重力によって光は曲がるのV (P97)
(「 」内はNewtonからの引用です)
1 問題
加速する宇宙船の中の壁から「光が発せられた瞬間,光源の速さはゼロ」の思考実験たったひとつだけで「慣性力によって光は曲がる」ということが実証できたといえるか。
2 考察
ここでも、たった一つの、しかも、非常に特別な(相対性理論に特段に有利な)実験条件だけで、しかも思考実験で証明できたといっています。
先にも言ってように、これは科学的ではありません。これは、どこかのいんちきサプリメント会社のやり口と同じです。「これは癌に効きます」と声高に言います。「どうして効くと分かるのですか」と聞くと、「Aさんが治った」というわけです。それだけです。たった一つの症例だけです。
ある、特別な細胞を使って実験して、癌が消えたからといって、それが人間に効くとはいえません。その細胞が、特に癌の消えやすい細胞ならなおさらです。細胞で癌が消えたら、動物実験をします。もちろん比較実験もします。それで効き目があったら、人間で実験します。もちろん、一人ではありません、何人もで、比較実験も含みます。それも、本当の実験です。思考実験などという手前勝手な実験や、コンピューターのシュミレーションなどではありません。実験者の恣意が入らない実験です。
そこで、この、「光が発せられた瞬間光源の速さはゼロ」という実験が、本当に科学の実験として耐えられる実験であるのかを、考えてみます。
方法は、比較思考実験です。
(1) この本の実験の条件設定 「加速する宇宙船を外から見た場合」
「速さゼロから加速を始める宇宙船を,無重力状態の外の観測者(重力の影響を受けていない慣性系)から見てみましょう。」
「光が発せられた瞬間には,光源は動いていません。」(光は横の壁から、向かいの壁に向かって発射されます。宇宙船の進行方向に対して直行しています)
{一般相対性理論ではどのようになるか}
ア 状態
「外から見れば,光は直進する」
図では、宇宙船の中を、宇宙船の進行方向に対して、真横に直進しています。
この光は、慣性の法則の、ボールと同じ動きをしているので、光は、宇宙船と同じように加速されて進んでいるはずです。したがって、光は、横に光速で動き、かつ、縦に初速度ゼロから、宇宙船と同じ加速度で、上に進んでいることになるはずです。
イ 理由
観測者は、「重力の影響を受けていない慣性系から見ているので」「重力を受けていない宇宙船の中とまったく同じことが起きるはずです」
(2) 実験条件を変えてみます
加速の途中です。宇宙船が外の観測者に対して秒速100kmの瞬間に光が発射されました。
{一般相対性理論ではどうなるか}
ア 状態
宇宙船の中を、宇宙船の進行方向に対して、真横に直進します。
この光は、やはり、慣性の法則のボールと同じ動きをしています。したがって、外の観測者に対して、光は、光速で横に進むとともに、初速度100キロメートルで、宇宙船と同じ加速度で、宇宙船とともに進んでいるに進んでいることになります。
イ 理由
一般相対性理論では、光が宇宙船の中を直進する条件は、観測者が、「重力の影響を受けていない慣性系から見ているので」「重力を受けていない宇宙船の中とまったく同じことが起きるはずです」ということだけです。宇宙船の速度は関係していません。したがって、初速度ゼロの場合と同じになるはずです。
(3) 実験条件をまた変えてみます
加速の途中です。宇宙船が外の観測者に対して秒速1万kmの瞬間に光が発射されました。
{一般相対性理論ではどうなるか}
ア 状態
宇宙船の中を、宇宙船の進行方向に対して、真横に直進する。
そのためには、光は、外の観測者に対して、横方向に光速で、また、初速度1万キロメートルで、宇宙船と同じ加速度で、宇宙船とともに進んでいる。
イ 理由
観測者は、「重力の影響を受けていない慣性系から見ているので」「重力を受けていない宇宙船の中とまったく同じことが起きるはずです」
また、(外の観測者から、真横に直進しているように見えるためには、観測者に対して、光速で横に、宇宙船と同じ加速度で宇宙船とともに進んでいなければならないはずです。)( )内は私の考えです。
(4)考察
このように、光が発射されたときの宇宙船の速度が変わると、光の、宇宙船の進行方向への速度が変わってきます。この光の速度を変える力は何なのでしょう。観測者は外にいるので、中の光に影響できるのは眼力ぐらいです。
ボールは最初このようになります。発射された瞬間のボールは宇宙船と同じ速度で進行方向に飛んでいるからです。その後、ボールは同じ速度で進んでいくので加速されている宇宙船に取り残されていきます。ニュートンの慣性の法則です。発射された時の速度を、ボールの質量が保存しているからです。しかし、光は光源の速度に影響されません。これはニュートンも、アインシュタインも同じです。ところが、一般相対性理論では、上の実験(1)(2)(3)から、宇宙船の進行方向への光源の速度と光の初速度が一致しています。そればかりではありません。ボールとちがって、光は宇宙船と同じ加速度で、発射された後も加速されながら、宇宙船の進行方向にも飛んでいます。(ボールは、宇宙船の壁から離れると、宇宙船からエネルギーをもらえなくなるので加速できません)その原因は何なのでしょう。
「Newton」では、そのことの矛盾を避けるために、わざわざ、初速度ゼロのときだけに限って実験しているような気がします。(にしても、矛盾だらけなんですけどね)
じゃまな実験はやらないことにしているのでしょう。でも、限定された実験だから、そのときだけに通用しても、一般化はできません。
同じように、加速する宇宙船の中から見た場合も、光が発射されたときの宇宙船の速度を変えると、同じ矛盾が生じます。
3 結論
このことから、加速している宇宙船の中の光は、アインシュタインのいうように、外から見てまっすぐ、中から見て曲がるというようなことは起こらないのです。
私は、光はつねに絶対座標に対して、まっすぐに進むと思います。
観測者が、絶対座標に対して止まっているときには、光は直線に見えます。反対に観測者が、絶対座標に対して、動いていれば、光は曲がって見えます。もちろん、見えるだけで、本当の動きではありません。その曲がって見える曲がり方は、観測者の絶対座標に対する動きに連動します。宇宙船の動きとは関係ありません。まして、重力や、慣性力には関係ありません。
2005年8月6日 並刻記
雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次
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