相対性理論と,そこから生まれた現代物理学(Newton6,2016)について8

 

著者 田 敞

2016年7月16日


相対性理論と,そこから生まれた現代物理学について   相対性理論と現代物理学7    メッセージ

 

(以下{ }内は、上記本よりの引用)

 

問題

{天文観測によってハッブルが宇宙の膨張を発見するに至って,}

考察1

(1)ハッブルの考え

ハッブルが発見したのは、遠い銀河の光ほど赤方偏移しているという観測事実だけです。彼自身は、宇宙が膨張しているとは考えませんでした。かえって、赤方偏移の単位が速度をあらわすことから、銀河が後退しているという考えに陥ることを懸念しさえしています。

(2)遠い銀河の光ほど赤方偏移しているという観測事実はなにを表すか。

これにも二つの考え方があります。一つは、インフレーションビッグバン論者のいう、空間膨張のためです。もう一つは、宇宙空間のガスや塵に当たって、光がエネルギーを下げるという説です。この二つを検討してみます。

インフレーションビッグバン論者は宇宙のガスや塵に当たって光がエネルギーを下げるという説は無視していますが、やはり、すべての可能性を検討してみるという科学的姿勢から検討しなくてはなりません。インフレーションビッグバン論者の、自分たちの考えに反対する理論は「無視」するという方法は、科学の方法論に明らかに反しています。

 

ア インフレーションビッグバン論者の考え

この考えにも二つあります。一つは、銀河が後退しているためにドプラー効果で光が赤方偏移しているという考えです。二つ目は、空間が膨張しているために光が引き延ばされて赤方偏移する、という考えです。 

@ ビッグバン論者の考えの変遷

最初は、銀河の後退速度によるドプラー効果による赤方偏移と言っていました。しかし、後に、宇宙空間の膨張によって光が引き延ばされたために起こったと述べています。インフレーションビッグバン論者は、現在、空間が膨張しているために光が引き延ばされて赤方偏移する、という考えに統一されているようです。

しかし、なぜか、多くの本で、いまだに、銀河の赤方偏移は銀河が後退するために起こっている、という説明が出てきます。「Newton2016/3」でも、赤方偏移の起こる理由を、まず、銀河の後退速度で説明しています。それも2ページにわたって説明しています。そして、ハッブル定数の式も紹介しています。「V=H×d」です。この「V」は、「後退速度」となっています。ところが、その後、同じ記事の10ページ後で、赤方偏移の原因は銀河の後退速度によるというのは間違いだ、空間膨張によるのが正しいといっています。

なぜ最初に間違っているという銀河の後退速度の説明をいれているのでしょう。簡単です。空間膨張だけでは、銀河の後退が説明できないからです。空間膨張だけなら、遠い銀河が後退していなくても、間の空間が膨張するだけで、光は引き延ばされ、赤方偏移してしまうからです。すると、宇宙空間は膨張しても、銀河はじっとしている可能性が出てきます。空間だけ膨張してもらっては、ビッグバン宇宙が成り立ちません。遠い昔から今の位置に銀河があって、宇宙空間だけが膨張していたということになってしまいます。

空間が膨張すると、銀河も離れて行くという証明や観測はできていません。実際、アンドロメダ銀河と、天の川銀河の間の空間は膨張しているはすなのに、銀河どうしは互いに接近しています。接近している銀河は宇宙でたくさん見つかっています。また銀河団は空間は膨張しているはずなのに、銀河どうしは、離れて行っていません。

このように、空間は膨張しても、銀河が離れて行っていない例はたくさんあります。この方が一般的でさえあります。反対に空間膨張の力で銀河どうしが離れていっているという直接の観測はありません。(注:銀河の赤方偏移は銀河が後退しているためではないと、この本にもあります。銀河後退の証明にはなりません)

しかし、銀河が後退している、だから空間が膨張しているというのが、ビッグバン論の始まりなのですから、何がなんでも、最初に銀河が後退していてもらわないと困るのです。だから、この本でも、最初に後退説を述べて、その後10ページにわたって、間違っているといっている銀河の後退を根拠として宇宙膨張から、空間膨張を説明していきます。一通り、後退しているから宇宙は空間も含めて膨張していると述べてから、やおら後退説を否定して、空間膨張説を持ち出します。ところが、空間膨張は、銀河が後退しているから空間が膨張しているという説明です。(銀河が後退している→遠い銀河ほど速く後退している→そのためには空間が膨張していると考えるとつじつまが合う→空間が膨張している)ということでした。

まず、銀河が後退していなければ宇宙空間も膨張しているということにはならないのです。宇宙空間の膨張には、空間膨張が否定する銀河の後退速度が必ず必要なのです。

だから、間違いだといいながら、どの本にも、必ず赤方偏移の説明に銀河の後退速度が最初に出てくるのです。赤方偏移の歴史みたいな口ぶりで出しているけど、本当は銀河後退が必要だから、出しているのです。

否定したものでしか自身が証明できないという、矛盾が生じています。

間違ったものから出発したら間違いしか出てきません。間違った説明は、ごまかしであって、事実から目をそむけさせるだけです。科学者が一番やってはならないことのはずなのですが。

A 空間膨張で赤方偏移する光の矛盾

 宇宙空間の膨張は3次元で起こっているということです。しかし、ビッグバン論者のいう銀河の光の赤方偏移は1次元で起こっているといっています。

インフレーションビッグバン論者は、光は、空間膨張で、進行方向にだけ伸びていると言っています。空間が3次元の全方向に膨張しているのなら、光も3次元の全方向に伸びなくてはならないはずです。光は、なぜ進行方向にだけしか伸びないのか、の説明がありません。説明できないから知らんふりしているのでしょう。高さ方向に光が伸びたら、光は光度を増してしまいます。すると、遠い銀河の光ほど明るくなってしまいます。それでは観測事実と合いません。困ってしまいますからね。エネルギー不変則に反するから高さ方向には膨張しないというのなら、同じように、進行方向にも伸びないはずです。進行方向に伸びたらエネルギーが減るからです。これもエネルギー不変則に反します。減るのはいい、けれど増えるのはだめという法則は、エネルギー不変則にはありません。増減しないというのが不変則なのですから。

 光が、空間膨張で赤方偏移した時、減じた光のエネルギーはどこに消えたのでしょう。その説明はありません。

イ 宇宙空間のガスや塵に当たって、光がエネルギーを下げるという説

 光は、物質に当たると、物質の原子や分子を揺り動かします。そのために、光のエネルギーが物質に移動し、光のエネルギーが下がります。これが赤方偏移の原因になります。この現象は、さまざまなところで日常的に起こっています。たとえば部屋の電気を消すとすぐ暗くなるのはこのためです。光はどこに行ったのかというと、赤方偏移して目に見えなくなったのです。仕組みは、電気の光が壁などに当たってエネルギーを下げたために、赤外線からマイクロ波になり、見えなくなったのです。光は、30万km/sだから、1秒で、部屋の壁に数千万回衝突します。だから一瞬でエネルギーを失い赤方偏移し消えてしまうのです。

 この現象は、理論も実証もできています。

 そこで、宇宙を考えてみます。宇宙には、電離水素や、中性水素を中心としてさまざまな原子や分子が浮かんでいます。銀河の光はこれらに衝突してエネルギーを徐々に減じていきます。この衝突は、銀河の光のスペクトルに暗線となって現れているのが観測されています。遠い銀河の光ほどこの電離水素や水素分子などに衝突する回数が増えます。すると遠い光ほどエネルギーを失う率が高くなります。遠い銀河ほど赤方偏移することになるのはこのためです。

ウ 赤方偏移の原因を比べてみる

@ 理論と実証

 

空間膨張説

物質衝突説

赤方偏移の理論

間違った説明(後退速度説)の必要と、いくつかの矛盾がある。

実証されている理論ですべて説明できる。

赤方偏移の実証

空間膨張による赤方偏移は直接観測されていない。

 遠い銀河の赤方偏移の原因は空間膨張であるというのは憶測であるので、実証にはならない。

光の物質衝突による赤方偏移は日常的に起こっているのが観測されている。

空間膨張の理論

仕組みには理論がない。

 

空間膨張の必要はない。

空間が銀河や銀河団を動かす仕組み

巨大な質量の銀河団をそっくり動かしているということである。銀河団のどこにどのような力を加えて、動かしているのか、理論がない。

空間膨張の必要はない。

実証

空間膨張の直接の観測はない。

 

同上

 

結論

上の通り、この二つは、理論も、実証もない空間膨張説より、理論も実証もある衝突説の方に軍配が上がる。

A ハッブルの観測

ハッブルの観測データーは、銀河の距離と赤方偏移の値がかなり揺れています。距離と赤方偏移はきれいに相関していません。

理由

・ 宇宙空間膨張が原因とする

 宇宙空間の膨張が一様なら、観測データーにこのようなばらつきは出ないはずです。これだと、宇宙空間の膨張はかなり不均一であるということになります。それか、観測誤差が大きいということです。しかし、これでは宇宙膨張に矛盾するか、観測データーが信用できないかになってしまいます。どちらにしろ信頼性がないということになります。

・ 宇宙空間のガスに衝突が原因とする 

宇宙空間にはガスがあります、そして、それは非常に不均一であるのも観測されています。すると、銀河の光はそれぞれの通り道で分子や原子に衝突する回数が大きく異なります。すると、赤方偏移の値も大きく異なることになります。

これだとハッブルの観測値がバラバラであることの説明が無理なくできます。

結論

衝突説のほうが科学的には優位になる。

結論

赤方偏移の原因は空間膨張によるというのは、科学的には理論も実証も不備だらけだといえます。ハッブルの観測にも一致しません。

物質衝突説なら、科学的理論も既成の理論で説明できているし、実証もたくさんあります。また、ハッブルの観測にも一致します。

このことから、銀河の赤方偏移の原因は、銀河の光が宇宙空間ガスに衝突したために起こっているといえます。