議会活動

■2005年(平成17年)9月議会 一般質問

<フィルム・コミッションとは>

木村 私は、「フィルム・コミッション整備がもたらす江戸川区のPR効果と経済振興」をめぐる問題について質問させて頂きます。

最初に、「フィルム・コミッション」について整理しておきたいと思います。

今、コンテンツ産業あるいはコンテンツ・ビジネスと言われる分野が大きくクローズアップされています。コンテンツ産業とは具体的には、映画、ドラマ、CM、アニメ、マンガ、ゲーム、音楽などといったソフト産業の総称であり、それぞれの文化的表現に対して著作権で保護されている産業のことです。コンテンツの分野はこれまで、所詮はエンタテインメント、子供向けなどと評され、行政がその保護育成策に正面から取り組んでくることはほとんどありませんでした。しかし、わが国のアニメ、マンガ、ゲームの各分野から世界的な一流作家が次々と生まれ、わが国はその創造性と経済規模の点からアニメやゲームの輸出大国となり、さらに、近隣諸国では行政によるコンテンツ産業への保護育成策が積極的に導入され、また、海賊版の問題が国際市場において深刻になり始めるに至り、わが国もコンテンツ産業政策に関して手をこまぬいているわけにはいかなくなりました。

そんな中、2003年7月、政府は知的財産本部の下にコンテンツ専門調査会を設け、日本のコンテンツ・ビジネス振興のための検討作業を開始しました。わが国のコンテンツ産業は事業規模にして11兆から14兆円にも及ぶ一大産業と言われています。しかし、アニメやゲームの分野で先行してはいても、総体として、わが国のコンテンツ・ビジネスは、事業規模ではハリウッドを抱える米国のそれにはまだ大きく水をあけられ、また国の保護育成策に支えられている中国や韓国に猛追されているという状況下にあります。

政府のコンテンツ専門調査会は、「All Japan、Cool Japan、Digital Japan」など5つの理念を掲げ、昨春、報告書「コンテンツビジネス振興政策」を発表しました。そして、その「振興政策」の中で1から10までの改革点が具体的に示され、その10番目に掲げられたのが「地域等の魅力あるコンテンツの保存・発信強化」という問題です。その中では「フィルムコミッションのロケ誘致活動」への支援が今後取り組んでいくべき一つの課題として指摘されています。これは、映画やテレビドラマなどのコンテンツの撮影に際し、欠くことのできないロケにかかわる自治体側の積極的な情報提供・情報発信と誘致活動、あるいは撮影許可などの便宜をめぐる問題です。こうしたロケ誘致の情報提供を行なう窓口や機関を「フィルム・コミッション」と呼びます。わが国では、数年前、全国フィルム・コミッション連絡協議会という団体が設立され、現在、多くの自治体や商工会議所とも連絡を密にとりながら、フィルム・コミッションの整備、推進に取り組んでいます。

                                   

<江戸川区における現状>

木村 先にも述べましたとおり、長い間、行政側がコンテンツ産業の育成策やフィルム・コミッション整備の問題に積極的に関与していこうという姿勢はほとんど見られませんでした。わが区においてもそれは同様であったと言えるでしょう。ロケの申請があっても区には統一的な担当課、窓口が存在せず、また撮影許可のルールも特に定められてはいないため、撮影場所の所轄によって広報課・施設公社などが個別に、ケースバイケースで対応してきたのが現状です。

しかし、こうした状況は徐々に改められるべきです。なぜなら、フィルム・コミッション整備、あるいはコンテンツ産業の保護育成策には、自治体にとって非常に大きなPR効果や文化振興、経済振興、観光収入アップなどの効果が期待できるからです。

現在、区内では年間、どれぐらいのロケの申請があり、実際にどれぐらいの撮影が許可されているのでしょうか。また、ロケの申請件数はここ数年、どのように変化しているのでしょうか。

経営企画部長 本区のロケ回数でございますが、昨年度1年間では32件ございました。関係部署で申しますと、土木部、環境促進事業団、区民施設公社でございます。本年度につきましては、この4月から8月の間に、あわせて18件、同様の関係部署において行われました。

 

<フィルム・コミッションと地域経済振興>

木村 一般に、映画やテレビを通じた映像コンテンツの発信力が持つ観光や雇用などの経済効果への理解が乏しいがために、コンテンツ産業そのものに対する行政の関心も低いのだと推測されます。コンテンツ産業界からは、せっかくのロケ候補地を見つけながらも、自治体における申請窓口のたらい回しやルールの不透明さによって、撮影を断念するという話を耳にすることがあります。これはコンテンツ産業の発展にとってマイナスであるばかりではなく、自治体にとっても大きな損失であると考えられます。映画『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ誘致によってニュージーランドのGDPは2パーセントも押し上げられたと言われています。逆に言えば、ニュージーランドが同映画の誘致に失敗していれば、それだけの経済収益の可能性を失っていたということです。一つのロケ誘致は、時に「万博」以上の効果をもたらす可能性があります。その他にも、『スター・ウォーズ』とチュニジアの例や『冬のソナタ』と韓国・ナミソムの例など、ロケ誘致と地域への経済効果の例は数多く挙げられます。

 行政によるコンテンツ産業やフィルム・コミッション整備に対する関与と理解が遅れてきた中でも、少しずつではありますが、ここ数年、変化の兆しが現れつつあります。それらコンテンツ産業の育成やロケ誘致がもたらすPR効果や経済振興の可能性に注目し、行政側が自らロケの情報発信に積極的に関与していこうという動きが見え始めたのです。例えば、荒川区、川崎市、東京都などにおいて行政が積極的にロケ場所を発信したり、その交渉窓口を設置し始めたのです。富士宮市や伊豆の国市などは、2005年度の国によるロケーション誘致支援地域としてのモデル事業に取り組んでいます。韓流「ハリウッド」とも言われ、今年になってその計画が発表されたソウル近郊の行政主導型「ハルリュ村」の創設に及ぶものではありませんが、わが国の自治体においても、コンテンツ産業の有用性および重要性について再認識する動きが少しずつ見られるようになってきたと言えるでしょう。

 昨年の同僚議員によるコンテンツ製作関連の質問の際、区長は篠崎駅西口の大規模開発にともない計画されている、2008年竣工予定の区民施設にからめて、フィルム・コミッションの課題についても積極的な検討作業を加えていきたいという答弁をされていましたが、その後、この検討作業にどのような進展があったのでしょうか。

 これからフィルム・コミッション整備の問題について、区としても地域振興という大きな視点から積極的に取り組んでいこうという姿勢に変化はないものと考えています。江戸川区のイメージをさらに高め、また拡大させ、文化振興、観光振興、そして地域経済振興への大きな効果が期待できるコンテンツ産業の保護育成策の一つとして、ぜひフィルム・コミッションの整備についても考えていくべきでしょう。政府の専門調査会が日本のブランド作りとして「Cool Japan、Digital Japan」といった理念を掲げたように、区もそれらにあやかり、「Cool Edogawa」などの理念やキャッチフレーズを掲げながら、篠崎駅西口の公共施設整備に関係付けていくのもよいでしょう。

区長 これからの新しい時代を迎えまして、大変重要な視点だと思っております。私どももそのような問題を、力を入れるべき課題として、いろいろご示唆を頂きながら研究してまいりたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 篠崎駅西口の公共施設につきましては、まだ完成までに間がありまして、検討中でもあり、関係者の意見もいろいろ聞かなければなりません。今確固たる状況をお話しすることは難しいのですが、いい施設にしていきたいと考えており、(木村議員の)ご趣旨にも沿うようなものが機能としてできあがることを願っております。

木村 これまでも同僚議員による同様の観点からの質問がありました。区長は先ほどの同僚議員に対する答弁の中で、水辺の活性化というものも非常に大事だと言っていました。江戸川区がもしかりにフィルム・コミッションの具体的なものを発信するならば、例えば、都心の区がとっているような路線を真似する必要は全くないと思います。江戸川区が訴えるべきものは何か、江戸川区の文化として誇るものは何かと言ったら、それは例えば、下町の雰囲気であったり、あるいは水辺の利用だったりすると思います。そういったものを江戸川区の特徴としてアピールし、こうしたものを江戸川区でのロケに使ってはいかがかと提示する、こうしたものをルール化を兼ねてぜひとも整備して頂きたいと思います。

 荒川区では具体的に事業が進んでおり、中学校をロケに貸し出し著名な映画作品の撮影にも使われております。具体的な貸し出し時間、交渉窓口などもホームページ上で公開されています。こうした例も参考にしながら、フィルム・コミッション整備を進めていって頂きたいと思います。

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