完全には消えない重力の影響(P98〜99)


1 問題

 「落下する箱の中に横に並べて浮かせた二つのリンゴは落下するにつれて接近する」という現象について考えます。いわゆる潮汐力といわれている現象です。


2 説明

 「ニュートン」7月号94ページ

「落下する箱の中は『重力の影響のない慣性系と同等』とみなせる」とあります。そして、98ページには「大きさの無視できない箱の中では重力の影響は完全には消えない」とあります。

 94ページでは、重力は消えていると言明しています。98ページでは重力は完全には消えないといっています。どちらが本当なのでしょう。それとも、どちらも本当なのでしょうか。まるで違うことが、同じであるとか、同じ光が、コッチでは直進で、アッチでは曲進であるなんてのは、相対性理論の最も得意とすることですからね。

 でも、私はどちらも間違いだと思いますので、このことについて考えます。

 

3 疑問

 「完全には消えない」といっているのですから、何割かの重力が消えて、何割かの重力が消えずに残ったということなのでしょう。9割が消えて、1割残ったのでしょうか。それとも、8割消えて、1割はどっちつかずで、1割が残ったのでしょうか。消えるのと消えないのとがあるのですから、引き分けも存在しそうですから。(とにかく、相対性理論というのは、見てくれ、言葉の駆け引き、それが中心なんですから、何が起こるかわからないんです。科学的方法に対しても、常識を打ち破っていますから)

 それとも、潮汐力だけが残ったととれるみたいなので、重力にいろいろな性質があって、潮汐力以外の性質の重力が消えたというのでしょうか。

 では、重力には、潮汐力のほかに、どのような性質があるのか、考えてみます。考えつくのは、物を引きつける力です。この力が箱の中に入らなかったのでしょうか。しかし、物を引きつける力がなければ、潮汐力は現れません。潮汐力は、引きつける力の方向と、遠近による強さの違いなのですから、引きつける力が消えれば、潮汐力も消えます。潮汐力が残っているのだから、引きつける力も残っていると考えられます。すると何が消えたのでしょう。

 本当は、重力はひとつも消えてないのじゃないですか。「完全には消え」ずに、ちょっとだけ残ったなんて、本当ですか。重力は小分けにできるのですか。少しだけ残ったということの根拠は何一つ書いてありません。言葉だけです。しゃあない。ちょっとだけと書いとこ。ちょっとだけなら大目に見てくれるだろ、ということですか。なんだかすごい科学ですね。

 

4 アインシュタインの考え方への3つの疑問

 これに対して、同じページに、アインシュタインの考えが出ています。

@ 「落下するそれぞれのリンゴ(大きさは無視できるとする)にとってみれば自分に働く重力の影響は消え去っています」

 では、リンゴはどのような力によって加速しながら地球方向に動いているのでしょう。

 ニュートン力学では、力がはたらかなければ物は動きません。相対性理論では、力がなくても動くようですが、次にもでてくるように、その原理はあまりに観念的すぎます。

A「すると、二つのリンゴが接近したのは『力がはたらいたから』とはいえません。」と結論付けています。そしてその理由が

「力もないのに二つのリンゴが接近したのは『地球の質量が空間を曲げているからだ』」という考えです。そして

B「二つのリンゴは空間の曲がりに沿って進むために自然に接近してしまう、」とこの現象を説明しています。

 リンゴはどうして進むのでしょう。重力(万有引力)があるから、リンゴは引っ張られて、その方向に進むのは理解できます。その、重力がなくて、空間が曲がっているだけで、しかも、「『力がはたらいたから』とはいえません」と力がはたらいていないことを言明しています。

 なぜ、リンゴは進んだのでしょう。リンゴを進ませるエネルギーはどこからもたらされたのでしょう。そしてリンゴが加速されるエネルギーはどこから供給され続けているのでしょう。

 リンゴが坂道を転がり落ちるのは、万有引力(重力)があるからです。万有引力が消えれば、リンゴは坂道でも転がりません。止まったままでいます。同じように、空間に坂道ができたからといって、重力が消えたら、りんごは落ちません。坂道のリンゴは転がり落ちるという常識を巧みに使っています。現象だけうまく借りてきて、その原因である、重力には、知らん振りです。空間が曲がるということと、重力が、ともに働いています。重力のほうは、うまく言葉上消されていますけれどね。消えたのは、重力ではなく、重力という言葉です。それまで、「重量で光が曲がる」などといっていたのに、このページでは「・・・質量が空間を曲げている・・・」とたくみに、重力という言葉を言い換えているのなどはその典型的な例です。 

疑問1 大きさは無視できるとする

 大きさが無視できるリンゴはこの世には存在しません。ではなぜ、存在しないリンゴで実験しなければならないのでしょう。簡単です。大きさのあるリンゴには、左右前後に潮汐力が働き、リンゴを押し縮めようとするからです。また上下にも同じ力がはたらき引き伸ばそうとするからです。これでは、リンゴに重力は消え去っていますといえなくなってしまいます。大前提が崩れてしまいます。そこで、空間が曲がっているのが原因だから、重力は関係ないといっているのだけれど、本当にそうでしょうか。

疑問2 「地球の質量が空間を曲げている」

 このことはすなわち落下する箱の中にも地球の質量の影響があるということです。102ページにこんな説明があります。「重力とは,空間の曲がりが引き起こす現象なのです。」「質量が空間を曲げ,空間の曲がりが重力を引き起こすわけです。」

 このことから、リンゴの動きを考えると以下のようになるはずです。初めに地球の質量で落下する箱の中の空間が曲げられた。そのため重力が引き起こされた。その重力によってリンゴは近づいた。となります。とすると、地球の質量のために箱の中に重力ができたことになります。重力は消えていないことになります。箱の外の空間も、質量が空間を曲げ、そのために重力が生まれたというのでしょうから、箱の中も外も同じになります。

 ようするに、重力は消えたというのは、重力とは空間の曲がりであるから、落下する箱の中の潮汐力は、重力が原因といわずに、質量が原因であるといえる。すなわち、重力は消えたといっているのです。何のことはない、現象は同じで、言葉を取り替えただけです。

 なんとしても箱の中に重力があっては困りますからね。一般相対性原理の根幹が破綻してしまいますからね。でも、始まりは、重力が消えたから一般相対性原理が生まれたけれど、ここまできたら、もう、そんなことはたいして問題ではなくなってるみたいです。まあ、少しはいいだろ、みたいです。

 

疑問3「二つのリンゴは空間の曲がりに沿って進む」

 98ページに「空間が曲がっているから,光は曲がる」とあり、「光は曲がった空間を“まっすぐ”進んだだけなのです。」とあります。

 すると、リンゴと同じ位置から、平行に地球に向かって発射された光はリンゴと同じように接近していくことになります。ともに空間の曲がりに沿ってまっすぐ進むのだから同じ軌跡になるはずです。

 この潮汐力は。箱の外でも同じように存在します。地球上ならどこでも存在します。

 そこでこの接近する角度を考えます。
 瀬戸大橋の、橋脚は地球に垂直に立っています。2本の橋脚の間を測ると、下の間の方が上の間より短くなっているそうです。これは、それぞれ地球の中心に向かってまっすぐ立っているからそうなるということです。この角度は先ほどの二つのリンゴの落下する角度と同じです。このことから考えると、地球質量による空間の曲がりは観測可能な大きさになります。
 300メートル上空から、地上に向けて、二本のレーザー光線を平行に発射すれば、地上では間が狭まっているはずです。これはそんなに難しい実験ではありません。100分の1ミリとか1000分の1ミリとかの単位ではありません。センチメートルの単位で測れます。太陽の近くの星の光の曲がりを測るよりよほど簡単です。でもそんな実験は誰もしません。そうならないのが分かっているからです。わかっているのに、なぜこのような説明をするのでしょう。潮汐力と空間の曲がりは、まるで違う現象であるのは高校生だって想像がつくことです。相対性理論者は、本当にそんなことを信じているのですか。

 潮汐力で起こるリンゴの軌跡は、空間の曲がりであるというのは、現実とは一致しません。苦し紛れの言い訳です。そして、そんなことは、ひょっとして、相対性理論者も信じていないのじゃないですか。お話だけで。


5 結論

 このことから、落下する箱の中の重力は少しも消えていないということがいえます。

 中の人も、リンゴも、地球に対して加速しているのは、地球の引力のためなのですから、分かりきったことです。中の人がどのように考えようと、引力で加速している事実は変えようがありません。以前書いたように、リンゴも俺も浮かんでいる、重力が消えたといくら喜んでも、100メートル上空から落とされたら、残念ながら人は死ぬしかありません。リンゴは粉々になるしかありません。

 「アインシュタイン生涯最高のアイデア落下する箱の中では重力が消える』」は、(落下する箱の中の重力は消えたと思ったが、少しは残ってるみたい)とか、(落下する箱の中の重力という言葉は、質量という言葉に書き換えて、重力は消えたことにする)とか、言い換えなければなりません。そもそも、少しだって重力が残っていたら、一般相対性理論は成立しないはずです。それを、まあ少しだからいいかなんて調子なんだから。まあ、見てくれ勝負の理論ですからね。

 それにしても「生涯最高のアイデア」というわりにはかなり適当なようです。

2005年8月8日 並刻記
雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次

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