球面と曲がった空間は似ている (P100〜101)

 ここでは、「『質量が空間を曲げる」とはどういう意味でしょうか?」ということが書かれているそうです。


1 問題

 「球面と曲がった空間は似ている」と書いてあります。どこが、どのように、似ているのかを考えます。


2 考察

 球面の例と、曲がった空間の例を出して、似ているといっています。そのことを検証します。それほど難しくはありません。

(1) 球面の例

 地球が例です。赤道に直角に2機の飛行機が北に向けて飛びます。北極上空で交わります。

 ア 直線

A 定義

@ 普通の直線

 「2つの点の間を最短距離でむすぶ線」

A 球面における「直線」(Newtonでの定義)

 「2点間を最短距離でむすぶ球面上の線」

 「経線と赤道はこの条件を満たすので球面での『直線』といえます」
B 平行(福武国語辞典)
 同じ平面上の二つの直線、または直線と平面、あるいは二つの平面がいくら延長しても交わらないこと。

B 考察

 普通の場合、球面上の直線は、弧といいます。円周の一部分です。普通の場合直線とはいえません。相対性理論につごうのいい条件設定をして、弧を直線と定義しています。常識はずれです。もちろんすばらしい思い付

きです。 

 一歩譲って、球面上の線を直線としたら、2本の赤道に直角な球面上の直線(経線)は交わります。しかし、普通、この2本の直線は、平行とは言いません。どちらかというと、経線より、緯線のほうが平行に近いです。緯線で、輪切りにした面は交わらない平面だから、平行といえます。
 上に上げた平行の定義を参考にしてみてください。経線は何一つ平行の定義に当てはまっていません。平面上が球面上になっています。直線が弧になっています。交わらないが、交わっています。何一つ一致していません。定義をつごうのいいように解釈するのも、相対性理論の得意技ですが、それでは、定義が意味をなさなくなってしまいます。
 非ユークリット幾何学ならそれはそれでいいと思います。しかし、それを、都合のいいときだけユークリット幾何学に持ち込むのは、ルール違反です。

 

イ 平行

A 定義(相対性理論)

 「二つの経線を考えましょう。二つの経線は赤道と直行しており,平行に見えます。」

B 考察

 「経線と赤道は直行するので、二つの経線はここでは『平行』のはず」といっています。「ここでは」と赤道上に限定しています。したがって、北緯50度とか北極上空のことは含まれていません。ところが、いつの間にか、すべてが平行になっています。もちろん理由は書いてありません。いつの間にかそうなっているというのも、相対性理論の得意技のひとつです。
 「平行に見えます」とありますが、それは、相対性理論者が色眼鏡を掛けて見た場合です。普通に地球儀を見た場合、経線はどう見ても平行には見えません。先ほども書いたように、緯線はなんとか平行に見えます。相対性理論者は、本当に地球儀を見ていっているのですか。本当は見ていないでしょう。理論の都合ばっかりで。

 

ウ 飛行機の実験

A 定義

 「二つの経線に沿って北上する2機の飛行機はつねに『直線』に沿って進みますが,しだいに隣の飛行機が近づいてきます。2機の飛行機を接近させる力は存在しないのに2機の飛行機はついに北極点で衝突してしまいます」

B 考察

 「2機の飛行機を接近させる力は存在しない」といっています。しかし、この2機の飛行機を接近させている力は、万有引力です。引力がなければ、2機の飛行機は、まっすぐ平行に宇宙空間に飛んでいってしまいます。常識でいわれている、普通の直線で、普通の平行に沿ってです。まさか、普通、ジェットエンジンは宇宙で動かないなどといわないでね。そのときはロケットエンジンで飛ばせばいいんですから。

 とにかく、飛行機を接近させる力は存在します。力が存在したら空間のゆがみにならないから困るのでしょうけれど、そのときは、とくいの三段論法で証明すればいいのです。万有引力は重力である。重力は空間のゆがみである。空間のゆがみは力ではない。したがって、力は存在しない、といってればいいのです。

 本にあるように、この飛行機の航路は、「完全には消えない重力の影響」のところででてきた、落下する二つのリンゴが接近するのと同じ原理です。

 本にも「『曲がった空間をまっすぐ進むために自然に接近する』,これが一般相対性理論の考え方なのです。」とあります。

 この動きを、詳しく見てみます。

 リンゴは、地球の中心に向かってまっすぐ進んでいます。一方、飛行機は、地球の中心を含む面で切った円の円周上を進んでいます。

 この動きの違いは、リンゴが、引力のエネルギーだけで動いているのに対して、飛行機は、エンジンの力と、引力の力の両方が働いているからです。

 エンジンの力がなくなれば、飛行機は落ちます。りんごと同じように、地球の中心に向けてまっすぐに落ちます。万有引力の働きです。

エ 本の結論

A 定義

「球面では,『平行』に見えた2本の『直線』も交わってしまうのです。」

「平らな面では平行な二つの直線は決して交わりませんが,曲がった面ではそんな常識は通用しません。」

B 考察

 「曲がった面ではそんな常識は通用しません。」

 そのとおりです。最初に、普通の設定を、相対論仕様に変えて論じたのですから、普通の「常識は通用しない」のは当然です。

 人間に鰓があったら、人間は水中で生活できる。したがって、人間は水中ではおぼれてしまうという「常識は通用しません」という話と同じです。

 どちらが正しいですか。鰓があったら、人間は水中生活ができます。だからこの論理は間違ってはいません。では、普通の人間は水中で生きていけますか。「常識は通用し」なくても、水の中で暮らすのはごめん願いたいですね。何がおかしいかというと、人間にはない物をあるとしたからです。

 本当は曲がっているのに、直線であるとしたから、2本の平行な直線は交わりますといえたのです。

 トリックは、2次元と3次元です。球面上の線を直線とみなすときは、縦と横しか見ていません。奥行きは入っていません。ところが、この線が交わるのは、4分の1円奥にはいり込んだ所です。交わるためには縦と横と、奥行きの3次元が必要です。

 2次元で条件設定して、3次元で結論を出しています。うまいトリックです。こういうのを“次元が違う”というのですか?

 普通、球面上に直線は書けません。

 透明な地球儀に経線を引いてみます。真上から見ている1本だけはかろうじて、直線に見えます。しかしそのほかの経線は曲がって見えます。

 平らな板の上で、針金を、板にぴったりつくようにぐにゃぐにゃに曲げます。これを起こします。真上から見ると直線に見えます。これらを直線とするなら、義務教育までで習った、常識的な直線は確かに通用しません。

 曲がった空間と似ているのは、このように常識やぶりの定義から考えた球だとすると、似ていようが似ていまいが、現実とは相容れない考え方になると思われます。

 常識を打ち破ったのがすばらしい相対性理論ですが、これでは、あまりにも手前勝手すぎるように思えます。

 

(2)曲がった空間

A 定義

「三次元空間の曲がりは,三次元空間の住人である人間には,頭の中で正確にイメージするのは不可能です。」

とあり、曲がった空間はどんなものか分かりません。

B 考察

 ところが、「恒星の近くで曲がった空間」として、図が描かれてあります。この図は、おそらく地球上を飛ぶ飛行機から類推したのでしょう。「正確にイメージするのは不可能で」あるといっているのだから、まるっきりどんなものか分かっていない「空間の曲がり」から相対性理論者だって類推することはできないはずです。


(3)曲がった空間と、飛行機の進路との違い

A 飛行機の進路

 赤道に直角に北上する飛行機は、どこから出発しても北極上空で交わります。

 これは「2機の飛行機は曲がった面をまっすぐ進むと自然に接近しました。」ということからでした。

B 光の進路

 「平行だった2筋の光が空間の曲がりに沿って『直進』すると,接近してくる。」と書いてあります。

ではどれくらい接近するか考えてみます。

 飛行機の進路は「曲がった面をまっすぐ進」んでいます。曲がった面は曲がった空間とは書いてありません。そこで、前のページの、落下する箱の中の二つのリンゴを見てみます。「二つのリンゴも『曲がった空間をまっすぐ進むために自然に接近する」とあります。このことから、この飛行機の進路が、曲がった空間の直線ということになります。

 すると、光もこの飛行機の進路に沿ってまっすぐ進むはずです。それが、光にとっても、2点間の最短距離(直線)に当たるからです。

 では、赤道に直角に、レーザー光線を2本発射するとどうなるでしょう。北極上空で2本の光は交わりますか。そんな実験は科学者なら誰も思いつかないでしょう。なぜなら、あまりにも、常識はずれだからです。これを書いた人も、相対性理論者もそのような実験はしないでしょう。それが常識ってもんです。

 2本の光がどうなるかというと、上に書いた、引力が働いていないときに宇宙に飛び出していく飛行機の航跡と同じ進路をとります。義務教育で習う、普通の直線と普通の平行に沿って光はまっすぐ宇宙空間に飛び出して行きます。

 このことから、飛行機の進路「球面」と、「恒星の近くで曲がった空間」として、図示されている網目模様の絵とも一致していないことがわかります。

 

3 結論

 飛行機の進路から、曲がった空間を類推したのだから、似ているのは当然です。しかし、「この恒星の近くで曲がった空間」の図が、本当の曲がった空間に似ているかは、何の説明も証明もありません。

 また、光が、地球の球面に沿って曲がるとは考えられません。飛行機が北極上空でぶつかるのは、飛行機に引力が働いているからです。リンゴが接近していくのも、引力が働いているからです。この二つともに、力がはたらいていないと相対性理論者は考えました。そのために、光も北極上空でぶつかったり、平行に地球に打ち出した光も地球中心でぶつかるような動きをすることになるのです。もともと、潮汐力は、空間の曲がりとはまるっきり無関係な現象です(もし空間が質量によって曲がるとしても)。

 したがって

 (球面=網目模様の図=曲がった空間)

ではなく

 (球面≒網目模様の図≒曲がった空間)

でもなく

 (球面≠網目模様の図≠曲がった空間)

といえます。

2005年8月9日 並刻記
雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次


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