議会活動

■2010年(平成22年)11月議会 一般質問

<総合的な障害者条例の整備について>

 まず、提案の意味を込め、総合的な障害者条例の整備について伺います。我が区は子育て支援施策とあわせ、外部から「福祉の江戸川」とも呼ばれるように、福祉施策の先進自治体として知られています。財政面からみても、先に認定された平成二十一年度決算では、子育て支援を含めた区の福祉費は約八百五十億円に及び、今や福祉は区財政のおよそ四割を占める最大支出分野でもあります。一口に福祉といっても、そこには介護保険、高齢者福祉、障害者福祉、生活保護などたくさんの分野がありますが、ここでは障害者福祉について取り上げたいと思います。
 国会では、つい先日、障害者自立支援法の改正が行われ、発達障害者を軸とする障害者の範囲の再整理や応益負担から応能負担へといった見直しが実現し、政府はさらに、障害者福祉サービスを包括的に整理すべく、仮称・障がい者総合福祉法の制定に向けた準備を進めています。新法は福祉サービスの具体化をその中心的な守備範囲としつつも、その中に医療、教育、労働、司法あるいはコミュニケーション支援といった分野についても包括的に含めるべきかどうか、現在、障がい者制度改革推進会議の中で議論がなされています。
 さて、そうした国の動きに先んじて、障害者の権利擁護、地域での生活支援、就労支援など障害者福祉を推進するための包括的な条例を制定した自治体が現れました。「障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例」を制定した北海道です。今年四月に施行された同条例は、都道府県レベルの障害者条例としては全国二番目のものですが、権利擁護を中心とした理念条例的な千葉県の先例に比べ、それは権利擁護のみならず、障害者の暮らしやすい地域つくりや就労支援などの施策への具体的な道筋も規定した総合的な障害者条例です。
 北海道障がい者条例は、まず、国連の障害者権利条約にならい、障害者の権利擁護と彼らへの配慮を規定しています。そのうえで、条例では、道が障害者が暮らしやすい地域づくりのためのガイドラインを整備し、そうした地域づくりにおいて重要な役割を担う市町村を支援することを義務付けています。さらに、障害者の就労支援を具体化するため、障害者雇用のインセンティブとして、道内事業者に対し認証制度を設け、認証企業に対しては地域貢献をしていることの評価として入札に際し優遇したり、随意契約への配慮を認めたり、あるいは低利融資を準備するなどのアドバンテージを条例の中でうたっています。道の条例は障害者福祉サービスを主な守備範囲としつつも、「福祉の枠を超えて、幅広い関係者や関連する施策と連携・協働する取組を推進すること」を目指しています。
 現在、区の障害者福祉行政においては、さまざまな障害者施設に関する条例、法定の施行規則、その他、サービスの具体的手続きを定めた要綱などが整備されています。支援サービスごとに用意されたこれら例規を基に、区の福祉施策が実施されてきたことは無論、評価されるべきことです。しかし、「福祉の江戸川」区に、国でいうところの障害者基本法や障害者総合福祉法的なものに相当する条例がないというのは少し残念な気がいたします。
 北海道障がい者条例にうたわれている三つの点、権利擁護、地域生活支援、就労支援に着目し、区内における例規の有無を調べてみました。まず、障害者の権利擁護に関しては、残念ながら現在、区にはそれをうたったものはありません。地域生活支援については、障害者支援ハウスや障害者施設に関する条例や障害者移動支援事業実施要綱、精神障害者退院促進支援事業実施要綱、重度の心身障害者に対する個別の支援サービスを定めた四つの要綱などが整備されています。支援ハウスや希望の家など障害者を対象としたハコモノの整備は整っていますが、移動支援の時間制限の問題など、地域で自らの選択により生活していくための制度整備にはまだ課題があるように思われます。最後に、就労支援については、先に挙げた障害者就労支援センター条例とそれに関連する規則や要綱、ならびに精神障害者就労支援事業実施要綱が規定されています。先ほど述べたとおり、北海道の条例は障害者雇用に積極的な事業者に対する入札上の優遇措置など、障害者の就労支援という福祉の観点から契約行政のあり方を補完するという特徴を有しています。公共調達にこだわり、障害者とも手を携えた「共育・協働・安心」の地域づくりを目指す自治体として、また、福祉施策の伝統を持つ自治体として、道の事例は示唆に富むものと言えます。
 個別の支援サービスを実施するための条例や自立支援法や各障害者福祉法に関する法定の施行規則など、いわゆる手続きを定めた例規はそれぞれが障害者福祉サービスを支える必要条件であることは言うまでもありませんが、障害者権利擁護の視点、あるいは、移動支援の時間の拡充など地域生活支援サービスのさらなる充実に加え、区内企業を巻き込んだ就労支援の試みの導入など、包括的な福祉施策をうたった、江戸川区ならではの障害者条例を整備してもよいと思いますが、いかがでしょうか。区長の考えをお聞かせ下さい。

 

<区職員による公益通報制度について>

次に、区職員による公益通報制度についてお伺いいたします。
二〇〇六年、刑法など公益性の高い分野の法律で規定された犯罪行為を通報の対象とし、通報者が不利益を被ることがないよう保護することを目的とした、公益通報者保護法が施行されました。江戸川区でも時期を同じくして、通報者の保護と法令遵守を目的とした公益通報処理要綱が整備されたところです。
区の公益通報制度では、職員からの通報を受け付け、調査する機関として公益通報委員会が設置されています。その委員会のメンバーは、長である副区長を筆頭に、教育長、総務部長という上位の管理職三人によって構成されています。しかし、内部通報を受け付け、調査する委員会が管理職三者のみで構成されているというのでは、いかにも通報しづらい体制です。また、通報内容が委員に直接関わるものであった場合、要綱第五条の「自己が関係する通報」の関与を認めない規定はあるものの、内部委員だけで構成された委員会で、はたして公正な判断が可能なのでしょうか。疑問が残るところです。他区の状況をみると、半数以上の区において公益通報委員会に外部委員が採用されています。国よりも三年早く公益通報制度を整備した先進区・千代田区においては、議会の同意を得て任命された公益通報委員にあたる行政監察員が二名おり、彼らは区長から独立した地位と事案に対する調査権を持っています。調査の結果、事案に違法性が確認された場合、区長に報告し、また、区が適切な処置をしない場合には監察員がこれを公表し、監督官庁に通報したり、告発する権限を持っています。内部処理にありがちな甘えを排除するためのチェックアンドバランスの仕組みを埋め込んでいると言えます。
公益通報委員会の構成にはいろいろな方法が考えられますが、少なくとも内部の関係者だけの構成では、公益通報しやすい環境、公正な調査が期待できる環境にあるとは言えません。通報される事案と直接、利害関係を持たない外部委員の採用も検討されてしかるべきと考えますが、いかがでしょうか。区長のご所見を伺います。
また、通報がなされ、それに基づいて調査が行われた事案について、いくつかの区では通報の内容、調査の方法および結果、今後の対応などについて、結果のいかんにかかわらずホームページなどで広く公表しています。こうした結果の公表は、制度が適切に運用されているかどうか、また、公益通報委員会が適切な処置をしているかどうか、を知るうえでは欠かせない仕組みであると言えます。区の要綱では、「区長が必要な是正措置をとったときは」、「その旨を遅滞なく公益通報者に通知する」とありますが、さらに踏み込んで、通報内容、調査結果などについて区民に広く公表していくことが望まれます。区の公益通報制度をさらに有効なものにしていくため、ホームページでの結果の公表を行っていくべきと考えますが、いかがでしょうか。区長の考えをお聞かせ下さい。

 

<スーパー堤防事業について>

最後に、スーパー堤防事業についてお伺いいたします。
先日の行政刷新会議の事業仕分けにおいてスーパー堤防事業は「廃止」との判定を受けました。しかし、このことは、同刷新会議がゼロメートル地帯における治水事業が不要であると判定したわけではありません。一九八〇年代から開始されたスーパー堤防事業については、用地確保における住民合意の困難さやバブル崩壊後の厳しい財政状況、あるいは事業完成の時期の不明確さなどから、「廃止すべき」と判断されたものと理解しています。
これまで区は、スーパー堤防事業を推進する第一の理由として、同事業が「国の治水事業である」ことを常に挙げてきました。しかし、仕分けの結果に基づき、国が方針転換を図る可能性は高く、区としてもこれを機に、本事業と一体として進める計画であった「まちづくり事業」について、いったん足を止め、他の工法の検討も含めて国と調整すると同時に、当該住民とともに現実の対応を模索すべき時と考えますが、いかがでしょうか。
無論、区にとって今後も治水対策が必要であることに変わりはありません。そうであれば、現実問題として、スーパー堤防に替わる工法での河川整備についても研究する必要があるのではないでしょうか。例えば、連続地中壁工法による堤防やフロンティア堤防は費用や工事期間の点において優れていると言われます。連続地中壁工法は水圧に応じた壁の厚さの調整が可能であり、用地確保の必要性がなく、環境と財布に優しい工法です。こうした代替工法の研究調査の必要性についてどのようにお考えでしょうか。区長のご所見をお伺いいたします。
以上で、第一回目の質問を終わります。

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