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 流 転

 
田 敞

 この夏はとても変な天気だった。6月に入って、気象庁が梅雨入り宣言をしたとたんに、5月から続いていたぐずついた天気が一気に晴れ、暑い日が続いた。

 7月末になって、気象庁が梅雨明けを宣言すると、やっと雨が降ったと思ったら、今度は雨や曇りの日ばかりになって、8月中続いた。オホーツク高気圧などがしっかり張りだして、まるで梅雨の気圧配置だった。さすがにまた梅雨に戻ったとはいえないから、気象庁も困ったことだろう。それで、8月末に秋雨前線と言って、やっと、天気予報が、秋雨前線の影響で、といえるようになった。ホッとしたことだろう。でも、いつもは9月の終わりごろに出てくる秋雨前線が8月末に出てきたのだから、まあ、変な天気であったのは確かだ。たぶん梅雨が7月末に始まって9月頭くらいまで続いたのだろう。

 以前にも、夏中ぐずついた天気で冷害になり、コメが不作で緊急輸入などして大騒ぎになったことがあった。自然はいつも勝手気ままなんだから。米の輸入は、政治的なことで、米が足りなかったわけではないと個人的には思っているのだが。まあ、今年は米騒ぎはないだろう。

人間の出す炭酸ガスで地球が温暖化しているという騒ぎがあるが、自然はもっとはるかに大きな変動をしている。両極から氷がなくなったときもあれば、地球が全部氷に覆われた時もあるという研究もある。先日見たテレビでは、最近では、2千数百年ほど前の弥生時代に、地球の温度が2度ほど高かった時があり、その2000年ほど前の縄文時代後期にもやはり温度が高かった時があったということだ。2度というと、今騒いでいる、地球温暖化が進むと地球の温度が2度上がって大変なことになるといわれている温度だ。2度上がったってなんちゃなかったみたいだ。たぶん食料増産になって、かえって、人類は発展したのじゃないかと思っている。まあ、何の証拠もないが。でも、上がるより2度下がる方が大変なんじゃないかと思う。世界中で食料の生産が下がることにつながるような気がする。

人間がまだ二酸化炭素なんか焚火くらいしか出してない時にだって2度の温度上昇下降は当たり前だった。今の地球温暖化騒ぎも、自然の影響が多いにある可能性があるのに、それについてはなにも言っていない。そもそも地球温暖化は政治家が言いだしている。政治家の中には富と権力のためには何でもありの人たちがいる。地球温暖化で息を吹き返した産業がある。原発だ。チェルノブイリ、スリーマイルと続いた原発事故で、世界中で原発は斜陽化していた。それが、地球温暖化で炭酸ガスを出さないクリーンなエネルギーということで、世界的に原発が脚光を浴び、息を吹き返した。ぼろもうけした人たちがいるのは確かだ。まあ、邪推であることを祈ろう。

 我が家でも、いろいろ小さな変化がある。ここに来たころ見えていた天の川が見えなくなった。見える星も数えられそうなほど少なくなっている。田んぼや畑や林の中に家が散在している状態は変わりないのになぜだろう。ここに家をたてたころは、日蔭は冬じゅう霜柱がとけなかったが、今は、霜柱が立たなくなっている。そのころはこの町にいなかった南の方のツマグロヒョウモンや、ナガサキアゲハが普通に飛ぶようになった。温かくなったのだろう。

蝶といえば、ここ2,3年変わった蝶が飛ぶ。アサギマダラかと思っていた。今年は8月のはじめ頃毎日庭に現れた。アサギマダラではない。それでそっと近寄ってみた。アゲハ蝶によく似ているのだが、ちょっと小さく、少し黒っぽい。その上、後ろばねに尻尾がない。歳取ってちぎれたのかと思った。見ていると榎に卵を産んだ。アゲハ蝶なら、さんしょや、ゆずに卵を産むはずだ。庭に榎の小さな木がたくさん生えている。その木を回って産卵している。アゲハ蝶ではない。

 で、家にある小さな蝶の図鑑を見たが載っていない。図鑑に載っている蝶で榎に卵を産むのはゴマダラチョウと、オオムラサキだけだ。見間違いかもしれないと、毎日庭にやってくる蝶を追いかけて、卵を産んでいるときにそっと近寄って、携帯で写真も撮った。図鑑に似た蝶はいない。不思議だ。

 図書館に行ったついでに大きな図鑑を見た。世界の蝶が載っている図鑑だ。すると載っていた。アカホシゴマダラチョウという名だ。朝鮮半島などにいるという蝶だ。日本にも、奄美大島にいると書いてある。そして神奈川と埼玉。この両県は誰かが持ち帰って離したのが神奈川や埼玉で増えているということが書いてあった。日本にもいる蝶なのになぜ図鑑に載っていなかったのかちょっと不思議だが、そういうこともあるのだろう。

 

 市では外来種のオオキンケイ菊を抜くイベントがあった。繁殖力が強くて在来種を駆逐してしまうということだ。この蝶も神奈川や埼玉から来たのか、奄美王島から来たのか、それとも大陸から来たのかわからないが、ここまでやってきて、卵を産んでいるのだから、在来種を駆逐してしまうかもしれない。幼虫が同じ榎を食べるゴマダラチョウやオオムラサキである。オオムラサキは国蝶だから大問題になるかもしれない。でも、もう止めようはないだろう。神奈川、埼玉、茨城である。関東一円には広がっているだろう。今、道路を歩いていると目に着く草はほとんど外来種だ。貧乏草と言われているハルジオン、ヒメジオン、花粉症の濡れ衣がかかっているセイタカアワダチソウ。今さら止めようがない。日本の風景に溶け込んでいる。いま、ヒアリが外国からコンテナに乗って入りこんで問題になっている。うまく止められるだろうか。騒いでいるうちはいいが、これから先、何年も何十年も、外国から毎日無数に入ってくるコンテナを調べ続けることができるだろうか。まあ無理だろう。彼らは人間をうまく利用しているように見える。でも彼らにその意思はない。風に運ばれるように人間に運ばれただけだ。運ばれた所に根を下ろし、そこで生き続けていようとするだけだ。気候が合えば繁殖する、違えば消える。あとは野となれである。