理想の平和と現実の平和
田 敞
軍隊を持つことが現実の平和で、軍隊を持たないことが理想の平和だという意見があります。北朝鮮や中国やロシアの脅威から日本を守るためにといって、今日本は軍事費を極端に増額しようとしています。
本当に軍隊は平和を守るのでしょうか。
今行われているウクライナとロシアの戦争は、ともに軍隊を持っている国どうしの戦争です。軍隊は平和を生みだしていません。聞くところによるとウクライナがナトウに入ろうとしたのでそれを止めようとして話し合ったが決裂したのでロシアが攻め込んだということです。ウクライナが実質的に軍隊を強くしようとしたことに端を発しています。軍隊を強くすることが平和ではなく戦争を引き起こしています。
理由は簡単です。ひとつの国が軍隊を強くしたら、隣国はそれを脅威ととらえるからです。今の日本政府が言っていることと同じです。
ひとつの国が軍隊を強くすると周りの国には脅威になります。それが今の世界です。だから、日本が軍隊を増強すれば、周りの国には脅威になります。今、中国や、北朝鮮が脅威になっていると言っているのと同じことが日本が軍隊を増強することで中国や北朝鮮やその他の国が日本に感じることになりかねません。
アフガニスタンやイラクやリビアやシリアは軍隊を持っていました。それでもアメリカが攻め込んで、戦争が起こって、悲惨なことになりました。イラクに至っては大量破壊兵器を持っているという疑惑が理由でした。軍の脅威を、先に芽を摘むというアメリカの論理です。今のロシアと同じ考えです。違いはイラクの場合はたんなる疑惑だけで、です。その疑惑も間違っていたと後でアメリカは言っています。
これを見ると、軍隊を持つことが現実的な平和につながっていないということが言えます。
すべての国が平和のためにといって軍隊を増強していったらどうでしょう。自国を守るためにはどれだけの軍隊が必要でしょう。結局すべての国が核ミサイルを持つことが必要だと考えるのではないでしょうか。それはどんな世界でしょう。
歴史から考えてみます。
日本は明治維新から、富国強兵政策をとってきました。そして強い国になりました。平和になったでしょうか。そうではありません。朝鮮や台湾や満州を植民地にし、中国に攻め込み、東南アジアに攻め込み、果てはハワイに攻め込みました。たくさんな国の人々を悲惨な目に合わせました。そして日本の人々も悲惨な目に合いました。もし強兵政策をとらなければどうだったでしょう。日本が軍隊を持たなかったら、あるいは弱い軍隊しか無かったらこんな戦争は起こさなかったでしょう。
その後はどうでしょう。日本の自衛隊は有数の軍事力を持つようになりました。その結果、アメリカのイラク戦争に参加しています。これは名古屋の高等裁判所で、戦争であるという判決がなされ、確定しています。すなわち日本国の公式見解は、日本はイラクと戦争をした、ということです。日本は戦争をしたのです。政府は戦争ではないと言い張り、マスコミは、平成は平和であった、と言っています。マスコミが平成は平和であった、などと言っても、それは日本の国の見解ではありません。日本は3権分立の法治国家です。決めることができるのは正式な裁判における裁判官だけです。政府ではありません。もちろんマスコミにはその権限はありません。
自分らの国に爆弾が落ちなければ平和であるという考えは間違っています。自分の国の軍隊が、他国に爆弾を落とすのも戦争です。その手伝いをするのも戦争です。自分の国が安全であればいいという考えが戦争を起こす原因の一つでもあるのです。
今、日本の軍隊は世界の10傑に入っているそうです。今度の軍拡で世界の3位とか4位の軍事大国になるということのようです。
もし、日本が世界1の軍事大国になったら平和は訪れるでしょうか。
第二次世界大戦後、アメリカは世界1の軍事大国になりました。アメリカは平和でしょうか。そんなことはありません、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアと攻め込んでいます。戦争をしたのです。それ以前も様々な国に攻め込んでいます。第二次世界大戦後で群を抜いて戦争をしている国がアメリカです。世界一の軍隊を持っても戦争は終わらないのです。それどころか世界一の戦争大国になっているのです。これが現実です。
一方、コスタリカは軍隊がありません。世界1の弱小国かもしれません。それなのにどこの国も攻め込んでいません。平和なのです。これも現実です。コスタリカは参考にならないということかもしれません。しかし、今の日本より弱い国は100カ国以上あります。ほとんど軍隊を持たない国も多数あります。戦争をしているでしょうか。いいえ。コスタリカが特別なわけではありません。軍隊を持たない国の方が平和なのです。これが現実です。
アメリカは自分を守るために銃を持つことができます。その結果毎年何万人もの銃による殺りくが起きています。日本は銃を持つことができません。丸腰です。ところが銃の犠牲者はほとんどありません。
銃は現実に平和な暮らしをつくることはできません。軍隊は現実に平和をつくることはできません。
かつて、匪賊中国とか鬼畜米英とか、政府とマスコミが一体になって脅威を盛り上げ、国民に、戦争するべし、という世論を作り上げたことを思い起こさなければなりません。国やマスコミの言うままに、感情のままに走るのではなく、冷静に歴史や現実を見極め理性で判断することが、戦争を避ける手段ではないでしょうか。