平成14年度各会計歳入歳出予算案審議の締め括りにあたり、生活者ネットワーク・民主党の総括意見を申し上げます。
14年度予算案は新しい長期計画がスタートする節目の初予算案でもあり、行財政改革が喫緊の課題である我が区にとって、江戸川区政のさらなる発展と改革を方向づけるという大きな意味を持っています。
新年度予算案のフレームを概観すると、いたるところで、昨今の経済状況や区民税減収に見る苦しい財政事情、その一方で人口の増加や高齢化の進展にともなう行政需要のアップ、あるいはIT(情報技術)化や行政のスリム化の必要性への認識が垣間見られます。区は、こうした厳しい状況下にあっても、「区民生活を守り、区民が明るい希望を持って安心して暮らせる条件を整える」ことが依然必要であり、そのためにも「安定した行財政基盤の確立と事務事業・執行体制のあり方の探求」に努めることが必要であることは、新年度予算編成の基本方針として示されているとおりです。我が会派は、そういった姿勢が新年度予算編成の基本方針に流れていることを理解し、また総括的に見た場合、予算案において合理的な行財政運営が図られると判断し、当該予算案に対し賛意を表明いたします。
しかしながら、新たに迎えつつある時代状況を考えたとき、個々の課題への対処がまだ不十分であろうと思われる部分が散見されることも指摘しないわけにはいきません。私たちは、いかに経費をかけずに、時代の趨勢にあった意識改革を行っていくかを考えの起点といたしております。21世紀にふさわしい市民との対話型の行政、環境との共存を図る行政、そして性差別意識等を排除した基本的人権を守る行政を、よりいっそう徹底化させることを会派の姿勢としております。
新年度予算案のフレームワークを総合的に評価しつつも、以下、歳入歳出の各項目について数点ずつ要望の意を込めて、整理してまいりたいと思います。
まず、歳出から申し上げます。
はじめに、総務費です。犯罪の被害に遭遇してしまった者に対しては『くらしの便利帳』にSOSの連絡先などを明記するなどの配慮をし、犯罪被害者支援ネットワークの充実化を期待します。また、情報公開のさらなる推進、ならびに行政や施策を住民にとって身近なものにしてくれる政策評価の導入により、行政への積極的な市民参加を促すことを望みます。さらに自治体行政の本格的なIT化とその推進が不可欠な時代です。情報化推進リーダーを中心に、電子自治体構想実現に向けた積極的な取り組みが欠かせません。また、さまざまな分野の人や団体が交流できるボランティアセンターの構築を望みます。その中で、講座の充実や、区内在住の専門家や人材の活用も忘れることはできません。
区民生活費について申し上げます。住民基本台帳ネットワークシステムの稼動にあたっては個人情報保護の点に細心の注意を払いつつ、ネットワーク化されたデータの合理性、ワンストップサービスの利便性が十分に区民に提供されることを望みます。区民館、コミュニティ会館においては石けんの使用を徹底化し、さらに非喫煙者にも優しい効果的な分煙体制の確立が必要です。また環境行政、エネルギー行政の視点からも、区施設における屋上緑化の推進も焦眉の急であると言えます。
産業振興費について申し上げます。一年を通して散在している表彰式は、効率性と財政効果の追求から、同時開催の可能性を検討されますことを提言します。
環境費について申し上げます。「環境行動計画」の取り組みが順調に進められていることを評価しつつ、さらに区民や民間向けに市民参加型の視点で積極的な働きかけを行うことを要望します。家電リサイクルについては、不法投棄の元凶とも指摘される家電リサイクル法の改正と前払い制の導入を引き続き国とメーカーに申し入れていただきたいと思います。その他のリサイクルについても、資源の有効な再利用と区内循環を目指すという観点から、積極的な対応が強く望まれます。
健康費においては、再度、その健康被害という観点から、区内での効果ある分煙体制の確立を望みます。また、対応が遅れている精神障害者行政にあっては、改正障害者基本法の立法趣旨の理解を徹底化し、地域社会において彼らに社会復帰の機会を提供できる施設づくりを推進する必要があります。
福祉費について申し上げます。介護保険事業計画改定の検討委員会は、利用者側の立場に立ち、また公開を原則とし、丁寧な見直しがなされることを要望します。児童虐待SOS電話の設置は高く評価しており、今後も虐待を受けている児童の発見、および関係各部署との情報交換、ネットワーク化を推進していくことが強く期待されます。子ども家庭実態調査については、それが表面化しにくい子育ての問題を引き出すことで、今後の子育て、子育ちを支援する計画につながっていくことを期待します。ドメスティック・バイオレンスにおける緊急一時保護宿泊助成の開始は大きく評価しております。また、区民にわかりやすい保育制度の広報のあり方の模索、区民に誤解を与えることのない行き届いた対応が強く望まれます。
都市開発費についてです。「水と緑の行動指針」の実行には、地域に密着した環境促進事業団の役割が重要です。また、地域通貨などの導入により、子どもたちの参加を含む大勢のボランティア活動を発展させることが望まれます。
土木費について申し上げます。まず、10月に開催される「全国川サミット」で得られた成果を、今後の区の環境行政に積極的に応用されるよう望みます。また、区内に生息するアオウオなどの生物は貴重な環境財産であり、ホームページなども活用しながらアピールしていただきたいと思います。次に、区内にある歩道橋についてはバリアフリーの観点から時代にふさわしいものへと整理し直していくことが期待されます。さらに、子どもたち対象の施設として生まれ変わるポニーランドは、できる限り大勢の子どもたちに等しい機会を提供し、豊かな人間性を育むための施設として今後の展開に期待します。
教育費についてです。男女平等教育を進めるため、小中学校での男女混合名簿の積極的な導入を強く要望します。また、子どもたちを暴力から守り、また他者というものを理解できる人権意識を育てていくためにも、体験的な人権教育の導入を提案します。CAPプログラムやジェンダー問題のワークショップなどが考えられます。学校給食の民間委託については、給食委員会の充実化を図り、保護者の意見を積極的に給食に反映させ、また、一定の期間を経て区は事業者を評価し、新たな方針の見直しにもつなげる柔軟な考え方を持つべきです。さらに、学校給食の食器洗いに使われている現在の合成洗剤は、子どもたちの健康や環境への影響が少ない、石けんに切り替えることを強く望みます。図書館行政においては、単なる貸し出し業務をこなす公立図書館という位置づけではなく、レファレンスといった高度に整理された情報提供サービス業務もあわせもった図書館としての姿勢が強く求められます。そのためには、図書館司書有資格者の比率のアップと同時に、専門職であるレファレンス担当の人事サイクルを最低でも5年以上とすべきです。また電子図書館についての研究も欠かせません。
公債費について申し上げます。健全な財政運営を推進する中で、公債費負担比率あるいは経常収支比率をひとつの目安にしながら、弾力性のある財政構造が今後も保たれるよう、またそのことに最大の注意が払われ続けるよう強く望みます。
最後に、特別会計予算です。介護保険事業特別会計について申し上げます。まず、ケアマネージャーの研修にあわせてケース検討会議の開催を進め、サービス利用者の生活や身体の状況に即したケアができる体制を整えることを要望します。さらに、ヘルパーのメンタルケアのためのサポート体制を整備する必要があります。また、苦情処理のための第三者機関として社会福祉協議会に委託する「権利擁護・支援事業」と介護保険の苦情・不服解決の体制とが一本化されていくことを望みます。
以上、歳入歳出の各項目について数点ずつ要望や意見を申し上げました。前述のとおり諸課題に対する意見や要望はあるものの、今回提案されている平成14年度各会計予算案については、生活者ネットワーク・民主党として賛意を表明いたします。我が会派から提案させていただいた各課題への要望は、過分な予算のかからないことを基本としております。積極的な検討を期待いたします。また、この総括意見の中ではあえて触れませんでしたが、委員会の中で提案させていただいた諸点についても、同様に取り組んで下さるよう強く要望いたしします。
なお、共産党から出されております予算修正案については、行財政改革の必要性、民間活力の適正な導入の必要性からも、反対を表明いたします。
以上、生活者ネットワーク・民主党の総括意見といたします。