タイムトラベルと双子のパラドックス目次  双子のパラドックス2  タイムトラベル4 


タイムトラベルと双子のパラドックス(Newton2017,7ニュートンプレス)

について 3


著者 田 敞


(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{宇宙船の兄から見ると、地球を含む周囲の宇宙全体が光速の80%で動いているわけですから,宇宙全体が進行方向に対して60%に縮むのです。}


問題1

{地球を含む周囲の宇宙全体が光速の80%で動いている}

考察

{周囲の宇宙全体}というのはどの範囲なのでしょう。

この範囲が20光年とします。すると、21光年以遠の銀河とずれが出てきます。宇宙に光速の80%の速度の断層ができます。どうしますか。

宇宙は引力で結ばれています。いま観測されているほぼすべての銀河は引力で結ばれています。地球は勝手に動けません。もちろん地球の周囲の宇宙の銀河もです。地球の周囲の宇宙の端の銀河も、その向こうの銀河と引力で結ばれているはずです。宇宙全体が引力でつながっていると考えられます。したがって、{地球を含む周囲の宇宙全体}の{周囲}は変です。{宇宙全体が光速の80%で動いているわけです。}になるはずです。

 するとこれでも問題が起こります。宇宙全体が光速の80%で動くということですから、宇宙全体が何かの中で動いていることになります。風船が空気の中を飛んでいるような感じです。宇宙に端があるなら、その端とその向こうで、光速の80%の速度差が出てきます。進行方向に対しては大きな衝突が起きるでしょう。後方では、大きな力で吸い込まれるでしょう。やはり、不可解な現象が起こります。

 宇宙が無限に広がっているなら動きようがありません。進んでいく場所が存在しないのですから。

 だから、{周囲}と書いてごまかしたのでしょう。ごまかしでないなら{周囲}の範囲を明確にしなくてはなりません。できっこないでしょう。

 

 宇宙全体を光速の80%の速度に上げる運動エネルギーの問題は前回書きましたから省きますが、それも大きな問題です。

 いえば、直径10キロほどの小惑星の進路を曲げることも今の人間のロケットでは難しいということです。それが、太陽が、何億と集まった銀河が、宇宙には何十億あるかわからないほどたくさんあるのです。その宇宙を宇宙船から見るだけで光速の80%に速度を上げられるというのです。素晴らしい科学力です。それとも、素晴らしい天才的な空想力ですか。

思考実験という架空の宇宙船と、架空の宇宙だからできることです。本当だというなら、実証しなければなりません。

光速の80%で飛ぶ宇宙船はないから、実証はできないということでしょう。大丈夫です、宇宙ステーションの人に観測してもらえばいいのです。宇宙が、秒速20キロで飛んでいるということを観測すればいいのです。地球から観測しても大丈夫です。確かに、天が地球の周りを回転しています。

結論

こんなことは起こっていません。たんなるSFです。

 

問題2

{宇宙全体が進行方向に対して60%に縮むのです。}

考察

すると、銀河間の距離が縮まります。万有引力の力が変わります。宇宙に大変動が起こります。

太陽系も、宇宙船の進行方向(宇宙船が基準だから、宇宙船は停止しているので進行方向も、後方も存在しないはずなのですがね)に60%縮みます。地球はかなりひしゃげた楕円軌道を取ります。ケプラーの法則に反します。太陽に接近したときは、地球は灼熱地獄に陥るのじゃないでしょうか。光速の80%の宇宙船がなくて良かったですね。

地球も進行方向に60%縮みます。地球は自転しています。自転に合わせて1日に2回伸び縮みします。60%も伸び縮みしたら大地震が毎日地球を襲うでしょう。地球内部にも巨大な摩擦熱が発生します。火山もあちこちで大噴火をおこすでしょう。

架空の宇宙船の話だから大丈夫というなかれ。ロケットはいっぱい飛んでいます。飛行機だって飛んでいます。光速の80%でなくても、秒速数キロでも、地球は大変なことになります。そのほかにも、多くの星や銀河が動いています。そのためのさまざまな伸び縮みが地球を襲います。大地震、大津波、大噴火が起こるでしょう。

そんなことは起こっていません。ロケットが飛んだからといって、地球が伸び縮みしている観測はありません。

 情報をどのようにして伝えるのでしょう。宇宙は、観測されているだけで、半径120億光年に広がっています。見るのだから、光で伝えるのでしょうか。すると、120億光年先の宇宙に光速の80%で動けという情報を伝えるのに120億年かかります。

 光速で伝わる情報とともに、宇宙のその部分は光速の80%で動きだします。すると、情報が伝わった部分とまだ伝わっていない部分の間に、光速の80%の速度差ができます。宇宙は大混乱になるでしょうね。

結論

 これも、思考実験という空想にすぎません。宇宙船が飛んだら、宇宙が縮まったり、地球が縮まったりすることはありません。宇宙には無数の星や銀河が光速で動いていますが、そのために宇宙が縮んだり動いたりしたことは観測されていません。空想より事実を元に考えるのが科学です。空想で考えるのはSFです。