特殊相対性理論で時間の流れは遅くなるか (P66)

 

1 問題1

 「月面から見て秒速24万キロメートル(光速の八十%)で右に飛ぶ宇宙船を考えます。宇宙船の中,そして月面上には『光時計』が置いてあります。」

という設定です。

 このとき、「『相対性原理』によると,宇宙船内は静止しているのと変わらないので,光源から出た光はまっすぐ上に向かいます。」ということです。

 また、月面の光時計も、図から判断すると、やはりまっすぐ上に進んでいます。


2 考察

(1)本当は今まで述べたように、「相対性原理」は間違っているのでそれ以上話すことはないのですが、ここは一歩譲ります。

(2)この場合、特殊相対性原理は適用できるのか

  「特殊相対性原理」をもう一度書きます。

「どの慣性系でも、すべての物理法則は静止した場所と同じように成り立つ」でした。そして、慣性系とは「静止しているか等速直線運動をしている場所のこと」と定義してあります。

ア 月を考える

 月は、自転しています。地球の周りを回っています。そして、太陽の周りを回っています。銀河の回転と同じに回っています。そして、グレートアトラクターのほうに動いているらしいといいます。

これから考えると、とても、月が静止しているとか、等速直線運動をしているとかは考えられません。「特殊相対性原理」の適用外の運動です。したがって、月の上の光時計の光が真っ直ぐ上に行くのは特殊相対性理論からはいえません。このように、「相対性原理」は、いつの間にか理論の範囲をじわりと、拡大します。
 こういうのを、私の住む村では、地すべりといいます。田んぼの境界線を、鍬で少し余計に削ったり、境の木を、少し移動させたりして、自分の土地を、ばれないように少しづつ広げていくのです。

イ 宇宙船を考えます

 宇宙船は月のそばを飛んでいます。したがって、月の引力の影響を強く受けています。宇宙船は月の引力で放物線を描いて飛びます。直線運動をするためにはエンジンを動かさなくてはなりません。すると、宇宙船は加速運動をしていることになります。ともに慣性系ではありません。宇宙船も、「特殊相対性理論」のいう条件を備えていません。

 

3 結論

 先に書いたように、「特殊相対性理論」はその理論を成立させるためだけに、現実にはありえない架空の宇宙空間をつくり、そこにやはり、現実にはできない、「等速直線運動」をしている2機の宇宙船を飛ばし、人間の見た目だけを判断基準にして生まれた理論です。

 ここにきて、いつの間にか普通の動きをしている月や宇宙船に適用されました。ところが、加速している場所にも同じように適用できるという根拠は何も示されていません。あれほどはっきり、鬼の首でも取ったように「慣性系」とことわっておきながらです。

月面に立っている人の二つの眼から見ると、月面は複雑な動きをしていないように見えるから、動いていないと考えて差し支えないからですか。宇宙船内の人には月の引力は見えないから、無視してもいいというわけですか。まるでだましのテクニックですね。

 ※ 56ページに、列車の中での珠の投げ上げや地球上での球の投げ上げが載っています。珠が手元に戻るのは、地球の引力の影響を受けているのと、人間が投げていることからそうなるだけなのです。正確な実験をすると、空気の抵抗を除いても、同じように戻ってこないことが分かるでしょう。また、機械で真っ直ぐ珠を打ち上げると、珠は機械の真上からずれていくのが分かるでしょう。球の代わりに、レーザー光線を真上に放射したら、もっと大きく真上からずれていくのが観測されるでしょう。(球は、発射装置の運動エネルギーを保存するが、光は光源の運動エネルギーを保存できないから)12時間経ったら、人や観測機器は地球の反対側に移動しているので、観測機器で測るとレーザー光線がだいたい真下にあるのが観測されるでしょう。実際は、地球の公転や、銀河の回転や、動きから、おそらくもっと突拍子もない方向にあるでしょう。12時間後の光を観測できたらの話ですが。

 

4 問題2

「『相対性原理』によると,宇宙船の中の観測者Aにとっては,動いているのは月であって,宇宙船は静止しているのと同じです。」を考えます。

5 考察

この宇宙船は秒速24万キロで進んでいることになっています。すると、この宇宙船が止まって、月が代わりに動くと、月が秒速24万キロで動くことになります。「特殊相対性理論」ではこれは同じことだといいます。

 そこでニュートンの運動力学でこのことを考えてみます。宇宙船が24万キロの速度で動くのと、月が24万キロの速度で動くのでは、互いの質量が大きく違うので運動エネルギーが極端に違って出てきます。どちらが動くのも同じだとすると、ニュートン力学の、エネルギー不変の法則に反します。また、運動エネルギーだけでなくその方向も違っています。したがって、ニュートンの力学では、宇宙船が動くのと、月が動くのがどちらも同じであるとは決していえません。これは、相対性理論が、絶対座標の存在を否定し、ニュートンが絶対座標の存在を肯定したことから来る違いです。

6 結論

 このことから「特殊相対性理論」はニュートン力学を否定しているということになります。「相対性理論」と、ニュートン力学とは、相容れないものです。「相対性理論」は「ニュートン力学」を含むとは何を根拠にいっているのでしょう。どちらかがかならず間違っています。

 時間が遅れることの前提である、光時計の光がまっすぐ上がることと、宇宙船が止まっていることとが、上のような理由で「特殊相対性理論」が適用できないので、時間が遅れることは証明されません。
2005年7月19日 並刻記
雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問(目次)
光速度普遍の原理は正しいか(P60)(前へ)
同時性の不一致 (次へ)