走行中のトラックのタイヤがはずれ、歩道を歩いていた母子を直撃、母親は死亡、子どもも怪我を負うという事故が起こる。事故の原因は車の整備不良とされたが、納得のいかない運送会社の社長、赤松は事故の原因を明らかにしようと自動車会社との闘いを始める。そんな彼の前には、警察の家宅捜索、取引銀行からの融資引き上げ、大手取引先からの取引打ち切り、子どもへのいじめと様々な困難が立ち塞がる。
本作品はフィクションであり云々とありますが、どうみたってこれは3つの菱形のマークの自動車会社のリコール隠しの事件がモデルになっているのは疑いようがありません。
あんな財閥系の大手企業が悪いことをするはずがないという盲目的な信頼が誰もの心の中にあったと思いますが、あの事件は大手企業であっても自己の防衛のためには違法なことをすることもあるという事実を消費者の前に明らかにしましたね。この作品の中にも近年企業のコンプライアンスが重要視されていると書かれていますが、あくまでそれは外向きで、企業の利益のためならそれは二の次だろうと疑ってしまいます。
物語は赤松の闘いだけでなく、赤松の行動によって起こった波の中での自動車会社や主力銀行内部での派閥争いも描かれます。単にリコール隠しの暴露の話だけでなく、それぞれの立場でいろいろ暗躍する企業人の行動を描いているところは、非常におもしろく読むことができます。
結果としては予想がつくのですが、やっぱり中小企業の一社長(加えてその従業員たち)が、財閥系企業を相手に徒手空拳で臨みながら、しだいにその行動が悪の核心に迫っていき、ラストは勝利を収めるというところには大いに胸がすきます。読んでいて、最後の展開には思わずジ~ンときてしまいました。今さらながらですが、これはおすすめです。 |