なのだ。だが一方で、幸いな点もある。少なくとも僕は、娘が五九歳までの寿命を得られること、おそらくは幸福な結婚をし、子供にも恵まれて、やがてはゴールドマン博士につながる子孫を残すことを、知ることが出来たのだから。
 エヴェリーナ。僕の初めての娘。未来世界で知った、約束の子。そしてアドルファス。一時は失ったかと覚悟した奇跡の息子も、また約束の子だった。この子が初めて大きな青い目を開いて僕を見た時、思わず驚きに打たれて、子供を取り落としそうになったほどだ。その目は、かつて『透明な蒼の国』で会った、僕の幻の子供――僕とステラの二番目の子供ルークが、あの世界で僕を見上げたあの目、そのものだった。
『また、パパの息子になって生まれてくるよ』
 あの子はそう言った。そして約束は果たされたのだ。あの子が『パパとママの息子になって生まれてくる』と言わなかったわけもわかった。僕は子供のミドルネームに、この幻の息子の名前をつけた。アドルファス・ルーク・ローリングスと。
 エヴェリーナとアドルファス――この子たちは、僕に残された貴重な宝物だ。この子たちがいればこれからの淋しい一人旅をも、希望を持って生きていける。


 それから三年の月日が流れ、世界はゆっくりと再生していった。万能ロボットはステュアート博士の死後も、順調に開発されている。博士の死後四ヶ月のちに完成した『生産モデル』は、簡単な工作をしたり、加工したりして、衣服や小物、箱や棚、机、椅子、簡易ベッドなどを作り、僕らに供給してくれている。それから二年後に、第四号の『医療モデル』が完成した。これはカルテに入力された薬の調達や調合、そして血液分析やX線写真などを読み取ったりする機能を持つ。採血や注射、点滴もする。文字通り、医療の補助となるロボットだ。そしてつい最近、第五号『汎用モデル』が完成した。これは入れられたプログラムカートリッジを変えれば、いろいろな用途に使える。文字通り、万能ロボットだ。その他に〇号と呼ばれる『複製モデル』が、何台かある。これは一号『運搬モデル』と二号『生活維持モデル』の間に完成したもので、他のロボットたちを、最初に組み立てられた一台をもとにして、その通りに組み立てるモデルである。
 開発の中心になっていたステュアート博士が三号モデルの完成間近で亡くなってからは、息子のアランが後を継いで設計とプログラミングをし、ジョセフは主にハードウェアを担当して、実際の組み立てをしていた。時々材料のスチールやセラミックなどが不足して、それを調達してくるまで何ヵ月か研究が止まってしまったり、テストに失敗して何台かのモデルをスクラップにしてしまったりというようなトラブルはあったらしいが、彼らはそれにもめげず日夜努力を続け、大勢の人たちの動作協力やその分野の専門知識協力も得て、精力的に研究を進めていた。
 そして今、全部で二四台のロボットたちが、街で活躍している。その光景は未来世界を思い起させる。あの時代のモデルと違って、今のロボットは音声機能がついていない。そして、ものによってはカメラ越しの遠隔操作を必要とする。その違いがあるだけだ。あの時代のロボット文明のプロトタイプがここにあった。僕らには過去に思える、これからずっと先の未来世界の基礎が今ここに出来上がりつつあるという事実を考えた時、あらためて時間の環の不思議さを感じた。
 僕の義兄に当たるアラン・ステュアートは最後の五号モデル完成間際に、白血病で倒れた。でも急性期が過ぎて起き上がれるようになると、病院に研究材料を持ち込んで再び働き始めていた。今、彼は研究室に戻り、汎用ロボット用のさまざまなカートリッジに積むプログラミングのために、すべての力を注いでいるようだ。それが終わったら、あのファイルに記された最後のプロジェクト――ロボットではなく、思考回路と統制機能を持った第四世代のスーパーコンピュータ、その設計に取り組まなければならない。先はまだ長いと、ジョセフがこの間言っていた。一般の中から元コンピュータ・プログラマーだった人たちが二十人ほど協力して、プログラミング作業にも入っているという。これがすべて完成すれば、新世界のための、科学復興の基礎は完結される。
 アランは今寛解状態だが、再び急性増悪が起きる可能性が高く、そうなったら助からないだろうと、若い医師が言っていた。それまでに、間に合えばいいが。でも、たとえ間に合わなくとも、もうここまで完成させているのだから、歴史に変動はないのだろう。僕は彼の強い精神力に感嘆せずにはいられない。世界を再建させることが出来たのはあなたの、それから博士とジョセフのおかげだ。でも未来では、始源の三賢者と崇められているあなたたちが、実はこんな苦難の道を歩んでいたことを、未来の人々は知っているだろうか。

 この九月で三才になるエヴェリーナとアドルファスは(じきにこの長い名前は、エヴィーとアドルと、縮めて呼ばれるようになった)共に、元気に日々を過ごしていた。二人は何をするにも、どこへ行くにも一緒だ。今も二人は髪を風になぶらせ、頬を真っ赤にしながら、追いかけっこをしている。街の放射線量も薄まった今では、五月から九月までの間、午前十時から十二時までのあいだだけは、外で遊んでいいという決まりが出来ていたのだ。
 子供たちは初めて触れる外気と太陽のもとで、生き生きと遊んでいた。風と光の中で戯れる我が子たち。ピンク色の頬と、光を受けて輝く髪。エヴェリーナの髪は僕と同じ少し金色がかった褐色で、アドルファスはエステル譲りの金髪だ。二人は双子だが、似ていない。エヴェリーナは僕の血が強いようで、髪の色も目の色も、髪の質も肌の色も僕に似ている。ステラが昔気に入っていたアンティックドールのような、お人形さん的なかわいらしさはないが、別種の愛嬌と愛らしさがある。アドルファスはエステルに似ている。髪の色も質も、そして肌や目の色、顔の造作も、屈託のない笑顔も。
 二人のほかにも、数人の子供たちが一緒に遊んでいた。
「こらあ! あんまり遠くへ行くなよ!!」
 子供たちの中ではリーダー役の、八才のアールがそう叫んでいる。肩までのびた銀色の巻き毛が風に吹きなびいて輝き、その中に鮮やかな青い髪がひと房、揺れている。双子の妹のオーロラは、時には兄を補佐するサブリーダー、時にはもっと小さな子供たちと一緒に、駆け回っている。今は後者の方だ。彼女は小さな子供たちの先頭に立って走っていた。銀色の長い髪が風になびき、兄とは反対側にある青い髪束がラインのように揺れる。その姿は、八歳という年齢以上に優美だ。
 この子たちは去年、母親を亡くして孤児になった。アデレードは三ヶ月の闘病生活の後、去年の冬に亡くなったのだ。悪性リンパ腫だった。彼女は病院に行くことを拒み、痛みのひどい時だけ点滴を打ちながら、じっと自室のベッドに寝ていた。傍らの二段ベッドで寝起きしているアールとオーロラ、そして壁に貼った夫のポスターに見守られながら、アデレード・ミランダ・ローゼンスタイナーは三七歳で世を去ったが、穏やかな笑みを浮かべたその死に顔に、なお美しさを留めていた。
 彼女には、エヴェリーナとアドルファスの赤ん坊時代、言葉にできないほどお世話になった。アデレードは四人の子供を育てた経験がある。そのアドバイスは、慣れない育児に奮闘している僕にとって、この上ない助けだった。ミルクの調合の仕方、おむつの替え方、泣き声の違いと、赤ん坊のなだめ方――そのたびに僕は彼女の教えを仰ぎ、彼女もまたにこやかに教え、時には手伝ってくれていたのだ。小さなアールとオーロラも、赤ん坊たちの世話をしようとしてくれていた。おもちゃであやしたり、新しいおむつを持ってきてくれたり。そう、本当にローゼンスタイナー親子には助けられた。
 アデレードの生涯最後の八年間は、母親としてのみにすべてを捧げたものだったが、その顔には穏やかな安らぎがやどっていた。僕は彼女に、最後に『今まで本当にありがとう』と言った。彼女はそれに対し、最後まで微笑もうとしてくれた。彼女は僕にとって、育児アドバイザーであり、戦友のようなものでもあった。お互いに、先立たれたパートナーが残した子供たちの養育を生きがいにしていたのだから、立場も似ている。ただお互いにそのパートナーの存在ゆえに、特に彼女の方はそうだったが、それだけの関係――だから、“戦友”なのだろう。そしてアデレードはシルバースフィア外の共同墓地に、壁に貼ってあった夫のポスターとともに葬られた。
 彼女がすべての希望を託した子供たちは、今や、シルバースフィアの子供たちの中核に成長していた。エヴィーとアドルもすっかり信頼しきった様子で、彼らの言うことはなんでもきく。そう、アールとオーロラには、今後もきっと子供たちがお世話になるのだろう。
 シルバースフィアの子供たち――今や三百人に届きそうな数になった小さな第二世代たちは、僕たちみんなの希望の光だ。最初に生まれた子供たちが七歳になった去年から、学校も再開された。ナーサリースクールの施設とコミュニティホールを利用し、レオナや一般の有志が先生を務める。現在、初級課程の生徒は四五、六人で、二クラスに分かれ、一人一人カリキュラムの進み具合は違う。その下に三歳から六歳までの子供を集めたプレスクールがある。ここには百人ほどの子が、六つのグループに分かれている。エヴィーとアドルも秋から入る予定だ。子供たちの笑い声、はしゃぐ声、楽しげなさざめき――再び甦った希望は、これからの未来へ、新世界へとつながる光だ。




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