重力によって光は曲がる!(P96)

(「 」内は[Newton」からの引用です


1 問題

 (1) 光が直進するという状態の解釈に次の二つの考えがあります。

ア ニュートンの考えから類推すると

 光は、絶対座標に対して直進する。

イ アインシュタインの考え方

 観測者に合わせて直進したりする。このページの場合、落下する箱の中でも箱にたいして直進している。

(2) 光が曲がるという状態の解釈に次の二つの解釈があります。

ア ニュートンの考えから類推すると

 光は絶対座標に対して曲がる

イ アインシュタインの考え

 見る人の状態によって光は曲がって見えることがある。そのときには、光が曲がって見える=光が曲がっている、になる。


2 考察

 (1) ニュートン的見方

ア 絶対的な直進

 光は基本的に絶対座標に対して直進する。物質によって、反射したり、屈折したり、散乱したりする。また、重力では曲がらない。

イ 観察者の状態によって、光の動きは左右されない。

 動いている者から見ると、光との相対的な速度が変化するので、曲がったように見えることがある。地球上の人から見ると、星の光が斜めに見える、光行差はその現象である。しかし、それはそう見えるだけで、実際に光が斜めに動きを変えたわけではない。この場合も、光は、絶対座標に対して直進している。観測者も絶対座標に対して動いているので、その相対的な速度の差によって光が斜めに進んでいるように見えるだけである。

 相対性理論と、ここが大きく違っている。見たことと実際の動きとは一致しないのが、ニュートンです。見た目で選んでは、間違いになります。

(2) アインシュタインの見方

ア 相対的な直進

 絶対座標が存在しないので、絶対的な直進は存在しません。すべて、観測者との相対的な状態です。「光は,誰に対しても秒速30万キロメートルで進む。」「等速直線運動をしている場所では、すべての物理法則が、静止した場所と同じように成り立つ」このことから、光も、列車内で、投げ上げたボールと同じように、まっすぐ上に進みます。これは、ボールと同じように列車とともに、光も前方へ進んでいるということです。

イ 観察者の見たままが、実際の動きになる

 (例) 

 「落下する箱の中から見た場合・・・重力のない慣性系とみなせるので・・・光は直進する」

しかし、これを地上の観測者が見た場合「落下する箱から見て真っ直ぐな軌跡は,地上から見ると曲がって見えるのです。つまり,地上から見ると光も曲がることになります!」

 このことから、曲がって見える=曲がっている、となっている。もちろん、その間の理由は書いてありません。「つまり」の一言だけです。見えたことが実際の動きと同じであるというのは、理由がいると思います。

(3)考察

 立場によって見え方が違うのは、ニュートンも、アインシュタインも同じようです。(ニュートンの場合、箱の中の観測者にも、光は曲がって見えます。理由=光は絶対座標に対して直進している。観測者も、絶対座標に対して、加速運動をしている。したがって、光と、観測者の相対的な位置が加速的に変化しているので、光は曲がって見える)

 しかし、ニュートンの場合は、観測者がどのように見ようと、光は、絶対座標に対して直進しているという事実は変わりません。見え方が違うだけです。実際の動きと、見え方は一致しません。本当の動きというのがあって、それは1種類です。

 一方、アインシュタインの場合は、落下する箱の中の人が見ると光は直進するので直進していることになり、外からそれを見ると、曲がって見えるので、光は曲がっていることになります。見たままが事実の運動になります。同じ光なのに、直進していると、曲がっているの二つの状態が同時に存在します。凡人には理解できない考えです。同じ車で、同時に直進と、右折をしたようです。

 

ア 曲がって見える=曲がっている、について考えます

 曲がって見えると曲がっていることになるのかを考えます。常識的には見え方と、実際の運動は違うことが多いです。見え方と、実際の運動が異なる場合は、実際の運動のほうを取ります。

(例1)新幹線でボールを真っ直ぐ投げ上げた場合

 新幹線の人からみます。ボールは真っ直ぐ上がって、真っ直ぐ落ちてきます。でもこれは見かけで本当の動きではありません。(相対性理論では、本当の動きのように書いてあります)

 外の人がみます。ボールは時速200キロメートルほどのスピードで放物線を描いています。でも、これも見かけで、本当の動きではありません。これは地球に対する動きだからです。(これも本当の動きとして書いてあります)

 絶対座標からみます。ボールは、地球の動きから運動エネルギーをもらって、秒速数百キロで動いています。これが実際のボールの動きです。そのほかの動きは、観測者との相対的な動きになります。いわゆる見かけです。(相対性理論では絶対座標がないので、この動きはありません) 

(例2)地球と月の動きを考えます。

 地球から見ると、月は東から出て、西に沈みます。見たこと=実際の動きなら、月は1日に1回地球を回っていることになります。

 また、月から地球を見てみます。地球はいつも空にあってじっとしています。東から上って西に沈むことはありません。見たままが実際の動きといえるなら、月と地球は向かい合ったままで、回りあっていないことになります。

 ニュートン力学では、月は27日に1回地球を回っていることになっています。

 このことから、

 地球と月の動きの関係に、3つの状態が出てきました。1日1回月は地球を回っている。月は27日で一回地球を回っている。月と地球は回りあっていない、です。

 とても変な話です。実際は、月は27日で一回地球を回っていると考えられています。原理はニュートン力学です。常識を打ち破った、相対性理論では、一日に1回地球を回る状態と、ただ向かい合って回らない状態の二通りが同時に存在します。確かに常識を打ち破っています。なぜこんなことがおこるのかというと、簡単です。(見た目)=(実際)のことと考えているからです。

 しかし、本当は、月は27日に1回地球を回っているのが正しい動きです。見た目と、実際は一致しない例です。

 このことから、「地上から見ると、曲がって見えるのです。つまり,地上から見ると光も曲がることになります。」という論理は、成り立たないといえます。

イ 「落下する箱から見て真っ直ぐな軌跡は地上から見ると曲がって見えるのです。」

 「つまり,地上から見ると光も曲がることになります!」について

 光速度普遍の原理によると、「光は誰に対しても秒速30万キロメートルで進む」とあります。

 すると、地上の人に対しても、箱の中の光は、秒速30万キロメートルで直進するのではないのでしょうか。「誰に対しても」なのですから。

 

ウ 「落下する箱の中でも、光は直進するはずです。」

 この場合、ニュートンの考える、絶対座標に対する直進ではなく、落下する箱に対して直進するということです。これは96ページに説明があるように「落下する箱の中から見てまっすぐ進む玉は、地上から見ると放物線を描いて見えました。」のように、光もこの玉と同じ軌跡を描いているということです。

 玉が、落下していくとき、人も同じ加速度で落下しているので、玉を押すとまっすぐ進むというのは、万有引力の法則から説明できます。玉も人も、質量を持っているからです。

 しかし、光は質量を持っていないので、万有引力の法則は適用されません。なぜ、光も、人と同じ加速度で、落下するのかは、94ページにこのように書いてあります。「落下する箱の中は,重力の影響のない宇宙船の中とまったく同じ状況になります。つまり、落下する箱の中は,『重力の影響のない慣性系と同等』とみなせます。」から、96ページの「この宇宙船の中では,光はもちろん直進しますから,落下する箱の中でも光は直進するはずです。」となって、いつの間にか、光は直進することになってしまいます。

 箱の中の人と宇宙船の中の人が、同じ状況だと勘違いするのはかってです。しかし、無重力の宇宙船は動いていません。落下する箱は、落下していると書いてあるのだから落下しています。二つは違う運動状態にあります。似たところ(部屋の中で人が浮いているように見える)だけ取り出して、違うところ(外の世界との関係は、宇宙船はじっとしていますが、箱は加速度運動をしている)は無視することで、二つは同じだと言い張るのは、科学的ではありません。
 すべては相対的で、どちらが動いているかを考えるのは無意味であるのかもしれませんが。その考え方自体が間違っていることは前に書きました。

 新幹線の中の人を考えます。駅に止まっているときと、駅を通過しているときを考えます。

 中の人と新幹線の相対的な位置は、止まっていても走っていても変わりません。しかし、新幹線の駅と中の人の位置関係は止まっているときと走っているときでは違います。中の人と、新幹線の相対的な位置関係だけ見て、中の人と駅との相対的な関係を見ないで、二つの状態が同じであると判断することは間違いです。

 止まっているときは乗客は降りられます。駅を通過している新幹線から降りたら、死んでしまいます。

 だから、落下する箱と、無重力状態の宇宙船とは同じとはいえません。間違った、解釈をしているので、同じ光が、直進している、と曲がっているの二つの状態になるのです。常識はずれがいかにすばらしくても、間違いは間違いです。

 もちろん、「落下する箱の中は重力の影響は消え去り,無重力状態に」なるわけはありません。これは次の次で述べます。(次は、落下する箱の中の光のことです)

 このことから、「重力よって光は曲がる」という一般相対性理論が証明されたということなのでしょうけど。こんなことで、いいのですかね。私にはたんに言葉のまやかしにしか思えません。

 その原理は、質量によって空間が曲がるために光も曲がるということだそうです。曲がっている空間と、曲がっていない空間とは、空間の何がどう違ったのでしょう。こんなふうになっているという架空の説明はよくみますが、実際の空間のどのような物質あるいは性質が、なぜ、どのような力で、どこに作用して変化したとかの本質的なところは何も説明されていません。空間とは何かということが、アインシュタイン氏には少しは分かっていたのでしょうか。

 質量で空間が曲がるということは、まだ仮説です。その証拠といわれている、エディントンの観測も、銀河や、銀河団のアインシュタインリングも、相対性理論以外の既知の理論で完全に説明できることは先に書きました。また水星の「近日点移動」も太陽が、完全な球形でなく、赤道方向が膨らんでいれば、そのような動きになるという説もあります。これも、既知の理論で説明できるということです。相対性理論者が、(それなら、太陽の赤道方向が膨らんでいる証拠をみせろ)というような趣旨のことをいっている本を見たことがあります。これはお互い様だと思います。相対性理論者も、太陽が完全な球体であることを証明しなければならないはずです。特に、太陽が自転していることは観測されています。すると、遠心力で、赤道方向が膨らむのは、自然です。岩でできている地球でさえ自転によって、赤道方向が膨らんでいるのですから、ガスでできている太陽が赤道方向に膨らんでいないほうが不思議です。 

2005年8月2日   並刻記
雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問 目次

窓のない宇宙船の怪

重力によって光は曲がるの2