▲2014映画鑑賞の部屋

トリック ラストステージ(26.1.11)
監督  堤幸彦
出演  仲間由紀恵  阿部寛  生瀬勝久  東山紀之  北村一輝  水原希子  野際陽子
     吉田綱太郎  中村育二  石丸謙二郎  池田鉄洋  大島蓉子    
 「トリック」の映画化第3弾にして、これで最終作と謳われた作品です。
 今回は、レアアースが埋蔵していることが発見された「赤道スンガイ共和国」でのレアアース産出をもくろむ会社から依頼され、上田と奈緒子が呪術師に率いられた原住民の採掘地からの立ち退きを説得に行くところから始まります。相変わらずの小ネタ満載ですが、前半は少しダレるかも。ラストは作品に似合わない感動で終わります。なかなかシャレたラストでしたが、う〜ん、やはり番組開始時の14年前と比較すると仲間由紀恵さんは年とったなあという印象です。あのラストですからなおさらその辺りのところは目につきますね。しょうがないですけど。
 清純な雰囲気の仲間由紀恵さんと真面目で堅そうな阿部寛さんが思わぬコミカルな演技で人気の出たこの作品もこれで終わりとなると、ちょっと寂しいです。矢部警部の初代の部下だった金髪の人(たしか芸能界を引退したはずだったのでは)が登場していたのはシリーズファンには嬉しいですね。
ジャッジ!(26.1.17)
監督  永井聡
出演  妻夫木聡  北川景子  リリー・フランキー  鈴木京香  豊川悦司  荒川良々  玉山鉄二
     玄里  田中要次  風間杜夫  でんでん  浜野謙太  伊藤歩  加瀬亮  あがた森魚
     木村祐一  松本伊代  竹中直人  志賀廣太郎  福本清三  柄本時生
 とても楽しい映画でした。さすがに脚本がソフトバンクの“ホワイト家族シリーズ”のCMを手がけた人だけのことはあります。金曜日の仕事帰りに観てきましたが、仕事のストレスを忘れて笑うことができる素敵な作品でした。
 主人公は広告代理店の下っ端クリエイターの太田喜一郎。彼は人を感動させるCMが作りたいと希望を抱いて田舎から出てきたが、上司の大滝一郎からは未だ雑用を言いつけられるか、顧客からの無理難題を彼に代わって押しつけられるばかり。今回も審査員を務める国際的なサンタモニカ国際広告祭に顧客の息子が作ったCMを受賞させないと契約を打ち切ると言われた大滝は、責任を回避するために名前が似ている太田喜一郎を自分の身代わりに仕立てて送り出す(名前が「オオタキ イチロウ」と「オオタ キイチロウ」とはふざけてますよねえ。)。不安に思った太田は、名字が同じで仕事ができるが勝負事に目のない女性社員の太田ひかりに妻として同行を依頼する。受賞させなければ首といわれた太田だったが、生真面目で不正をすることをよしとできずに悩むが、審査会は不正が当たり前。果たして彼の運命はどうなるのか・・・。
 思わず笑いがこぼれてしまうシーンが満載。広告業界の裏側もよく知った人ならではの話です。こんな人だからこそ、あのソフトバンクの犬のCMができたんだなあと思わせる作品です。出発前に審査の指南を受けに行った窓際社員の鏡さんの指南するあれこれには大笑い。でも、これがあとで・・・というところがコメディのおもしろさですね。
 太田喜一郎を演じる妻夫木さん。パンツー枚になってがんばります。きりっとした二枚目より、こういう気の弱い生真面目な三枚目の役がぴったりです。自分の失敗を部下に押しつける大滝役の豊川悦司さんのとぼけた味もいいです。嫌な上司ですが、全然悪人に見えません。彼ら以上の一番の適役だと思ったのは、太田ひかりを演じた北川景子さんです。喜一郎の尻を叩く勝ち気な物言いの女性が今まで見た中で一番のはまり役だったのではないでしょうか。いいですよ。ところどころで、いろいろな役者さんがちょい役で出演しているのも楽しいです。仕事で疲れている人におススメです。
永遠の0(26.1.18)
監督  山崎貴
出演  岡田准一  三浦春馬  井上真央  濱田岳  新井浩文  染谷将太  三浦貴大  上田竜也  田中泯
     山本學  平幹二郎  橋爪功  夏八木勲  吹石一恵  風吹ジュン
 百田尚樹さんのベストセラーとなった同名小説の映画化です。主人公を演じた岡田准−くんファンの妻につきあって観に行ってきました。
 三浦春馬くんと吹石一恵さんが演じる姉弟が戦争で死んだ自分たちの祖父がどういう人物であったかを戦友たちに聞いて回る中で、海軍一の臆病者、自分の命を惜しむ卑怯者という噂の裏側にあった祖父の真実の姿を知っていく話です。
 戦争で死ぬ者を美化するような映画では嫌だなあと思っていたのですが、原作どおりに生きて帰ると言って出征した祖父・宮部久蔵の生き様を戦友たちの目を通して描いていったのでひと安心。いわゆる“戦争映画”のように戦闘場面をひたすら描くということはなく、戦闘場面は最小限にとどめています。
 “お国のために命を捨てる”ことが当たり前で、生き残ることを考えることは罪悪だった時代に、生き残ることを実践することは相当の思いがなければできなかったでしょう。そんな男を岡田准一くんが見事に演じきっています。小柄ですが彫りの深い顔でかっこいいですよね。笑顔は爽やかですし、嫌みがありません。女性がファンになるのも無理ないです。
 平幹二郎さん、夏八木勲さん、橋爪功さん、山本學さん、田中泯さんら名優が岡田くんら若い役者たちの脇を固めます。中でも、暴力団組長役の田中泯さんは静かな中に迫力を見せる凄い演技でした。
鑑定士と顔のない依頼人(26.1.19)
監督  ジュゼッペ・トルナトーレ
出演  ジェフリーラッシュ  ジム・スタージェス  シルヴィア・ホークス  ドナルド・サザーランド  フィリップ・ジャクソン
     ダーモット・クロウリー  リヤ・ケベデ
(ちょっとネタバレあり)
 「ニューシネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品です。TBSテレビの「王様のブランチ」の映画コーナーでミニシアター系ランキング1位だったので、期待して観に行きました。
 美術品の鑑定士にして一流のオークショニアであるヴァージル・オールドマンは元画家のビリーと組んで自分が気に入った作品を安価で落札する不正を行っていた。ある日、彼の元に死んだ両親の残した家具や美術品を鑑定してほしいとの女性から依頼が入る。その女性、クレアは広場恐怖症で、何年もの間屋敷内の部屋に閉じこもっており、姿は見せずに壁越しでしか話をしなかった。屋敷内で本物であれば莫大な価値のあるオートマタ(機械人形)の部品を見つけたヴァージルは修理店を営むロバートの元に行き、組み立てを依頼するとともに、遊び人である彼から若い女性とのつきあいの仕方を学んでいく。次第に、壁の向こうのクレアが気になり始めていくヴァージルだったが・・・。
 人嫌いで老齢に至るまで女性との交際経験もなく、ただ自分のコレクションの女性の肖像画に囲まれているだけで満足しているヴァージル。顔を見せない依頼人のクレア。彼が唯一心を許した若き友人であるロバート、ヴァージルに絵の才能を認められず、今では彼と組んで美術品を不当に安価な額で落札している元画家のビリー。この登場人物たちから、ミステリファンであればストーリーの行き着く先は早い段階で想像できてしまいます。最初は、もしかしたら実は彼女はオートマタだったなんてラストにならないだろうなと危惧したのですが、さすがにそこまでの奇抜な作品ではありませんでした。
 広場恐怖症のクレアが屋敷から出ることができるのか、老いたヴァージルとクレアとの恋はどうなるのか、屋敷の正面にある店にいる数字を常に口にしている女性は果たしてこの映画の中でどんな役目を負っているのか等々観客に気を持たせながら、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の描く結末はあまりに残酷。監督自身はあのラストはハッピーエンドだと言っていると何かで読んだのですが、歯車の回る店に座るヴァージルにあの後いったい何が待っているというのでしょうか。男性の観客からすると後味が悪いラストです。
ゲノム・ハザード(26.1.31)
監督  キム・ソンス
出演  西島秀俊  キム・ヒョジン  真木よう子  浜田学  中村ゆり  パク・ドンハ  イ・ギョンヨン  伊武雅刀
 デザイン会社に勤めるイラストレーターの石神は、誕生日に仕事から帰ってきて、部屋の中で妻の死体を発見する。ところがそこに妻の声で実家に泊まるとの電話が入る。さらに近所で事件が起きたと聞き込みにきた刑事の対応をしているうちに妻の死体が消えてしまう。警察署までの同行を求められた石神だったが、途中で刑事たちが偽物だと気づき、途中で出会った韓国人ジャーナリストカン・ジウォンの助けを借りて逃走する・・・。
 人気俳優・西島秀俊さん主演のサスペンスです。妻の死体の消失、と思ったら妻からの電話、さらに次第に自分の記憶も曖昧となってくる中、正体不明の韓国人たちから逃れながら、真実を探していくというミステリー的な設定に最初は期待して見始めたのですが、どうも話が雑です。そもそもジウォンが絡んでくる必然性があまりない気がします。真実が明らかとなり、石神が実はアレ(ネタバレになるので伏せます)だったとしても、どうして偶然にジウォンと出会うのか、ご都合主義です。ストーリーは別にして、石神を演じる西島秀俊さんのファンの方ならどうぞという映画でした。
 ジウォンを演じたキム・ヒョジンさんは、韓国の女優さんという感じの顔立ちです。どうして韓国の女優さんはスタイルがいいのでしょうと思うほど、足が長い!
アメリカン・ハッスル(26.2.2)
監督  デヴィッド・O・ラッセル
出演  クリスチャン・ベイル  ブラッドリー・クーパー  エイミー・アダムス  ジェニファー・ローレンス  ルイス・C・K
     ジェレミー・レナー  ロバート・デ・ニーロ  マイケル・ペーニャ  アレッサンドロ・ニヴォロ
1979年にFBIがおとり捜査によって大物議員が次々に逮捕され、米政界を震撼させた「アブスキャム事件」という実際にあった事件を題材に描かれた作品です。「アブスキャム」とは、「ARABSCAM=アラブの悪行」の略称で、FBIの捜査官が大富豪のアラブ王族に扮しておとり捜査を行ったことから名付けられたそうです。
 天才詐欺師・アーヴィンとそのパートナーで愛人のシドニーは、ある日、FBI捜査官リッチーによって詐欺の証拠をつかまれ、無罪放免の条件に4人の同業者を売れと持ちかけられる。アーヴィンは、偽物のアラブの大富豪を用意し、詐欺師仲間に騙させ、その現場を押さえてFBIに逮捕させるというものだったが、いつの間にか、その話が大物政治家の汚職を暴くという話へと変わっていってしまう・・・。
 アーヴィングを演じるのは、クリスチャン・ベイル。クリスチャン・ベイルという俳優は相変わらず役作りが凄いですね。「マシニスト」ではミイラのように痩せましたが、今回演じるのは太鼓腹で一九分けの中年男。見るも無残なというかあまりに見事な太鼓腹に変身しています。
 シドニーを演じるのはエイミー・アダムス。最後まで常に胸を強調するセクシーな衣装で男性の目を引きつけます。こういう妖艶なエイミー・アダムスは見たことなかったです。
 アーヴィングの妻にして、自由奔放なロザリンを演じるのは、ジェニファー・ローレンス。「ハンガーゲーム」の少女とは違って、セクシーさではエイミー・アダムスに負けません。さすがアカデミー賞女優です。彼女と「世界にひとつのプレイブック」で共演したブラッドリー・クーパーがFBI捜査官リッチーを演じます。
 賞レースでは、ゴールデン・グローブ賞のコメディ・ミュージカル部門では作品賞に加え、エイミー・アダムスが女優賞、ジェニファー・ローレンスが助演女優賞を獲得しています。3月発表のアカデミー賞には作品賞、監督賞をはじめ、主演男優賞にクリスチャン・ベイル、主演女優賞にエイミー・アダムス、助演男優賞にブラッドリー・クーパー、助演女優賞にジェニファー・ローレンスがノミネートされており、なかでは、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスの受賞が期待大のようです。
 エンドロールにクレジットされていませんが、ロバード・デ・ニーロがチョイ役で出演しています。カメオ出演にしては、さすがデ・ニーロ。存在感が凄いです。
バイロケーション(26.2.28)
監督  安里麻里
出演  水川あさみ  豊原功補  滝藤賢一  浅利陽介  酒井若菜  高田翔  千賀健永
 法条遥さんの同名小説の映画化です。ラストの5分間が異なる2つのバージョンが公開されましたが、僕が見たのは“裏”バージョン。原作とは異なっていたので、“表”は原作どおりのラストだったのでしょうか。裏バージョンの方が救いがあるラストですが、やはりストーリー的には原作どおりの方が衝撃的でいいと思いますが・・・。
 桐村忍は、画家を目指し、仕事を辞めて絵を描く毎日。ある日、買い物に行ったスーパーで偽札を使用したと警察に通報される。やってきた刑事の加納は、彼女を警察ではなくある屋敷に連れて行く。そこには自分のもう一人の存在“バイロケーション”に悩む男女が集まっており、彼女にもバイロケーションが存在すると言われる。やがて、バイロケーションにより本物の存在が殺されるという事件が起きる・・・。
 原作を読んでいたため、法条さんが仕掛けているトリックはわかっていたので、ストーリー自体に驚きはありませんでした。未読の人にとっては、ラストに明らかにされる事実には驚くことができるかもしれません。ただ、ミステリ好きの人には、仕掛けられたトリックはあるパターンなので、予想がついてしまうかも。
 撮影の主な舞台となったのが、僕の地元だったので「ああ、あそこだ!」と観ることができたのは楽しかったです。
偉大なる、しゅららぼん(26.3.8)
監督  水落豊
出演  岡田将生  濱田岳  深田恭子  貫地谷しほり  佐野史郎  津川雅彦  村上弘明  大野いと  渡辺大
     笹野高史  田口浩正  高田延彦  柏木ひなた
 万城目学さんの同名小説の映画化です。
 琵琶湖周辺地域では、琵琶湖の神から人の心を操る能力を授けられた日出家と、人の行動を操る能力を授けられた棗家との長年に渡る争いが続いていた。日出家分家から“力”の修行のために本家にやってきた涼介は、日出本家の跡取り・淡十郎と高校に入学、そこで棗家の跡取り・広海と出会い、クラスメートの速水沙月を巡って火花を散らします。ある日、彼らが通う高校の校長で沙月の父親・速水義治が日出家にやってきて、両家を上回る力をもって、日出家、棗家に琵琶湖周辺から出て行けと命令します。
 原作者の万城目さんらしい、奇想天外な物語です。両家が力を用いるときには相手にはものすごく嫌な音に聞こえるという設定には笑ってしまいます。原作どおりの真っ赤な学生服も何ともいえずユニークです。
 涼介を演じるのは岡田将生くん。イケメンですが、こういう気の弱そうな三枚目もお似合いです。一方、淡十郎を演じるのは濱田岳くん。伊坂作品の常連ですが、今はNHKの大河ドラマにも出演するなど大活躍ですね。
 日出家の長女・清子を演じたのは深田恭子さん。いつもはおっとりとした雰囲気の役柄が多いのですが、今回は命令口調の怖そうな美人で、いつもとは違った役柄ですが、こんな深田さんも割と好きです。
 果たして校長の正体は何者なのかというミステリ的な要素も含んだストーリーとなっており、原作を読んでいない人でももちろん楽しむことができます。
それでも夜は明ける(26.3.8)
監督  スティーヴ・マックィーン
出演  キウェテル・イジョフォー  マイケル・ファスベンダー  ベネディクト・カンバーバッチ  ポール・ジアマティ
     ポール・ダノ  ルピタ・ニョンゴ  サラ・ポールソン  ブラッド・ピッド  アルフレ・ウッダード
 先日発表となった第86回アカデミー賞で作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した作品です。
 奴隷制度がまだあった頃の1840年代のアメリカのニューヨーク州サラトガ。自由黒人の権利を得て、バイオリン奏者として家族とともに暮らしていたソロモン・ノーサップは、ある日、二人組の興行師の策略により拉致され、南部のニューオーリンズで奴隷として売られてしまう。毅然とした態度故、鞭で打たれるなど悲惨な生活を送っていたが、いつか解放されることを信じ毎日を生きていた。
 “自由黒人”という制度があることは全然知りませんでした。奴隷となって働く黒人と違い、白人のように贅沢な暮らしができる“自由黒人”という制度に、ソロモンは何も感じなかったのでしょうか。そういう立場になれば、自分は他の黒人とは連うと思ってしまうのでしょうか。その点が、この映画ではあまり描かれていなかったと感じました。ラスト、自由黒人であることが証明されて解放されるときに、泣き崩れてソロモンにすがった同じ奴隷のパッツィーの姿はどう捉えればいいのでしょうか。白人対奴隷という構図とともに、自由黒人対奴隷という構図もあったような気がします。
 最初の主人・フォードを演じたのは、このところ人気急上昇のベネディクト・カンバーバッチですが、意外とあっという間に退場。拍子抜けでした。
 ブラッド・ピットがちょい役で出演するとともに、制作者にも名を連ねています。見事にアカデミー賞作品賞を受賞ですから、才能のある人は違いますねえ。
 監督はスティーヴ・マックィーン。「荒野の七人」や「大脱走」などに出演していた俳優と同姓同名ですが、全くの別人です。
ローン・サバイバー(26.3.11)
監督  ピーター・バーグ
出演  マーク・ウォールバーグ  テイラー・キッチュ  エミール・ハーシュ  ベン・フォスター  エリック・バナ
 試写会に当選し、公開より一足早く観に行ってきました。
 米海軍の特殊部隊・ネイビーシールズ創設以来の最大の惨事と言われた「レッド・ウィング作戦」を映画化したものだそうです。冒頭、ネイビーシールズの訓練の様子がドキュメンタリータッチで描かれていきますが、ものすごい過酷で、とてもじゃないけど自分には無理(当たり前!)。だいたい手足を縛ってプールに投げ込まれるのですからねえ。死んでしまいますよ。でも、あの訓練を耐えることができる者でないと戦場で生き残っていけないのでしょうけど。そして、あの訓練を耐え抜いた仲間だからこそ、最後までお互いを信頼し合えるのでしょうね。
 タリバンの指導者暗殺のため、アフガニスタンの山岳地帯にヘリから降り立った4人のネイビーシールズ隊員。偵察中に出会った住民を、子どもは殺せないと釈放したことから、彼らの通報によって200人を超すタリバン兵の攻撃にさらされることとなります。
 4人対200人ですから、かなうわけありません。相手はロケット砲までぶっぱなします。それにしても、あれだけ撃たれ、何度も崖から転がり落ちても生きているのですから、凄い肉体です。上映時間のかなりの部分が銃撃戦で、血が苦手の人は目を背けてしまうような場面がいっぱいなのでご注意を。
 終盤、一人生き残ったマーカスをアフガン人が助けます。その理由について、エンドロールで説明がありましたが、あのあたりがよく理解できませんでした。タリバン、アルカイダを憎むアフガン人もいるのですね。
7番房の奇跡(26.3.21)
監督  イ・ファンギョン
出演  リュ・スンリョン  パク・シネ  カル・ソウォン  チョン・ジニョン  オ・ダルス  キム・ギチョン  キム・ジョンテ
     パク・ウォンサン  チョン・マンソク 
 幼い娘のイェスンと二人で暮らす知的障がいのあるイ・ヨング。ある日、ヨングは、警察庁長官の娘を殺した容疑で逮捕されてしまいます。事件のきっかけとなったのは、セーラームーンが描かれたランドセル。お金を貯めてイェスンに買ってあげたかった、店に唯一残っていたランドセルが二人の目の前で警察庁長官が娘のために買ってしまい、思わず店に飛び込んだヨングとの間でいざこざが起きていたのです。知的障がいのために自分に何が起きたのかもわからず、自分の無実も主張できずにヨングは刑務所に入れられ、イェスンは児童養護施設へと。
 本当にずるい映画です。観客にこれでもかというほど、泣かせるシーンが満載。「いかにも泣いてくださいというシーンで泣いてたまるか!」と、天邪鬼の性格が首をもたげて泣かないように頑張ったのですが、イェスン役のカル・ソウォンの演技がうますぎて、我慢できずに涙をこぼしてしまいました。劇場内では女性が泣いているのはもちろん、いい年のおじさんも父と娘の姿に涙を拭っていました。
 ストーリーはファンタジーと思って観た方がいいです。劇中で、娘に会いたがるヨングのために同房の仲間たちが刑務所の中にイェスンを潜り込ませるのですが、現実にはそんなことは到底できないでしょうしね。
 冒頭、成長したイェスンが見上げた空に浮かんでいた有刺鉄線に引っかかっていた風船のイメージが、後半、あんな形で現れるとは、見事な演出です。イェスンの素晴らしい演技に☆ひとつ。
ワンチャンス(26.3.21)
監督  デヴィッド・フランケル
出演  ジェームズ・コーデン  アレクサンドラ・ローチ  ジュリー・ウォルターズ  コルム・ミーニイ  ジェミマ・ルーパー
     マッケンジー・クルック  ヴァレリア・ビレロ
 オペラ歌手になりたいという子どもの頃からの夢を実現させたポール・ポッツのサクセス・ストーリーを辿る、事実に基づく映画です。
 太って見た目も決してハンサムとはいえないポールの夢はオペラ歌手になること。周囲からいじめられてもポールの夢は変わらなかった。彼はネットで知り合ったジュルズの声援を受け、ヴェニスの音楽学校に留学する。ある日、世界的に有名なオペラ歌手・パヴァロッティの前で歌う機会を得たポールだったが、緊張して実力が発揮できず、パヴァロッティからオペラ歌手にはなれないと酷評されてしまう。傷ついた彼は帰国し、製鋼工場で働くが、そこもすぐ辞めてしまう。ジュルズと結婚し立ち直ったかに見えたが、甲状腺に腫瘍が見つかったり、交通事故に遭ったりと不幸が重なる。ポールは、家計のために素人参加のオーディション番組に出演し、賞金獲得を目指す・・・。
 ラストのオーディション番組での審査員が映る場面は実際の映像が使用されたそうです。歌う前はその外見から審査員もまったく期待していなかったと思われますが、終わった後の様子を見ると、女性の審査員は涙を流しており、ポールの歌がそれまでの感動を与えたのかとびっくりです。そういう僕もオーディション番組で観客からの称賛の拍手のときには、思わずジ〜ンときてしまいました。
 この成功はもちろんポールの才能によるものですが、そこに至るまで彼を支え励ました妻のジュルズの力に寄るところが大きかったと思います。彼女がいなくては、ただの太ったさえない引き罷もりの男に終わったでしょう。ポールの成功は、平凡な僕らにも大きな力を与えてくれました。もちろん、ポールのように大きな成功を収めることは難しいでしょうし、ジュルズのような自分を信じて支えてくれる女性がいるのが前提でしょうけど。そうそう、もう一人、忘れてはいけないのは幼い頃からポールの才能を信じていた母親ですね。彼女がいなくても、ポールの今はなかったでしょうね。
テルマエロマエU(26.4.26)
監督  武内英樹
出演  阿部寛  上戸彩  市村正親  北村一輝  宍戸開  勝矢  曙  琴欧州  竹内力  キムラ緑子
     笹野高史  松島トモ子  白木みのる  いか八朗  菅登未男 
 テルマエ・ロマエ第2弾です。今回も現在の日本の風呂文化を、ルシウスが彼なりにロ−マに実現させていくのですが、ルシウスなりの実現の仕方のおもしろさに大笑いです。中でも一番大笑いしたのは、前回、シャワートイレで快感を味わったルシウスが、今回誤ってビデのボタンを押してしまったシーン。「そこじゃない!」と大騒ぎするルシウスに大笑いしてしまいました。
 相変わらずの顔の濃い人たちも健在。“平たい顔族”の役者さんたちと対照的です。
 どうして風呂からタイムトラベルできるのかとか、涙を流すと元の世界に戻るのかという理屈をこの映画に求めてはいけません。そんなことは二の次、三の次です。ストーリーもどっちでもいいです。単純に笑ってストレスを解消しましょう。 それにしても、阿部寛さんの裸は鍛えられていますねえ。女性の皆さん、見て損はないですよ。
相棒ー劇場版Vー(26.4.26)
監督  和泉聖治
出演  水谷豊  成宮寛貴  石坂浩二  及川光博  伊原剛志  釈由美子  宅麻伸  川原和久  山西惇
     神保悟志  六角精児  山中崇史  大谷亮介  風間トオル  吉田綱太郎  渡辺大  片桐竜次  小野了
     鈴木杏樹  真飛聖  六平直政
 「相棒」シリーズ劇場版第3弾です。元自衛隊員による民兵組織の訓練基地がある孤島・鳳凰島で、―人の男が馬に蹴られて死亡する事件が起きる。その民兵組織では生物兵器を作っているのではないかという以前からあった噂を捜査させるため、警察庁の甲斐次長は、事件の捜査を口実に特命係の2人を鳳凰島に派遣する。
 いつものメンバーに加え、ミッチー演じる前の相棒・神戸尊も登場し、甲斐次長の命を受けて、特命係に生物兵器の有無の捜査を命じます。単なる事故とされたものでも、おせっかいな特命係ならば、独自捜査をするのは周りから見てもおかしくないという、納得の理由ですね。そうそう、テレビでは犯人により足を負傷し、既に警察を退職した捜査一課の三浦刑事がこの映画では登場しています。時系列でいえば、テレビのシーズン12以前に起こった事件ということになります。
 自衛隊の特殊部隊まで出動するという、今までの中では一番大きな事件ですが、クローズド・サークルの中の事件ですし、映画的には犯人は「この人!」と予想がついてしまうのはしょうがないところです。
 ラスト、拘置所で対峙した杉下右京と犯人との防衛問題に関するやりとりは考えさせられます。このあたり、制作がテレビ朝日ということが二人の台詞に大いに関係しているのかなという気がします。たぶん、産経新聞系列のフジテレビが制作ならあんなやりとりにはならないでしょう。
アメイジング・スパイダーマンU(26.4.26)
監督  マーク・ウェブ
出演  アンドリュー・ガーフィールド  エマ・ストーン  ジェイミー・フォックス  デイン・デハーン  サリー・フィールド
     ポール・ジアマッティ  キャンベル・スコット  エンベス・ディヴィッツ  コルム・フィオール  
 アメイジング・スパイダーマンシリーズ第2弾です。
 今回のスパイダーマンの敵は、エレクトロ。オズコープ社の電気技師でしたが、事故で電気を自由に操ることができる怪人・エレクトロとなってしまいます。常に目立たず、上司からも軽んじられていたマックス・ディロンが、エレクトロになることによって、今までの不満を爆発させてしまいます。また、以前スパイダーマンに助けられたことから、スパイダーマンに憧れを抱いていたのですが、まったくの逆恨みからスパイダーマンに憎しみを持つようになります。もう一人、敵として登場してくるのが、友人でありオズコープ社の社長の息子であるハリー・オズボーン。彼は遺伝病に罹っており、その治療にスパイダーマンのDNAが必要だと信じ込んでいましたが、危険であると考えたスパイダーマンが彼に血液を提供することを拒否したため、スパイダーマンを恨むようになります。結局、社内に隠されていたクモの遺伝子を体内に注入したハリーは、グリーン・ゴブリンに変身してしまいます。
 スパイダーマンをトビー・マグワイヤが演じていた前シリーズより、全体的に雰囲気が暗いです。でも、僕的にはコチラのシリーズの方が好きです。今回、理不尽な恨みから攻撃の的にされるスパイダーマンが、あまりにかわいそうです。それに、まさか、あんな展開になるとは思いもしませんでした。
WOOD JOB! 神去なあなあ日常(26.5.11)
監督  矢口史靖
出演  染谷将太  長澤まさみ  伊藤英明  優香  光石研  マキタスポーツ  西田尚美  柄本明  近藤芳生
     有福正志  田中要次  青木健  永沼伊久也  菅原大吉  清野菜名  広岡由里子  小野敦子
 大学入試に失敗し、落ち込んでいた平野勇気。目についた“緑の研修生”募集のパンフレットの表紙に載っていた美女につられて研修生に応募する。林業のことなど何も知らない勇気にとっては過酷な毎日。夜逃げをしようとするが、表紙の美女が村に住んでいると知り、村に留まることに・・・。
 三浦しをんさん原作の「神去なあなあ日常」の映画化です。監督が「ウォーターボーイズ」、「スウィングガールズ」、「ロボジー」などの矢口史靖さんですから、おもしろくないわけがありません。ちゃらんぽらんな現代っ子が、しだいに林業とそして村に馴染んでいく様子を描いていきますが、抱腹絶倒、大笑いしてストレス解消にもってこいの作品です。
 原作では切り倒した大木に中村組の面々が乗って、山の斜面を滑り降りるという場面がありました。このシーンを映画ではどうするのかと思ったら、乗るのは誤って乗ることになってしまった勇気一人という、原作ほどではありませんでしたが、それでもなかなかのダイナミックなシーンでした。御神木を男根に見立てて女陰のオブジェの的目がけて落ちていくというのは矢口監督のアイデアでしょうか。
 勇気を演じたのは、染谷将太くん。監督も言っているように、「ヒミズ」のような暗い感じの演技しか印象がないのですが、今回はうって変わって能天気な現代っ子を演じていますが、意外にこういう明るい役もハマっています。
 勇気が恋する直紀を演じたのは長澤まさみさん。この映画では自慢の美脚を封印し、ジャージ姿で化粧っけもなく頑張っています。このところ美脚ばかりを売りにしていた長澤さんにあまりいい印象は持っていなかったのですが、今回の鼻をかんだり思いきった演技は見直しました。
 勇気を指導する飯田ヨキ役には伊藤英明さん。原作のヨキは金髪でしたが、それを除けば、原作にピッタリでしたね。「海猿」でカッコいい役をしている伊藤さんと違って、女好きというのが笑えます。
百瀬、こっちを向いて。(26.5.15)
監督  耶雲哉治
出演  向井理  早見あかり  竹内太郎  石橋杏奈  工藤阿須加  ひろみ  中村優子  きたろう  西牟田恵
 相原ノボルは高校1年生。彼は幼馴染である先輩の宮崎瞬に頼まれて同学年の百瀬陽と疑似カップルを演じることとなる。実は瞬には本命の彼女・神林徹子がいたが二股をかけていた百瀬と会っているのを友人に見られ、噂が広がり徹子に知られることを恐れて、百瀬はノボルの彼女だという噂を逆に広げようとしたのだった。最初は嫌々ながら疑似カップルを演じていたノボルだったが・・・。
 中田永一さんの同名小説の映画化です。原作はベタな恋愛小説ですが、でも大好きな作品です。パンフレットには原作は女性の圧倒的な支持を受けてベストセラーとなったとありましたが、観客は20代から僕のような年代までの男が5人だけ。意外にこういう話は男が好きなんですよね。
 原作では大学卒業を前に故郷に帰ったノボルが神林徹子に会って、コーヒーを飲みながら述懐する8年前の高校生の頃がノボルの一人称で描かれていきますが、映画は小説家となったノボルが新人賞を取って、母校で講演会をするために戻ってきて15年前を回想する話へと変わっています。映画は原作とは違って30歳の男の初恋の区切りを描いたものだそうです。そのため、小説では徹子はお腹に赤ちゃんがいるだけですが、映画では小学3年生と4歳の子どもがいることに変更されています。
 「百瀬、こっちを向いて」、映画の終盤で相原ノボルは百瀬に言います。シーンは暗転。果たして百瀬は振り向いたのでしょうか。映画のテーマからすれば、ここは小説とは異なるところでしょう。僕自身は小説のラストの方がベタで好きなんですけど。
 百瀬を演じたのは、早見あかりさん。元「ももいろクローバー」のメンバーだそうですね。彼女、背も高いし、顔立ちも洋風ですし、現在のメンバーとはちょっと雰囲気が異なります。脱退して正解だったかもしれません。
 ノボルの現在を演じた向井理さんや、高校生のノボル役を演じた竹内太郎くん、そして百瀬役の早見あかりさん同様に、いやそれ以上に強い印象を残したのは、ノボルの友人の田辺くんを演じたひろみさん。お笑いコンビ「第2PK」のボケ担当だそうですが、原作でも人気の田辺くんを少ない登場場面ですが見事に演じています。原作同様、次第に百瀬に惹かれていく自分を後悔し、恋することなど知らなければ良かったというノボルに対し、田辺が話す場面は感動的です。
 原作にはない、ノボルのお母さんのパイナップル入りカレーの話や原作では単に瞬が百瀬に貸したということしか描かれていない森鴎外の「舞姫」や4人のデートで観に行った「刑事ジョン・ブック 目撃者」の深い意味が映画では新たに付け加えられています。原作ファンとしても、ちょっと楽しいところです。
闇金ウシジマくん2(26.5.17)
監督  山口雅俊
出演  山田孝之  綾野剛  やべきょうすけ  崎本大海  菅田将暉  門脇麦  木南晴夏  高橋メアリージュン
     マキタスポーツ  柳楽優弥  中尾明慶  窪田正孝  キムラ緑子  光石研  本仮屋ユイカ  バカリズム
     大久保佳代子  希崎ジェシカ  久保寺瑞紀  平田実
 何があってもまったく表情を変えない闇金のウシジマくんのところに金を借りに来る男女を描くシリーズ第2弾です。
 今回闇金に手を出すことから転落していく者たちは、暴走族のヘッドに居続けるために、仲間に奢っていい顔をしたい愛沢、そんなグータラな夫に愛想を尽かし、ホスト遊びにはまる妻・明美、愛沢との諍いをきっかけにウシジマの見習いとなったマサル、高校を中退し、アルバイト生活をするアヤカ、ホストのトップを目指すレイら。
 そのほか、今作ではテレビドラマでおなじみのウシジマの幼馴染みで駄菓子好きの情報屋戌亥や、ウシジマを目の敵にするライバル闇金の女性社長・犀原茜が登場します。特に犀原のキャラは強烈で、金切り声を上げ(正直聞き取りにくかったですけど)、金属バットで負債者の頭を殴るなんて当たり前という凄い女性です。
 闇金とは関係なく、アヤカをストーカーするエビヌマも強い印象を残します。演じた柳楽くん、存在感ありましたねえ。
 それぞれの登場人物の転落の過程が描かれていきますが、いつものパターンで女性が闇金に手を出す理由がホストクラブ通い。アヤカは、レイの情熱に惹かれて、レイ目当てにホストクラブに通い出してしまうことから転落の一途を辿ります。現在テレビの「ブラック・プレジデント」にも出演している門脇麦さんが下着姿になって熱演します。AV撮影場面なんて勇気がいったでしょうね。それにしても、彼女はあの表情のためか、こういう気弱な役がはまります。
 闇金に金を借りる理由がギャンブルとホストという、どうしようもない男女たち。10日で5割の利息なんて、ちょっと考えれば返すことができなくなるなんてわかりそうなものなのに、借りてしまうのですからねえ。救いようのない映画です。でも、ラストでウシジマと戌亥が焼き鳥を食べているシーンに登場するある人物だけは救いようがあったかな。
 エンドロールで本仮屋ユイカさんが出演しているのを知りましたが、上映中は全然気づきませんでした。やくざの熊倉の横に侍っている女性だったんですね。いつもの清楚なイメージとは異なる役柄でした。
8月の家族たち(26.5.17)
監督  ジョン・ウェルズ
出演  メリル・ストリープ  ジュリア・ロバーツ  ユアン・マクレガー  クリス・クーパー  アビゲイル・ブレスリン
     ベネディクト・カンバーバッチ  ジュリエット・ルイス  マーゴ・マーティンデイル  サム・シェパード
     ダーモット・マローニー  ジュリアン・ニコルソン  ミスティ・アッパム
 父親の失踪で集まってきた家族、そこで繰り広げられる家族の本音がぶつかる騒動を描いていきます。家族が集まった食事のシーンは圧巻です。
 とにかく、出演俳優たちのメンバーが凄いです。アカデミー賞を3度受賞、ノミネートは数知れず(この作品でもノミネートされました。)というメリル・ストリープに、「エリン・ブロコビッチ」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジュリア・ロバーツ。英国テレビドラマ「名探偵ホームズ」でブレイクし、今や大人気のベネディクト・カンバーバッチ。「リトル・ミス・サンシャイン」で10歳にしてアカデミー賞にノミネートされたアビゲイル・ブレスリン。さらには、クリス・クーパーやジュリエット・ルイス、わずかな出演ですが、サム・シェパードなどベテランが脇を固めます。
 こんな母親だったら誰でも大嫌いだろうという母親をメリル・ストリープが演じます。とにかく、毒舌でせっかくの家族の楽しい団欒を台無しにします。認知症で夜中にレコードを大音量でかけて踊るシーンなんて鬼気迫るものがあります。もう今更言うまでもないですが、うまいとしか表現せざるを得ません。髪の毛も老人のように抜けて少なく、昨年観た「31年目の夫婦げんか」の時とは大違いの女性を演じます。
 一方、そんな母親に反発する長女を演じるのがジュリア・口パーツですが、彼女も負けていません。二人の取っ組み合いのシーンは凄いです。そのほか、地元に残って父母の世話をしている次女をジュリアン・ニコルソン、自由奔放な三女をジュリエット・ルイスが演じます。
 バラバラとなっている家族が果たしてどうなるのか、ラストシーンからでははっきりとわかりません。観客の判断に任せるということでしょうか。
オー!ファーザー(26.5.24)
監督  藤井道人
出演  岡田将生  忽那汐里  佐野史郎  河原雅彦  宮川大輔  村上淳  柄本明  賀来賢人  駿河太郎
     古村比呂  長江英和  広岡由里子  矢島健一  長原成樹  榊原徹士  奥村知史  内田慈 
 伊坂幸太郎さん原作の同名小説の映画化です。4人の父親を持つ男子高校生が巻き込まれる事件を描いていきます。
 主人公の由紀夫を演じたのは岡田将生くん。「アヒルと鴨のコインロッカー」、「重力ピエロ」に続いて3度目の伊坂作品への出演ですが、自分で希望したとのことですが、4人の父親を持つ息子という役柄を見事に演じていました。岡田くんの雰囲気が伊坂作品にぴったりなんですね。ただ、さすがにもう高校生役は厳しいかなあ(先日観た「偉大なる、しゅららぼん」でも思いましたが)。
 4人の父親という設定が、この作品のキモになるわけですが、残念ながら佐野史郎さんを除けば父親役を演じた役者さんにそれほどのインパクトがありません。また、原作ではラストに母が登場するのですが、この作品では登場はしないのはもちろん、写真でも母親の顔は隠されたままでした。4人の夫を持つ女性ですから、強烈な個性を持っているはずですから、どの女優さんが母親役にふさわしいか、登場させてほしかったなあ。
 これといって、可もなく不可もなくという映画です。できれば、中村義洋監督で撮ってほしかったですね。
青天の霹靂(26.5.24)
監督  劇団ひとり
出演  大泉洋  劇団ひとり  柴崎コウ  風間杜夫  笹野高史  柄本佑  小石至誠  入江雅人  高橋周平
     中村育二  岩井秀人  前野朋哉  黒田大輔
 劇団ひとりさんが自身の小説を映画化した初監督作品です。
 自分より経験の浅い後輩が売れっ子となる中で、食べるためにバーテンをしている売れないマジシャンの轟晴夫。人生の生きる意味を失っていたとき、警察から高校卒業以来会っていなかった父親がホームレスとして病死したと連絡が入る。警察で遺骨を受け取り、父親が住んでいた電車の高架橋下に行ったところ、突然雷に打たれて過去の時代にタイムスリップしてしまう。そこは昭和48年の世界。晴夫は浅草でひょんなことから父親とコンビを組んで舞台に立つこととなる。
 親の若い頃の時代にタイムスリップして、そこで親に会うというのは、よくあるパターンの話です。主人公が過去の出来事が自分が知っていた事実と異なることを知るというのも、こういうタイムスリップものではいつものパターンです。泣ける映画ということでしたが、展開の予想がついてしまって、残念ながら泣くことはできませんでした。
 どうやって現在に戻るのか、気になるところでしたが、そうきましたか。納得です。
 大泉さんの真面目な演技もいいですが、やっぱりとぼけた演技の方が光ります。柴咲コウさんの部屋にどうにかして行こうとあれこれ話すシーンは最高でした。
X−MENフューチャー&パスト(26.6.2)
監督  ブライアン・シンガー
出演  ヒュー・ジャックマン  ジェームズ・マカヴォイ  マイケル・ファスベンダー ジェニファー・ローレンス ハル・ベリー
     パトリック・スチュアート  イアン・マッケラン エレン・ペイジ ニコラス・ホルト  ファン・ビンビン オマール・シー     ショーン・アシュモア  ダニエル・クドモア  ルーカス・ティル  ピーター・ディンクレイジ  エヴァン・ピーターズ
 ミュータント壊滅のために製造されたロボット“センチネル”との戦いにより、ミュータントたちは次々と倒されていきます。生き残ったプロフェッサー×たちは、センチネル誕生の原因となったミスティークが起こしたセンチネルの生みの親の科学者の暗殺事件を防ごうと、ウルヴァリンの意識を過去のウルヴァリンの中に送ります。意識だけ過去に行くというタイムスリップものです。
 過去の時代は「ファースト・ジェネレーション」のあとの時代です。ウルヴァリンはストライカーによってまだアダマンチウムを体内に入れられていないときなので、体内から出てくる刃が骨(?)なのか、あまり強そうでなくて笑ってしまいました。
 半身不随となっていたチャールズことプロフェッサーXは、ハンク・マッコイの作った薬で歩行できるようになっていたが、生活は荒れ、薬の副作用で心を読むことができなくなっていた。ウルヴァリンの説得により、チャールズたちは政府によって捕らわれていたエリックことマグニートーを救い出し、協力して事件を未然に防ごうとするが・・・。
 過去の時代は「ファースト・ジェネレーション」のあとという設定なので、「ファースト・ジェネレーション」同様若きプロフェッサーXはジェームズ・マカヴォイが、マグニートーはマイケル・ファスベンダーが、ミスティークはジェニファー・ローレンスが引き続き演じています。ジェニファー・ローレンスは「ファースト・ジェネレーション」後、「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞を受賞しているのに、全身青い皮膚でメーキャップが大変なミスティークをよく再び演じましたねえ。
 現在のシーンにはこれもアカデミー賞女優のハル・ベリーが演じるストームも登場しますし、「ファイナル・ディシジョン」に登場したキティ・プライドもウルヴァリンの意識を過去に飛ばす能力を持つミュータントとして再登場します。ラストシーンには懐かしいジーンやサイクロプス、それにアンナ・パキンが演じたローグも顔を見せ(これって以前の映像をうま<合わせているのでしょうか)、シリーズファンとしては嬉しい限りです。これまでのシリーズ作品の中で一番楽しめた作品ではないでしょうか。
ゴジラ(26.6.7)
監督  本多猪四郎
出演  宝田明  河内桃子  志村喬  平田昭彦  堺左千夫  菅井きん  村上冬樹  鈴木豊明  山本廉
 1954年公開の「ゴジラ」第1作です。日本が誇る怪獣映画のスタートとなった記念すべき作品です。7月のアメリカ版「ゴジラ」の公開にあわせ、製作60周年記念ということで今回公開されたのを観に行ってきました。
 60年前ですから、映像はもちろんカラーではなく白黒。今のようにCGで何でもできるわけでなく、ゴジラ自身は着ぐるみで中に人が入っていますし、電車や船、ビルも模型ということが一目でわかりますが、それはやむを得ないでしょう。
 今では亡くなられた志村喬さん、河内桃子さん(きれいでしたねえ)、平田明彦さんが出演していたのも懐かしいですね。「ゴジラ」といえば、「この人!」と名前が出てくる宝田明さんも若かったですね。菅井きんさんも女性の国会議員役でヤジを飛ばしていましたねえ。市川房枝さんあたりがモデルでしょうか。
 単なる怪獣映画ではな<、背景には当時太平洋上で行われていた水爆実験への批判も込められた作品となっています。
 ゴジラのテーマとか自衛隊が出てくるシーンの音楽は忘れられません。
チョコレートドーナツ(26.6.8)
監督  トラヴィス・ファイン
出演  アラン・カミング  ギャレット・ディラハント  アイザック・レイヴァ  フランシス・フィッシャー  グレッグ・ヘンリー
     クリス・マルケイ  ドン・フランクリン  ジェイミー・アン・オールマン
 ショーダンサーとして働くゲイのルディ。ゲイであることを隠して検事局で働くポール。ルディの隣室に住むダウン症の子ども・マルコ。この物語は、ゲイヘの理解のない世間で、ダウン症のマルコの幸せを願って彼を育てようとするルディとポールの戦いを描いていきます。
 母親が麻薬所持で逮捕されたことから施設に送られたマルコは、ある夜、施設を抜け出し家に帰ろうとしていたところをルディらに保護される。二人はマルコを自分たちで育てようと決心するが・・・。
 時代は1970年代の終わり。まだまだゲイなどに対する世間の理解はなかった時代の話です。ましてやポールは検事局で働く法律家ですから、カミングアウトしているルディと異なり、自分がゲイであることを隠しているのもやむを得ないことだったのでしょう。
 彼らに育てられる方がマルコにとっては幸せなのに、そして彼らを見ている人たちはそう思っているのに、法はゲイであるという事実を重く見てしまいます。あまりに悲しい結末に言葉がありません。ポールからの手紙を受け取った裁判官、検事局の上司らはこの事実をどう捉えたのでしょうか。パンフレットにありましたが、今ではゲイらに養子を法的に認めてい
る州がかなりに上ります。世の中、だんだん変わってきているのですね。
 マルコ役を演じた少年は本当にダウン症でしたが、素晴らしいマルコ役でしたね。笑顔が何とも言えません。ルディ役のアラン・カミングは実際にゲイであることをカミングアウトしている役者さんだそうです。おすすめです。
サード・パーソン(26.6.21)
監督  ポール・ハギス
出演  リーアム・ニーソン  オリヴィア・ワイルド  エイドリアン・ブロディ  モラン・アティアス ミラ・クニス マリア・ベロ     ジェームズ・フランコ  キム・ベイシンガー  ロアン・シャバノル  デヴィッド・ヘアウッド  オリヴァー・クラウチ
 ポール・ハギス監督といえばアカデミー作品賞を受賞した「クラッシュ」が大好きです。今回も、パリ、ローマ、ニューヨークを舞台に3組の男女の恋愛劇が描かれていくということから、「クラッシュ」同様の群像劇かと思っていたら足許すくわれました。
 パリを舞台に、かつてピューリッツアー賞を受賞したこともあるが、今ではスランプに陥っている作家マイケルとその愛人で作家志望のアンナ、ローマを舞台に、服飾メーカーからデザインを盗み出し、それを売ることを商売にしているスコットと彼がふと入った店にいたロマ族の女性モニカ、ニューヨークを舞台に、息子を虐待したとして有名なアーティストである夫リックとの間で子どもの親権の裁判を争っている元女優のジュリアという3組の男女が描かれていきます。
 それぞれの話がどこかで交錯するのだろうと思いながら見ていたところ、序盤で「あれ?」と思う場面が出てきます。そこから話がわからなくなってきます。この物語は3組の男女の群像劇ではなかったのかという疑問が出てきます。
 このことは、冒頭の場面で作家のマイケルに「見ててね」と囁く声が聞こえたり、彼の日記が三人称で書かれているところにヒントはあったのですが、家に帰ってきてから映画のサイトでネタバレを読んでも、スッキリとはせず・・・。この映画を1回観ただけで理解できる人はすごいと思ってしまいます。
ノア 約束の舟(26.6.22)
監督  ダーレン・アロノフスキー
出演  ラッセル・クロウ  ジェニファー・コネリー  アンソニー・ホプキンス  エマ・ワトソン  レイ・ウィンストン
     ローガン・ラーマン  ダグラス・ブース  レオ・キャネル
 ノアの箱舟といえば、旧約聖書の物語。キリスト教徒ではない僕でも、ノアが神からの啓示で大洪水を知り、その後の世界に備えて世界中の生物をひとつがいずつ船に乗せて大洪水を乗り切ったという話を知っています。でも、それだけで、大洪水前やその後の話は全く知りませんでした。
 キリスト教徒ではない僕には理解できないのですが、神のためなら自分の家族でさえ二の次(というか、犠牲にする)という考えは、ある意味怖いですね。ノアってこんな男だったんだと、ノアの狂信的な態度に恐れを抱いてしまいます。僕自身とすれば、自分の進む道は自分で決定すると考えるカインの末裔であるトバル・カインの方に共感を覚えます。もちろん、そのためには手段を選ばずというところまでは共感をするわけにはいきませんが・・・。
 旧約聖書のことを知っていれば、映画ももっと楽しむことができたかもしれません。カインとアベルの話も知っていましたが、二人の下にもう一人セトという弟がいたことは知りませんでした。劇中で蛇の抜け殼を手に巻くシーンが何度も登場しますが、あれはどういう意味だったのでしょうか。蛇といえば、アダムとイブに禁断の果実・リンゴを食べるよう唆した存在だということだけは知っていますが。
 ハリー・ポッターシリーズのハーマイオニー役のエマ・ワトソンがノアの長男の妻役を演じています。もう子役とは呼ばせない熱演です。
オール・ユー・ニード・イズ・キル(26.6.28)
監督  ダグ・リーマン
出演  トム・クルーズ  エミリー・ブラント  ビル・パクストン  ブレンダン・グリーソン  トニー・ウェイ  キック・ガリー
     ジョナス・アームストロング  フランツ・ドラメー  シャーロット・ライリー  ドラゴミール・ムルジッチ  羽田昌義
 日本の桜坂洋さん原作のライトノベルの映画化です。謎の侵略者“ギタイ”によって滅亡寸前に追い込まれた地球。主人公ケイジ少佐は軍の広報官だったが、指揮官の命令による前線での広報を拒否したため、二等兵に降格され、新兵として前線に送られてしまう。慣れない戦闘で開戦わずか5分で戦死したと思った瞬間、彼は出撃前日に戻っていた。その時からケイジは、死ぬと前日に戻るという時間のループの中に閉じ込められてしまう。ある日、軍の最強の女性兵士・リタを助けたイジは、彼女から時間が戻ったら自分に会いに来るよう言われる。彼女も以前は時間をループしていたという。“ギタイ”を倒すため、リタによってケイジは徹底的に鍛えられるが・・・
 主役のケイジを演じるトム・クルーズですが、52歳になるというのに、身体は鍛えてあり、若々しいですね。でも、彼よりかっこいいのはリタを演じるエミリー・ブラント。細いですが逞しい腕をしています。笑顔も見せない凛々しい顔に魅かれますねえ。
 ラストは原作とは異なるようですが、リタ演じるエミリー・ブラントに惹かれる僕としてはこちらもありです。
渇き。(26.7.1)
監督  中島哲也
出演  役所広司  小松菜奈  妻夫木聡  オダギリジョー  清水尋也  橋本愛  森川葵  國村隼  高杉真宙
     二階堂ふみ  黒沢あすか  青木崇高  中谷美紀  
 「告白」の中島哲也監督作品です。
女子高校生の加奈子が失踪。別れた妻から連絡を受けた元刑事の父は娘の行方を追います。映画は失踪した娘を探す元刑事のパートと3年前の加奈子に恋する男の子のパートが交互に描かれていきます。
 高校生早割キャンペーンで、公開初日から8日間、高校生は1000円で観ることができるとあってか、劇場内には高校生、それも女子高校生の姿が数多く見られましたが、彼女らの父親と同じ年代である僕としては、この映画、率先して高校生に見せたい映画ではありません。
 暴力シーンは当たり前、それだけでなく残酷な殺人場面やレイブシーンも出てきます。ストーリーとしては、結局、優等生だと思っていた我が子は、とんでもないワルだったという、パターンとしてはありふれた映画ですが、内容以上にその暴力シーンや切れる男たち、特に役所広司さんの演じた父親やオダギリジョーさんの演じた刑事にはびっくりです。
 オダギリジョーさんのああいう切れた役は想像がつくのですが、いつも温厚なかっこいいお父さん役ナンバー1ともいえる役所さんが、怒鳴り、女性を殴るのは当たり前、レイプも平気というあんな切れた男を演じるとは、今までのイメージが吹っ飛んでしまいました。
 加奈子に恋した男の子・ボクはあまりに悲惨。この3年前の描写は彼女に恋したが故にしだいに転落していく彼を描いていくのですが、これを見ると、加奈子の残酷さがわかりますが、それは現在のパートでも十分明らかにされており、この3年前のパートの位置づけはよくわかりません。彼の存在は何だったのでしょう。
 妻夫木くんの演じた刑事は、ラスト近くまで、このままではちょっと割り切れないなあと思っていたら、ああなりましたかという感じです。
 肝心の加奈子はといえば、その行方は結局ああいう形で判明しましたが、あり得る結果てしょうね。
トランセンデンス(26.7.1)
監督  ウォーリー・フィスター
出演  ジョニー・デップ  レベッカ・ホール  モーガン・フリーマン  ポール・ベタニー  キリアン・マーフィー
     ケイト・マーラ  コール・ハウザー
 人工知能の権威・ウィル・キャスターは、大学での講演会終了後に銃撃され、一命を取り留めたかと思ったが、銃弾に塗られていた放射能物質により余命半年と宣告される。彼の銃撃事件と同時に各地で人工知能の研究者たちに対するテロ事件が発生し、多くの人工知能を研究していた科学者が死亡。残された人工知能はウィルが製造したPINNだけとなる。ウィルの妻、エヴリンはウィルの脳のデータをPINNにアップデートさせ、彼の意識を残そうと試みる。実験は成功したが、テロ組織は彼の存在を葬り去ろうと研究施設を襲撃してくる・・・。
 コンピューターが意思を持つことができるのかについては、今までもいろいろな映画で描かれました。「2001年宇宙の旅」の“HALL”もそうでしょうし、「ターミネータ−」の“スカイネット”もそうでしょう。キアヌ・リーヴス主演の「マトリックス」もコンピューターが支配する世界を描いた映画でした。現実世界でも、コンピューターが人間を超越する時代が来るのは当然だとされています。人間ができなかった難病治療を、映画の中のようにコンピューターがやり遂げてしまうということは夢ではないとされます。
 とはいえ、たとえ、コンピューターが人間のためになることをしたとしても、コンピュ一ターに支配されてはなるまいと人間が攻撃するのはいつものパターンです。コンピューターが人間の上位にくる、究極的には神の立場になってしまうというのは、人間としては到底認めることはできないのでしょう。
 最先端のコンピューターに対し、攻撃するのに使用されるのが最新兵器ではなく、第二次世界大戦中のような前近代的な武器という状況には笑ってしまいますが、最近の兵器はすべてコンピューター制御されているので、それも無理ないところでしょう。
 ウィルを演じたのはジョニー・デップです。今回は割とまともな役柄です(とはいえ、ほとんどコンピューターの作り出す画像での出演ですが。)。
グランド・ブダペスト・ホテル(26.7.18)
監督  ウェス・アンダードン
出演  レイフ・ファインズ  トニー・レヴォロリ  F・マーレイ・エイブラハム  マチュー・アマルリック  ウィレム・デフォー
     エイドリアン・ブロディ  ジェフ・ゴールドブラム  ハーヴェイ・カイテル  ジュード・ロウ  エドワード・ノートン
     ビル・マーレイ  シアーシャ・ローナン  ジェイソン・シュワルツマン  シア・セドゥ  ティルダ・スウィントン
     トム・ウィルキンソン  オーウェン・ウィルソン  
複製された男(26.7.18)
監督  ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演  ジェイク・ギレンホール  メラニー・ロラン  サラ・ガドン  イザベラ・ロッセリーニ  ジョシュ・ピース
     ティム・ポスト  ケダー・ブラウン  ダリル・デイン  ミシャ・ハイステッド  マーガン・メイン アレクシス・ウイガ
 ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの作品を映画化したものだそうです。有栖川有栖さん、綾辻行人さん、辻村深月さんら錚々たるミステリ作家たちが絶賛していたので期待して観に行ったのですが、僕にとっては、これが何を描こうとしているのかまったくわからない作品でした。
 ストーリーは、ある日観た映画の中に自分と瓜二つの俳優が出演していることを知った大学教授が、その俳優の正体を探そうとし、結局お互いにまったく同じ顔と声、身体にある傷も同じという二人の男が対峙することになる・・・という話です。
 自分と同じ顔の男が気になって調べるというのはわかります。でも、その後、なぜ彼が相手の男の言いなりにならなくてはならないのかがよくわかりません。似ているのが嫌ならヒゲ剃れよ!と言いたくなりましたが、それもしませんし。
 何はともあれ、一番よくわからないのが、巨大蜘蛛です。都市の中を巨大蜘蛛が歩くシーンがありましたが、あれは何でしょう。ウルトラマンでも登場して戦うのかと思ってしまいましたよ。そして、ラストのあの○○(ネタバレになるので伏せます。)のシーンで唐突に終わり。やっぱり、ノーベル賞作家の言わんとすることはわからないなあと思った1作でした。 
怪しい彼女(26.7.18)
監督  ファン・ドンヒョク
出演  シム・ウンギョン  ナ・ムニ  パク・イナン  ソン・ドンイル  イ・ジニク  ジニョン
 マルスンは70歳の老女。苦労して育てた一人息子は大学教授となり、マルスンの自慢の息子。しかし、ロうるさい毒舌家のマルスンは嫌われ者で、ストレスで具合を悪くした嫁を思って、家族はマルスンを施設に入所させようとする。悔しい思いの中、家を飛び出したマルスンが見かけたのは“青春写真館”と看板が出た写真館。中に入り遺影のつもりで写真を撮って出てきたところ、なんとマルスンの容姿は20歳の頃に戻っていた。映画は、外見は20歳、しかし心は70歳というマルスンが巻き起こす笑いと感動のストーリーとなっています。どうして写真を撮ると若くなるのかなんていうことは深く考えずに、見た目20歳のおばあちゃんの巻き起こす騒動に理屈抜きで楽しむ作品です。
 マルスンの20歳の頃を演じたのは「サニー 永遠の仲間たち」のシム・ウンギョンですが、この女優さんがまたうまいこと。ナ・ムニという女優さんが演じたおばあさんの所作を完璧に演じ、20歳のおばあさんを見事に演じきっています。韓国の女優さんといえば、スレンダーなスタイルの良い卵型の顔の美人な女優さんばかり思い浮かべてしまうのですが、失礼ながらウンギョンさんは、これには当てはまりません。そんなに美人とは言えませんし、スタイルもはっきり言ってそんなに良くはないです。でも、抜群にうまいです。表情が豊かですし、持って生まれたコメディエンヌといったところでしょうか。この映画のヒットは彼女の魅力によるところが大きいですね。彼女の歌もまあまあ聞くことができます。
 同じ日に見たのが「複製された男」や「グランド・ブタペスト・ホテル」だったので、単純なストーリ−が逆に新鮮に感じました。
ゴジラ(26.8.3)
監督  ギャレス・エドワーズ
出演  アーロン・テイラー=ジョンソン  渡辺謙  エリザベス・オルセン  ジュリエット・ビノシュ  サリー・ホーキンス
     デヴィッド・ストラザーン  ブライアン・クランストン
 ローランド・エメリッヒ監督の「ゴジラ」は、あまりの本家ゴジラとの違いに唖然とし、これは“ゴジラ”ではないと誰もが思ったでしょうが、今回の“ゴジラ”は、前と比較してもヴィジュアル的にかなり本家に近く(目が細くてより怖そうな顔でしたが)、雄叫びの最後の反響音もあったし、口から熱線(?)を出したのも、子どもの頃からゴジラに親しんだ世代としては嬉しい限りです。芹沢博士を演じる渡辺謙さんが、日本語的な発音で「ゴジラ」と言うのも良かったですね。
 ただ、ストーリーは僕的にはいまひとつ。だいたい、ムートーが目覚めたから、ゴジラがそれを倒すために現れるのが自然の摂理とは理解できないですね。水爆実験が実はゴジラを倒すためだったというのも、本家ゴジラの精神とは異なります。もともとは水爆実験によってゴジラは生まれたもので、反核の気持ちが込められていたものですから。まあそのあたりは核保有国であるアメリカの映画だから致し方ないのかもしれません。
 映画はゴジラ対人間ではなく、あくまでもゴジラ対ムートー。ゴジラは人間などまったく無視でした。最初の舞台が日本というのは、監督の本家へのオマージュかもしれませんが、原子炉が破壊され、周辺が避難地域になってしまうというのは、ちょっと福島を思い浮かべてしまいます。別のシーンでは津波のシーンもありましたしね。
 さんざん予告編でやっていたので、ジュリエット・ビノシュが原子炉の中に閉じ込められたまま亡くなるのはわかっていましたが、上映開始後あんな簡単に登場シーンが終わってしまうとは思いませんでした。
 反面、肝心のゴジラがなかなか姿を現しませんでした。上映開始から1時間近くがたってからようやく登場。でも、ムートーとの戦闘シーンはラストわずか。ちょっと期待外れかな。とはいえ、アメリカでのヒットで続編製作が決定されたそうです。次は、モスラやキングギドラが登場してくるでしょうか。
トランスフォーマー ロストエイジ(26.8.8)
監督  マイケル・ベイ
出演  マーク・ウォールバーグ  ニコラ・ペルツ  ジャック・レイナー  スタンリー・トゥッチ  ケルシー・グラマー
     リー・ビンビン  T・J・ミラー
 シリーズ第4弾です。今回は前作までとは登場人物を一新。このシリーズでブレイクしたシャイア・ブルーフは登場せず、主人公はマーク・ウォールバーグ演じる町の発明家で中年オヤジのケイドに変更となっています。そのためか、前作までは主人公とバンブルビーの間の繋がりが描かれましたが、今作ではケイドとオプティマスプライムの間に友情が結ばれます。変わらないのはヒロインの容姿。監督さんの好みか、相変わらすの金髪でスタイルのいい女性でした。
 シカゴでのディセプティコンとの決戦に勝利したオートボットでしたが、その後、異星人同士の戦いによって地球が破壊されたと人間から迫害を受け、それぞれ身を隠していた。CIAを率いるケルシーはディセプティコン狩りといいながらオートボットも容赦なく攻撃していた。その裏にはディセプティコンやオートボットの部品を企業に横流しし、人間が自らオートボットを作ろうとする計画が進んでいた。廃墟となった映画館に廃車同然の姿で隠れていたオプティマスプライムは、何も知らないケイドによって買われ、彼の工場へと連れてこられる・・・。
 上映時間が165分はさすがに長すぎます。余計なシーンが多すぎたような気がします。映画好きの息子の情報によると、この映画にはかなり中国資本が入っているとのこと。それによって、現在中国では外国の映画の年間上映数の制限があるのですが、その制限から外れることとなっているそうです。そのために後半は中国に舞台は移ります。香港のシーンがあり、恐竜型ロボット(ダイナボット)が素晴らしい風景の中に登場しますが、香港にあんなところはないそうです。これも、香港からはるか離れたその名所の観光協会が金を出して、舞台をそこにさせたようです。ハリウッドも今では中国のお金を無視することができないんですね。
 それに、様々なシーンの小物に企業のロゴが入っていることも大きな特徴です。クレジットカードしかり、ビールしかり、牛乳しかり。ありとあらゆるものにロゴがわかるようにして、各企業から金を取っているのでしょうね。だから、なくてもいいシーンが多すぎることになるのでしょう。
 ストーリーも複雑すぎます。一番よくわからなかったのは、いったいロックダウンは何者なのかということ。パンフレットによると賞金稼ぎだということですが。また、ロックダウンは創造主から依頼されてオプティマスプライムを捕らえにきたというが、創造主とは何なのか、なぜオプティマスプライムを捕らえなくてはならないのか。このあたりの説明がまったくありません。それに、いつの間にCIAのケルシーとロックダウンは契約を結んでいたのか。字数に制限のある字幕版のため、細かいところまで字幕で説明できなかったということもあるでしょうが、あれですべてのストーリーがわかった人がいたのか疑問です。
 今作では恐竜型のダイナボットが登場するのが売りですが、僕的には甲冑を着た武士のようなオートボット・ドリフトが登場したのがうれしかったですね。さすが、日本発のトランスフオーマーらしいところです。
 相変わらすの映像の素晴らしさには感嘆しますが、ストーリー的には前作の方がおもしろかったというのが僕の印象です。
るろうに剣心 京都大火編(26.8.9)
監督  大友啓史
出演  佐藤健  武井咲  青木崇高  蒼井優  大八木凱斗  宮沢和史  江口洋介  眞島秀和  小市慢太郎
     藤原竜也  神木隆之介  伊勢谷友介  田中泯  土屋太凰  滝藤賢一  高橋メアリージュン  丸山智己
     三浦涼介  渡辺大  中村達也  福山雅治
 シリーズ第2弾です。
 剣心は大久保卿から京都で国家転覆を謀る志々雄を倒すことを依頼される。周囲から京都行きを反対される中、大久保卿が志々雄の部下・瀬田宗次郎によって暗殺されたことを知った剣心は京都行きを決意する。剣心の後を追って薫や相楽左之助も京都へ向かう。剣心は、京都では道中で知り合った元幕府のお庭番衆であった巻町操の世話で元お庭番たちが商う店に逗留することとなる。志々雄の十本刀の一人・沢下条から志々雄が京都を火の海にしようとしていることを聞き出した元新撰組三番隊隊長であった警視庁の斎藤一と剣心たちはその計画を阻止しようとするが・・・。
 これはなかなかおもしろかったです。原作の和月伸宏さんのマンガは息子が読んでいたのをふと手にとって読んでからすっかりはまってしまいましたが、やはり、マンガのキャラクターの魅力のせいでしょうか、上映時間139分が短く感じられるほどのめり込んでしまいました。
 今作では志々雄やその部下の瀬田宗次郎、元お庭番の四乃森蒼紫など強烈なキャラが登場します。志々雄も四乃森も時代の流れの中でさんざん利用されながら新しい時代を前にして見捨てられた男たち。ある意味非常にかわいそうな男たちであり、自分も同じ立場にあった剣心としても彼らの気持ちはわかるが、倒さねばならないジレンマもあるでしょう。そのあたりの苦しみがちょっと表れていなかったかなあという気がします。
 僕自身はマンガを読んでいたときには、元新撰組三番隊隊長であり警視庁巡査となった斎藤一のファンでした。あの“牙突”という剣の技はかっこよかったなあ。映画では江口洋介さんが演じますが、なかなかお似合いではないでしょうか。
 今回は2部作の前半部分ということで、肝心の志々雄や四乃森との戦いも後半に続きます。ラストには福山雅治さんが謎の男として登場。彼がいったいどういう立場の男かも大いに気になるところです。これはやっぱり後半の「伝説の最期編」も観に行ってしまうなあ。
ルパン三世(26.8.26)
監督  北村龍平
出演  小栗旬  玉山鉄二  綾野剛  黒木メイサ  浅野忠信  ジェリー・イェン  キム・ジュン  ニック・テイト
     タナーヨング・ウォンタクーン  ニルット・シリチャンヤー  ラーター・ポーガーム   山口祥行  中山由香
     ヴィタヤ・バンスリンガム  吉野和剛
 「ルパン三世」といえば、モンキー・パンチ原作のマンガ。でもこの映画はマンガのことは忘れてまったく別物の作品と思って観た方が楽しむことができます。
 マンガではルパン、次元、五右衛門の3人(ときには不二子もまじえた4人)で盗みをするのに、今回は彼ら4人のほかにグループを作って盗みをするという形になっています。グループを作っての犯行なんてルパンらしくないですね。マイケル・リーを演じたジェリー・イェン(この人、台湾の人気グループのメンバーだそうですね。)やピエールを演じたキム・ジュン(こちらは韓国の人気グループのメンバーだそうです。)など外国の俳優さんにかなり気を遺った作品になっています。
 それに、この作品ではルパンも盗賊団「ザ・ワークス」の一員ということになっていたし、マンガと比較するとあまりに若すぎます。次元とも初めて会ったという設定です。結局彼ら3人と不二子のキャラを借りたまったく別の話ですね。
 ただ、マンガのキャラのイメージが強いので、実写版の俳優さんは大変です。ルパンを演じた小栗旬さん、次元を演じた玉山鉄二さん、五ェ門を演じた綾野剛さんはまだともかく、峰不二子役を演じた黒木メイサさんが一番太変だったのでは。メイサさんでは峰不二子のイメージとかなり違うなあと感じます。不二子はメイサさんのような気の強い顔ではなく、もっと小悪魔的な面立ちの方がいいですね。それにダイナマイトボディ(ちょっと古いか)ですし。黒木さん、かなり無理して胸の谷間も作っていたのでは?
 小栗さんの奥さんの山田優さんがカメオ出演していたのはファンヘのサービスでしょうか。
 銭形警部が途中引き連れているのが他国の警察というのが寂しいなあと思ったら、ラストはいつもどおり埼玉県警のパトカーで締めてくれました。ここは嬉しかったですねえ。
 ところで、この映画、観ていてすごい違和感があります。役者のロとセリフがズレている感じがするのです。外国人俳優の場合は吹き替えているからそれも当然ですが、日本人俳優の場合も何となくおかしい。これって、英語で話しているのを本人自身が日本語に吹き替えているのではないのかな。
ルーシー(26.8.30)
監督  リュック・ベンソン
出演  スカーレット・ヨハンソン  モーガン・フリーマン  チェ・ミンスク  アムール・ワケド  ジュリアン・リンド=タット
     ビルウ・アスベック  アナリー・ティプトン
 遊び友だちから、スーツケースをマフィアのボスに届けるよう強引に頼まれたルーシー。彼女はスーツケースに入っていた物質をお腹の中に埋め込まれて運び屋にさせられてしまう。ところがお腹を蹴られた際に、埋め込まれた物質の袋が破れ、それが体内に吸収されてしまう。それにより、彼女の脳は異常な働きを見せることとなるが・・・。
 人間の脳は通常10%程度しか機能していないそうです。この物語は、その脳が10%以上、最終的には100%機能することになってしまう女性を描いていきます。
 ただ、脳の働きがよくなることにより、外国語をすぐ覚えることができたり、難しい論文もあっという間に理解し暗記できたりということはできるとは思うのですが、それにより身体能力が飛躍的に向上したり、僕らから見れば超能力を使用できることになるのか、疑問です。
 予告編を観たときにはアクション映画かと思っていました。確かにリュック・ベンソン監督らしい派手なカーチェイスシーンや銃撃戦シーンが描かれます。でも、類人猿やティラノサウルスが登場したり、地球の誕生のようなシーンまで描かれ、このあたり、なんだか哲学的です。結局脳の働きが100%になってしまったルーシーはどうなってしまったのか。ラストのルーシーの言葉からすれば、ある一つの考えが導き出されるのですが・・・。アクション映画かと思いきや哲学的な映像も混ざった中途半端な映画でした。いまひとつでしたねえ。
 ルーシーを演じたのは2006年と2013年に「世界一セクシーな女性」に選ばれたスカーレット・ヨハンソン。う〜ん・・・そんなにセクシーかなあ。
 マフィアのボス、チャンを演じた俳優はどこかで見たと思ったら、「オールド・ボーイ」の韓国人俳優のチェ・ミンシク
でした。
フライト・ゲーム(26.9.6)
監督  シャウマ・コレット=セラ
出演  リーアム・ニーソン  ジュリアン・ムーア  スクート・マクネイリー  ミシェル・ドッカリー  ネイト・パーカー
     コリー・ストール  ルピタ・ニョンゴ  オマー・メトワリー  ジェイソン・バトラー・ハーナー  ライナス・ローチ
     シェー・ウィガム  アンソン・マウント
 主人公は航空保安官のビル・マークス。彼は娘を幼いときに病気で亡くしてから、自暴自棄の毎日を過ごしていた。ロンドン行きの飛行機に乗ったビルのもとに、1億5000万ドルの金を支払わなければ20分ごとに誰かが死ぬとの脅迫メールが入る。彼は脅迫者を特定しようと試みるが・・・。強引に捜査を進めるビルに乗客は反発し、さらには脅迫者が金を振り込むように言った口座がビルの名義であることが判明したため、機長からは犯人と疑われ、保安官のバッチと銃を取り上げられてしまう。
 娘を亡くしたことが原因でアル中となった航空保安官が正体のしれない脅迫者と戦うストーリーです。誰がいったい脅追者なのか、誰もが怪しげなそぶりを見せますので、観ているこちらとしてもなかなか犯人はあの人だと特定できませんでした。犯人が明らかになったときに「え〜!?」と思った人が多かったのではないでしょうか。
 ただ、犯人の犯行理由については、あの理由でここまでやるのかとちょっと理解できない部分もありました。まあ狂信的と言ってしまえばそのとおりなんでしょうけど。
 ビルを演じたのはリーアム・ニーソン。「96時間」をはじめとして、このところすっかりアクション俳優になってしまいましたね。共演のジュリアン・ムーアより目立ったのはキャビン・アテンダントのナンシーを演じたミシェル・ドッカリー。どこか吉田羊さんに雰囲気が似ていました。「それでも夜は明ける」でアカデミー賞助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴももう―人のキャビン・アテンダント、グウェン役で出演していましたが、助演女優賞を受賞した女優さんにしては端役でした。
舞妓はレディ(26.9.9)
監督  周防正行
出演  上白石萌音  長谷川博己  富司純子  田畑智子  草刈民代  渡辺えり  竹中直人  小日向文世
     濱田岳  高嶋政宏  岸部一徳  中村久美  岩本多代  高橋長英  草村礼子  妻夫木聡  津川雅彦     徳井優  田口浩正  彦麻呂  大原櫻子  
 「舞子はレディ」という題名からもわかるように、これはオードリー・ヘプバーン主演の「マイ・フェア・レディ」の舞子版です。「マイ・フェア・レディ」は、誂りのひどい女性を言語学者のヒギンズ教授が訛りを矯正すると共に淑女としての礼儀作法を身につけさせて社交界にデビューさせますが、こちらは薩摩弁と津軽弁を使う女の子が言語学者の大学の先生の指導で訛りを矯正して舞子になるまでを描いていきます。
 主人公の西郷春子を演じたのは、オーディションで選ばれた上白石萌音さん。この女の子、失礼な言い方ですが本当に田舎のイモ娘という感じです。そういう点ではピッタリの役でしたね。最後に舞子に無事なるのですが、舞子姿はあまりに幼すぎました。うちの息子の結婚式にきてくれた舞妓さんのほうがずっとかわいかったなあ。
 それはともかく、彼女が訛りの強いイモ娘からしだいに京都弁を使いこなしていく過程がおもしろおかしく描かれていて、135分間という上映時間をあっという間に感じるほど楽しむことができました。
 周防監督、かなり奥さんの草刈民代さんの出番が多かったですねえ。ラストのダンスシーンでの渡辺えりさんと竹中直人さんの仮装が「Shall we ダンス?」のパロディになっていたりとお遊びシーンもあって楽しい映画でした。春子の亡くなった両親の写真に写っていたのは加瀬亮さんと瀬戸朝香さんなのは、やはり周防監督の「それでもボクはやってない」で二人が夫婦役をやっていた関係ですね。おススメです。
るろうに剣心 伝説の最期編(26.9.14)
監督  大友啓史
監督  佐藤健  武井咲  青木崇高  蒼井優  大八木凱斗  伊勢谷友介  土屋太鳳  田中泯  小澤征悦
     藤原竜也  江口洋介  福山雅治  神木隆之介  滝藤賢一  丸山智己  高橋メアリージュン
 7月に公開された「京都大火災編」の続編です。軍艦に乗って浦賀沖に停泊し、剣心を捕らえて処刑しろと要求する志々雄に対し、明治政府は剣心を指名手配します。
 前作のラストで浜に打ち上げられた剣心を助けた謎の人物、原作を読んでいる人にはわかっていたのですが、剣心の師匠・比古清十郎だったのですね。剣心は志々雄と戦うため、飛天御剣流の奥義を学ぶことになります。清十郎を演じたのは福山雅治さん。まあカッコいいのなんのって。ファンにはたまらないでしょうね。福山さんの出演が、この作品の見所の―つといっていいでしょう。
 今回も剣の対決の場面はスピード感があって、手に汗握るというのはこんな感じなんだろうなと思えるほど、食い入って観てしまいました。あれって早回しとかしていないのでしょうか。それほどのスピード感です。
 僕としては、原作を読んでいたときにもファンだった斎藤一の必殺剣「牙突」を見ることができたのだけでも満足です。ラストは志々雄との対決ですが、対するのが剣心だけでなく、斎藤や相楽左之助、それに突然現れた四乃宮蒼紫という1対4の戦いです。これを考えると剣心より4人を相手にした志々雄が一番強いのでしょうね。
 それにしても、志々雄の十人刀はいったいどうなったのでしょう。名前の割には、前作で一人が剣心によって倒され、今回左之助が戦った坊主がその―人だと思うのですが、滝藤賢一さんが演じた佐渡島方治以外まったく目立たなかったですね。
 さて、僕が観たときも満員御礼でしたし、これだけ興収がいいと、これで終わりではな<、もしかしたら別のエピソードが描かれるのかと期待してしまいますが・・・。
猿の惑星 新世紀(ライジング)(26.9.14)
監督  マット・リーヴス
出演  ジェイソン・クラーク  ゲイリー・オールドマン  ケリー・ラッセル  アンディ・サーキス  トビー・ケベル
     コティ・スミット=マクフィー       
 「猿の惑星 創世記」の続編です。
 前作から10年がたち、シーザーは息子も授かり一族を率いて森の中で平和に暮らしていた。そんなある日、シーザーたちが住む森の中にあるダムの発電施設を復旧しようとやってきた人間と出会った仲間が撃たれるという事件が起きる。人間に敵意を表すコバらを押さえて、シーザーは平和のため人間に協力するが・・・。
 今回の「新世紀」では、ウィルスに対し抗体を持って生き残った人間と猿との共存と戦いを描いていきます。猿も知恵がつけばやることは人間と同じ。シーザーの片腕であったコバの人間に虐待されたという思いは復讐の気持ちを生み、共存を図ろうとするシーザーを亡き者にして、自分が権力を得ようとします。
 ―方、人間たちの中にも猿との間で心を通わそうと考えるマルコムたちと違って、猿への怒りを抱えるドレイファスのような者たちもいます。
 そもそもの1968年公開の「猿の惑星」の第1作は、衝撃的なラストでSF映国史上に燦然と輝く作品でしたが、この作品はSFというより人間ドラマ(猿ドラマか?)の側面の方が強いてすね。
 今回は人間と猿との戦いにとどまらず、猿の中での権力争いも描かれ、シリーズとして次の作品がどういう点を描いていくのか難しくなってきました。また人間と猿との戦いでは同じことの繰り返しにすぎないですからね。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(26.9.14)
監督  ジェームズ・ガン
出演  クリス・ブラッド  ゾーイ・サルダナ  デイヴ・バウティスタ  ヴィン・ディーゼル  ブラッドリー・クーパー
     リー・ペイス マイケル・ルーカー  カレン・ギラン  ジャイモン・フンスー  ジョン・C・ライリー グレン・クローズ
     ベニチオ・デル・トロ
 「アイアンマン」などと同様マーベルコミックからまた新たなシリーズの登場です。
 主人公は幼い頃、地球から宇宙人によって誘拐されたピーター・クイル。今では宇宙のトレジャーハンターとなって惑星間を渡り歩いていたが、ある日惑星モグラにある“オーブ”を手に入れたことから狙われるようになる。彼は“オーブ”を持って依頼人のいるザンダー星に向かうが・・・。
 冒頭、光る石を巡っての攻防の末、刑務所に捕らえられるまでは、非常にわかりにくい展開です。状況や人物関係の把握に戸惑います。予告編を観た際には、この映画はひと癖もふた癖もある者たちがチームを作って宇宙の平和のために戦う物語だと思っていましたが、結果としてはそういうことになってしまっただけですね。
 仲間を組んで“オーブ”を取り戻そうとするのは、ピーターのほか、美しき暗殺者ガモーラ、“オーブ”を狙うロナンを妻子の敵と狙うドラックス、賞金稼ぎのアライグマ型クリーチャーのロケット、そしてロケットの相棒の樹木型ヒューマノイドのグルートの5人。5人のキャラの中ではアライグマのロケットが最高です。もともとアライグマはアニメのラスカルのようなおとなしい動物ではな<、非常に凶暴な動物ですが、まさしくロケットのキャラはアライグマそのものです。また、何を聞かれても常に「アイ・アム・グルート」としか話さないグルートも印象的なキャラです。そんな彼がラストで「ウィー・アー・グルート」と言う場面にはグッときてしまいます。この二人のキャラの登場がこの作品のシリーズ化を決定したと言っても過言ではない気がします。
 ヴィン・ディーゼルとブラッドリー・クーパーの名前があったのですが、どこに登場しているのかと思ったら、グルートとロケットの声を出していたんですね。
 そのほか、こんなB級ぽい映画なのに、ザンダー星を統治するノバの指揮官役で名優グレン・クローズが出演している
のも驚きです。ピーターを誘拐し、育てたヨンドゥ役を演じたのはマイケル・ルーカーですが、その顔立ちからいつも悪役ばかりですが、今回ちょっと三枚目っぽいのが好印象です。
柘榴坂の仇討(26.10.1)
監督  若松節朗
出演  中井貴一  阿部寛  広末涼子  中村吉右衛門  高嶋政弘  藤竜也  真飛聖  吉田栄作  堂珍嘉邦
     近江陽一郎  木崎ゆりあ  津嘉山正種
 浅田次郎さん原作の同名小説の映画化です。
 大老・井伊直弼が暗殺された“桜田門外の変”で大老を守れなかった彦根藩士・志村金吾と暗殺を実行した元水戸藩士・佐橋十兵衛のその後を描く作品です。
 暗殺を防ぐことができなかった金吾は、切腹することを許されず、藩主の仇討ちをするよう命じられ、逃げている5人の浪士を探し回る。時代は明治となり、5人のうち4人はすでに死に、残りは金吾が当日刃を交えた十兵衛一人となっていた。明治となっても髪で二本差しの武士の姿のまま十兵衛を探し歩く金吾。一方十兵衛は名前を直吉と変え、人力車夫として生きていた。そんなある日、金吾は十兵衛をようやく見つけ、仇討ちを実行しようとするが、折しも、その日は明治政府から仇討ち禁止令の太政官布告が発布されていた。
 新時代になってからも仇討ちを探し回る金吾と、大老を討ち、罪人として世間の片隅でひっそりと生きる十兵衛という、時代の流れに翻弄された二人の男と、武士の矜持を貫こうとする夫を支える金吾の妻・セツを描いていきます。
 仇討ちを命じられた金吾を中井貴一さん、―方敵役、十兵衛を阿部寛さんが演じます。中井さんといえばNHK大河ドラマの「武田信玄」をはじめ、「四十七人の刺客」や「壬生義士伝」など時代劇はお手のものですが、阿部さんの侍姿はあまり見たことがないですね。まあ今作でも侍姿は冒頭だけで、あとは髪も現代風の人力車夫姿になってしまいましたけど。
 ラストは金吾とセツが手をつなぐシーンとなります。ちょっと現代的で、時代劇の雰囲気ではありませんが、あれは中井さんが「これから俺はお前と一緒に前を向いて生きていく」という決意の意味合いを持たせたかったと、こだわったシーンのようです。
 井伊直弼役で中村吉右衛門さんが出演しています。19年ぶりのスクリーン登場のようですが、やはり吉右衛門さんがいるだけで重みが増しますねえ。見事な存在感です。
アバウト・タイム(26.10.4)
監督  リチャード・カーティス
出演  ドーナル・グリーソン  レイチェル・マクアダムス  ビル・ナイ  トム・ホランダー  マーゴット・ロビー
     リンゼイ・ダンカン  リディア・ウィルソン  リチャード・コーデリー  ジョシュア・マクガイア
 大好きな作品「ラブ・アクチュアリー」の監督、リチャード・カーティス作品です。彼自身がこれが最後の監督作品であると言っており、内容が好きな“タイムトラベルもの”と聞けば、観に行かないわけにはいきません。
 赤毛で見た目冴えない青年のティム。彼は21歳の誕生日に父親から、一家の男は皆タイムトラベルの能力を持っているということを告げられる。タイムトラベルといっても、行くことができるのは過去にだけ。それも自分がいる過去だけという限定的なものなので、歴史を変えるようなことはできないというもの。方法も暗い場所で頭の中に行きたい時を思い浮かべてグッと拳を握りしめるというだけ。簡単ですよねえ。なぜ、彼の一族が能力を持つかについてはまったく説明かありません。でも、この映画はSFというより、恋愛映画なので、理屈や方法はどうでもいいのです。
 普通こんな能力があったら、競馬の当たり馬券を買ったり、ロトくじ買ったりと、いろいろ有効(?)に利用する方法(どうも金儲けしか考えつきませんが)があると思うのですが、ティムがその能力を使ったのは恋の成就のため。ある日、ロンドンで弁護士としての仕事を始めたティムは、悪友に誘われて行った店で運命の女性・メアリーに出会います。タイムトラベルを繰り返し、どうにかメアリーと結婚し、子どもも生まれたが・・・。
 “タイムトラベル”といえば、過去を変えてはいけないというのが、決まりごと。通常タイムトラベルものではタイムトラベルで変えた過去のほんの小さなことが未来を大きく変えるというのがパターンですが(バタフライ効果というやつですね)、この作品では、ティムは現実を変えるために、その能力を使って過去を何度もやり直します。結婚式の立会人を何度も変えるところは笑ってしまいました。
 タイムトラベルの結果としてティムが選択したのは、メアリーと子どもだちと築く普通の家庭。本当の幸せっていうのは、結局そんな身近なところにあるんですね。
 ティムの父親を演じたのは「ラブ・アクチュアリー」で売れない歌手を演じていい味出していたビル・ナイです。この作品、家族の愛を描くと共に、父と子の繋がりも描き出していきます。
 ティムの妻となるメアリーを演じるのはレイチェル・マクアダムス。そんな美人ではありませんが、嫌みのない顔がこうした恋愛映画のヒロインにぴったりです。
 「ラブ・アクチュアリー」でも音楽が映画の中でうまく使われていましたが、それはこの作品でも同じです。音楽に乗せてティムとメアリーの幸せな姿を描いていく場面は素敵です。
太陽の座る場所(26.10.4)
監督  矢崎仁司
出演  水川あさみ  木村文乃  森カンナ  三浦貴大  鶴見辰吾  古泉葵  吉田まどか  大石悠馬 山谷花純
 辻村深月さん原作の同名小説の映画化です(原作の感想はこちら)。
 原作はだいぶ前に読んだので、内容はほとんど忘れてしまっていたのですが、今開いてみると5人の元クラスメートの語りで描かれていたものが、映画では二人の“キョウコ”、高校時代クラスの女王様だったが、今では地方局のお天気アナである高間響子と彼女と同じクラスで今は女優として活躍している鈴原今日子を描いていきます。
 ただ、映画では、響子が今日子を“りんちゃん”と呼ぶように友人たちに仕向け、今日子から“キョウコ”という名前を奪ったことに対し、今日子は悔しかったと思うのですが、その悔しさを描き切れていない気がします。結局、今日子はそのまま響子のグループに入るのですから。また、響子の好きな男の子と口をきいただけの友人を響子が体育倉庫に閉じ込めたのを今日子が助ける過程、そしてその後の二人のキョウコの関係も詳しく描かれず、説明不足です。それゆえ、冒頭の体育館の場面が唐突すぎる嫌いがあります。
 そのうえ、二人のことを描いていくだけと思ったら、森カンナさん演じる水上由希が二人の“キョウコ”と同様に、というより成長した今日子以上に映画の中では大きく描かれており、結局誰をこの映画で描きたいのか、何を言いたかったのか、焦点がぼやけてしまった感があります。
 高校時代と就職してから立場が逆転するということはよくある話で、何ら珍しくありませんし、何故に響子は地元に留まらなくてはならないのかの彼女の心情も理解できません。
 また、原作では“キョウコ”という名前がミステリーとしての要素となっていたと思うのですが、映画ではミステリーとしての謎解きの部分はありません。ちょっと残念です。
 原作の辻村深月さん、監督の矢崎仁司さんが山梨県出身ということで、撮影場所も山梨県の各地で撮影されたせいか、こういう映画を見に来そうもないおじいちゃん、おばあちゃんたちが客席の中にいました。「ああ、あそこで撮影しているんだ」と、映像を楽しむことはできたのですが、残念ながらただそれだけという感じです。
蜩ノ記(26.10.4)
監督  小泉尭史
出演  役所広司  岡田准一  堀北真希  原田美枝子  青木崇高  寺島しのぶ  吉田晴登  井川比佐志
     串田和美  小市慢太郎  三船史郎
 葉室麟さんの直木賞を受賞した同名作品の映画化です(原作の感想はこちら)。
 城中で家老の甥と刀傷沙汰を起こした檀野庄三郎は切腹を許される代わりに、幽閉されている戸田秋谷の監視を命じられる。7年前に側室と密通した罪で10年後の切腹とそれまでに藩の家譜の編纂を命じられた戸田秋谷。秋谷の家に住むようになった庄三郎は秋谷の人となりを知るようになって、次第に彼に惹かれていく。
 2時間強の上映時間なので、やはり原作に書かれていることをすべて映像化することは無理のようです。原作に描かれていた秋谷と側室とが幼馴染みで心通い合っていたというところが映画の中ではあまり詳細には描かれていません。そのあたりはかなり重要な点だと思うのですが。
 10年後の死が約束されている中で、自分だったらいったいどういう思いで毎日を過ごしているのだろうと考えると、毎日を泰然と変わらず生きていく秋谷の姿にとてもこうはいかないなと思ってしまいます。しだいにそのときが近づいてくる中で、毎日を変わらず生きるというのは難しいことですよね。
 秋谷を演じるのは役所広司さん。秋谷のような温厚篤実の人を演じるのには役所広司さんは最適です。庄三郎を演じるのは岡田准一さん。現在NHK大河ドラマの「軍師官兵衛」で官兵衛を演じていますが、すっかり侍姿がお似合いです。
 あとでパンフレットを見てわかったのですが、殿様役を演じたのはあの三船敏郎さんの息子さんでした。お父さんの風貌とはちょっと違います。
ささらさや(26.11.14)
監督  深川栄洋
出演  新垣結衣  大泉洋  中村蒼  富司純子  石橋凌  福島リラ  藤田弓子  波乃久里子  小松政夫
     つるの剛士
 加納朋子さん原作の同名小説の映画化です。ユウタロウは若手の落語家。自分の落語を笑ってくれた“さや”という女性と結婚し、子どもも生まれて幸せ絶頂の最中、交通事故で死亡してしまう。ところが彼の魂はこの世に残り、さやと子どものユウスケを見守ることとなる・・・。
 幽霊となって愛する者を見守るという点は大好きな映画「ゴースト ニューヨークの幻」と同じですし、幽霊となったユウタロウが他人の身体に乗り移るという点では、これまた大好きな映画「天国からチャンピオン」と同じということで、原作も加納作品の中で一番好きな作品でした。ただ、映画は原作と異なってユウタロウ(原作では俊彦)の職業が若手落語家、そして演じるのが大泉洋さんということから、感動作だけに留まらず、ちょっとコミカルな雰囲気も楽しませてくれる作品となりました。
 テレビドラマとして次作の「てるてるあした」が放映された際は、さやは木村多江さんが演じており、彼女の表情はいかにも幸少ないという感じでしたが、今回、さやを演じたのは新垣結衣さんということもあって、幸少ないというより、健気という感じでした。やはり彼女には笑顔が似合うので、全体としてトーンの明るい感じの雰囲気の映画になっています。新垣さんの若妻は可愛かったですねえ。
 おもしろかったのは、あの富司純子さんのユウタロウが乗り移ったときの演技です。いかにも大泉洋さんが演じている感じがうまく出ていました。さすがに大女優です。乗り移ったときの演技といえば、エリカの子ども役の子役の演技も見事でした。エリカ役は「ウルヴァリンSAMURAI」に出演していた福島リラさん。このところ、NHK大河ドラマに出演したりと大活躍ですね。
 幽霊ものが好きな人にはおススメです。
インターステラー(26.11.22)
監督  クリストファー・ノーラン
出演  マシュー・マコノフィー  アン・ハサウェイ  ジャシカ・チャスティン  エレン・バーステイン  マイケル・ケイン
     ジョン・リスゴー  マッケンジー・フォイ  ティモシー・シャラメ  ウェス・ベントリー  トガー・グレイス
     ビル・アーウィン  マット・デイモン  
 食糧不足で地球は滅亡への道を辿っていた近未来、NASAは人類が移住できる星を探す計画を進めていた。クーパーは優秀な宇宙船パイロットだったが、かつて乗船していたロケットが墜落した後は農夫として畑を耕す毎日を送っていた。ある日、不思議な現象が娘の部屋で起き、そこで示された地点に向かったクーパーは「ラザロ計画」というNASAの宇宙探査計画を知り、パイロットとして惑星調査に向かうこととなる。部屋で起きる不思議な現象が「ここに留まれ」と示していることを解いた娘のマーフは、クーパーに行くなと懇願するが、クーパーは必ず帰ってくると約束して宇宙に向かう・・・。
 上映時間が2時間49分という大作、その上、相対性理論、ブラックホール、四次元、五次元といった物理学の難しい話が出てくるので、正直理解できないところもあり、眠ってしまうのではと思いましたが、それさえ乗り切ればストーリーにグッと引き込まれていきます。
 これはSF映画ですが、一番大きなテーマは父と娘の愛です。別れの際の気持ちのすれ違いから父を理解できなかった娘と、一方、絶対に帰るとの娘との約束を守ろうとする父。そんな二人がどうなるのか、ネタバレになるので書くことができませんが、これは感動です。娘を持つ父親なら絶対涙してしまうと思います。
 ラスト、映画の冒頭テレビで老人たちが語っていたのは何なのか、娘の部屋で起きていた不思議な現象はいったい何だったのか、アメリアが接近遭遇したものとは何だったのかなど様々な伏線が回収されていき、そういうことだったのかあと納得です。最後の場面も男らしくていいですよ。
 主人公・クーパーを演じたのはアカデミー賞俳優、マシュー・マコノヒー。脇役がまたすごいです。義父役にジョン・リスゴー、移住計画を進めるブランド教授にマイケル・ケインと、渋いですねえ。印象的なのはクーパーと一緒に宇宙に旅立つアメリア役のアン・ハサウェイです。クリストファー・ノーラン監督が前作の「ダークナイト・ライジング」にもキャットウーマンの役で起用していましたが、お気に入りなんでしょうか。パンフレットに記載されていませんでしたが、重要な役どころでマット・デイモンが登場しています。なんだか太ったなあという感じです。そして忘れてはいけないのが、ロボットのTARS。外見はロボットそのものですが、ユーモアを解し、最後に果たす役割も感動ものです。人間のために淡々と使命を遂行するTARSに拍手です。
想いのこし(26.11.24)
監督  平川雄一朗
出演  岡田将生  広末涼子  鹿賀丈史  木南晴夏  松井愛莉  巨勢竜也  佐藤二朗
 ガジロウはいわゆる“チャラ男”でロハ丁手ハ丁のダフ屋。笠原ユウコは小学生の子どもを抱えるシングルマザーでポールダンサー。ある日、ユウコら4人の乗った車は道に飛び出したガジロウを避けるため他の車と衝突し、同乗者全員が死亡するが、彼女ら4人の魂はこの世に残ったままとなってしまう。ところが、ガジロウだけは幽霊となったユウコらの姿を見ることができると知り、彼女らはガジロウを通して、やり残したことをやろうとする。
 大好きな“幽霊もの”です。ストーリーとしては、4人が自分のやり残したことを実現させて成仏していく(?)という涙腺を緩くさせるお決まりのパターンの映画です。でもそれ以上にこの映画を見させるのは、ガジロウを演じる岡田将生くんの演技です。これまで、カッコいい役が多かった岡田くんが、ここではお金と女に夢中なチャラ男を見事に演じています。顔のよさはどうにもなりませんが、これだけスマートではない役の岡田くんを見るのは初めてです。ウエディングドレス姿になりますし、ラストではポールダンスまで披露します(男からすれば気持ち悪いです)。
 ユウコを演じるのは広末涼子さん。失ネLながら30歳過ぎで太もも丸出しでボールダンスをする姿に拍手です。
フューリー(26.11.28)
監督  デヴィッド・エアー
出演  ブラッド・ピット  シャイア・ラブーフ  ローガン・ラーマン  マイケル・ペーニャ  ジョン・バーンサル
     ジェイソン・アイザックス  スコッド・イーストウッド  
 第二次世界対戦終了間近の1945年4月、ヨーロッパ戦線でドイツ軍と戦う戦車隊の5人の男を描いた作品です。
 ブラッド・ピット演じるフューリーと名付けられたシャーマン戦車の車長・ドン・コリアー(通称ウォーダディ)を筆頭に、敬虔なクリスチャンの砲手のボイド(通称バイブル)、メキシコ系アメリカ人の操縦手のトリニ・ガルシア(通称ゴルド)、お調子者で柄が悪いが勇気は人一倍の装填手・トラヴィス(通称クーンアス)、そしてタイピストでありながら副操縦士に配置されてしまった新兵のノーマン・エリソンという個性豊かな5人の戦いが描かれます。
 何といっても見所は、戦車同士の戦いです。迫力があります。実際に大戦中に動いていたシャーマン戦車とドイツ軍最強のティーガー戦車が使用されているので、戦車オタクにはたまらないでしょうね。
 ウォーダディが、新兵のノーマンに生き残るためにしなくてはならないことを教えるために、捕虜となったドイツ兵を射殺させようとする場面があります。実際に捕虜となった者を裁判にもかけずに射殺するのは戦時下でも違反ですが、現実はそんな綺麗なことを言ってはいられないでしょう。最初はドイツ兵を殺すなら自分を殺せと抵抗していたノーマンが次第に銃を撃つのに躊躇しなくなります。これが戦争の残酷なところですね。
 部下の命を守るのが自分の使命だと言いながら、ウォーダディがキャタピラが壊れ動かなくなった戦車1台でドイツの最強部隊300人と戦うことを決意するのは無謀です。ウォーダディを慕う部下が逃げてもいいと言われても逃げられないでしょうから、結果は見えています。まあこれがラストの見所ですから、逃げるわけにはいきませんけど。
 ブラッド・ピットのかっこよさは相変わらずです。出演者を見たときには、てっきり新兵役はシャイア・ラブーフだと思ったのですが、今回は古参兵役でした。「トランスフォーマー」で一躍脚光を浴びた頃と比べると、あのときの青臭い青年がすっかり大人になったという感じですね。
 ウォーダディがノーマンに語る言葉が印象に残ります。「理想は平和だが、現実は残酷だ」
寄生獣(26.12.6)
監督  山崎貴
出演  染谷将太  深津絵里  阿部サダヲ  橋本愛  東出昌大  余貴美子  北村一輝  國村隼  池内万作
     浅野忠信  山中崇  岩井秀人  豊原功補  オクイシュージ
 岩明均さん原作の同名漫画の映画化です。題名は知っていても読んだことはありませんでした。漫画が人気を博していたのは1990年代ですから、20年後の映画化となります。
 人間の脳を乗っ取って人間になりすまし、他の人間を捕食する寄生生物と人間との戦いを描く作品です。現在公開されているのは、来年4月に公開される「完結編」との2部作の前編で、ようやく人間が寄生生物の存在を知ったところまでなので、まだ全体としての評価はできないのですが、上映時間109分を飽きることなく観ることができました。映画が原作を超えることは難しいので、原作を知っている人には、いろいろな意見もあるでしょうけど、知らなければ十分楽しむことができます。
 主人公の泉新一を演じるのは染谷将太くんですが、とぼけた表情から真剣な表情までなかなか上手ですねえ。新一の脳を乗っ取ろうとして失敗し、そのまま右手に寄生した“ミギー”との共生は、実際には染谷くんの一人芝居ですから、彼の演技力がこの映画の成功の鍵を握るといっても過言ではありません。
 ミギーの声を担当するのは、阿部サダヲさん。ミギーのキャラにぴったりという感じですが、ついつい阿部さんの顔が思い浮かんでしまいます。声だけでなく、モーションキャプチャースーツを着て実際に動きも演じられたそうなので、やっぱりどこかに阿部さんの雰囲気が出てくるのでしょう。
 また、イケメン若手俳優の東出昌大くんが寄生生物を演じているのが意外です。寄生生物は表情があまりないという設定なので、ぎこちなく微笑む顔が不気味です。寄生生物が正体を現したときは首から上はCGで寄生生物になっていて顔がありません。大人気の東出さんが、よく演じたものです。でも、さすがに高校生役は無理あるのでは(近日公開の「アオハライド」でも高校生役を演じますけど)。
 不気味といえば、寄生生物仲間の深津絵里さんも東出くん以上の不気味さを発揮しています。そのほか、完結編には大森南朋さんや今回もラストにちょっと顔を出した浅野忠信さんが登場するので、期待大です。
 それにしても、牛、豚、鳥と何でも食べる人間と比べると寄生生物は人間しか捕食しない、どちらが悪いか?は哲学的ですね。
神様の言うとおり(26.12.11)
監督  三池崇史
出演  福士蒼汰  山崎紘菜  神木隆之介  染谷将太  優希美青  大森南朋  リリー・フランキー  高島礼子 
 この映画、続編があるのでしょうか。あまりに理不尽なラスト。これから大森南朋さん演じる引き籍もりの青年はいったい何をしようとするのか。リリー・フランキーさん演じるホームレスの男の正体は何なのか。消化不良のままのラストです。
 冒頭から凄惨な場面です。教室の中で教壇に鎮座する“だるま”による「だるまさんがころんだ」が行われています。動いたものは首が飛ぶ(というより破裂してしまうのでしょうか。教室の中には首なしの死体だけしか残っていません)という恐ろしい死のゲームです。観客としては何の説明もなくこの場面ですから戸惑いますが、その血しぶきと、なぜか血の代わりの赤いビー玉に圧倒されます。このあたり、三池崇史監督らしい演出です。
 主人公は毎日が退屈だと思っている高畑瞬(福士蒼汰くんが演じます。)。教室の中での「だるまさんがころんだ」から体育館での「猫に鈴つけゲーム」、不思議な立方体の中でのこけしとの「かごめかごめ」、シロクマによる「嘘つき探し」、そして最後の「缶蹴り」を勝ち抜くのは誰なのか。
 世界中の高校で同じような事件が起こり、上空には不思議な立方体が浮かぶという超常現象の割には、行われていることは「だるまさんがころんだ」や「かごめかごめ」などという子どもの遊びとは、ギャップが大きすぎます。だいたい、日本はともかく他の国の高校でも「だるまさんがころんだ」なんてやっているの?と余計な疑問を持ってしまいました。
 神木隆之介くんが人を殺すのも躊躇わず、この状況を楽しむ高校生・天谷を演じています。童顔の神木くんが平気な顔で人を殺すのが、逆に怖いです。「SPEC」の一(にのまえ)や先頃の「るろうに剣心」の瀬田宗次郎も同じような性格の役柄でしたが、役柄が固定化されてしまうのもどうかなという気がします。確かにああいう役を演じるとうまいですけどね。
 現在公開中の「寄生獣」で主人公を演じている染谷将太くんも出演しています。ちょっとびっくりする役柄でした。これは見てのお楽しみでしょう。
 とにかく観客の考えているようにはストーリーが進まないという点では、いい意味で裏切られました。
ゴーン・ガール(26.12.13)
監督  デヴィッド・フィンチャー
出演  ベン・アフレック  ロザムンド・パイク  ニール・パトリック・ハリス  タイラー・ベリー  キャリー・クーン
     キム・ディケンズ  パトリック・フュジット  エミリー・ラタコウスキー  ミッシー・パイル  
 「このミス 2014年版」で海外編第9位となったギリアン・フリンの同名小説の映画化です。僕自身は原作は未読ですが、作者本人が脚本に名を連ねているので、原作のおもしろさは損なわれていないのではないでしょうか。
 これはひとことで言って「怖い映画です」。どう怖いかは、ネタバレになるので細かいところが言えないのですが、男性必見です。のんびりと余裕を持って観ていると衝撃は大きいです。カップルで観に行くには向いていない映画です。
 ニューヨークでライターをしていたニックはパーティーで知り合ったエイミーと恋に落ち結婚する。二人は末期癌のニックの母の介護のためにニックのふるさとであるミズーリー州に戻り、ニックの双子の妹と共にバーを経営することとなる。結婚から5年を迎えた朝、突然エイミーが家から姿を消し、家の中には争った跡と床からは血痕を拭き取った跡が発見される。当初は妻が失踪した悲劇の夫という立場であったニックだったが、しだいに彼に対する疑惑を生じさせる事実が持ち上がってくる・・・。
 果たしてエイミーはどこに消えたのか。既に殺されているのか。謎が深まる序盤から、中盤になって突然話が反転し、思わぬ展開になっていきます(ここからが怖い!)
 ニックを演じるのはベン・アフレック。顎が割れているところがこの役柄を演じる―つのポイントになったようです。妻のエイミーを演じるのはボンドガールも経験したことのあるロザムンド・パイク。ボンドガールのときの印象はまったく残っていないのですが(そんなにスタイルのいい女優さんだったかなあ?)、今回のエイミー役は強烈な印象を残します。知的な表情からは想像できない演技にアカデミー賞との声がかかるのもわかります。