絶対静止の有無を調べるU(「ニュートン」P58)


 前項と同じ2機の宇宙船の問題です。
 前項では、思考実験においては、観察者の能力によって観測の評価が変わることを述べました。この項では、実験条件が変わると実験結果が変わることを述べます。(以下「」の中はNewtonからの引用です)


1 問題
  アインシュタインは、2機の等速直線運動をしている宇宙船を考えました。この実験条件から「どちらが止まっているか決めることができない」という結論を得、「宇宙の中で静止した場所、つまり絶対速度を考えることには意味がない」と考えた、ということです。{前項では、ここに論理の飛躍があることを述べています。}


2 考察

 そこで、実験条件を変えて見ます。

(1) 宇宙船の数だけ変えて見ます。
  ア 理由
 思考実験では宇宙船は何機飛ばしても、ただだからです、というのは、冗談です。何機宇宙船が飛んでも、2機のときと同じ結果にたどり着いたとき、初めて、2機のときの実験が一般化されるといえます。もし、違う結果がでたら、この実験結果は2機のとき以外には適用されないことになります。
 地球上にはたくさんの人工衛星や飛行機が飛んでいます。2機だけということは考えられないことです。したがって類似の実験をする必要があります。

 イ 思考実験
  @  宇宙船が3機以上のとき 
 それぞれの相対的な宇宙船の動きは計算できます。しかしそれが絶対的な速度かどうかは、やはり決めることができません。これは2機の宇宙船のときと同じです。
  A  宇宙船が1機のとき
 宇宙にはそれっきりなのだから、宇宙船が動いているのか止まっているのか決められません。アインシュタイン流に言うなら、{宇宙で動いているということを考えることはできない}ということになります。すなわち、{宇宙に動きがあることを考えることは無意味である}といえます。2機の場合と違った結果がでてきます。
  B  宇宙船が0機のとき
 何も無いので有るか無いかを決めることができません。すなわち{宇宙において、物が有るか無いかを考えることはできない}となり、{物が存在することを考えることには意味が無い}ということができます。やはり、2機の場合と違った結果がでています。

(2) 等速直線運動だけ変えてみます
 ア 理由
 宇宙には、等速直線運動をしている現象はとてもまれです。 星のほとんどは自転運動をしています。すべての星は、程度の差こそあれ、何らかの引力(重力)に引かれて、加速運動をしています。等速直線運動はこの世に存在しないといっても過言ではありません。一般相対性理論が正しければ、光もやはり、重力に引かれて、加速運動をしています。もし、一般相対性理論が無くても、光は真空中以外では速度や方向を変えます。そして、光が飛ぶ、1秒間に30万キロという大きな空間には、真空は存在しません。
 そこで、「等速直線運動」という、理論の中にしか存在しない運動ではなく、最も一般的な現象を実験条件にしてみます。そこでも、同じ結果が出たら、アインシュタインの思考実験は、一般化できることになるでしょう。
 イ 思考実験
  @ 2機の宇宙船のうち1機が自転している。
   これは、地球と月や、太陽と地球のように、普通に見られる現象です。
  ・ 実験条件
  宇宙船Aは自転しています。宇宙船Bは少し離れたところに等距離で浮かんでいます。
  ・ 現象
   宇宙船Aが自転していることは、宇宙船Aの観測者に観測できます。中のものが、遠心力で、外側に押されるからです。この力から、回転速度も割り出せます。
   宇宙船Bから見るとAが自転しているのが観測できます。
   これが普通の状態です。
  では、相対性理論の考えで考えて見ます。
 「どちらが止まっているか決めることができない」という考え方です。
 宇宙船Aが止まっていると考えます。すると、宇宙船Aから見ると、宇宙船Bが、宇宙船Aの周りをぐるぐる回っているように見えます。では実際に宇宙船Bは宇宙船Aの周りをそのように回ることができるでしょうか。無理です。宇宙船Bは遠心力でどこかへ飛んでいってしまいます。慣性の法則といわれるものです。
 このことから、この条件の2機の宇宙船の場合は、どちらが動いているかは決まってしまいます。
 この現象は、先ほど述べたように、地球と月の関係と同じです。地球は1日に1回自転しています。これを、相対的に考えて、かつての天動説のように、月が1日に1回地球の周囲を公転していると考えるとどうなるでしょう。月は、地球の引力を振り切って宇宙のかなたへ飛び去っていきます。
 地球と月の関係も、どちらが回転しているかは決まっています。
 この現象をもう少し考えてみます。
 体重計です。日本の体重計は、九州型とか、関東型とか、北海道型とかいろいろ分かれていて、ばねの強さが違うそうです。北海道型の体重計を九州に持っていって測ると、軽く表示されるそうです。反対に、九州型で、北海道で測ると、重くなるそうです。原因は、地球の自転による遠心力が働いて、赤道に近くなるほど体重が軽くなるからだそうです。同じ体重計で、南極点で量るのと赤道で測るのでは大きな違いがでるそうです。この違いがいつも決まっているのは、動きが絶対的だからといえそうな気がします。もし、動きが、相対的で、決まっていないのなら、この体重のさもはっきりとは決まらず、いつも見方によって変わらなければなりません。
 かに座の、中性子星が、正確なパルスを送ってきています。この間隔は少しづつ伸びているといいます。これは、星が放出するエネルギーのために、回転エネルギーが減じているためだといわれています。この、エネルギーの放出量と、回転速度の減少は決まっているのではないでしょうか。すると、回転は絶対速度になることになります。

3 結論
 「周囲に何もない空間」というのは現実の宇宙には存在しません。銀河の間でも、1立方メートルに1個の水素原子があるといいます。(Nyuton8月号による)
「周囲に何もない空間」というのはバーチャル空間です。そこで、「等速直線運動をしている宇宙船」がすれ違うというのです。先ほども述べたように、人が観測できる限りの宇宙には、数千億の星と、数千億の銀河の引力が満ち満ちているといいます。等速直線運動をすることは不可能です。等速直線運動というのはバーチャル運動といえます。バーチャル空間の中のバーチャル運動によって生まれた法則を、現実の世界に適用するのは間違っています。地球の自転ひとつ説明できなくなるのはそのためです。
 したがって、星の動きはすべて、絶対座標があるとするニュートンや、ケプラーで計算します。相対性理論では計算しません。
 いや、相対性理論はニュートン力学を含む、という人がいます。そうでしょうか。相対性理論はニュートン力学を含むというのは相対性理論者の勝手な言い草です。ニュートンが聞いたら、こう言うでしょう。「アインシュタインさん、あなたと私は考え方が正反対です。あなたは絶対静止はないという考えです、私は有るという考えです。あなたは絶対時間がないといいます。私は有ると考えました。私は、絶対時間と絶対静止があるということを土台に物理法則を決めました。あなたは反対のことを土台に考えたみたいです。なぜ同じ計算式にたどり着いたのか私には理解できませんが、それは単に偶然でしょう。考えの土台が違うのですから、私の式があなたの式に含まれることはありません。似て非なるものです」と。

2005年7月14日 並刻記

 絶対静止の有無を調べる(「ニュートン」P58)

雑誌「Newton」7月号「相対性理論」への疑問  

ガリレイと、アインシュタインの「相対性原理」