▲2018映画鑑賞の部屋

キングスマン ゴールデン・サークル(30.1.6) 
監督  マシュー・ヴォーン 
出演  コリン・ファース  ジュリアン・ムーア  タロン・エガートン  マーク・ストロング  ハル・ベリー  エルトン・ジョン  チャニング・テイタム  ジェフ・ブリッジス  ペドロ・パスカル  エドワード・ホルクロフト  ソフィー・クックソン 
 シリーズ第2弾です。
 エグジーは前作でエージェントの座を争ったチャーリーに襲われる。返り討ちにしたかと思いきや、情報をハッキングされてしまい、それにより、各地のキングスマンの拠点がミサイルにより壊滅的打撃を受けてしまう。犯人はカンボジアの奥地に住む、かなりサイコな麻薬組織・ゴールデン・サークルのボス・ポピー。彼女は自分が売った麻薬にウィルスを混ぜ、特効薬を手にアメリカ大統領を脅す。エグジーは生き残ったマーリンとともに、キングスマンが機能しなくなった時に備えて準備された作戦に従い、金庫を開けると、そこにはアメリカのケンタッキー州の蒸留所が記された1本のバーボンのボトルがあった。二人はアメリカに渡り、蒸留所に向かう・・・。
 どこかショーン・コネリーが演じていた昔の007の匂いを感じさせてくれるこの作品、主人公エグジーの師匠であるハリーが前作で死んでしまったので、まさか続編が製作されるとは思いもしませんでした。エグジー役で映画初主演をしたタロン・エガートンが独りでこの作品を背負うには荷が重すぎます。やっぱり、ハリー役のコリン・ファースがいなくては!と思ったら、驚いたことに生き返ってしまいました。といってもゾンビになったわけではなく、アメリカの同盟関係にある組織・ステイツマンによって、助けられていたというもの。脳に銃弾打ち込まれて死なないの!なんて野暮なことは考えずに、ハリーの生還を喜びましょう。
 キングスマンのイギリス紳士らしさに対し、ステイツマンは西部劇のガンマンという出で立ち。この対比のおもしろさも今回の作品は狙ったでしょうが、逆にキングスマンらしさがあまり出ていないという感じがします。
 紳士の出で立ちで、007風な武器を持ち、かなりグロい殺し方をするのは前作同様。前作の教会の中での銃撃戦ほどのインパクトあるシーンはありませんでしたが、人間をミンチにしてしまうというのも凄いです。ましてや、その肉でハンバーガーを作って食べるというのはあまりに悪趣味。
 前作の酒場のシーンの再現かと思ったら、ちょっとずっこけてしまうという笑いもあって、飽きさせません。シリーズ第3弾が特たれます。 
嘘を愛する女(30.1.23) 
監督  中江和仁 
出演  長澤まさみ  高橋一生  吉田鋼太郎  黒木瞳  奥貫薫  津嘉山正種  DAIGO  川栄李奈  野波真帆  嶋田久作 
 東日本大震災の日、帰宅途中で具合の悪くなった川原由加利は、通りすがりの小出桔平に助けられる。1年後、偶然出会った2人は一緒に暮らすようになる。ある日、田舎から出てくる由加利の母親に会わすために、待ち合わせをしたレストランに桔平は姿を現さず、真夜中尋ねてきた刑事から、桔平がくも膜下出血で意識不明のまま病院に運び込まれたが、持っていた免許証は住所以外名前もデタラメで偽造されたものだと聞かされる。由加利は桔平の素性を突き止めようと探偵を雇い調べ始める・・・。
 あんなに仕事ができる由加利が簡単に一目惚れして、相手がどういう人物かもよくわからないうちに一緒に暮らし始めてしまうのは、仕事ができるのと恋愛とは別だと言われればそうなんでしょうが、でも、なんだかなぁ~という気がします。それに5年も同棲していて相手の嘘に気づかないのかなぁとか、偽造免許証はどうやって手に入れたんだよとか突っ込みを入れたくなります。
 予告編を観て、ミステリーだと思って期待して観に行ったのですが、そこは見事に騙されました。ミステリーではありません。名前を偽る男に、他人の郵便箱を漁る女という予告編の映像では、もっとサスペンスタッチのストーリーだと思ったのですが・・・。まさか素性を偽っていた恋人が意識不明の寝たきり状態という中で主人公がその素性を探る話だとは思いもしませんでした。男はある事情(ネタバレになるので書くことができませんが、途中でおおまかには想像できてしまいます。)があって自分自身を捨てた男というだけ。そもそも、あんな事情がある男がなぜ由加利と暮らそうと決心したのかの理由がよくわかりませんでした。
 由加利を演じるのは長澤まさみさん。キャリアウーマンでプライド高そうな由加利役は合っていました。ちょっと、以前よりふっくらしてきましたね。桔平役を演じたのは高橋一生さんですが、今人気だから使ったというだけという感じがしないでもありません。川栄李奈さんの役柄は必要なのかと思いますし、あのちょい役で黒木瞳さんはよく出演してくれたなあとも思います。 
祈りの幕が下りる時(30.1.27)
監督  福澤克雄
出演  阿部寛  松嶋菜々子  溝端淳平  田中麗奈  小日向文世  伊藤蘭  烏丸せつ子  キムラ緑子  山崎努  春風亭昇太  桜田ひより  中島ひろ子  音尾琢真  及川光博  飯豊まりえ  上杉祥三
 東野圭吾さんの同名作品の映画化です。東野作品の中では加賀恭一郎シリーズの1作にあたります。阿部寛さんを加賀恭一郎役としてテレビの連続ドラマ「新参者」から始まった映像作品も前作の「麒麟の翼」に続く今回の映画化で終了ということのようです。
 葛飾区小菅のアパートの一室で腐乱した殺害死体が発見される。被害者は滋賀の清掃会社で働いていた女性だったが、東京に旅行に行くと言ったまま行方不明となっていた。アパートの住人も行方不明となっており、住人と女性との接点も見つからず、捜査は難航する。やがて、女性が中学時代の同級生で演出家の浅居博美を訪ねて東京に出てきたことが明らかになるが・・・。
 事件の謎が明らかになっていく中で、シリーズでこれまで描かれた加賀自身の父との確執、母の失踪、加賀が日本橋署から異動しない理由等々が語られていく重要な作品となっています。
 原作を読んだときには思いもしなかったのですが、映像化されてみると、これは東野版の「砂の器」じやないかという印象を強く感じました(もちろん「砂の器」には到底及びませんが。)。別れたくないのに別れなければならない辛さ、どこにいても子を思い、親を思う親子の絆の強さ等々演じる小日向文世さんと桜田ひよりさんの演技に、ついつい胸がジ~ンと熱くなってきてしまいました。
 原作の加賀と阿部さん演じる映像作品の加賀のイメージが違うなあと思うのですが、映像作品の加賀に阿部さんはピッタリです。
 エンドロールには、シリーズ最後を飾ってか、日本橋界隈を歩く加賀とともに、テレビドラマに登場した杏さん、香川照之さん、恵俊彰さんがカメオ出演しています。
不能犯(30.2.1) 
監督  白石晃士 
出演  松坂桃李  沢尻エリカ  新田真剣佑  間宮祥太朗  矢田亜希子  安田顕  小林稔侍  芦名星  真野恵里菜  テット・ワダ  菅谷哲也  岡崎紗恵  忍成修吾  水上剣星  水上京香  今野浩喜  堀田茜 
(ネタバレあり)
 「グランドジャンプ」に連載されているマンガが原作だそうです(未読です)。
 都内で不審死が連続して起こる。状況的には殺人ではないが、現場では常に黒いスーツの男が目撃されていた。彼に任意同行を求めて、聴取に当たった多田と夜目だったが、その夜、夜目が自分の手首を切って風呂場で亡くなってしまう・・・。
 「不能犯]という言葉は、大学時代に刑法総論の授業で習いました。行為者が犯罪の実現を意図して実行に着手したが、その行為からは結果の発生は到底不可能な場合をいうそうです。この映画の中での、おもちゃのナイフで腹をつかれたことを、ナイフで刺されたと思って心筋梗塞を起こしても、そのことをもって殺人罪にはならない(暴行くらいか)ということでしょうか。
 松坂桃李くん演じる宇相吹が、相手をマインドコントロールして殺していく(?)のですが、その正体が何かは最後まで明らかにされません。まったくわからぬまま映画は終わります。悪魔だったらナイフで刺されても傷つくことはないでしょうし、かといって人間にしては自由自在にいろいろなところに出没します。
 多田刑事だけが、宇相吹にコントロールされないのですが、それはなぜかも説明されません。なんだか、ご都合主義です。
 多田刑事を演じる沢尻エリカさん、久し振りにスクリーンで見ました。綺麗ですが、この役が合っていたかといえば、個人的にはいまひとつ。あの世間を騒がした問題以降、なんだか迷走中です。
 松坂桃李くんの口角を上げた嫌らしい笑いは、ファンをなくすんじゃないかなあと心配になります。 
羊の木(30.2.3) 
監督  吉田大八 
出演  錦戸亮  松田龍平  木村文乃  北村一輝  優香  市川実日子  水澤紳吾  田中泯  中村有志  安藤玉恵  細田善彦  北見敏之  松尾諭  山口美也子  鈴木晋介  深水三章 
(ネタバレあり)
 刑務所の経費削減と過疎対策という理由から、受刑者を仮釈放させて過疎で悩む自治体が面倒をみるという国家的プロジェクトの実施が始まる。ブロジェクトを受け入れることとした魚深市にも6人の元殺人犯がやってきて、市役所職員の月末が彼らを担当することとなる。やがて、6人の存在は静かだった魚深市の人々の間にさざ波を起こすようになる・・・。
 題名の「羊の木」は、パンフレットによると「東タタール旅行記」によるものですが、映画の中では元死刑囚の一人、栗本清美が海岸でのゴミ拾い中に、砂の中から「羊の木」の描かれた古い缶の蓋を見つけて部屋に持ち帰っただけ。それがどうこの話につながるのかはまったく説明されません。
 予告編を見たときには、この6人の元殺人犯が何か事件を起こすサスペンスかなあと大いに期待して観に行ったのですが、確かに事件を起こす者もいるものの、それは少数派。ほとんどが、自分の元殺人犯という立場に苦しんでいる様子が描かれます。この点は、サスペンスよりも人間ドラマです。
 「のろろ祭り」というのも、なんだかなぁという感じです。いわゆる奇祭ということなんでしょうが、シンガポールのマーライオンみたいな、あんな魚の頭のような大きな像を作りますかねえ。不気味なだけで市のセンスが疑われます。ラストの像の役割もご都合主義ですし。
 脚本もいい加減です。ラストで月末と文が月末の家で待ち合わせを約束しますが、職場からバイクで向かった文が一向に到着しません。その間、月末は眠ってもいるのに。月末の家って、そんなに遠くにあるのでしょうか。また、月末は文が来ることになっているのに、かまわずある人物と出かけてしまいます。「おいおい、文が来るだろう!」と言いたくなります。その上、乗った車のボンネットがぼこぼこになっているのにまったく気にしません。「アホか、お前は!」と言いたくなるような月末の行動に呆れるばかりです。
 ラストには、トンデモナイものが海に落下します。この映画は「トンデモ映画か!」と言いたくなってしまいます。現在までのところの今年のワースト1映画です。 
スリー・ビルボード(30.2.4) 
監督  マーティン・マクドナー   
出演  フランシス・マクドーマンド  ウディ・ハレルソン  サム・ロックウェル  ピーター・ディンクレイジ  ジョン・ホークス  ルーカス・ヘッジス  アビー・コーニッシュ 
 7か月前に娘がレイプされ、焼き殺されたミルドレッドは、捜査が進まないのに憤りを感じ、抗議のために道路沿いの3枚の広告看板に警察の捜査と警察署長を非難するメッセージを掲載する。警察署長が癌で余命幾ばくもないことを知っている町の人々はミルドレッドを批判するが・・・。
 3月に発表されるアカデミー賞の作品賞、主演女優賞、助演男優賞など6部門にノミネートされている作品です。
 車を賃して欲しいとの娘の頼みを断り、「レイプされても知らないから」と出て行った娘が殺されるなんて、親としては自分を責めても責め足りないでしょうね。そんなミルドレッドが看板を設置した気持ちも親としてはよく分かります。何かをせずにはいられなかったのでしょう。
 ミルドレッドを演じたのはフランシス・マクドーマンド。頭にバンダナを巻き、常にツナギ姿が彼女の心の中の怒りを表しているようです。アカデミー賞主演女優賞ノミネートも当然という演技です。
 いつもは、あの怖い顔から悪役がお似合いのウディ・ハレルソンが、善人の警察署長・ウィロビーを演じているのは意外なところです。てっきり、ミルドレッドの行動に対し、手厳しい仕返しをすると思ったのですが、激高することもなく冷静に対処します。町の人々が警察署長に同情するのも無理からぬところです。今回はいつものウディ・ハレルソンではありませんでした。

(ここからネタバレ)                           
 やけどを負ったウィロビーの部下、ディクソンが運び込まれた病室にいたのが、ディクソンが二階の窓から外へ投げ捨てたジョーンズ。ジョーンズがコップに入れたジュースにストローを入れて差し出すところは泣かせます。
 犯人らしき男を登場させ、心改めた元警官のディクソンの活躍で、「これで、ハッピーエンドだ!」と観客の気持ちを煽りながら、ハシゴを外されたのに唖然。そうであるなら、どうしてミルドレッドが働く店で男にあんな行動を取らせたのでしょうか。理解できません。唯一、この映画で納得できない点でした。 
マンハント(30.2.9) 
監督  ジョン・ウー 
出演  福山雅治  チャン・ハンユー  チー・ウェイ  ハ・ジウォン  國村隼  桜庭ななみ  竹中直人  倉田保昭  池内博之  アンジェルス・ウー  TAO  矢島健一  斎藤工  吉沢悠  田中圭  トクナガクニハル  ジョーナカムラ 
  ジョン・ウー監督が高倉健さん主演で1976年に公開された「君よ憤怒の河をわたれ」に惚れ込んで再映画化した作品です。
 製薬会社の顧問弁護士を務める国際弁護士のドゥ・チウは会社のパーティーのあった翌朝、社長秘書の女性の死体の横で目覚める。罠に嵌められたことに気づいた彼は大阪の街中に逃亡する。一方、ドゥ・チウを追う大阪府警捜査一課の警部・矢村は捜査を進める中で、事件に違和感を抱くようになる・・・。
 冒頭は、まるで昔の東映やくざ映画のような雰囲気で始まります。このとき、チャン・ハンユー演じるドゥ・チウが口ずさんでいた歌は、オリジナルの「君よ~」のテーマ曲だったようですし、そのあとのドゥ・チウと女殺し屋が言い合ったセリフもオリジナルにあったセリフだそうですから、ジョン・ウー監督の惚れ込みぶりがよくわかります。
 映画の印象をひとことでいえば破天荒な無国籍映画です。中国語を話す居酒屋の女性が突然着物を脱ぎ捨てて黒ずくめに変身し、やくざたちを撃ち殺すシーンから始まり、堂島川での水上バイクによる追撃シーンなどジョン・ウー監督らしい派手なアクションシーンが満載です。突っ込みどころも満載ですけど。
 矢村を演じた福山さんは可もなく不可もなく、相変わらずの福山さんです。ドゥ・チウを演じたチャン・ハンユーは、骨太の男前で困難をものともしない“男”という感じです。
 女性2人組の殺し屋の片方を演じているのが、監督の娘さん。よく似ています。
 俳優の台詞と映像がかなりの部分でズレていて(特に竹中直人さんの部分)、かなり気になりました。
今夜、ロマンス劇場で(30.2.16) 
監督  武内英樹 
出演  綾瀬はるか  坂口健太郎  本田翼  北村一輝  中尾明慶  石橋杏奈  山本浩司  柄本明  西岡徳馬  加藤剛  竹中直人  池田鉄洋  酒井敏也 
 物語は病院に入院する老人が映画の助監督だった頃に書いた脚本の内容を看護師に語るところから始まります。
 映画会社の助監督の牧野健司は近くの映画館「ロマンス劇場」の映写室で見つけたモノクロ映画のお姫様・美雪に一目惚れし、毎日のように映画館の上映終了後に映写機にかけて一人で見ていた。そんなある日、雷が落ち停電になった劇場で、健司の前にお姫様がス
クリーンから飛び出してきてしまう。その日から、健司のアパートでの二人の奇妙な同居生活が始まる。健司のことを「しもべ」と呼び、命令口調で話す美雪に戸惑いながらも、現実の存在となった美雪に更に惹かれていく健司。しかし、彼女にはある秘密があった・・・。
 映画を題材にしているため、様々な映画へのオマージュが見受けられます。スクリーンから俳優が飛び出してくるのはウディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」ですね。健司が一人スクリーンで映画を見るのは「ニュー・シネマ・パラダイス」でしょうか。ガラス越しにキスをするシーンは日本映画の「また逢う日まで」です。
 美雪を演じる綾瀬はるかさんのコメディエンヌぶりは健在。こうした役にピッタリですね。
 モノクロ映画のお姫様が現実世界での色の多さにびっくりするのですが、それを反映してか現実世界での美雪が色鮮やかなファッションを見せてくれます。男性はともかく、女性は楽しめるのではないでしょうか。
 果たして健司と美雪は結ばれるのか。それとも美雪は再びスクリーンの世界に帰ってしまうのか。ラストは涙なしでは見ることができません。こういう破天荒だけど心温まるファンタジーは大好きです。
 エンドロールに竹中直人さんの名前を見て、いったいどこに出演していたのだろうと思ったら、美雪が飛び出してくる映画の中の狸役でした。 
グレイテスト・ショーマン(30.2.17) 
監督  マイケル・グレイシー 
出演  ヒュー・ジャックマン  ザック・エフロン  ミシェル・ウィリアムズ  レベッカ・ファーガソン  ゼンデイヤ  キアラ・セトル   
 ヒュー・ジャックマン主演で実在の興行師、P・T・バーナムの人生を描いたミュージカルです。ヒュー・ジャックマンは「レ・ミゼラブル」でも歌を披露していますが、今回は見事な踊りも見せてくれます。
 バーナムは貧しい仕立屋の息子。金持ちの娘であるチャリティと恋仲になり彼女の親の反対を押し切って結婚をし、二人の娘に恵まれる。しかし、働いていた船会社が倒産し、バーナムは仕事を失ってしまう。彼は、借金をして、ギロチンや象やキリンの剥製を見せる博物館を開くが客はまったくこない。娘の「生きているものではなくては」という言葉にヒントを得たバーナムは、低身長の“親指トム将軍”や女性なのに髭が生えているレティなど、皆から疎んじられている人々を集めて興業を行うと、これが成功し、客が殺到する。上流階級からも認められたいという野望を持つバーナムは、上流階級出身で舞台劇のプロデューサーであるフィリップ・カーライルをパートナーとし、更にはヴィクトリア女王への謁見の際に知り合ったヨーロッパで人気のあるオペラ歌手・ジェニー・リンドの興業をうつことに奔走する。
 劇中で使用されるミュージカルナンバーを手掛けたのは昨年のアカデミー賞受賞作「ラ・ラ・ランド」も担当した人のようですが、個人的にはこちらのナンバーの方が好きです。
 その中では、自分たちの理解者であると思っていたバーナムが、上流階級と交際するようになり、自分たちを疎んじるようになったことを知ったレティたちが歌い踊る「THIS IS ME」が圧巻です。ミュージカルなので差別の問題を突き詰めて描いているわけではないのですが、彼らの怒りが龍もったこのナンバーを歌うシーンには圧倒されます。
 ヨーロッパの歌姫であるジェニー・リンドが歌うダンスナンバーではない「NEVER ENOUGH」も心にジーンときます。バーナムが心惹かれるのも無理ありません。歌っているのはジェニー・リンドを演じたレベッカ・ファーガソンではなく、ローレン・オルレッドという女性が歌っています。
 フィリップ・カーライルを演じたのは「ハイスクール・ミュージカル」等のザック・エフロンですから、彼にもっと踊るシーンがあってもよかったのではと思ってしまいました。 
ブラックパンサー(30.3.2) 
監督  ライアン・クーグラー 
出演  チャドウィック・ボーズマン  マイケル・B・ジョーダン  ルピタ・ニョンゴ  ダナイ・グリラ  マーティン・フリーマン  ダニエル・カルーヤ  レティーシャ・ライト  ウィンストン・デューク  アンジェラ・バセット  フォレスト・ウィティカー  アンディ・サーキス 
 「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」で初登場したマーベルコミックのヒーロー「ブラックパンサー」を描く作品です。
 各国からはアフリカの未開の国と思われているワガンダ王国は、実は王国に埋蔵される“ヴィブラニウム”という鉱石によって、高度な文明国を築いていることを隠していた。国王は漆黒のスーツを着て超人的な力を持つ「ブラックパンサー」として、ワガンダを守っていた。テロで亡くなった先代国王に代わり、新国王に即位したティ・チャラは、かつてヴィブラニウムをワガンダから盗んで逃げている武器商人のクロウを追って韓国へと向かう・・・。
 今回は、韓国で派手な力一チャイスシーン(このとき使用される車が日本のレクサスです。)でのアクションを見せたりしますが、ヒーローとしてのブラックパンサーの戦いよりは、ワガンダ王国の成り立ちや、国王がどう選ばれるのか、そしてその国王がどうやって“ブラックパンサー”となるのかが描かれていきます。そして、メインはワガンダ国王の座を巡る王家の血をひく者の争いです。
 ワガンダ国王の親衛隊がなぜか全員女性ですが、これがまた格好いいのなんのって。特に隊長であるオコエのアクションシーンは凄いです。
 武器商人のクロウを演じていたのは、アンディ・サーキスです。モーション・キャプチャーではない“本物”のアンディ・サーキスを見るのは久し振りです。 
15時17分、パリ行き(30.3.3) 
監督  クリント・イーストウッド 
出演  スペンサー・ストーン  アレック・スカラトス  アンソニー・サドラー  ジュディ・グリア  ジェナ・フィッシャー  トーマス・レノン  P・J・バノン  トニー・ヘイル 
 クリント・イーストウッド監督による「アメリカン・スナイパー」、「ハドソン川の奇跡」に続く、実話に基づいた作品です。
 スペンサー、アレク、アンソニーの3人は幼馴染み。 ヨーロッパ旅行を計画し、ローマ、ベネチア、ベルリンを経て、アムステルダムからパリに向かう高速列車に乗車する。同じ列車にはイスラム過激派の男が乗り込み、トイレで武装しテロを決行しようとしていた。列車内の騒動に気づいたスペンサーらは、テロリストに果敢に向かっていく・・・。
 実話の映画化というだけではなく、スペンサーら3人と事件に遭過した人たちが映画で自分自身の役を演じているというドキュメンタリーのような作品です。「素人芝居だろ」と観る前には思いましたが、そこはまったく素人を感じさせないほどの演技でした(演技というより、自分たちが行動したことをなぞったわけですが)。
 映画は上映時間が93分という最近の映画の中ではかなり短めです。その中で、3人の幼い頃の出会いとヨーロッパ旅行での事件とはまったく関係ない彼らが旅行を楽しむ様子を描いていきますので、テロ事件の場面はラストのほんの少しだけです。実話なので、派手なアクションシーンがあるわけではありません。
 実際の3人の勇気ある行動には拍手です。ただ、テロが起こったときに彼ら3人がどうして行動することができたのかを、少年時代からのことも描きながら明らかにしていく映画だと思うのですが、彼らの子ども時代の描き方では、単にサヴァイバルゲーム好きの子どもが大人になって軍隊に入り、軍隊で身につけた技能で事件を未然に防いだ話という以上の何かがあるという映画とは捉えられませんでした。ちょっと期待外れ。
 話の筋とは離れますが、スペンサーとアレクの母親が二人を非難する学校に対し、毅然と息子たちを守るところが凄いなあと感心しました。 
シェイプ・オブ・ウォーター(30.3.3) 
監督  ギレルモ・デル・トロ 
出演  サリー・ホーキンス  マイケル・シャノン  リチャード・ジェンキンス  マイケル・スタールバーグ  オクタヴィア・スペンサー  ダグ・ジョーンズ 
 第90回アカデミー賞作品賞・監督賞等4部門を受賞した作品です。ひとことで言えば、半漁人と人間の女性との愛の物語です。
 個人的には半漁人という存在にはトラウマがあります。幼い頃、夏祭りで学校の校庭の木に張られたスクリーンに上映された映画に登場した半漁人が怖くて怖くて、父親のズボンにしがみついて見ていた記憶が残っています。なので、半漁人と人間が愛し合うなんて、ちょっとグロテスクというイメージしかありませんでしたが、そこはデル・トロ監督。一歩間違えばB級作品になりそうなストーリーですが、土俵際で踏みとどまったという感じです。
 政府の研究所で清掃員として働くイライザ。彼女は話すことができないという障害を持っていた。ある日、彼女は研究所に半漁人が研究対象として運び込まれたのを知る。そんな半漁人とイライザは、やがて密かに心を通わせるようになっていく。しかし半漁人が研究材料として解剖されることを知ったイライザは、仲間に助けを求め、半漁人を逃がそうと考える・・・。
 ジャンルで言えばファンタジーでしょうが、ミュージカルのようなシーンもあるし、更にはR15+に指定されるエロティックなシーンもあるという、個人的にはなんだか掴み所がない映画という感じがしました。そもそも、イライザがなぜ半漁人に興味を持ち、彼を愛するようになっていくのかがよく理解できませんでした。「彼女も孤独だから?」とか、「話をできないという他の人とは違った部分が半漁人と同じだから?」などと考えることもできるのですが・・・。ファンタジーといってしまえばそれまでですが、明確にはわからなかったです。でも、そんなファンタジーをアカデミー会員は硬派な「スリー・ビルボード」より、作品賞に相応しいと選んだのですねえ。
 ラストの展開は、イライザのある部分に目が行くと、だいたい想像できてしまいます。 
トゥームレイダー ファーストミッション(30.3.31) 
監督  ロアー・ウートッグ 
出演  アリシア・ヴィキャンベル  ドミニク・ウェスト  ウォルトン・ゴギンズ  ダニエル・ウー  クリスティン・スコット・トーマス  ハンナ・ジョン=カーメン 
 ゲームシリーズとして誕生し、2001年にアンジェリーナ・ジョリー主演で公開された「トゥームレイダー」のリブ一ト作品です。今回は、主人公のララ・クロフトがトレジャーハンターになる契機となる出来事を描いていきます。
 ララ・クロフトを演じるのはアリシア・ヴィキャンデル。「リリーのすべて」でアカデミー賞助演女優賞を受賞している女優さんですから、それなりの実力者だと思いますが、初代のアンジェリーナ・ジョリーに比べると線が細いです(ただ見事にお腹は割れていますが。)。眼力の強いアンジェリーナ・ジョリーほど強いインパクトを与えません。
 物語はララが行方不明となっている父の行方を追って、父が探していた“ヒミコの墓”を探す冒険を描いていきます。その過程でヒミコの持っていた強大な力を手に入れようとする秘密組織“トリニティ”との闘いが繰り広げられます。“ヒミコの墓”ですから、日本人には大いに気になりますよね。
 ラストでトリニティの正体が驚くべきものであったことが明らかにされますが、これで当然続編は予定されているということなんでしょう。ララのトレードマークである二丁拳銃のエピソードも最後に描かれ、これはちょっとうれしいシーンです。 
ペンタゴン・ペーパーズ(30.3.31) 
監督  スティーブン・スピルバーグ 
出演  メリル・ストリープ  トム・ハンクス  サラ・ポールソン  ボブ・オデンカーク  トレイシー・レッツ  ブラッドリー・ウィットフィールド  
ブルース・グリーンウッド  マシュー・リス  アリソン・ブリー 
 舞台となるのはベトナム戦争の時代。アメリカ政府は戦争はアメリカ優位に進んでいると発表していたが、実は戦況は劣勢となっていた。ニクソン政権のとき、政府が戦争の状況を分析した機密文書があることを隠していることをニューヨーク・タイムズがすっぱ披く。ライバル紙のワシントン・ポストも文書の入手に奔走し、手に入れることができたが、政府はニューヨーク・タイムズの紙面の差し止めを裁判所に訴え、ワシントン・ポストも記事を掲載すれば同じことになると危惧された。役員や記者たちの意見は対立し、亡くなった夫から社主を引き継いだキャサリンは難しい判断を下さなければならない状況に追い込まれる。
 スティーブン・スピルバーグが監督で、ワシントン・ポストの編集主幹・ベン・ブラッドリーをトム・ハンクス、社主のキャサリン・グラハムをメリル・ストリープという、どちらもアカデミー賞を複数回受賞した役者が演じているのですから、こうした重厚な作品でも安心して観ていられます。
 テーマは言論の自由と国家の機密情報の漏洩です。国家の機密情報はそれが国民に不利益な情報であっても秘匿されるべきものなのか、そのためには言論の自由を統制できるのか。非常に難しい問題ですが、連邦最高裁は新聞社を勝たせています。その点は、さすが自由の国“アメリガです。大きな権力を前にしても、自分たちが寄って立つ“報道の自由”を守ろうとする記者たちに拍手です。権力にすり寄るマスコミなんて信用できません。
 ラストはニクソン大統領が失脚の原因となった“ウォーターゲート事件”の契機となるシーンで終わります。 
トレイン・ミッション(30.4.1) 
監督  ジャウマ・コレット=セラ 
出演  リーアム・ニーソン  ヴェラ・ファーミガ  パトリック・ウィルソン  サム・ニール  エリザベス・マクガヴァン  ジョナサン・バンクス  フローレンス・ビュー 
 元警官で保険会社に勤めるマイケルは、60歳のある日突然解雇を言い渡される。住宅ローンや息子の学費など金が必要なマイケルは、解雇されたことを妻に話せず、帰宅の通勤電車に乗るが、その電車の中で前の座席に座った見知らぬ女性から、電車の中でプリント名乗り、盗品の入った鞄を持った人物を見つけて欲しいと依頼される。報酬の一部はトイレにあるという女性の言葉を確認しようとトイレに入ったマイケルは金が隠されているのを発見し、女性の話が冗談ではないことを知る。無視しようとするマイケルに対し、何者かはマイケルの家族を人質に取り、プリンを探すよう脅迫する。マイケルは、やむなく通勤電車の中に見慣れない人物を探すこととし、6人まで対象者を絞り込む・・・。
 「96時間」など、このところアクション俳優となっているリーアム・ニーソンがマイケルを演じます。脅迫者が求めるプリンは誰なのか。そして何の目的をもってその人物を探しているのか。更にはマイケルを脅迫している人物は誰なのか等々様々な謎を抱えながら物語は進みます。疾走する通勤電車といういわば密室の中でのサスペンスに緊張感がすごいです。
 座席の上部に切符を挟んでおいて、それを車掌が確認するというシステムはおもしろいですね。でも、切符は盗まれないのでしょうか。 
ヴァレリアン 千の惑星の救世主(30.4.1) 
監督  リュック・ベッソン 
出演  デイン・デハーン  カーラ・デルビューニュ  クライヴ・オーエン  リアーナ  イーサン・ホーク  ハービー・ハンコック  クリス・ウー  ジョン・グッドマン  ルトガー・ハウア- 
 これも最近多いコミックが原作の作品です。28世紀の宇宙を舞台に連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌのコンビが、銀河の平和を守るために巨大な陰謀に立ち向かう姿を描いていきます。
 フランスのコミックが原作ということがあってか、監督はフランス人のリュック・ベッソン。プレイボーイのヴァレリアンを演じるのはデイル・デハーンです。「アメイジング・スパイダーマン2」でスパイダーマンの敵役グリーン・ゴブリン(ハリー・オズボーン)を演じていた俳優さんです。それほど大きくないし、逞しくもない、どちらかといえばいたずら好きの少年といった感じの風貌です。一方、ローレリーヌを演じるのは「スーサイド・スクワッド」で魔女を演じていたカーラ・デルビューニュです。世界的に有名なモデルさんのようで、スレンダーな抜群なスタイルで目を引きます。
 映像がきれいです。特にパール人の住むミュール星は鮮やかな色の世界です。あまり色々なことを深く考えずに観るのが一番の映画です。
 「ブレード・ランナー」で、レプリカントのロイを演じていたルトガー・ハウアーが世界連邦の司令官として登場。その姿を久しぶりに観ました。 
アベンジャーズ インフィニティ・ウォー(30.4.28) 
監督  アンソニー・ルッソ   
出演  ロバート・ダウニー・Jr  クリス・ヘムズワース  マーク・ラファロ  クリス・エバンス  スカーレット・ヨハンソン  ベネディクト・カンバーバッチ  ドン・チードル  トム・ホランド  チャドウィック・ボーズマン  ポール・ベタニー  エリザベス・オルセン  アンソニー・マッキー  セバスチャン・スタン  トム・ヒドルストン  イドリス・エルバ  ベネディクト・ウォン  ポム・クレメンティエフ  カレン・ギラン  ゾーイ・サルダナ  グウィネス・パルトロウ  ベニチオ・デル・ロト  ジョシュ・ブローリン  クリス・プラット  ダナイ・グリラ  デイブ・バウティスタ  レティーシャ・ライト  ウィリアム・ハート  ウィンストン・デューク   
 アベンジャーズシリーズの新作です。とはいっても、マーベルコミックのシリーズのストーリーは繋がっており、冒頭は「マイティ・ソー バトルロイヤル」のラストで滅亡するアスガルドからソーやロキを乗せて旅立った宇宙船がサノスに攻撃されるところから始まります。
 宇宙の人口を半分にするという野望を持つサノスは、そのために必要な6つの“インフィニティ・ストーン”を求め地球にやってくるが、これに対し戦いを挑んだのは“アベンジャーズ”の面々。「シビル・ウォー」で袂を分けたアイアンマンとキャプテン・アメリカも力を合わせてサノスに対峙します。そのほか、ドクター・ストレンジやブラックパンサーもアベンジャーズに参加。更には“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”も加わります。彼らの参加によって、この映画に笑いの要素が加わりました。彼らのセリフで僕の両隣りに座っていたインド系の女性と中国系の女性が大笑いするのですが、字幕では大笑いするほどの感じが伝わらず、英語ができないのが本当に残念に思いました。
 これまでに映画の中に出ていたマーベルコミックのヒーロー総出演です(そういえばホークは姿が見えなかったですね。)。あまりに大勢のヒーローの登場で、一人一人の活躍場面が少ないのはやむを得ないところです。ラストは驚くべき展開で終わります。え!これからいったいどうなるの?ネタバレになるので詳細は伏せますが、まさか、あんなことになってしまうとは。続きが早く観たいです。 
レディ・プレイヤー1(30.4.28)
監督  スティーブン・スピルバーグ
出演  タイ・シェリダン  オリビア・クック  ベン・メンデルスゾーン  リナ・ウェイス  サイモン・ペッグ  マーク・ライランス  フィリップ・チャオ  森崎ウィン  ハナ・ジョン=カーメン
 映画の舞台となるのは2045年の近未来。荒廃した地球では、国民はオアシスと呼ばれるVRの世界に夢中になっていた。それは、少し前に亡くなったオアシスの開発者であるハリデーが、オアシスに隠された3つの謎を解いた者に莫大な遺産とオアシスの継承者という地位を与えると発表したことが原因になっていた。両親が死に叔母と住むウェイドも宝を探し“オアシス”の世界に入り浸っていたが、巨大企業IOIも莫大な遺産を目当てに手段を択ばず宝探しに参加していた。そんなある日、ウェイドはオアシスの中で少女のアルテミスに出会い、恋をしてしまう・・・。
 VR“オアシス”の世界が凄いです。スピルバーグ監督自身の「ジュラシックパーク」からはティラノサウルスが登場。キングコングも出てきます。日本からはサンリオのキティちゃんが登場しますし、あのメカゴジラがゴジラのテーマ付きで登場します。更にはそのメカゴジラと戦うのがガンダムという豪華さ。スピルバーグ監督の日本のエンタメ好きがうかがわれます。気づきませんでしたが、ほかにもどこかに有名なキャラがいたかもしれません。
 VRの世界にいるのは実体ではなく、アバターなので、ハンサム男も美少女も現実世界では違うかもしれないことは肝に銘じておかないと!ですね。
 僕自身は2Dで鑑賞しましたが、VRの世界を見るのならば3D(それもIMAX)の方が迫力ある映像を楽しめそうです。
ラプラスの魔女(30.5.5) 
監督  三池崇史 
出演  櫻井翔  広瀬すず  福士蒼汰  豊川悦司  玉木宏  志田未来  佐藤江梨子  TAO  高嶋政伸  リリー・フランキー  檀れい 
(ネタばれあり)
 東野圭吾さん原作の同名小説の映画化です。本の感想はこちら
 原作の内容はほとんど忘れていたので、映画自体は新鮮に観ることはできたのですが、やはり、映像化されると陳腐なものになってしまいます。CGももう少しどうにかならなかったでしょうか。強風により車が宙を飛ぶシーンなど、昔の怪獣映画の頃の映像とそんなに変わらない印象を受けました。 
 ストーリーは原作通りですが、2時間という上映時間に抑えるためか、亡くなった映画プロデューサーの妻の役割など描き切れない部分が多かった気がします。原作を読んでいない人にとってはストーリーがちょっとわかりにくいのではと思います。
 主人公の青江教授を演じた櫻井くんはすっかりおじさんです。失礼ながら、広瀬すずさんや福士蒼汰くんと並ぶとおじさん化が目立ちます(当たり前ですけど)。広瀬すずさんは、原作のイメージとはちょっと違いますが、きれいになりましたね。しかし、彼らより出演者の中で一番強い印象を与えたのは、映画監督の甘粕役を演じた豊川悦司さんです。今NHKの朝ドラでも強烈な個性を発揮していますが、映画でもあの異常な甘粕役を見事に演じていました。 
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男(30.5.11)  
監督  ジョー・ライト 
出演  ゲイリー・オールドマン  クリスティン・スコット・トーマス  リリー・ジェームズ  スティーブン・ディレイン  ロナルド・ピックアップ  ベン・メンデルスゾーン  ニコラス・ジョーンズ  サミュエル・ウェスト  デビッド・バンバー 
 第二次世界大戦中、英国首相としてヒトラーに対峙したウィンストン・チャーチルを描いた作品です。
今年3月に発表されたアカデミー賞において、チャーチルを演じたゲイリー・オールドマンが主演男優賞を受賞、更に彼のメイクアップを担当した日本人の辻一弘さんがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞という、うれしい結果となりました。映画の世界から離れていた辻さんをゲイリー・オールドマンが彼でなくてはと口説いて担当してもらった結果の受賞ですから両者とも嬉しかったでしょうね。
 というわけで、この映画の見どころはチャーチルの顔だけでなく、その所作もそっくりに演じたゲイリー・オールドマンの演技につきます。悩んだチャーチルがひとりで地下鉄に乗り込んで、国民と会話し、国民の意思を確認するシーンがありますが、本当にこんな事実があったとすれば、さすが民主主義の国です。
 チャーチルのVサインの掌が逆だったというエピソードは実話だそうですが、逆だと「糞食らえ」の意味になるそうです。 
孤狼の血(30.5.18) 
監督  白石和彌 
出演  役所広司  松坂桃李  真木よう子  滝藤賢一  音尾琢真  駿河太郎  中村倫也  中村獅童  矢島健一  田口トモロヲ  ピエール滝  石橋蓮司  江口洋介  竹野内豊  阿部純子  嶋田久作  伊吹五郎  MEGUMI  勝矢  九十九一  中山峻 
 柚月裕子さん原作の同名小説の映画化です。原作の感想はこちら
 物語は県警の監察官の指示で呉原東署の刑事・大上の動向を探るために呉原東署に異動となったエリート警察官が、大上の下でやがて刑事としては破天荒な大上に惹かれていく様子を描いていきます。
 舞台となる呉原市は、まず間違いなく呉市をモデルにしています。やはり、暴力団抗争となると「仁義なき戦い」の広島が舞台となることがリアリティが増します。
 やくざの犯罪は見逃すし、懐の下をもらうし、悪徳刑事の見本のような大上ですが、その役を善人役の多い役所広司さんが演じるのがまたおもしろいところです。いつもの善良そうな顔がここではすっかり悪人の顔になっています。まあ名優ですから何をやらせても様になってしまいます。
 広島大出のエリート刑事を演じるのが松坂桃李さんです。正義感溢れる刑事が暴力団を潰すためには次第に汚い手も使う刑事に変貌してきますが、やはり役所さんの貫禄には負けます。
 原作を読んだ者として残念だったのは真木よう子さん演じる高木里佳子のキャラが原作のイメージに合わなかったこと。小料理屋の女将からクラブのママに原作とは異なってしまったのが原因でしょうけど、もっと落ち着いた雰囲気の女性をイメージしていたのですが・・・。 
ゲティ家の身代金(30.5.26) 
監督  リドリー・スコット 
出演  ミシェル・ウィリアムズ  クリストファー・プラマー  マーク・ウォールバーグ  ロマン・デュリス  ティモシー・ハットン  チャーリー・プラマー  アンドリュー・バカン 
 1973年に実際に起こったアメリカの大富豪、ジャン・ポール・ゲティの17歳の孫がローマで誘拐された事件を描きます。
 1700万ドルという巨額の身代金を求める電話が母親のゲイルのもとにかかってくるが、ゲティはひとりの孫のために身代金を払えば他の孫も狙われるとして身代金の支払いを拒否する。やむを得ず、ゲイルは元CIAのフレッチャーとともに犯人と交渉するが・・・。
 当初、ゲティを演じていたケビン・スペイシーが公開直前にセクハラ問題で降板したため、クリストファー・プラマーが急遽代役で撮り直したといういわくつきの作品です。孫の身代金は出さないのに高額の美術品は購入するという本当に嫌な役を演じます。大ベテランですから突然の代役でもそこは見事に演じており、受賞はしませんでしたが、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の助演男優賞にノミネートされています。 
妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3(30.5.27) 
監督  山田洋次 
出演  橋爪功  吉行和子  西村まさ彦  夏川結衣  中嶋朋子  林家正蔵  妻夫木聡  蒼井優  小林稔侍  風吹ジュン  木場勝己  立川志らく  笹野高史  笑福亭鶴瓶  藤山扇治郎  広岡由里子  北山雅康  大沼柚希  小川絵莉 
 「家族はつらいよ」シリーズ第3弾です。今回、山田監督が描くのは“妻への賛歌”です。
 平田周三・富子夫婦は故郷へ墓参り、幸之助は香港へ出張、子どもたちは学校に行き、一人掃除をしていた史枝は、ふと疲れて眠り込んでしまう。そこへ空き巣が侵入、史枝が貯め込んだ40万円のへそくりが盗まれる。その日の朝、家計費が足りないから増やして欲しいと史枝から言われていた幸之助は、へそくりをしていた史枝に激怒。更に自分が働いていたときに昼寝していたのかと怒鳴ってしまう。翌日、幸之助の気遣いのない言葉に怒った史枝は家出をしてしまい、平田家は大混乱。みんなは幸之助に史枝を迎えに行くよう言うが、幸之助はなぜ自分が謝らなくてはならないのかと聞く耳を持たないが・・・
 何だか幸之助への非難は自分への非難のように観ていて感じてしまいました。我が家は共働きなので、ある程度家事も手伝うのですが、とはいえ、食事は妻が帰宅してから作るのが当たり前になっているなど共働きといっても決して家事は二分されているわけではありません。その中で、僕自身も同様の状況下で幸之助のように40万円もへそくりをしていた妻に怒鳴っていたかもしれません。苦情処理の出張を無事終えて帰宅した幸之助が「おいしい酒(ビールだったかな?)を飲めると思ったのに」と言う気持ちもわかってしまうんですよねえ。
 身に覚えのある家族のトラブルですが、すったもんだのあげくハッピーエンドになるのはわかっているので、安心して観ていることができます。また、橋爪功さんや吉行和子さん、それに毎回違う役で出演する小林稔侍さん(前作では周三の同級生の丸田でしたが、今作では同じ同級生の今度は丸ではなく角田です。)など芸達者な役者さんばかりなので、観ていて楽しいです。相変わらず蒼井優さんが演じる次男の庄太の妻・憲子が平田家の中での緩衝材ともいうべき役柄を演じていて、とってもかわいいです。笑福亭鶴瓶さんが今回もカメオ出演しています。
 年配の夫婦の観客が多かったですが、若い夫婦も観て欲しい作品ですし、夫婦だけでなく家族で見るのも最高の映画です。 
友罪(30.5.27) 
監督  瀬々敬久 
出演  生田斗真  瑛太  佐藤浩市  夏帆  山本美月  富田靖子  奥野瑛太  小市優太郞  矢島健一  青木崇高  西田尚美  忍成修吾  村上淳  飯田芳  片岡礼子  坂井真紀  古館寬治  宇野祥平  大西信満  渡辺真起子  光石研 
 ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ頃に働き始めた鈴木という青年と知り合う。あまり周囲と話をしない鈴木だったが、益田とは次第に打ち解けていく。そんなある日、雑誌社に勤める元恋人の清美から17年前に起きた中学生による小学生連続殺人事件の記事を書くアドバイスを求められた益田は、加害者の中学生の頃の写真が鈴木に似ていることに気づき、彼がその犯人の青柳ではないかと考える。
 罪を犯した者は一生許されることはないのか、身近にいる友人が殺人事件、それも猟奇殺人事件の犯人だったらどうするだろうかということをテーマにした作品です。重いです。薬丸岳さんの同名小説の映画化ですが、薬丸さんが「酒鬼薔薇事件」を念頭に置いていることは想像できます。
 身近にいる人物が以前殺人を犯した人だったら、それを知って果たして仲良く付き合うことができるでしょうか。この物語のように医療少年院で更生が認められたとしても、また、刑務所で刑期を勤めあげたとしても、殺人を犯した人と分け隔てなく交際できるかは、正直言って難しいです。再犯しないかという危惧はいつでも付きまといます。まあ、逆に周囲の人がそういう対応をとるので、罪を償ってきても普通の生活に戻れないというところはあるでしょうけど。
 原作ではエピソードに過ぎなかった佐藤浩市さん演じるタクシー運転手の話が、この作品では大きな部分を占めています。家族の一員を失った被害者家族からすれば、加害者は法律上罪を償っても幸せになるなんて許されないと思うことも無理ありませんが、加害者側それもその家族がその事実を一生背負っていかなければならないのでしょうか。果たして罪を犯した人はもう二度と自らが幸せになることはできないのでしょうか。
 提示された問題は簡単には回答が出ません。この物語もラストはああいう形で終わり、すっきりとした解決にはなっていません。 
万引き家族(30.6.9) 
監督  是枝裕和 
出演  リリー・フランキー  安藤サクラ  樹木希林  松岡茉優  池松壮亮  城桧吏  佐々木みゆ  緒形直人  森口瑤子  柄本明  山田裕貴  片山萌美  高良健吾  池脇千鶴   
 第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞した作品です。パルムドールを受賞したということもあってか、観客は僕ら夫婦のような年配客から高校生らしき男の子たちまで幅広い客層でした。
 柴田一家はビルの谷間に取り残された古びた一軒家で、祖母・初枝の年金、父・治の日雇い、母・信代の洗濯店でのパートで暮らしていたが、足りない分は万引きで補っていた。ある冬の夜、万引きを終えた治と息子の祥太が家に帰る途中で部屋から出されてベランダにいた少女を連れて帰る・・・。
 冒頭で、両親から虐待され、冬の寒い夜に部屋から出されてベランダにいた少女・ゆりをリリー・フランキーさん演じる治が家に連れて帰ります。その後、返しに行くのですが、夫婦げんかをしているのを聞き、妻の信代は再びゆり連れて帰ります。先日、現実の世界で虐待されていた女の子が死亡するという悲惨な事件が起きていたので、映画と現実が重なってしまいました。映画の終わり近くで、少女が柴田夫妻の元から実の両親の元へと帰された後、母親から怒られ、「ごめんなさいは!」と強要される姿が、死亡した少女に重なってどうにもたまりませんでした。
 柴田一家は樹木希林さん演じる祖母・初枝と、リリー・フランキーさん、安藤サクラさん演じる治と信代の夫妻、そして信代の妹である松岡茉優さん演じる亜紀と城桧吏くん演じる息子の祥太という家族ですが、実はこの家族が血の繋がりのない偽りの家族であることが次第に明らかになっていきます。
 この映画を観ても、そして現実世界での家族間で起きている事件を見ても、血が繋がっている家族がそれだけで偽りの家族よりいいと言えるのか考えさせられます。
 カンヌ映画祭では、審査委員長のケイト・ブランシェットが是枝監督のところに来て、安藤サクラさんの演技のマネをするなどして、安藤さんを絶賛していたそうですが、僕自身としても、警察の取り調べで、子どもたちから何と呼ばれていたのかと聞かれたときの演技は凄かったなあと圧倒されました。監督があて書きをした初枝役の樹木希林さんは入れ歯を外していつも以上の老けた表情を見事に作り出しています。亜紀役の松岡茉優さんも風俗店で働くという役柄のため、胸の谷間も露わにして風俗で働く女性たちの行為を実践しての熱演でした。
 ラストシーン、少女がベランダから首を伸ばして見た先には何が映っていたのでしょうか。柴田家の誰かが迎えに来てくれるのを待っていたのでしょうか。 
羊と鋼の森(30.6.15) 
監督  橋本光二郎 
出演  山﨑賢人  三浦友和  鈴木亮平  上白石萌音  上白石萌歌  堀内敬子  仲里依紗  城田優  森永悠希  佐野勇斗  光石研  吉行和子 
 外村は、高校生の時、体育館に置かれているグランドピアノを調律師が調律するのを偶然見たことがきっかけとなり、調律師になることを決心する。調律師養成のための専門学校に通った後、地元の江藤楽器に就職し、先輩調律師・柳について仕事を学んでいく。そんなある日、柳が行う調律に同行した外村は、その家でピアノを弾く佐倉和音、由仁の姉妹と出会う・・・。
 第13回本屋大賞を受賞した宮下奈都さんの同名小説の映画化です。原作本は積読状態のまま内容を知らずに観に行ってきました。北海道で林業を営む家に生まれた外村が、世界を見たいと、ピアノの調律師となって成長していく様子が描かれます。
 原作は本屋大賞を受賞したのですから、多くの人の共感を得たのですが、映画は原作どおりだったのでしょうか。少女がピアノを弾けなくなったのは自分が調律したためだと、外村が泣き叫ぶシーンがありますが、個人的には新人調律師の外村にそんな力があるわけないだろうと、あまりに思い上がっているとしか思えない彼に共感はできなかったし、その際の外村を演じる山﨑賢人くんの演技もあまりにオーバーというか違和感がありました(山崎くんのファンの皆さん、ごめんなさい)。
 佐倉姉妹を演じたのは本当の姉妹の上白石萌音さんと萌歌さん。妹の方が大きくて性格も活発という典型的な姉妹を演じています。先輩調律師・柳を演じるのは大谷亮平さん。今はNHK大河ドラマの「西郷どん」で忙しいでしょうから、この作品はその前に撮影されたのでしょう。頼りがいのある先輩を演じます。外村の祖母役で吉行和子さんが出演していましたが、ひと言も言葉を発しませんでしたね。 
メイズランナー 最期の迷宮(30.6.15) 
監督  ウェス・ボール 
出演  ディラン・オブライエン  カヤ・スコデラリオ  トーマス・ブロディ=サングスター  キー・ホン・リー  ローサ・サラザール  ジャンカルロ・エスポジート  ナタリー・エマニュエル  エイダン・ギレン  パトリシア・クラークソン  デクスター・ダーデン  ウォルトン・ゴギンズ  バリー・ペッパー  ウィル・ポールター  ジェイコブ・ロフランド  キャサリン・マクナマラ 
 シリーズ第3弾、完結編になります。前作のラストでテレサの裏切りにより、仲間のミンホをWCKDに連れ去られたトーマスらはミンホを移送する列車を襲うが、助けた人々の中にはミンホの姿はなく、彼はWCKDの本拠地であるラスト・シティへと送られたことを知る。トーマスらはミンホを救助するためにラスト・シティへと向かうが、そこは周囲は壁で囲われ、何者の侵入も許さない都市だった・・・。
 主人公・トーマスを演じるディラン・オブライエンの撮影中の大怪我により完成が遅れましたが、ようやくの完結編です。前作でトーマスたちを裏切ったテレサとの関係はどうなるのか、WCKDとの戦いの決着はどうなるのか。第1作で高い壁に囲まれ周囲は迷路である区域から脱出したトーマスたちが、今度は壁に囲まれた都市に自ら入っていくとは、何とも皮肉な展開です。
 今作で大団円ということで、驚きの人物の登場があるし、大切な人との別れも描かれるなど、その内容は盛り沢山です。しかし、振り返ってみると、いったいなぜ壁の中に閉じ込められているのかが謎だった第1作が「15少年漂流記」や「蠅の王」のような趣もあって一番面白かったです。 
終わった人(30.6.16) 
監督  中田秀夫 
出演  館ひろし  黒木瞳  広末涼子  臼田あさ美  今井翼  田口トモロヲ  笹野高史  ベンガル  高畑淳子  温水洋一  清水ミチコ  岩崎加根子  渡辺哲 
 田代壮介はかつては東大出のエリート銀行マンだったが、出世争いに敗れて関連会社に出向となり、このたび定年を迎える。家にいてもやることもなく、働こうと就職活動をしたものの高学歴・一流企業出身が逆に壁となって採用してくれる会社もない。腐っていた壮介だったが、大学院で勉強しようと決心し、試験対策のために家族の勧めでまずはカルチャーセンターへ行くこととする。そこで出会った受付の浜田久里にほのかな思いを寄せて、食事を一緒にするなど充実した日を送っていたが、ある日、ジムで出会ったIT企業の社長・鈴木から顧問として会社に来て欲しいと請われ、再び働こうと決意する。
 定年=「終わった人」という主人公と同じ年代にとっては強烈な題名が気になって観に行ってきました。公園も図書館もスポーツジムも暇を持て余した高齢者でいっぱいとは笑ってしまいました。僕自身も仕事を辞めたら図書館で一日好きな本を読んで過ごそうと思っていましたから、あそこにいた高齢者はちょっと先の自分の姿です。でも、公園や図書館、ましてやスポーツジムにいる高齢者は健康で日々の生活にも困らない人ですね。
 「何もしないと認知症になってしまうから、できるだけ働いてね」と妻からは言われますが、壮介のように定年後も大きな責任を負って働くのも辛い気がします。年金支給年齢が上がり、その支給額も抑えられてきている現在、ある程度の年齢までは働かなくてはならないでしょうけど・・・。何はともあれ、健康で過ごすことが一番です。
 いつもはダンディに決めている館さんが、冴えない老年男を演じているのも意外でおもしろいです。もちろん、そのダンディーさの片鱗は見せてくれていますけど。 
ハン・ソロ(30.6.29) 
監督  ロン・ハワード 
出演  オールデン・エアエンライク  ウッディ・ハレルソン  エミリア・クラーク  ドナルド・グローバー  タンディ・ニュートン  ポール・ベタニー  フィービー・ウォーラー=ブリッジ  ヨーナス・スオタモ  エリン・ケリーマン  ワーウィック・デイビス 
 「ローグ・ワン」に続く、スターウォーズシリーズのスピンオフ作品です。物語は若き頃のハン・ソロを描きます。
 惑星コレリアでレディ・プロキシマを首領とする悪名高いホワイト・ワームスの下で犯罪行為を強要されていたハンは、宇宙船のパイロットになることを夢見て、恋人のキーラとともに惑星を脱出しようとする。しかし、脱出直前でキーラは捕まり、逃れたハンは帝国軍に志願し、3年後、泥の惑星ミンバンで戦っていた。そこでハンは終生の相棒となるチューバッカに出会う・・・。
 エピソード4に続く話となる「ローグ・ワン」と異なり、若きハン・ソロを描くことが主体となっているので、シリーズとしてのストーリーの展開を期待している人にとっては物足りないかもしれません。ただ、「なぜハン・ソロという名前になったのか」、「チューバッカとはどうやって出会ったのか」、「ランド・カルリジアンの所有であったミレニアム・ファルコン号がどうしてハン・ソロの船となったのか」等々様々な謎が明らかるなど、スターウォーズファンとしては楽しむことができます(まさか、ハン・ソロの名前があんなことからついたとは、びっくりです。)。
 ハン・ソロを演じたのは「ヘイル、シーザー」に出演しているオールデン・エアエンライク。6000人の中からオーデションで選ばれたそうですが、やはりハリソン・フォードの印象が強すぎて、エアエンライク自身はあまり印象に残りませんでした。
 キーラを演じたのはエミリア・クラーク。「ターミネーター:ジェネシス」でサラ・コナー役を演じた人です。その際にも感じたことですが、彼女もあまり印象に残りません。彼女よりドロイドのL3-37の方がずっと印象的なキャラでした。 
 「ローグ・ワン」のような感動はありませんでしたが、その中ではミレニアム・ファルコン号の副操縦士でもあったドロイドのL-37とランド・カルリジアンの関係はちょっと胸が打たれます。
ネタバレになるので詳細に書けませんが、キーラのその後はどうなるのでしょう。ラスト近くで登場したあの人物との関係も気になりますし、そこは観客としては宙ぶらりんの状態にされたまま終わってしまった感があります。もしかしたら、続編を考えているのでしょうか。 
空飛ぶタイヤ(30.6.30) 
監督  本木克英 
出演  長瀬智也  ディーン・フジオカ  高橋一生  深田恭子  笹野高史  寺脇康文  小池栄子  阿部顕嵐  ムロツヨシ  中村蒼  岸部一徳  柄本明  佐々木蔵之介  六角精児  大倉孝二  津田寬治  升毅  和田聰宏  木下ほうか  浅利陽介  谷村美月  近藤公園  田口浩正  斎藤歩  杉村蝉之介  渡辺大  岡山天音  矢島健一  矢野聖人  津嘉山正種 
 池井戸潤さん原作の同名小説の映画化です。小説の感想はこちら
 父の跡を継いで赤松徳郎が経営する赤松運送のトラックのタイヤが走行中に外れ、歩道を歩いていた子供連れの主婦に当たって主婦は死亡してしまう。メーカーの調査で事故の原因が整備不良ということになり、赤松運送は苦境に立たされる。しかし、若手整備士の門田が基準以上にきちんと整備をしていたことがわかり、原因はほかにあるのではないかと赤松は疑って調べ始める。しかし、彼の前には大企業という大きな壁が立ちふさがる・・・。
 池井戸さんお得意の大きなものに立ち向かう人々を描いた作品です。赤松が言う「中小企業をなめるなよ!」というセリフは、「下町ロケット」等に通じるものがありますね。
赤松徳郎を演じるのは長瀬智也さん。彼ももう40歳直前ですから、いつまでもチャラチャラした役はやっていられません。こうした大人の苦悩する役も似合うようになりました。彼の妻・史絵を演じたのは深田恭子さん。苦悩する夫を支える史絵が最高です。こんな奥さんに励まされたら、頑張ってしまいます。
 今、旬の役者さん、ディーン・フジオカさんと高橋一生さんがそれぞれホープ自動車のカスタマー戦略課長とホープ銀行の融資を担当する調査役で出演。女性の観客を意識したのでしょうか。一緒に観に行った妻も「カッコいい!」と絶賛していました。でも、ディーンさん演じる沢田は一度は事件を出世の道具として使おうとしたが、現実はそんなに甘くないと分かって会社を告発する側に回るのですから、決して正義漢という訳ではありませんよね。
 上映時間が2時間という枠の中でしたので、子どもの学校のPTAの件など小説で書かれていたことが省かれていたのはやむを得ないところでしょう。 
ルームロンダリング(30.7.14) 
監督  片桐健滋   
出演  池田エライザ  渋川清彦  伊藤健太郎  光宗薫  オダギリジョー  つみきみほ  田口トモロヲ  渡辺エリ  木下隆行  柄本時生  奥野瑛太   
 アパートなどの賃貸物件で自殺があったとか孤独死があったものは“事故物件”と呼ばれ、その“事故物件”を貸すには、貸主は借主に対し、“事故物件”であることを説明する法律上の義務があります。そのため、“事故物件”は、借主が見つからず、見つかっても結局安い賃料で貸さなければならないことになり、貸主は“事故物件”であることを嫌います。ただ、その説明義務は事故の後、借りる借主に対してだけで、その次の借り手には“事故物件”だということを告知せずにすむということで、短期間“事故物件”に誰かを住まわせ、“事故物件”を“ロンダリング”するということが密かに行われるというのが、この物語の設定です。
  “事故物件”に住むことを仕事にしているのが、この映画の主人公・八雲御子。実は御子は幽霊が見える能力(?)を持っており、彼女がそれぞれの物件での幽霊と関わることにより、成長していく姿を描くことがこの映画のメインストーリーとなります。小説では原田ひ香さんの「東京ロンダリング」(集英社文庫)が御子と同じ仕事をする女性を主人公にしていますが、小説と違うのは、映画では主人公・御子が幽霊が見えるというファンタジー作品となっていることです。
 この不思議系少女を演じる池田エライザさんが可愛いいです。この映画の高評価は、彼女のキャラによるところが大です。彼女は、「みんな!エスパーだよ!」のようなエロチックな役より、こうしたおとなしめの役の方がお似合いではないかなあと思います。次の「SUNNY 強い気持ち・強い愛」にも期待したいです。彼女を支える叔父役のオダギリジョーさんは相変わらずとらえどころのない役ですが、こちらもぴったりの役どころでした。
 あらすじを読んだら、幽霊が出るファンタジーという僕好みの作品でしたので、東京へ行ったついでに観ようと思ったのですが、これは予想以上に面白い映画でした。 
志乃ちゃんは自分の名前が言えない(30.7.14)
監督  湯浅弘章
出演  南沙良  蒔田彩珠  萩原利久  山田キヌヲ  奥貫薫  渡辺哲
 原因のわからない吃音で高校入学時のクラスでの自己紹介のときも、自分の名前が言えない大島志乃。クラスメートの菊地強からは吃音をからかわれ、友達もできず昼食も校舎の裏でひとりで食べる毎日を送っていた。そんなある日、校舎の裏で昼食を食べていた志乃に気づかずに志乃の前を通り過ぎ、校舎の裏で歌を歌っていた(それもかなりの音痴)岡崎加代に志乃は思い切って一緒に帰ろうと声をかける。その日以来友達となった加代は志乃が歌を歌うときは吃音にならないことから、二人でバンドを組んで学園祭で歌おうと提案する・・・。
 人気漫画の映画化だそうです。たまたま「ルームロンダリング」を観た映画館で公開初日で舞台あいさつが行われていたので、ちょっと興味を持って観てみました。
 内容は吃音の女の子が親友を得て、二人で学園祭の舞台で歌を歌うことを目標に頑張っていく姿を描いていく少女たちの青春ストーリーです。せっかく二人で頑張っていたのに、そこに一人の男子が加わることで、親友を取られてしまうのではないかと思って爆発する志乃の姿に青春だなあと思いながら観ていました。
 志乃を演じたのは南沙良さん。まだまだ演技はぎこちない感じがしますが、泣く場面では鼻水を垂らしながらの熱演でした(彼女、泣くときはいつも鼻水が出てしまうようですね。)。一方、加代を演じたのは蒔田彩珠さん。どこかで見た子だなあと思ったら、「三度目の殺人」で福山さんの娘役を演じていた女の子でした。この子、孤高の雰囲気が似合いますね。
 ラストシーンは、どう理解すればいいのでしょう。原作とは異なるようですが。
ジュラシック・ワールド 炎の王国(30.7.16) 
監督  J・A・バヨナ 
出演  クリス・プラット  ブライス・ダラス・ハワード  レイフ・スポール  ジャスティス・スミス  トビー・ジョーンズ  ジェフ・ゴールドブラム  ダニエラ・ピネダ  テド・レヴィン  B・D・ウォン 
 ジュラシック・ワールドの続編です。
 事件の後、閉鎖されたジュラシック・ワールドがあったイスラ・ヌブラル島で火山噴火が起こり、島に残っている恐竜たちを保護するのか、そのまま見捨てるのかという議論が起きる。ロックウェル財団に依頼されたオーウェンとクレアは島に残っているヴェラキラプトルのブルーを保護するために島に向かい、無事にブルーと出会えたが・・・。
 予告編では火山の噴火で逃げ惑う恐竜たちの姿が出ていましたので、てっきり島からの恐竜たちの脱出を描くのがメインストーリーと思っていたら、肩透かしです。島からの脱出劇は前半のほんの一部分。メインは島からアメリカに運ばれた恐竜たちがどうなるかというものでした。このあたり、島から連れ出されたティラノサウルスが都会を暴れまわった「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」と同じような設定です。
 今回も、あの中国人科学者ウー博士によって遺伝子操作された恐竜が登場します。ウー博士、しぶとく生き残っていますねえ。だいたい悪役は恐竜に食い殺される結末を迎えるのが常なのに。前作で暴れまわったインドミナス・レックスを改良した一段と獰猛なインドミナス・ラプトルです。恐竜といえばティラノサウルスを見ればわかるように強靭な後ろ足に比べて前足はそれほどの強さを感じないのですが、このインドミナス・ラプトルは凄いです。前足で懸垂してしまいますからねえ。これはびっくりです。
 恐竜を保護するのかどうかの公聴会で意見を述べているのが懐かしいジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコムでした。ちょっと恰幅が良くなりましたね。
 今回の映画のラストシーンからすると、まだまだ続編を制作する気はありそうです。 
ミッション:インポッシブル フォールアウト(30.8.3) 
監督  クリストファー・マッカリー 
出演  トム・クルーズ  ヘンリー・カビル  ビング・レイムス  サイモン・ペッグ  レベッカ・ファーガソン  ショーン・ハリス  アンジェラ・バセット  バネッサ・カービー  ウェス・ベントリー  フレデリック・シュミット  ミッシェル・モナハン  アレック・ボールドウィン 
 「ミッション・インポッシブル」シリーズ第6弾です。
 盗まれたプルトニウム回収の任務に当たっていたイーサンたちだったが、回収目前に何者かによってプルトニウムを奪われてしまう。イーサンはプルトニウムの行方のカギを握る女性、ホワイト・ウィドウに近づくが、そこにはイーサンたちIMFに捕らえられた“シンジケート”のボス、ソロモンが関係していた・・・。
 シリーズ初めての前作の続編といってよく、イギリスの諜報員のイルサ・ファウストや前作で逮捕されたソロモンが再登場します。さらにラストではイーサンにとってある重要な人物も再登場します。監督も前作を担当したクリストガー・マッカリーが務めます。
とにかく、このシリーズの見どころはトム・クルーズのアクションです。トム・クルーズも56歳となったようですが、相変わらず若いです。今回も自らアクションシーンを演じています。「M:I2」でもありましたが、オートバイによる追跡シーンは凄いです。本当にトム・クルーズが運転しているのかと思うくらいです。更に、今回はトム・クルーズはヘリコプターの操縦免許を取って、ヘリコプターでのアクションシーンにも挑戦しています。もう“凄い!”という言葉しか出てきません。ビルからビルに飛び移るシーンでは、骨折もしてしまったようです。そのシーンもしっかり映っています。肋骨でも折ったのかと思ったら足だったようですね。
 シリーズ第1作ではアクションだけでなく、ミステリ的などんでん返しも楽しめましたが、最近はその点は二の次という感じです。ミステリ好きとしては残念ですが・・・。今回も最初から「きっと、アレだな」と思ったとおりで、捻りはありませんでした。
 今回は、これまで2作続けて出演していたジェレミー・レナーは不参加でしたが、代わってCIAのエージェント役で“スーパーマン”のヘンリー・カビルが出演しています。スーパーマンのときと打って変わって口髭を蓄えた姿はちょっと悪そうな感じです。 
検察側の罪人(30.8.24) 
監督  原田眞人 
出演  木村拓哉  二宮和也  吉高由里子  松重豊  山崎努  平岳大  大倉孝二  八嶋智人  音尾琢真  酒向芳  矢島健一  大場泰正  谷田歩  キムラ緑子  芦名星  山崎紘菜   
 雫井秀介さん原作の同名小説の映画化です。
 ジャニーズのキムタクと二宮くんの共演ですから、これは混むかなと覚悟して初日に観に行ったのですが、予想に反してガラガラ。シネコンで一番大きなスクリーンでしたが、2割も埋まっていなかったのでは。キムタクも二宮くんも田舎の映画館をいっぱいにするほどの集客力をもっていないのかなと思ってしまいます。
 キムタクと二宮くんの役どころは、東京地検刑事部の中堅検事・最上と新人の時に最上に指導された入庁4年目の検事・沖野。沖野が東京地検刑事部に配属なったある日、金貸し夫婦が殺害され、何人かの容疑者が捜査線上に浮かぶ。その容疑者の中に最上は高校生の頃に入っていた寮の管理人夫婦の娘が殺害された事件でも容疑者に上がっていた男・松倉の名前を見つける。その事件は結局迷宮入りしたが、最上はその事件も今回も松倉が犯人ではないかと沖野に松倉を追及させるが・・・。
 ジャニーズファンであれば、キムタクと二宮くんのが対峙するところが見ものでしょうが、正直のところ、主役の二人よりも彼らに取り調べを受ける側の闇社会のブローカー・諏訪部を演じた松重豊さんや松倉を演じた酒向芳さんの演技の方が圧倒的に印象に残ります。検事よりも一枚も二枚も上手の諏訪部を見事に演じきった松重さん。異常性格者である松倉を演じた酒向さん。こんな男たちを目の前にすれば、冷静な検事も切れてしまいますよねえ。二宮くんファンには怒られてしまいますが、彼らに比べたら、沖野が松倉に対して声を荒げて取り調べをするシーンなど、いまひとつ以上の演技としか見えません。
 沖野を補佐する検察事務官の橘沙穂を演じているのが吉高由里子さん。先ごろまで放映していたテレビで検事役を演じていたので、そのまま検事かなと思ったら、検察事務官でした。ちょっと以前よりふっくらした感じになりましたね。
 原作は未読なので、白紙のまま観に行ったのですが、ラストは原作とは異なるようです。映画のラストはすっきりせず、消化不良です。キムタクだからこういうラストにしたのかな。 
SUNNY 強い気持ち・強い愛(30.8.31)
監督  大根仁
出演  篠原涼子  広瀬すず  小池栄子  ともさかりえ  渡辺直美  池田エライザ  山本舞香  板谷由夏  三浦春馬  野田美桜  田辺桃子  富田望生  リリー・フランキー  新井浩文  矢本悠馬  
2012年に公開された韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」のリメイクです。
 韓国版と今回の作品の違いは、韓国版は2011年の現在と1980年代の過去が舞台となっていますが、この作品では、2018年の現在と1990年代の過去が舞台となっていること、“サニー”のメンバーが韓国版では7人ですが、こちらでは6人ということくらいで、ほぼストーリーは韓国版を踏襲しています。
 奈美は入院している母の見舞いに行った際、高校時代の同級生・芹香が入院していることを知る。彼女は奈美にガンで余命1月と宣告されたと告白し、死ぬ前に高校時代の“SUNNY”のメンバーに会いたいと言う。奈美は恩師の情報から辿り着いた梅とともに、残りのメンバーを見つけるために探偵に調査を依頼する。やがて、メンバーがひとりひとり見つかっていくが、皆それぞれの人生を歩んでいた・・・。
 日本の1990年代といえば、コギャルブーム(?)の時代。町の中は茶髪にガングロ、ルーズソックスという女子高校生が溢れていました。中には男性の僕にはまったく理解できない“ヤマンバ”と称される化粧をした女子高校生も。振り返ってみると凄かったですねえ。当時の女子高校生の方が今の女子高校生より、過激でパワーあふれていた感じがします。
 安室奈美恵さんやtrfなど1990年代を代表する懐かしい曲が流れます。韓国版では1980年代を象徴するディスコ調の「サニー」がテーマとなっていましたが、こちらは小沢健二さんの「強い気持ち 強い愛」です。
 女子高校生の頃の奈美を演じたのは広瀬すずさんですが、いつもは見せない変顔やキレる女子高校生を演じています。大人になった奈美役は篠原涼子さんが演じますが、今でも女子高校生の制服姿に違和感がないですねえ。“SUNNY”のリーダーである芹香役の山本舞香さんが役柄にピッタリの感じでした。彼女、「王様のブランチ」に出演していますよね。美少女のモデル・奈々を演じたのは池田エライザさんですが、個人的にはこうした美少女役より先頃観た「ルームロンダリング」のちょっと変わった女の子役の方が好きですね。大人になった方で印象的だったのは梅を演じた渡辺直美さん。女優としても本物の女優さんに負けていません。
 劇場内は当時女子高校生だったくらいの年齢の女性が多く観に来ていました。皆さん、当時を懐かしんでいたのでしょうね。
カメラを止めるな!(30.8.31) 
監督  上田慎一郎 
出演  濱津隆之  真魚  しゅはまはるみ  長屋和彰  細井学  市原洋  山崎俊太郎  大沢真一郎  竹原芳子  吉田美紀  合田純奈  浅森咲希奈  秋山ゆずき  山口友和  藤村拓矢  イワゴウサトシ  高橋恭子  生見司織 
 ゾンビチャンネルのスタートを記念して、ゾンビ映画を撮影しながらそれを生放送で放映することとなる。何かと噂のある廃墟の浄水場で撮影が始まったが、その最中に本物のゾンビが現れる。リアリティにこだわる監督が噂通りに建物の屋上に五芒星を描いて血をぶちまけたためだった。本気で逃げ惑う俳優たちとスタッフだったが監督は撮影を続行しカメラを回し続ける。やがて、ひとり、またひとりとゾンビに噛まれ、ゾンビ化してしまうが・・・。
 冒頭のゾンビ映画の場面、37分間がワンカットで撮られていきます。ゾンビ映画(といっていいのか・・・)ですが、恐ろしくはありません。もちろん、血だらけのシーンもありますが、思わず笑ってしまう場面が多いです。なんだか素人が撮ったような映画だなあと思いながら観ていました。
 当初、上映館2館で公開された映画が、SNSで「おもしろい!」と評判を呼んで、今では300館を超える上映館となっています。何を話してもネタバレになってしまうので、ここでは最低限のことしか書くことができませんが、最初の37分間のワンカットで描かれた部分に様々に張られた伏線を残りの60分間で回収していく作品といっていいでしょう。ただの「ゾンビ映画」ではありません。親子の関係を描いた作品でもあります。ラストは親子の愛が表れていて感動ですよ。
 無名の監督の無名の俳優たちによる映画がここまで評判を呼んだのは、もちろん昨今のSNSでの情報の拡散ということも大きかったでしょうけど、低予算の映画であっても、面白い作品であれば客が来るということですね。
 それにしても、プロデューサー役の女優さんはインパクトありましたねえ。 
MEG ザ・モンスター(30.9.7) 
監督  ジョン・タートルトープ 
出演  ジェイソン・ステイサム  リー・ビンビン  レイン・ウィルソン  ルビー・ローズ  ウィンストン・チャオ  クリフ・カーティス  マシ・オカ  ペイジ・ケネディ  ジェシカ・マクナミー  ロバート・テイラー  ソフィア・ツァイ  オラフル・ダッリ・オラフソン 
 レスキューダイバーだったジョナス・テイラーは、海底に沈んだ原子力潜水艦の救助に行った際、巨大な生物による攻撃を受けたとして、途中で救助を止めたため、責任を追及され、レスキューダイバーの一線から退くこととなった。5年後、海洋の研究施設ではジャン博士らの研究チームが未知の海溝を発見し歓喜に包まれていた。しかし、探査船は正体不明の巨大生物に攻撃され運転不能となってしまう。ジャン博士はジョナスに助けを求め、彼は探査船に乗り込んでいる元妻のために深海へと向かう。そこでジョナスが見たのは、全長23メートルに及ぶ太古に滅びたとされる巨大サメ、メガロドンだった。探査船の乗組員の一人、トシの自己犠牲によりどうにか脱出することができたが、彼らの脱出の際に深海との間の層に穴が開き、そこからメガロドンが深海より大海に侵入してきてしまう・・・。
 普通の人食いサメでさえ恐ろしいのに、それが体長23メートルとクジラより大きいのですから恐怖です。人間なんてサメに噛まれるのではなく、飲み込まれてしまいます。でも、食い千切られた腕が海に漂っているシーンはありますが、それほどの残酷描写はありません。こうした映画にはお決まりの「傲慢な偉い人が餌食になる」というシーンはもちろんあります。
 主役のジョナス・テイラーを演じたのはジェイソン・ステイサム。この人、不死身ですねえ。ラスト、死ぬのかと思ったら、しぶとく生き残りました。
 中国資本がかなり入っているのか、ヒロインは中国人女優のリー・ビンビンに、ジャン博士も台湾人俳優のウィンストン・チャオです。自己犠牲のトシも中国系の俳優かなと思ったら、テレビドラマ「ヒーローズ」で人気の出た日系人のマシ・オカでした。
 ところで、メガロドンは通常は深海と大海の間にある層のため、深海から大海に出てこれないと説明していたのに、5年前に原子力潜水艦を攻撃したメガロドンはいったいどこからきたのでしょうか。そもそも今回の事件以前に大海を泳いでいたことになりますよね。ちょっと話に齟齬があるのでは。 
ヒトラーと戦った22日間(30.9.14) 
監督  コンスタンチン・ハベンスキー   
出演  コンスタンチン・ハベンスキー  クリストファー・ランバート  フェリス・ヤンケリ  ダイニュス・カズラウスカス  マリア・コジェーブニコワ  セルゲイ・ゴディン  ロマーン・アゲエフ  ゲラ・メスヒ  ミハリナ・オルシャンスカ  イワン・ズロビン  ファビアン・コチェンスキ  ウォルフガング・キャニー  カツベル・オルシェフスキ 
(ネタバレあり)
 第二次世界大戦下の1943年、ポーランドに作られたユダヤ人強制収容所で実際に起こった脱走事件を描いた作品です。
 ポーランドにあるソビボル絶滅収容所には、毎日貨物列車で各地からユダヤ人が送られてきていた。ユダヤ人は手に技術のあるものを除き、伝染病を防ぐためシャワーを浴びると言われてガス室へと送りこまれ、殺されていた。収容所内で抵抗組織を組織するレオは軍隊経験のあるサーシャをリーダーにして、脱走を計画する。しかし、ソ連軍の進行に伴い他の収容所で閉鎖の前に全員が殺戮されていることを知ったサーシャらは、急遽全員での脱走を試みるが・・・。
 身ぐるみはいで髪の毛も切り、ガス室で死んだ死体からは金歯も取る、身体にアルコールをかけて火をつける等々の残虐な行為に改めて戦争の悲惨さを感じないわけにはいきません。ユダヤ人を家畜以下にしか考えない、ナチスのゲルマン民族至上主義は狂気以外の何ものでもありませんが、これが戦争なのでしょう。エンドロールの中で、脱出できたひとりのユダヤ人が戦後ブラジルに逃げたナチスの残党を十何人も殺害したと出ますが、あれだけの仕打ちを受けたのですから憎しみが消えなかったのもうなづけます。
 冒頭、電車から降りる綺麗なユダヤ人女性がおり、この人、きっとこの映画の中で重要な役どころなんだろうなあと思ったら、あっという間にガス室送り。これは予想外でした。
 収容所からの脱走映画ですが、「大脱走」のような観ていてワクワク感はありません。史実が伝えるその結果は悲惨です。ラストシーン、父母と幼い妹をガス室で殺された青年が片足を引きずりながら荒野の先を目指していく様子が描かれます。観ていて「撃たれるなよ、撃たれるなよ」と力が入ってしまいました。 
1987、ある闘いの真実(30.9.14)
監督  チャン・ジュナン
出演  キム・ユンソク  ハ・ジョンウ  ユ・ヘジン  キム・テリ  ソル・ギョング  パク・ヘスン  イ・ヒジョン  カン・ドンウォン  ヨ・ジング
 1987年のチョン・ドファン軍事政権下の韓国を描いたほぼ実話に基づく作品です。
治安当局に拘束されていたソウル大の学生が死亡する。病死として処理し、急いで火葬しようとする当局に対し、疑問を感じた地検のチェ検事は司法解剖を命じる。その結果、治安当局の拷問による死亡が確認されるが、検察にも圧力がかかりチェ検事は辞任することとなる。しかし、チェ検事はその解剖の結果を密かにマスコミに流し、マスコミは治安当局による拷問死だと報道する。治安当局のパク所長は批判をかわすため、二人の刑事に言い含めて、事件の加害者として差し出すことにより事件の終結を図ろうとするが・・・。
1987年といえば、日本ではバブルの始まりで、世の中が好景気に浮かれていた時代です。そんな時代にお隣の韓国では日本の安保闘争の時代のような学生運動が起こっていたということですが、対岸の火事だったんですね。韓国の報道規制もかなりのものがあり、海外へ伝わってこない部分もあったのでしょうけど。それにしても、わずか30年ほど前に、正義を行うはずの警察が日本の戦前の特高警察のような非道な行いをしていたとは驚きです。
 そんな軍事政権下のもとでも民主化を求める勢力はあり、非道な公安当局を批判して真実を明らかにしようとする検事や看守、そしてマスコミがいたことは、韓国の良心を表すものです。
 最初はデモなんかしても何も変わらないと言っていた女子大生のヨニが、看守だった叔父が公安当局により捕らえられたことから、次第に民主化運動に関わっていき、ラスト、バスの屋根の上に乗ってシュプレヒコールを上げる姿に感動します。
 反体制勢力を嫌悪する公安当局のパク所長は、幼い頃、北朝鮮によって家族を殺されており、その場面を隠れて見ていたという設定ですから、北への嫌悪は相当なものがあったことは理解できます。今、南北首脳会談が行われていますが、果たして国民の心の奥底に流れるこうした憎しみを融和することができるのでしょうか。 
コーヒーが冷めないうちに(30.9.24) 
監督  塚原あゆ子   
出演  有村架純  伊藤健太郎  石田ゆり子  波瑠  林遣都  深水元基  松本若菜  薬師丸ひろ子  吉田羊  松重豊 
 ある席に座ると、自分が行きたい時間に行くことができるという噂のある喫茶店「フニクリフニクラ」。この物語はその席に座ってタイムトラベルをする4人の男女を描く物語です。
 タイムトラベルものは好きですし、4回泣けるという宣伝文句だったので、期待して観に行ったのですが、う~ん・・・正直のところ期待外れでした。このところ涙腺が弱くなった僕でも1回も涙をこぼすことができませんでした。
 とにかく、何の説明もなく、前提として“その席に座ると願った時間に行くことができる”というのが個人的にダメです。なぜ、そこの席に座るとタイムトラベルをすることができるのとか、どうして代々時田家の女性が注いだコーヒーでなくてはだめなのとか説明してもらいたいと思ってしまうのです。そもそも、タイムトラベルには喫茶店の席とコーヒーが必要なのですから、「代々時田家の女性が」といっても、そんな何代も続いている訳はないでしょうし、説明があってもねえ。まあ、タイムトラベルしようとする理由を描くことで感動を求めるのが主眼のようですから、それも致し方ないのでしょうか。
 この作品で目新しいのは、タイムトラベルものでは「過去は決して変えてはいけない」というルールがあって、過去を変えようとしてもだいたい邪魔が入るのですが、この作品では最初から「過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない」というルールが知らされていること。それでも過去に戻りたいですかということですね。
 原作は電子書籍で購入したまま読んでいないのですが、原作は、結婚を考えていた彼氏と別れた女の話(「恋人」)、記憶が消えていく男と看護師の話(「夫婦」)、家出した姉とよく食べる妹の話(「姉妹」)、この喫茶店で働く妊婦の話(「親子」)ですから、映画とはちょっと設定が異なっているようです。泣くことはできませんでしたが、4話の中ではやはり、認知症になったのが夫と妻で原作と逆の設定になっていましたが、「夫婦」の話が一番ですね。とにかく、夫婦を演じた松重豊さんと薬師丸ひろ子さんの演技が秀逸。特に、妻を見つめる松重豊さんのいつもは怖い顔とは異なるやさしい表情が何とも言えません。 
ヒトラーを欺いた黄色い星(30.9.23) 
監督  クラウス・レーフレ 
出演  マックス・マウフ  アリス・ドワイヤー  ルビー・O・フィー  アーロン・アルタラス 
 第二次世界大戦中、ナチスはユダヤ人を絶滅収容所へと送り、ガス室にて虐殺を図りましたが、この映画では、ナチスの宣伝相ゲーリングがベルリンからユダヤ人を一掃したと発表した後も7000人のユダヤ人が隠れ住み、戦後まで1500人が生き永らえたことを、4人のユダヤ人を主人公に本人たちのインタビューを織り交ぜながら描いていきます。
 有名な「アンネの日記」のアンネも、この状況下で隠れ住んだ人たちの一人だったのでしょうが、どこにスパイがいるかわからない状況で、疑心暗鬼になって密告のし合いも横行していたとされる中、集合住宅の中で隠れ住むということはかなり難しいものだったに違いありません。
 アンネとは異なり、ここで描かれる4人は、ツィオマは身分証偽造という特技でベルリン内の空き室を転々としながら金を稼ぎ、ルートはドイツ軍将校の家でメイドとして働き、オイゲンはヒトラー青少年団の制服で素性を隠して反ナチスのビラ作りを手伝い、ハンニは髪を金髪に染めてドイツ人を装うなどしてドイツ人の中に紛れ込んで暮らしていた人たちです。しかし、それには4人ともユダヤ人だけでなく、ドイツ人の手助けで匿われていたという事実があります。ドイツ人の中にもヒトラーの考えに表面的には賛成していても裏では反発していた人がいたのでしょう。
 戦争を生き抜いて年を取った実際の4人が登場しますので、現実感が伴います。
※「黄色い星」というのは、ナチスがユダヤ人であることがわかるように胸につけさせた印のことです。 
散り椿(30.9.28) 
監督  木村大作   
出演  岡田准一  西島秀俊  黒木華  池松壮亮  麻生久美子  緒形直人  新井浩文  柳楽優弥  芳根京子  駿河太郎  渡辺大  石橋蓮司  富司純子  奥田瑛二 
 葉室麟さん原作の同名小説の映画化です。
 平山道場の四天王の一人である瓜生新兵衛は8年前、勘定方であった親友の榊原采女の父・平蔵の不正を糾弾したが、聞き入られず、藩を追われ、妻と一緒に国を出ていた。その後、平蔵が何者かによって斬られたため、藩内には犯人は新兵衛ではないかという噂が立っていた。そんな新兵衛が亡き妻の死ぬ間際の願いを聞き、城代家老の専横に対抗して若き城主を盛り立てようとする今では側用人となった采女を助けるため城下に戻ってくる・・・。
 物語は、采女の父を殺害したのは誰かという謎を抱えながら、かつて妻が采女を慕っていたことから、采女に対して嫉妬心を持ちながらも妻の願いを聞き入れて采女を助ける苦しい心の裡を持った新兵衛の姿を描いていきます。
 岡田准一くん、カッコいいですねえ。着物を着ていてもその下の筋肉もりもり感がわかります。惜しいかな、もう少し上背があればねえ。采女役の西島秀俊さんが背が高いので、並ぶとちょっと見劣りしてしまいます。
 新兵衛の妻・篠の妹・里見を演じているのは黒木華さんですが、この後「日日是好日」や「億男」、「ビブリア古書堂の事件手帖」に出演するなど、超売れっ子です。どちらかというと、彼女の容貌は時代劇に相応しいですね。 
クワイエット・プレイス(30.9.29) 
監督  ジョン・クラシンスキー   
出演  ジョン・クラシンスキー  エミリー・ブラント  ミリセント・シモンズ  ノア・ジョプ   
 宇宙から飛来した生物によって人類が滅亡の危機に瀕する世界で助け合って生き延びようとする家族を描く作品です。
 宇宙から飛来した視力はないが聴力が異常に発達している生物により、人類は滅亡の危機に瀕していた。リーとエブリンと三人の子ども、リーガン、マーカス、ボーのアボット一家族は音を立てないよう静かに暮らしていたが、ある日物資を調達しに出かけた際、末子のボーがおもちゃで音をたててしまう・・・。
 音をたてられない世界なので、会話もできず、冒頭しばらくはサイレント映画を見ているようです。ここで監督が上手いのは娘が聴覚障がい者という設定にして、家族が手話ができるのが不自然ではないことにしていることです。でも、そのほかは突っ込みどころ満載です。裸足で外を歩いていますが、いくらなんでもケガをしてしまうでしょう。また、一番の疑問点は、宇宙生物は、人間がたてる音以外には反応しないこと。いったいどこで人間がたてた音か自然の音かを聞き分けているのでしょうか。滝のそばでは滝から水が落ちる音に紛れるから声を出しても大丈夫ということなら、滝の近くで生活すればとも思います(電気がないからダメか。でも、そもそも人類が滅亡の危機の中、電気はどうやって発電しているのでしょうか。)。それに、赤ちゃんは生まれた時に絶対泣くのだから、あの状況下で子どもを作るのはダメでしょう。他の子どもたちまでも危険にさらすことになるのがわからないのでしょうか。階段の釘も思わせぶりだったですねえ。絶対、宇宙生物が踏むと思ったのに・・・。とにかく、おかしいなと思うところが書き出したらいっぱいあり過ぎます。予告編を見た時は期待が大きかったのですが、これは期待外れでした。ラスト、あの形で終わったのは、続編を考えてのことでしょうか。
 父親のリーを演じたのが監督のジョン・クラシンスキーで、妻役のエヴリンを演じたエミリー・ブラントが実生活でも妻だそうです。エミリー・ブラントといえば、細身の身体ながら「ボーダーライン」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で戦う女のイメージが強いのですが、この映画でもラストその片鱗を見せてくれました。
 ちなみに娘のリーガンを演じたミリセント・シモンズは本当に耳が聞こえないそうです。 
あの頃、君を追いかけた(30.10.12) 
監督  長谷川康夫 
出演  山田裕貴  齋藤飛鳥  松本穂香  佐久本宝  國島直希  中田圭祐  遊佐亮介  生田智子  中村育二 
(ちょっとネタバレ)
 2011年に台湾で公開され、日本では2013年に公開された台湾映画のリメイクです。
 オリジナルの台湾映画はおじさんたちが観ても心揺さぶられる映画で、当時観に行ったときも劇場内は年配のおじさん、おばさんがほとんどだったのですが、今回は、やはりヒロイン役が“乃木坂46”の齋藤飛鳥さんだったせいもあって、場内は乃木坂ファンの若い男の子、それも二人連れ、三人連れの男の子たちが目につきました。逆に年配の客はひとりのみというちょっと肩身が狭い思いをしました。
 ストーリーはオリジナルとほぼ同じ。カメラの構図もオリジナルと全く同じところが多く、監督がオリジナルを尊重している様子が伺えます。ストーリーの大事なシーンである願い事を書いた紙の風船を飛ばすシーンは、オリジナルと同じ台湾の有名な観光地に行って撮影しているくらいです。パラレルワールドということを前面に押し出したシーンとされていますが、さすがに違和感があります。
 大きく異なったのは、オリジナルではギデンズ・コー監督が、自分の青春時代をそのまま撮りたいように撮ったため、若い男子が性欲を発散させる場面もおもしろおかしく描かれていましたが、その部分は全面的にカットとなっています。齋藤飛鳥さんが出演している映画で、オリジナル同様にオナニーシーンを派手に描くのは無理があったのでしょうね。それと、オリジナルでは社会に出た友人たちは高校時代に夢見ていた通りにはなっていませんが、こちらでは皆それなりに夢をかなえているというハッピーな結果となっています。個人的には、夢を追いかけて頑張っても夢が叶わないこともあるというオリジナルの方が好きです。
 主役の浩介役の山田裕貴くんはオリジナルのコートンの雰囲気にぴったりでしたが、真愛役の斎藤飛鳥さんはファンには申し訳ありませんが、オリジナルのチアイーを知っている者としてはちょっとがっかり。確かに可愛い女の子ですけど、オリジナルのチアイーの芯の強さは感じられませんでした。オリジナルでチアイーを演じたミシェル・チェンに軍配が上がります。 
音量を上げろタコ!(30.1013)
監督  三木聡
出演  阿部サダヲ  吉岡里帆  千葉雄大  田中哲司  松尾スズキ  ふせえり  麻生久美子  小峠英二  岩松了  中村優子  片山友希  森下能幸  池津祥子
 ストリートミュージシャンのふうかは歌声が小さく、仲間から愛想を尽かされてグループは解散となってしまう。一方、ロックミュージシャンのカリスマ、シンは悪魔の声と呼ばれる高音ボイスで人気を博していたが、実はこれは薬物を使った声帯のドーピングを行うことにより出る声だった。しかし、薬物接種の影響でシンの喉は破裂寸前、ついに歌っている最中に血を吐き、シンは舞台から逃走する。途中、シンが運転するバイクがふうかにぶつかりそうになったことから二人は知り合う。シンが声帯ドーピングをしていることを知ったふうかはシンを止めるが、シンは制止を振り切り、マスコミにも声帯ドーピングの秘密が漏れる中、コンサートを強行しようとする。しかし、再び血を吐き、コンサートをドタキャンして姿を消してしまう。ふうかは、彼女の元に現れたシンとともに、シンの行方を捜すプロダクションの社長の追及から逃れ、声帯の手術をするため韓国へと向かう・・・。
 シン役の阿部サダヲさんはロックグループ“グループ魂”のボーカルですから、歌を歌うことはお手のものですが、ふうか役の吉岡里帆さんは、見るからに声量のなさそうな感じ。逆にそれだからこそ、最初のシンに音量を上げろタコ!と言われるところはピッタリな役どころでした。まあ、売れっ子になったラストの歌の評価は聞いた人それぞれでしょう。
 物語は、急にふうかが売れっ子歌手になった経過がまったく描かれず、急にラストシーンとなるので、ちょっと戸惑ってしまって本当なら感動のラストシーンもあまり感動することができませんでした。
日々是好日(30.10.13) 
監督  大森立嗣 
出演  黒木華  樹木希林  多部未華子  鶴見辰吾  鶴田真由  山下美月  原田麻由  川村紗也  滝沢恵  郡山冬果  岡本智礼 
 9月に亡くなった樹木希林さんの出演する作品です。大学生の頃に母親の勧めで近所の茶道教室に通い始めた典子が茶道の奥深さに触れて成長していく様子を描きます。
 ほとんどが茶道の場面です。それ以外は典子と家族との団欒や茶道教室に一緒に通う従姉妹の美智子との語らいのシーンくらいです。地味な映画です。ただ、眠ってしまうかと思いましたが、意外に最後まで眠らずに観ることができました。これは、茶道のいろいろなルール(?)やシーンが気になったためかもしれません。
 その一つが掛軸。映画の中では床の間に飾られる様々な掛軸が登場します。季節に合わせてかけ替えられており、これが“風流”っていうものなのでしょうね。滝の文字が書かれた掛軸なんて、まさに文字が滝のようでしゃれています。それと、お茶請けとして出される和菓子。味は分かりませんが、あの季節を見事に表す造形美には感動します。日本の和菓子って凄いですよね。職人さんの技術の素晴らしさに拍手です。
 樹木希林さんは、典子の通う茶道教室の武田先生役。茶道はやったことがないようですが、そこは名女優ですから、いかにも長年の経験がある先生という演技でした。いつもながらのとぼけた味わいのある演技です。
 典子を演じた黒木華さんと、従姉妹の美智子を演じた多部未華子さんは、見た目があまりに対照的。和風な顔立ちで落ち着いた感じのある黒木さんに対して、多部さんは彫りの深い目力の強い元気な娘という感じです。でも、黒木さんは実際は音楽はパンクやロックが好き、映画も洋画が好きでゾンビ映画やホラーもよく観るそうですから、印象とは全然違いますね。
 結婚直前に相手に裏切られて破談になったり、新たな恋があったりしたことが語られますが、結局ラストで40半ばになった典子は結婚したのでしょうか。 
億男(30.10.19) 
監督  大友啓史 
出演  佐藤犍  高橋一生  黒木華  池田エライザ  沢尻エリカ  北村一輝  藤原竜也 
 川村元気さん原作の同名小説の映画化です。
 大倉一男は保証人となった兄の借金の返済のため、昼間は図書館で司書をし、夜はパン工場でバイトをする毎日に疲れ切っていた。別居している娘と会った日、商店街でおばあさんからもらった福引券で宝くじ10枚が当たったが、なんとその宝くじが3億円に当選する。高額の当選金をどうしたらいいか考えた時に浮かんだのは、大学の同級生で今は起業して自己資産200億と言われている古河九十九。一男は九十九に連れられて行ったパーティーでしこたま酒を飲んで酔いつぶれ、目覚めると九十九は3億円の金と一緒に姿を消していた。一男パーティーで知り合ったあきらという女性の紹介で、かつて九十九が一緒に会社を経営していた3人の男女を訪ね歩く・・・。
 宝くじの高額当選者になったことがないので、実際は知らないのですが、確かに最初銀行で映画で描かれていた高額当選者用の冊子をもらうようですね。日頃、大金に縁のなかった人が大金を手にしてついつい気が大きくなってしまうことは、想像できます。まあ、一男が牛丼の並盛を大盛にして卵を付けるなんてかわいいものです。
 一男が訪ね歩く3人を、それぞれ北村一輝さん、藤原竜也さん、沢尻エリカさんが演じていますが、男二人のキャラが凄い。北村さんは、ぶくぶくと太った体型に大阪弁のキンキン声で、まるで漫画の世界のキャラ。これまでの北村さんが演じたキャラとは大違いです。北村さん、弾けてしまいましたねえ。一方、藤原竜也さんも太って腹が出ていますが、これって本物のお腹なんでしょうか、それともお腹に何か入れているのでしょうか。本物のお腹であれば、ちょっとイメージダウンだと思うのですが、藤原さんも、北村さんも楽しく演じているという感じです。
 一男が娘のバレエを止めさせることを妻に相談したら、糾弾されましたが、でも仕方ないでしょうにねえ。そのために、一男が夜も昼も働いているのに離婚を求めるばかりで何とも感じないのかなあ。一男の妻を演じたのは黒木華さんです。先日観た「日日是好日」にも出演していましたが、今後も「ビブリア古書堂の事件手帖」や「来る」にも出演します。今年の彼女の活躍は凄いです。
 さて、この物語がどうなるのかは、大学時代一男と九十九が落語研究会の部員であったことが大きく関係してきます。 
エンジェル 見えない恋人(30.10.20) 
監督  ハリー・クレフェン 
出演  フルール・ジフリエ  エレナ・レーヴェンソン  マヤ・ドリー  ハンナ・ブードロー   
 マジシャンの恋人が失踪し、心を病んだルイーズは病院で息子を生み、エンジェルと名付けて育てる。しかし、エンジェルは誰にも姿が見えない、いわゆる“透明人間”だった。やがて、病室で成長したエンジェルは窓から近所の屋敷に住む少女を見つけ、ルイーズが寝ている間に病室を抜け出して少女の元に行く。マドレーヌという名の少女は盲目であったが、やがて二人は心惹かれ合っていく。しばらくして、マドレーヌは目の手術をすることとなる。目が見えるようになれば、あなたの姿を見ることができるというマドレーヌに、エンジェルは他人からは自分の姿が見えないという秘密を伝えることができなかった・・・。
 盲目の少女と透明人間の恋というファンタジックな設定の映画です。きっとアメリカ映画ならもっと心温まるほわっとした映画になると思うのですが、フランス映画だと、なんだか難しい感じになってしまいます。設定から想像してもう少しユーモアもあるファンタジー映画と期待して観に行ったのですが、エロティックなシーンも多かったし、予想外でした。
 姿を消すマジックが得意な父親の子どもが透明人間というのは、ちょっと皮肉。 
あいあい傘(30.10.26) 
監督  宅間孝行 
出演  倉科カナ  立川談春  市原隼人  原田知世  入山杏奈  高橋メアリージュン  やべきょうすけ  トミーズ雅  永井大  大和田獏  金田明夫  布川隼汰  越村友一  サブリナ・サイン   
 俳優の宅間孝行さんが、主宰していた劇団で上演した作品を映画化したものです。娘が幼い頃、ある事情で失踪し、他の場所で別の家族を作っていた父に会うために娘がやってきたことから起きる騒動を描いていきます。
 演出のせいでしょうか、特に前半は、主演の倉科カナさんにせよ、市原隼人さん、高橋メアリージュンさん、やべきょうすけさんも演技が過剰すぎる上に、会話も現実の生活の中で交わされる会話とは思えない部分が多すぎます(飲食店の中で「ウンコ」がどうこうと普通は大声で話しますかねえ。)。そこは、舞台と映画の演出の違いがあるのではないでしょうか。逆にいつもどおりの演技をしている原田知世さんが浮き上がってしまうくらいです。そのため、号泣する映画と謳っていましたが、最初から物語の中に入っていくことができず、泣くことができませんでした。
 ただ、ラストで実はあの人とこの人はこんな繋がりがあったと、伏線が回収されていくシーンがありましたが、そこは、「なるほどなぁ~」と感動です。
 物語の舞台が長野県に近い山梨という設定だったので、どこなんだろうと思って観ていましたが、実際に山梨が舞台となっているのはお祭りをする神社くらいで、街並みを見下ろす場所は栃木県のようですね。 
ビブリア古書堂の事件手帖(30.11.1) 
監督  三島有紀子 
出演  黒木華  野村周平  成田凌  夏帆  東出昌大  神野三鈴  高橋洋  酒匂芳  桃果  渡辺美佐子   
 三上延さん原作の同名小説の映画化です。鎌倉で開業するビブリア古書堂の店主・篠川栞子と幼い頃祖母が大事にしていた本を触って怒られて以来、本を読むことができなくなってしまった五浦大輔との物語です。ストーリーは、大輔の祖母が大事にしていた夏目漱石全集の中の1冊「それから」に隠された若き頃の祖母の恋を描くとともに、栞子の持つ太宰治の「晩年」の初版本に執着する謎の人物との争いが描かれます。
 栞子を演じるのは黒木華さん。このところ出演作が次々と公開されている女優さんですが、TV版で栞子を演じた剛力彩芽さんに比べると、さすが演技力に定評がある黒木さん、原作の栞子の雰囲気にピッタリです。原作のカバー絵のような人を期待すると、そこはちょっと異なりますが。
 原作と違うのは、祖母の恋の物語が詳細に描かれていることと、これはちょっとなぁと思ったのは、太宰治の「晩年」を巡る争いの決着が異なること。栞子の本への愛(それも普通の人から見れば、異常とも思えるほどの本への執着)を描くにはやはり原作どおりの決着の仕方に描いてほしかったと思います。映画で描かれる栞子の行動では当たり前すぎて、本当の栞子の姿ではありません。 
スマホを落としただけなのに(30.11.2) 
監督  中田秀夫 
出演  北川景子  田中圭  千葉雄大  成田凌  原田泰造  バカリズム  要潤  高橋メアリージュン  酒井健太  筧美和子  桜井ユキ  北村匠海 
 派遣社員として働く稲葉麻美には以前派遣されていた会社で知り合った恋人の富田がいる。ある日、うっかり者の富田がタクシーの中にスマホを忘れてしまい、無事戻ってきたが、その日以来麻美の周囲で奇妙なことが起き始める・・・。
 映画でも描かれますが、スマホの中は個人情報の宝庫です。電話帳は入っていますし、LINEやメール、更にはスマホで撮った写真もそのまま保存されています。この映画のようにITに詳しい人が拾ってパスワードを解除されたらと思うと怖いです。
 この作品は、スマホを拾われたことにより、個人情報が奪われネットに晒されたり、偽の情報が流されたりして恐怖を覚えるだけでなく、麻美が富田にも隠していたある事実が明らかになっていく様子が描かれます。いったい麻美につきまとう人物は誰なのか、麻美が隠しておきたいものは何なのか。また、並行して語られる風俗嬢の連続殺人事件とどんな関連があるのか・・・。
 麻美を演じるのは北川景子さん。相変わらず綺麗です。髪が肩までの長さの姿も見せてくれますが、これもお似合いです。恋人の富田を演じるのは田中圭さん。このところ、主演したテレビ番組が賞を取るなど、なぜか大人気ですね。ちょっと気弱な印象も併せ持つのが女性の人気の高いところでしょうか。IT企業から警察官に転職した加賀谷を演じるのは千葉雄大さん。元々幼い顔立ちの千葉さんですが、彼の行動がちょっと気持ち悪い。風俗店で見せるあの顔はいかにもという感じでやりすぎです。
 映画を見終わった後は、スマホにはしっかりロックをかけ、パスワードは簡単に想像できないものにしなくてはと思わせてくれる1作です。 
ヴェノム(30.11.2) 
監督  ルーベン・フライシャー   
出演  トム・ハーディ  ミシェル・ウィリアムズ  リズ・アーメッド  スコット・ヘイズ  リード・スコット  ジェニー・スレイト  メローラ・ウォルターズ  エミリオ・リベラ 
 宇宙ロケットによって他の星への移住を計画するカールトン・ドレイクに率いられるライフ財団は、宇宙生命体シンビオートを捕獲し、地球へと持ち帰る。ドレイクは人間を宇宙での暮らしに順応できる身体に作り変えようと、シンビオートを使った人体実験を行う。テレビ局で記者として働いていたエディ・ブロックは、ライフ財団が危険な人体実験をホームレスを利用して行っていることをライフ財団の顧問弁護士であった恋人のアン・ウェイングのパソコンから知り、ドレイクに問い詰めるが、逆にライフ財団の圧力により会社をクビになり、アンとも別れることになる。その後、エディはライフ財団のドラ・スカース博士の手引きで密かにライフ財団に侵入し、そこで知り合いのマリアが被験者として捕まっていることを知って助けようとするが、逆に彼女にとりついていたシンビオートに寄生されてしまう・・・。
 マーベル・コミックのキャラクターですが、マーベル・シネマティック・ユニバースには登場していません。マーベル・スタジオは製作に関わっていないそうです。元々はスパイダーマンに登場する悪役で、「スパイダーマン3」でブラック・スパイダーマンになった時に身にまとったのがこの“ヴェノム”でした。今作にはスパイダーマンは登場しません。エディが寄生されてヴェノムとなり、他のシンビオートと戦う様子が描かれていきます。エディに寄生したシンビオートが地球やエディの身体を気に入ったにしても他のシンビオート、それも自分より強い存在を倒そうとする理由がよくわかりませんけど。
 エディを演じるのはトム・ハーディ。ヴェノムはビラン(悪役)ですから、それになる者が善人顔ではうまくありません。それからすると、トム・ハーディの面構えはビランにはピッタリですね。
 ラスト、ウディ・ハレルソン演じる監獄に収監されている殺人鬼・クリータス・キャサディが登場しますが、彼が次作の悪役なんでしょう。 
ボヘミアン・ラプソディ(30.11.19) 
監督  ブライアン・シンガー 
出演  ラミ・マレック  ルーシー・ボーイントン  グウィリム・リー  ベン・ハーディ  ジョセフ・マッゼロ  エイダン・ギレン  アレン・リーチ  トム・ホランダー  マイク・マイヤーズ  アーロン・マカスカー 
 一足先に観に行った息子が「これは感動した!」と興奮して帰ってきたので、では観てみるかという軽い気持ちで観に行ってきました。確かに息子の言ったとおり。これはおすすめです。クイーンファンならずとも、見応えのある作品となっています。
 会場内は若き頃クイーンファンだったろうなあと思う年配の客がかなり見受けられました。物語はクイーンの結成から1985年のアフリカ難民救済のための寄付を募るチャリティコンサート「ライヴエイド」までの約15年のフレディ・マーキュリーの人生を描いていきます。
 ボーカルのフレディ・マーキュリーは途中で髪を切り、口髭を生やして上はランニングシャツというかなりマッチョな姿になり、イメージを変えましたが、映画でも描かれているように彼はゲイ。そのため、愛する妻とは別れ、ゲイの友人に踊らされてメンバーとは距離を置き、更に最終的にはこの信頼していたゲイの友人には裏切られ、そしてエイズに感染するという波乱万丈の人生を送ります。そんな傷ついたフレディ・マーキュリーが最後に助けを求めたのが、一度は袂を分かったメンバーたち。再び彼らとともに舞台に臨むラストの「ライヴエイド」のシーンが圧巻です。20分間ちょっとの中で歌われる「ボヘミアン・ラプソディ」などのクイーンのヒット曲に引き込まれます。
 フレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックは、かなりフレディ・マーキュリーの仕草を研究したそうで、あとでYoutubeの「ライヴエイド」の実際の映像と比べてみても、そっくりでした。 
人魚の眠る家(30.11.19) 
監督  堤幸彦 
出演  篠原涼子  西島秀俊  松坂慶子  坂口健太郎  川栄李奈  山口紗弥加  田中哲司  斉木しげる  大倉孝二  駿河太郎  田中泯  利重剛
 東野圭吾さん原作の同名小説の映画化です。東野さん原作といっても、内容はミステリではありません。東野さんが“脳死”というテーマに正面から取り組んだ作品です。
 播磨薫子と夫・和昌は和昌の浮気が原因で娘の瑞穂の小学校受験後に離婚をすることになっていた。ところが、プールに行った瑞穂が溺れて命は助かったものの脳死状態となってしまう。薫子と和昌は一度は臓器移植に同意をしたが、弟の呼びかけに瑞穂の指が反応したことで、まだ生きていると臓器移植を拒否する。和昌は会社で研究中のANC(人工神経接続技術)が瑞穂に使えるのではないかと、研究者の星野に娘への処置を依頼する・・・。
 人間の“死”は、いったいどんな状態になったことをいうのでしょうか。現在では脳死判定がされると、人間は死んだとされ、臓器移植もできるようになります。しかし、肉親からすれば、特に子どもの親からすれば、心臓が動いているのに死んでいると言われても、なかなか納得できないかもしれません。逆に、意識がない者に対し、電気刺激で手を動かし、顔の筋肉を動かして、あたかも笑っているような表情を作ることが、生きていると言えるのでしょうか。ここは非常に難しい問題です。
 劇中でも薫子が娘に包丁を突き付ける場面がありますが、果たして包丁を突き刺した場合、薫子は殺人罪に問われるのでしょうか、それとも死体損壊罪に問われるだけなのでしょうか。法曹関係者はどう判断するのでしょう。聞いてみたいです。 
恐怖の報酬(30.11.30) 
監督  ウィリアム・フリードキン 
出演  ロイ・シャイダー  ブルーノ・クレメル  フランシスコ・ラパル  アミドウ  ラモン・ビエリ 
 1953年に公開されたアンリ=ジョルジュ・クルーズ監督作品のリメイクであるウィリアム・フリードキン監督作品です。公開された1977年はあの「スター・ウォーズ」の公開の年。そんなこともあって、日本で公開されたときは監督の許可もなく大幅なカットがなされ、上映時間92分に短縮されたものが公開されました。案の定、観客動員数は伸びず、配給側から見れば失敗作に位置づけられることとなりました。今回公開されたのは、2013年に監督自らデジタル処理したオリジナル完全版で、上映時間も121分と伸びています。
 ストーリーは火災事故を起こした油田の消火のために、消火用のニトログリセリンを現場までトラックで運ぶ4人の男たちを描くというものです。ニトログリセリンといえば僅かな衝撃で大爆発を起こす危険なもの。それを火災現場まで運ぶ道のりでの幾多の困難が描かれていきます。特に圧巻だったのは嵐の中、吊り橋を渡るシーンです。観ているだけで力が入りました。まさしく、手に汗握るというのはあんなシーンですね。現在のようにCGの技術があるわけでもないので、ドキドキ感は半端ではありません。一番の見どころです。オリジナル作品には、この吊り橋のシーンはなかったそうですが。
 カットされていたのは、4人の男たちが南米にやってくることになった経緯のようです。確かに彼らの人生をそれぞれ描くと前半が間延びしてしまうという感はありますが、僕自身はあの4人の背景があったからこそ、男たちが危険な運搬に命を懸ける理由に深みが出たと思います。また、ラストに主人公ドミンゲスを追うマフィアの殺し屋が南米の現地にやってくるというシーンもカットされているそうです。これでは、エンディングの印象がまったく変わってしまいます。 
ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生(30.12.1)
監督  デビッド・イエーツ
出演  エディ・レッドメイン  キャサリン・ウォーターストン  ダン・フォグラー  アリソン・スドル  ジュード・ロウ  ジョニー・デップ  エズラ・ミラー  ゾーイ・クラビッツ  カラム・ターナー  クローディア・キム  ウィリアム・ナディラム  ブロンディス・ホドロフスキー  カルメン・イジョゴ  デレク・リデル
 シリーズ第2弾です。
 前作で捕らえられたグリンデルバルドが欧州への移送の途中で脱獄する。ニュート・スキャマンダーの兄、テセウスら英国魔法省の闇祓いたちは、ホグワーツで教鞭を取るダンブルドアを訪問しグリンデルバルドとの戦いへの協力を要請するが、彼はかつてグリンデルバルドと「血の誓い」を結んでおり協力を断る。脱獄をしたグリンデルバルドは言葉巧みに信奉者を集め、次第に勢力を拡大していく・・・。
 ラストでグリンデルバルドがクリーデンスに本名を教えますが、それがかなり衝撃的。次作になって、この事実がどう展開に影響を見せるのか(当然、大きなものとなるのでしょうが)、これは楽しみです。
 ただ、第二作にして、このシリーズの大枠の展開が明らかになってしまいました。結局、このシリーズもハリー・ポッターシリーズと同じように絶大な力を持つ悪の魔法使いに対し、主人公たちが戦いを挑むというストーリーです。それに際し、愛する者がグリンデルバルド側につくという話も今回語られており、これもよくあるパターンで、今後戦いの中で愛する者同士がお互いに苦しむというストーリー展開になっていくのでしょう。
 前作でも様々な魔法動物が登場し、観る人を楽しませてくれましたが、今回も、ニフラー、ベビーニフラー、ボウトラックルなどの魔法動物が登場します。ズーウーという巨大な猫科の魔法動物は中国に棲息したとされており、これは中国資本がやっぱり参加しているんでしょうか。
 時はハリー・ポッターの時代よりちょっと前で、ホグワーツ魔法学校も出てきますし、そこで教鞭をとる若き頃のダンブルドアも登場します。ハリー・ポッターファンにとっては嬉しいところです。
来る(30.12.7) 
監督  中島哲也 
出演  岡田准一  黒木華  松たか子  小松菜奈  妻夫木聡  青木崇高  柴田理恵  太賀  伊集院光  石田えり 
 第22回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智さんの「ぼぎわんが、来る」の映画化です。原作は、澤村さんの巧みなストーリー展開と読み易い文章でいっき読みでしたし、豪華な出演陣だったので、期待して観に行ったのですが・・・。
 映画は本と異なって映像という視覚に訴えることができるので、どれだけ映像で恐怖を醸し出すことができるのかという点があったと思うのですが、びくっとするような怖さはそれほど感じませんでした。腕がちぎれたり、上半身と下半身が真っ二つになったりというスプラッターシーンはあったものの、グロテスク感はそれほどありません。原作では1章のラストは「えぇ~!!」という驚きの展開でしたが、それも知っていては驚きになりません。ホラーにありがちな音でびっくりさせるという姑息な手段を使っていなかったのは評価できますが。
 出演者は豪華です。ぼぎわんが狙う田原夫婦に妻夫木聡くんと黒木華さん。妻夫木くんはチャラ男がピッタリです。黒木さんもいつもの明るい、清楚なお嬢さんというイメージとは異なって子育てに疲れ切った時にエキセントリックになるお母さんを熱演しています。タバコを吸うシーンは、実際に黒木さんは喫煙家らしいので、様になっていますね。普通であれば、この二人は主演を張る俳優さんなんですが、原作どおり途中で退場ですから贅沢ですよね。
 田原夫妻から除霊を依頼されたライターで何でも屋の野崎を岡田准一くんが演じますが、小柄だけどガタイがいいなあといういつもの印象です。肩のあたりがムキムキなのは服を着ていてもわかります。女性霊媒師、比嘉琴子と真琴の姉妹は、松たか子さんと小松菜奈さん。松たか子さんは、体格的にもかなり貫禄あるように見えましたが、あれは役作りのためでしょうか。小松菜奈さんは金髪に派手な化粧のため、最初は彼女だとわかりませんでした。
 ぼぎわんの怖さが映像ではあまり伝わらず、残念ながら、ホラー映画としてはいまひとつという感じが否めません。 
アリー スター誕生(30.12.21) 
監督  ブラッドリー・クーパー 
出演  レディー・ガガ  ブラッドリー・クーパー  アンドリュー・ダイス・クレイ  デイブ・チャペル  サム・エリオット  アンソニー・ラモス  ラフィ・ガブロンルーカス・ネルソン  グレッグ・グランバーグ  ロン・リフキン  アレック・ボールドウィン 
 アリーは昼はウェイトレスとして働き、夜は小さなバーで歌いながら歌手になることを夢みていた。ある日、有名なミュージシャンのジャクソン(ジャック)・メインがふらりとアリーの歌うバーを訪れる。彼女の歌声に惹かれたジャックはアリーを自分のコンサートに招待し、舞台上へと誘う。大観衆の前で歌ったアリーの歌声は話題となり、やがてジャクソンに導かれながらスターへの階段を上っていく・・・。
 アリーを演じるのはレディーガガ。今まで彼女の歌を真剣に聞いたことはなかったのですが、素晴らしい歌唱力ですね。いつもは派手なメイクをしていますが、今作ではメイクも控え目。あんな派手なメイクをするより、こちらの方が綺麗ですよね。
 アリーを見いだすジャクソン役は監督もしているブラッドリー・クーパーが演じています。歌もなかなかなものです。
 テーマ曲は二人が歌う「シャロウ」ですが、確かにこの歌もいいですが、個人的にはアリーがひとりでピアノを弾きながら歌う「Always Remember Us This Way」が一番。感動してしまいました。
 今回で4回目の映画化となりますが、観たことのあるのは前作のバーブラ・ストライサンドとクリス・クリストファーソン共演の作品です。バーブラ・ストライサンドの歌うスター誕生の愛のテーマ「エバー・グリーン」はいまだに映画音楽として忘れられない名曲ですね。今作の「シャロウ」や「Always Remember Us This Way」も未来に残る歌になりそうです。
 アリーが鼻の大きさにコンプレックスがあると言いますが、そういえばレディ・ガガはバーブラ・ストライサンドに似ています。