<長期計画について>
木村 長期計画について質問したい。今定例会には、今後20年の江戸川区の将来像を設計していくための指針ともいうべき、基本構想案が提出されている。
20年スパンである基本構想、10ヵ年計画である基本計画、そして3ヵ年計画である実施計画。これらからなる江戸川区長期計画には、今回、区長の招集挨拶でも述べられていたとおり、構想の中心として、良き住民性をより高めるための「共に育つ共育」と「理想に向かっての力強い『協働』」が据えられている。
この度の基本構想は、昭和60年に策定された「江戸川区長期計画(豊かな活力と文化のまち)」以来のものであり、概ね2020年を目標年次に据えた江戸川区のまちづくり像を描いている。
そこでは、「創造性豊かな文化はぐくむ 水辺と緑かがやく 安心と活力ある 生きる喜びを実感できる都市」という将来都市像とともに、「はつらつ」「ふれあい」「いきいき」「やすらぎ」「にぎわい」「うるおい」といった6つのまちづくりのための基本目標が掲げられている。基本構想の実現を目指すにあたっては、市民、地域社会、ボランティア、NPOといった多様な主体に、その計画実施における参加機会を提案し、彼らを構想実現に向けての共演者に近づける努力が見られる。
今基本構想案に対する細かい文言上のさらなる要望はあるものの、基本的な理念や包括的な施策への姿勢については評価している。ただ、一点、あえて看板的な部分についての注文を申し上げるなら、それは将来都市像としての目標のフレーズについてだ。これは全員協議会においても同僚議員から指摘されていた。
2020年に人口70万人を突破すると予測される本区にとって、その未来への責務と将来課題は多々あると思うが、「創造性豊かな文化はぐくむ」云々で始まる将来都市像の目標はやや欲張りすぎ、総花的な印象を与える。この将来都市像の目標はキャッチフレーズとしては長すぎるし、また覚えやすいフレーズというわけでもない。ゴシックでコンパクトに強調するからには、もっと短く、また韻を踏むフレーズなどの工夫があってもよいのではないか。総花的なことは必ずしも悪いわけではないが、一つか二つの目標に焦点を絞った方がわかりやすく、より高い効果を望むことができるのではないか。区長の考えをお聞かせ頂きたい。
区長 長期計画について、将来都市像のキャッチフレーズが長すぎるのではないかというご指摘だが、あれをそのまま基本構想のタイトルにするわけではない。今、冊子を作成している。この基本構想、長期計画のタイトルは、まず主題を「江戸川新世紀デザイン」としたいと思う。そして、副題として「共育 ― 共に育つ共育」「協働」「安心への道」、これが書物のタイトルということになるはずだ。区民の方々にはこのようにお示ししたい。
木村 さて、長期計画において20年スパンの基本構想とともに大きな柱を構成するのが、10ヵ年計画にあたる基本計画だ。これは、いわば、基本構想に掲げた将来像を実現させるための基本的施策を体系化した長期的な総合計画である。しかし、この基本計画は10ヵ年にわたる極めて重要な計画の提案であるにもかかわらず、基本構想とは異なり、地方自治法第2条第5項に規定されていないため、我々議会での審議、議決を経る必要がない行政内計画となっている。
今後20年の将来像を描く基本構想が議会にとって重要であるなら、全く同様に、10ヵ年計画である基本計画も議会にとっては大きな関心事であり、重要であることに何ら変わりはない。いや、むしろ、抽象的な理念や政策哲学の羅列に終始する基本構想よりも、具体的な施策の言及に踏み込む基本計画のほうを審議することのほうが、議会にとってはよほど関心がある。
地方議会の議決事件を規定した地方自治法第96条中の第2項には「前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる」とある。つまり、普通地方公共団体は、第96条第1項に規定されていない事項についても、議決することが可能であるということを示している。もちろん、江戸川区は普通地方公共団体ではなく、特別地方公共団体だが、これは同法第283条「市に関する規定の適用」中の第1項の規定、つまり「この法律又は政令で特別の定めをするものを除くほか、第二編及び第四編中市に関する規定は、特別区にこれを適用する」という規定により、「普通地方公共団体」という文言を「特別区」ないし「特別地方公共団体」と読み替えることができる。
かつては基本計画に関しては首長の先決事項であるという考えが一般的であったが、地方分権の高まりの中で、今は逆に、議会が関与していない事件に関しては条例を制定することによって議決できるという意見の方が増加しつつある。
地方分権推進委員会はその第1次勧告の中で、地方自治法第96条第2項の規定について触れ、地方議会の権限の拡大を後押しする内容を記している。
こうした地方議会の権限意識の高まりは、基本計画の議決権をめぐって、実際にいくつかの地方議会を動かし、中には結果として果実を生み落としたところもある。例えば、三重県の「三重県行政に係る基本的な計画について議会が議決すべきことを定める条例」、福島県月館町の「月館町議会の議決すべき事件を定める条例」などである。三重県の「基本的計画の議会議決条例」は昨年3月に成立したばかりだが、同条例においては、前述の地方自治法第96条第2項の規定に基づいて、計画期間が5年を超える県の基本的な計画の策定については、議会が議決すべき事件であると規定した。
議会は行政の監視機能という重要な役割を背負っている。「監視機能」と言っても、それは批判ばかりして対決姿勢を打ち出すということではなく、議論を交える中で、行政と議会とがともにまちづくり政策を作り上げていくという意味での共同参画の姿勢であり、責任遂行のための布石だ。基本計画の議会議決という問題について、まだ議会側としての意思がまとまっているわけではもちろんないが、もし我々議会からのまとまった要望が出た場合、区長はこの問題についてはどのようにお考えになるのか。
区長 議会の議決についてだが、地方自治法が想定しているのは、基本構想は議会に諮って、議会の意思として決めてもらい、それに付随する長期計画は執行機関の決定とするということである。「議会の議決にする」ということの意味は、一つには、その審議の場があるかないかということであり、また、議会の名において決定されたという意味でもある。素直に自治法の規定に従い、基本構想では議会の議決をお願いするが、長期計画はそれをもう少し詳細に砕いたものであり、内容的に異なるものではない。長文になってしまってはいるが、表現をわかりやすくしたものだ。そういった、内容的な違いがないという意味において、自治法の本則どおりでよいのではないかと私は考えている。しかも、この長期計画については、7名の区議会議員の方々にも審議会に入ってもらい、20回にわたる審議を重ねてきているので、議会の意見を反映させる場は十分あったのではないかと考えている。