相対性理論と,そこから生まれた現代物理学(Newton6,2016)について7

 

著者 田 敞

2016年7月15日


相対性理論と,そこから生まれた現代物理学について目次  相対性理論と現代物理学8  相対性理論と現代物理学6   メッセージ

 

(以下{ }内は、上記本よりの引用)

―この本の記述―

・ {アインシュタインでさえ,最初は宇宙空間は収縮も膨張もしない「静的なもの」だと考えました。}

・ {重力には斥力に当たる「反重力」は存在しません。}

・ {星や銀河はそれぞれの重力で引きよせ合い,長い時間をかけて宇宙は収縮してしまいそうです。}

・ {そこで、アインシュタインは一般相対性理論の方程式の中に,「宇宙空間の斥力」を表す項を加え,収縮方向の力とバランスをとらせることで,“強引に”,静的な宇宙像を作り上げました。この項は「宇宙項」と名付けられました。}

・ {天文観測によってハッブルが宇宙の膨張を発見するに至って,アインシュタインはついに「静的な宇宙像」が誤っていたことを認めこの宇宙項を取り下げました。}

 

問題

・ {アインシュタインでさえ,最初は宇宙空間は収縮も膨張もしない「静的なもの」だと考えました。}

・ {重力には斥力に当たる「反重力」は存在しません。}

・ {星や銀河はそれぞれの重力で引きよせ合い,長い時間をかけて宇宙は収縮してしまいそうです。}

 

考察

1 疑問

宇宙には重力があるから、いずれは収縮してしまうと考えるのは当然のように考えられます。物は落ちてくるのですから。万有引力でも同じです。物は引き付けあうのですから。

でもそうでしょうか。

2 宇宙項(空間の持つ斥力)は必要か

ア {重力には斥力に当たる「反重力」は存在しません。}

万有引力で考えてみます。(重力は空間の曲がりですが、万有引力は物質どうしが引き合う力です。曲がりにはエネルギーは存在しませんが、引き合う力にはエルギーが存在します)

宇宙空間で離れた場所にある二つの物質を考えてみます。万有引力で引き合うので物質は接近します。この時、万有引力は物質の運動エネルギーに変化します。引力はつねにかかり続けますから、物質は加速しながら接近します。引力のエネルギーが、物質の運動エネルギーに変化し続けます。エネルギー不変則から、このかかっている万有引力と運動エネルギーは等価です。

そして衝突し、跳ね返ります。遠ざかるに従って、万有引力により速度が落ちます。このとき使われた、万有引力の力と、物質の運動エネルギーは等価ですから、エネルギーが他に転嫁しなければ元の位置まで跳ね返り、止まります。二つの物質は近寄りも、遠ざかりもしません。

また、ぶつからなくても同じです。引き付けあい、すれ違うと、最初離れていた距離と同じ距離だけ離れて止まります。

このように、物質は基本的には万有引力だけではくっつきません。

この離れた物質が持っている力を位置エネルギーといいます。高校で習う落下の法則という簡単な物理です。

引き合う力が万有引力なら、引力はそれと等価の、斥力(運動エネルギー)を生むということです。したがって、宇宙の物質は今ある状態から収縮も膨張もしないということになります。

真空の斥力(宇宙項)がなくても宇宙は収縮も膨張もしないということです。

宇宙は重力によって収縮するから、宇宙項がいると考えたアインシュタインは、高校の物理の教科書をひも解くとよかったと思います。

万有引力はそれ自体が、引力と共に同じ大きさの斥力を生むのです。

 

イ 考えられている実際例

恒星ができるときにこの斥力(位置エネルギー)の存在が考慮されています。

星間ガスが万有引力で収縮して、やがてまとまって、恒星になると考えられています。

この収縮の時、やはり、万有引力が元になった運動エネルギー(位置エネルギー)が問題になります。ただ星間ガスが収縮しただけでは、衝突で元のところに跳ね返ったり、すれ違って離れたりしてしまうからです。

この距離に応じて物質が持っている位置エネルギーから生じる運動エネルギーを減らさなければガスは収縮できないということです。そこで、星の研究者は、この位置エネルギーから運動エネルギーに変わったエネルギーを発散させる仕組みを考えました。それは熱です。物質は衝突すると熱を生みます。この熱は運動エネルギーが変化したものです。熱は電磁波を発生させます。この電磁波が、位置エネルギーを宇宙空間に運んでいきます。電磁波で少なくなったエネルギー分、物質は元の位置まで戻れなくなります。収縮です。これによってガスはどんどん収縮して恒星になります。「位置エネルギー→運動エネルギー→熱エネルギー→電磁波→宇宙空間」という順序でエネルギーが移動していきます。これはボールを落とすと、バウンドが小さくなっていってやがて止まるのと同じです。この時ボールの位置エネルギーは熱になって発散されています。こんなの高校生の常識ですから、今さら書くことではないのですが。実証されているということです。

恒星になるころになると、収縮の速度が速くなって電磁波によるエネルギーの発散が間に合わなくなってきます。すると、衝突でたまったエネルギーが大きくなり、ジェットと呼ばれる現象が現れます。これで、運動エネルギーを一気に宇宙空間に運んでいきます。そして、最終的な収縮が行われて、恒星が誕生します。

この電磁波や、ジェットによる、位置エネルギーの持ち出しがなければ、星間ガスは収縮できず星は生まれないということです。

星間ガスの電磁波も,恒星が生まれる直前のジェットも実際に観測されています。実証されているということです。

このように、万有引力が引き合う力を持っていると、それが、運動エネルギー(位置エネルギー)に変化し、斥力になるということは証明されているといえます。

宇宙には万有引力と等価の斥力があるということです。等価ですから、宇宙は収縮も膨張もしません。

いや、実際に星間ガスが収縮して星ができるなら、同じようにして{星や銀河はそれぞれの重力で引きよせ合い,長い時間をかけて宇宙は収縮してしまいそうです。}ということになってしまいそうです。

そうではありません。発生した電磁波は、他の物質にエネルギーを与えて離れさせます。ジェットは宇宙空間に広がって行きます。星はやがて爆発して再度宇宙空間に広がっていきます。万有引力が物質を引きつける力なら、そこから発生した斥力になる運動エネルギーや熱エネルギーは万有引力と等価(エネルギー不変則)なのですから、さまざまな物質にそのエネルギーを渡し、形を変えながら必ず元の位置まで物質を引き離します。

ただ、できたらすべてを引きこんでしまうと言われているブラックホールの問題が残ります。

もしブラックホールが、二度と拡散しないとすると、宇宙はやがてブラックホールだらけになってしまうかもしれません。物質がブラックホールになった時、その万有引力から発生した運動エネルギーは巨大なものになります。そのエネルギーは、他の物質の斥力になります。物質は拡散します。究極、巨大なブラックホールと、巨大なエネルギーを持った斥力の二つに宇宙は分離してしまうかもしれません。たんなる憶測で根拠はありませんが。

ただ、エントロピーの法則では、すべては、バラバラの無秩序になろうとすると言っています。ブラックホールは究極のエントロピーが減少した状態です。したがって、エントロピーの増大の力もそれと同じ力でかかっていることになりそうですから、何らかの仕組みで、ブラックホールも、エントロピーが増大する可能性はあります。

エ 元の位置(宇宙が生まれた時の物質の位置)に戻る

 元の位置に戻るということは、宇宙が最初どのような状態(元の位置)であったかが大きくかかわってきます。

最初の状態を考える。

 宇宙の最初の状態には2説あります。

インフレーションビッグバン説と、定常説です。

 定常説は間違っていることが決定している。正しいのは、インフレーションビッグバン説と決まっている、と言わずに、考えてみます。科学は、可能性があるなら考えよ、ですから。それに、考えてはだめだという科学の方法論はありません。何を考えてもいいのが科学です。科学の常識外れを考えて地動説が出、科学の常識外れを考えて進化論が出、科学の常識外れを考えて大陸移動説が出たのですから。ガリレオが地動説をとなえた時、ほとんどの学者がそれを否定していたのですから。地球が動いているなんてありえない、と。ダーウィンだってほとんどの科学者に反対されたのですから。科学を進歩させてきた力は多数決でも権威でもなく、定説を疑って見よ、ですから。

とくに、インフレーションビッグバン説は、現在究明されている物理学ではありえない理屈と現象だけで成り立っているといっても過言ではありません。すべての現象が、謎と不可思議で成り立っています。その反対に定常宇宙論は、かなり現在で分かっている物理法則で説明ができます。超、超、超光速膨張も、“無”の一点から全宇宙のエネルギーと、物質が10−27秒で飛びだすとか、何か分からない、観測できない謎だけのダークエネルギーとか、物質の5倍もあるというのに、まだ発見されていない謎の素粒子でできているダークマターとかは一切いりません。もちろん、原理どころか、なにかさえ分かっていない空間が膨張するということも。空間の構造、や膨張する仕組みなんて、だれも何もわかっていないのですから。

定常宇宙論で分からないのは、宇宙の広がりが無限であるということと、物質ができる仕組みということと、空間はいつからあるのかということなど、無限の広がりと、無限の時間のことだけです。これは、インフレーションビッグバン説でも同じです。この宇宙ができる前は時間も空間もない“無“だけしかなかったとこの本にもありますが、では、その無はいつからあったのかとか、その無はどれくらい広がっているのかとか、その無の外は何かとかは一切分かっていないのは同じです。名称が“無”か、真空かが違うだけで、無限のことは分からないという中身は同じです。あとは普通の物理学で説明できます。

 前置きはここまでにして、二つを比べてみます。

 

インフレーションビッグバン説

定常宇宙説(田敞式)

始まりの場所

10のマイナス何十乗という究極の時間も空間もない“無”という名の小さい1点がこの宇宙の始まり。その外はどうなっていたかということは不問にする。関係ないから。

無限に広がった空間が最初からあった。

でき方

10のマイナス何十乗という短い時間に、全宇宙の物質と、時間と、空間と、ダークマターと、ダークエネルギーなどができた

 無限の空間の広がりの中で、何百億年か、何千億年かわからないが、長い時間をかけてランダムに素粒子ができていった。

でき方2

時間も空間もない(“無”)から生まれた宇宙が、10―27秒より短い時間の間に、(1兆×1兆×1兆×1000万倍)に膨張した。

その後素粒子と光が生まれた。

量子論によると、

真空の小さなエネルギーの揺らぎから、最小単位のエネルギーを持った素粒子が生まれた。

位置エネルギー

離れていないから、位置エネルギーは0

素粒子どうしが距離に応じた位置エネルギーを持って生まれる。

引力

空間のゆがみによる重力

万有引力

斥力

謎のダークエネルギー

物質の持つ位置エネルギー

物質の元の位置

1点

宇宙の全領域に散らばっている

考察

 位置エネルギーから考えると、物質は元の位置に戻る、ということから、インフレーションビッグバン宇宙では、物質は、1点に戻るのが必然である。定常宇宙論では、もとの位置はランダムだから、物質はランダムな位置に戻る。

 宇宙にこれだけの巨大な質量が散らばっていることから、膨大な位置エネルギーがあることが分かります。

 高田式定常宇宙論では、物質がバラバラに生まれることから、生まれたとたんに、万有引力と共に位置エネルギーも持つことになります。位置エネルギーは、万有引力から生まれるから、エネルギー不変則から両者は等価です。宇宙全体の、巨大な引力と、宇宙全体の物質が持つ位置エネルギーによる斥力は等価です。

 インフレーションビッグバン説では、1点で生まれるから、重力は持っていても、位置エネルギーを持つことはできません。今の、宇宙の全物質がこのようにバラバラになるためには、それに見合った巨大な位置エネルギーを後から物質に与えなければなりません。そのエネルギーの出所は不明です。謎しかないダークエネルギーと言われているものなのでしょう。名前はあってもすべてが謎しかない斥力です。

 100kgのバーベルを持ち上げてみると、その大変さがわかります。私にはできません。1トンの衛星を打ち上げるには、大きなロケットがいります。100トンのものを1度に衛星にする技術をまだ人間は持ち合わせていません。

インフレーションビッグバン説では太陽と地球は元は1点で生まれています。すると、太陽と、地球は宇宙の歴史の中で、切り離されたということです。位置エネルギーから考えると、太陽から、地球を、ここまでの距離、持ち上げたということになります。巨大なエネルギーがいります。それが真空のエネルギーの斥力ということになります。それだけではありません。これが全宇宙のすべての恒星で起こったということです。質量は地球どころではありません。そのうえ距離もはるかに大きいのです。銀河系とアンドロメダ銀河は、230億光年離れています。230億光年の高さまで数千億の星を持ち上げたということです。もっとはるかの高みにある銀河が無数にあります。ものすごいエネルギーがいります。

それはどこから生まれたのでしょう。もちろん“無”からです。“無”にはすごい力があるということです。

定常宇宙論では、新たなエネルギーはいりません。万有引力を持った物質が離れて生まれると、付属して位置エネルギーが生まれます。この宇宙全体に、物質が離れて生まれるだけで、全宇宙の物質が持つ巨大な位置エネルギーが勝手に生まれるのです。

結論

インフレーションビッグバン説では、元の位置に戻ると、1点になります。ただ、“無”から与えられた謎のエネルギーの大きさによって、どうなるかは分かりません。今も真空のエネルギー(巨大な恒星を持ちあげるエネルギーです。星は、数千億の数千億倍個はあるのですから大変です)が増大し続けている(真空から勝手にエネルギーが湧いているということです。真空とか、“無”とかはドラえもんのポケットみたいですね。それを自由自在に使いこなしている科学者には、決して手離せないアイテムですね)という学説なので、際限なく膨張していくことが考えられます。

 一方、高田式定常宇宙論では、バラバラに生まれた物質は、もとの位置に戻ると、バラバラです。宇宙を広げるエネルギーは新たに加わりませんから、宇宙の物質は、全体として広がりも、縮まりもしません。平坦なままです。もちろん、宇宙空間は膨張しませんし収縮もしません。万有引力は、重力と違って、物質同士にしか作用しないので、空間を曲げたり縮めたりしません。