<カーシェアリングについて>
景気の低迷、環境意識の高まり、原油価格の乱高下などさまざまな要因により、昨今、車離れや自動車市場の縮小が指摘されています。そうした中、従来のレンタカーサービスに加え、平日に車庫で眠っている自家用車を貸したい人と借りたい人をマッチングさせるインターネットサービスや、NPOや専門業者による会員制自動車共同利用いわゆるカーシェアリングなどの新たなサービスが登場しています。中でもここ数年、財布に優しいだけではなく、環境にも優しいとして、エコをうたうビジネス界のみならず自治体からも注目を集めているのがカーシェアリングです。
カーシェアリングは八〇年代のスイスで始まり、以後、ヨーロッパを中心に発展し、今では世界の二十カ国、およそ六百近い都市で事業展開されています。それに対し、日本での同事業の普及は、京都議定書目標達成計画において言及された割には、やや遅れている印象があります。ひとつには、国内では道路運送法などにより、カーシェアリングがレンタカー業と同様の法規制を受けてきたことが、普及を阻む一因となってきたとも言われています。しかし、あとに述べますように、二〇〇六年の道路運送法の改正によりネックとなってきた諸規制が緩和され、カーシェアリングの推進にとって追い風の環境が整いつつあります。実際、二〇〇八年のカーシェアリング利用人口は前年より倍増するなど、その利用者数は確実に増えています。
二〇〇三年、内閣官房都市再生本部が「横浜汐見台団地カーシェアリング」を全国都市再生モデル調査として指定したのを皮切りに、同年、福岡市では環境NGOが中心となり、市と大手電力会社との協力の下、カーシェアリング事業をスタートさせました。また、政府は二〇〇四年、「環境にやさしいレンタカー型カーシェアリング」を推進するための構造改革特区制度、いわゆる「カーシェアリング特区」を創設し、広島県や札幌市でその実施が認定されました。二〇〇五年にはカーシェアリング特区制度は全国展開されるという形で発展的に解消され、道路運送法上の規制も緩和され、無人による貸し出し業務が認められたり、また、車の共同使用の許可制度も廃止されました。
さて、こうしたカーシェアリングは一見、従来のレンタカーサービスを想起させますが、いくつかの点で異なっています。それは、カーシェアリングが会員制であること、一般に六時間が最低貸し出し時間であるレンタカーとは異なり、十五分や三十分など短時間の利用が可能であること、インターネットを通じて予約し、無人の貸し出しや管理が可能であること、また、多くの場合、低公害車が採用されていること、などです。何といっても、カーシェアリングの最大の特徴は環境に優しい点です。カーシェアリングは利用時間や利用距離に応じて課金され、自身の自動車利用料を明確に意識することになります。こうした仕組みにより、利用者は必要な時だけ車を使うようになります。サービス利用者はおのずと車を資産としてとらえる従来の考えから、経費としてとらえる考え方へと発想を転換させることになります。このことは車の総台数を減らし、二酸化炭素やエネルギー消費量の削減、渋滞の緩和、違法駐車や交通事故の軽減などに直接間接に貢献し、自然環境のみならず、社会環境に対しても有効に作用するという点でも注目されています。このように、カーシェアリングはエコノミーとエコロジーの両立を実現させるものと言えます。
日経BP社による今年四月の調査によれば、事業者の料金体系や車の利用形態による差異はあるものの、マイカーの月間利用時間が概ね三十六時間未満であるならば、車にかかる出費の観点において、カーシェアリングはカーリースやレンタカーよりも得であり、「マイカーから乗り換えるメリットは大きい」ということです。
東京都は道路交通混雑緩和を目指す交通需要マネジメント施策の一環として、二〇〇七年、都営駐車場におけるカーシェアリング事業者の募集を行ないました。続く今年二月、カーシェアリングと公共交通とを組み合わせたモデル事業として、大手事業者の協力を得ながら都営地下鉄浅草線の西馬込から押上までの十駅の各駅付近にカーシェアリングステーションを設置する試みを導入しました。また、荒川区では昨年六月、カーシェアリングの会員になる際に必要な登録料やカード発行手数料などの初期費用に対し最大五千円を補助する助成制度を開始しています。
今年になってからの注目すべき取り組みとしては、埼玉県川口市の事例が挙げられます。今年三月、同市はカーシェアリング利用の導入を開始しました。これは、市がカーシェアリングを展開する市内事業者の会員となり、事業者と協議の上、環境施策推進の立場からカーシェアリングを利用しつつその普及を目指すというものです。カーシェアリングの事業者にとっては平日日中の稼働率が低いため、保有車両を増やしにくいという課題を抱えていました。そこで、日中の車利用の需要のある行政、具体的には、市の図書館や駅近辺の公共施設や環境部が平日の朝から夕方まで合計四台の車を借り、夜間および土日はその四台は一般会員の利用に回されるという仕組みを事業者との連携で編み出しました。この連携事業は、市にとって決して安くはないハイブリッド車などの低公害車を自ら保有する必要がないというメリットも提供してくれます。事業者は平日の稼働率を高めることができ、また、市は少ない投資で環境施策を推進することができる、いわば両者の思惑が一致した形です。
さて、我が区では二〇〇四年に「区民、事業者、行政が連携・協働するという新たなパートナーシップのもと」に設立されたNPO法人えどがわエコセンターを一つの軸として環境施策の推進を図っています。また、二〇〇八年から二〇一二年までの温室効果ガス削減量を年平均十六万トンにするという具体的目標を掲げ、「エコタウンえどがわ推進計画」を進め、「日本一のエコタウン」を目指しています。こうした中、カーシェアリングという先進的な考えを施策に反映させていくことは意味のあることと考えます。区が新たなインフラを整備したり、利用システムの開発を行なう必要はありません。既存事業者と連携することで、基本料金、月額使用料程度の出費で施策の実施が可能です。
現在、区内でカーシェアリング事業を手掛ける一社が西葛西、船堀、中央、小岩など区内の主要八ヵ所にステーションを設け、事業展開をしています。既存事業者との協力、連携を図ることで、区自らが会員利用者となってカーシェアリングの推進と環境施策のアピールにつなげるという方法が考えられます。また、事業者との連携の下、区民の利用促進をうながすというかたちでもよいでしょう。あるいは、カーシェアリングの利用者に対し助成を行なうという側面支援も考えられます。いずれの方法にしても、温室効果ガスの削減を目指すエコタウンえどがわとして一考に価する事業と考えます。今秋、実証実験がスタートするレンタサイクル事業では、初期投資が少なくて済む点が一つのポイントであったと思います。乗り物を地域で共同利用するという点でも共通です。カーシェアリングは事業者との連携により、極めて少ない初期投資で実施することが可能です。渋滞緩和、駐車場不足の解消、二酸化炭素削減による温暖化防止、公共交通利用の促進、低公害車導入の促進などに貢献するカーシェアリングについての検証や支援を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。あわせて、カーシェアリングに対してどのようにお考えであるかもお聞かせ下さい。区長のご所見をお伺いいたします。
<小中学校における携帯端末をめぐる問題について>
次に、小中学校における携帯端末をめぐる問題についてです。
昨年の都教育庁のサンプル調査によれば、子どもたちの携帯電話の所持率は都内小学校で三八パーセント、中学校で六六パーセントと言われています。携帯電話は家族との緊急の連絡がとりやすいといった利便性の反面、それが持つメールやブラウザなどの機能により、チェーンメール、特定サイトでの誹謗中傷、有害サイトへのアクセスなど、子どもたちの間に多くの深刻な問題をもたらしてもいます。中でも、二〇〇五年ごろから開設され始めたと言われる学校非公式サイトいわゆる「学校裏サイト」では、多くの誹謗中傷や特定の生徒に対する個人攻撃が繰り広げられ、攻撃を受けた生徒が不登校になったり、ひどい場合には自殺に追い込まれたりするなど非常に深刻な事例が起きており、この問題への対応の必要性はかねてより指摘されています。ここでは、大人が加害者なのではなく、不幸なことに、加害者も被害者もともに子どもです。
学校裏サイトは一言で言えば、匿名で設定されるスレッド型の掲示板サイトです。裏サイトは一般にパソコンからではなく携帯端末のみからアクセスでき、しかも正式な学校名などは使われず、子どもたちだけが共有する隠語を使用して開設されることがほとんどであるため、第三者が単純に学校名などから検索することは困難な場合が少なくありません。さらに、そこに書き込まれる誹謗中傷はネット独自の伏字などで記されることも多く、一見、何も問題がないようにさえ見えてしまいます。昨年三月の文部科学省の報告書によると、全国で三万八千二百六十の学校裏サイトが実際に確認されています。
こうした状況を受け、教育委員会では昨年三月に区内の先生方を対象に、メディアと教育の問題に詳しい専門家による研修会を開催しています。子どもたちに対するリスク回避の教育やメディアリテラシー教育の必要性、保護者がフィルタリングソフトなどをきちんと理解することなどを説くペアレンタル・コントロールの必要性などについて、今後も意識啓発の機会を増やし、子ども・保護者・先生方を対象に有識者によるセーフティ教室や研修会を積極的に実施すべきことは言うまでもありません。
しかし、こうした啓蒙対策を除けば、区の教育委員会としての裏サイトなどに対する具体的かつ直接的な対策はまだ実施されていません。すべてのサイトが悪意に満ちた誹謗中傷で溢れているわけではもちろんありませんが、一部ではこうした子どもたちのネット上でのいじめが放置されたままになっていると考えられます。横浜市は昨年、市内中学校百四十五校を対象に、学校裏サイトについて一斉調査をし、現状分析した上で、問題ありと判断した六十八のケースで管理者に削除依頼を行ないました。また、江東区ではこの四月から業務委託による学校裏サイトの監視事業を開始しました。五月までの一ヵ月だけで、すでに「死ね」などといった不適切な書き込み四十八件を見つけ、削除依頼をかけたといいます。裏サイトといった特殊な問題の取り扱いには専門業者の技術と腕が有効であると考えます。以前、話に出されていたサイバーパトロールなど関係機関との連携措置はその後、どのように進んでいるのでしょうか。携帯端末をめぐるこうした問題に対し、教育委員会として直接的な具体策がとられていないのは危惧すべきものと考えます。統一調査の実施や業務委託による監視事業が積極的に実施されるべきと考えます。教育長の考えをお聞かせ下さい。
以上で、第一回目の質問を終わります。