重力は,「空間の曲がり」が引き起こす力 (P102〜103)

   (以下「 」内はNewtonからの引用です)

 

1 問題

 「空間は鉛球をおいた『ゴムのシートのようなもの』といえます。」とありますが。どこが似ていて、どこが似ていないかを考えてみます。


2 考察A

(1)課題1

 「ゴムのシートに二つの鉛球を置くと」「鉛球は近づいていくでしょう」か。

(2)条件設定を考える

「空間の曲がりと重力の関係について」「空間の曲がりが重力を引き起こす」と書いてあります。そして、「このような考え方は,ニュートンの万有引力の法則とは,大きく異なっています。」とあります。

(以上をまとめます)

アインシュタイン

(空間の曲がり→重力)

ニュートン

(万有引力→重力)

(3)考察

A 考察1

(日本には、上り坂と下り坂とどちらが多いでしょう)という知る人ぞ知るクイズがあります。

 上り坂と、下り坂はどう区別するでしょう。簡単です。ビー球をおくと分かります。転がっていく方向が下りです。反対方向が登りです。正確に知るには、水準器を使えば簡単です。泡の、移動していったほうが、上り方向です。

@ 万有引力で考える 

 ビー球が下に転がったり、泡が上に上ったり(あるいは、水が下に下がる)するのは、万有引力のためです。質量のある物同士がひきつけあっているからです。簡単にいえば、地球がビー玉を下に引っ張っているから、下に転がるのです。転がるエネルギーは引力からもらいます。引力がなければ、ビー玉は転がりません。どんな急坂でも、止まっています。

 水準器の泡も、同じです。いくら水準器を傾けても、引力がなければ泡は動きません。

 引力がなければ、坂も、上下もなくなります。引力の方向が上下を決めるからです。

 考え方と、現実のずれはありません。

 

A 一般相対性理論で考える

 地球は、周囲の空間を曲げています。しかし、万有引力はありません。

 曲がった空間を、坂道と考えます。さて、ビー玉はどちらに転がるでしょう。引っ張る力がない場合、上に書いたように、坂の途中でも止まったままのはずです。水準器の泡はどうなるでしょう。密度の大きい方が下になるのは、万有引力のためです。引力がないのだから、泡より水が下になるわけにはいきません。泡も止まったままです。

 空間が曲がっただけでは、ビーだまは転がりません。坂道だけで、引力がない場合と同じです。

B 課題2

 「ゴムのシートに二つの鉛だまを少し離しておくと,ゴムのシートがのびて曲がり,鉛だまは近づいていくでしょう」について考えます。

@ 万有引力で考える

 鉛だまは、引力で下に引っ張られます。このとき、鉛だまの間は、二つの鉛だまの重さで、反対のところより、余計に下がります。そのため、そちらのほうに転がって(坂を転がるのと同じ)近づいていきます。現実と、考え方は一致します。既成の論理で十分説明ができます。

A 一般相対性理論で考える

 ゴムのシートの曲がりを、空間の曲がりと考えます。質量は空間を曲げています。しかし、万有引力はありません。したがって、どちらが下か分かりません。そもそも引力がないから、上下は存在しません。鉛だまはどちらにどう動くのでしょう。動くとしたらそのエネルギーはどこから供給されているのでしょう。


3 まとめ

 この鉛だまと、ゴムシートの問題は、少しずるいです。ゴムシートが曲がるのを、空間の曲がりとしているのは、たとえだからまあいいとします。しかし、鉛球が転がるのは、坂道を転がり落ちるという現象を使っています。これは地球と、鉛だまの間に働く万有引力です。空間が曲がる、と、万有引力の両方を使っています。鉛だまは重いから、坂を転がり落ちるという常識的感覚を巧みに使っています。しかし、その原因が、万有引力であるというのは内緒にしてあります。既成の論理(常識)を打ち破ったすばらしい論理ですけれど、それだけでは説明できずに、一番肝心なところを既成の論理に頼っているのは、どんなものでしょう。

「ニュートンの万有引力の法則とは,大きくことなっています。」といっているのだから、万有引力に頼らない理論を使うべきです。これでは、万有引力と一つも変わらないじゃないですか。


4 考察B

(1)課題

  ゴムシートと空間は似ているか。

(2)考察

 ゴムシートと、鉛だまは、同じ物でできています。陽子と電子と中性子です。だから、互いに、相互作用をします。鉛だまをゴムシートに載せると、シートが曲がるのは、基本の4つの力のうち、電磁気力と引力が働いているからです。

 地球と、空間は違うものでできていると思われます。したがって、物質と、空間が相互作用をする原理は、鉛だまとゴムシートとは違うものと考えられます。ゴムシートのたとえは、たとえにしかすぎません。やはり、その原理を少しは説明すべきです。

(3)まとめ

 物質は本当に空間を曲げるのですか。憶測を一歩も出ていないのではないですか。 

3+8=38

これは常識を打ち破ったすばらしい考えでしょうか、それとも、たんに勘違いでしょうか。私はたんに間違いだと思います。 
 ところで、クイズの答えはわかりましたか。答えは、同じ数だけある、です。坂は、上り坂でもあるし、下り坂でもあるからです。万有引力がある限り。

 

 
2005年8月11日 並刻記

 雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次

 球面と曲がった空間は似ている 前へ

重力は、「空間の曲がり」を引き起こす力 U つぎへ