インフレーション宇宙目次
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インフレーション宇宙論への反論10

インフレーション宇宙論への反論 9

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

問題1 ポテンシャルエネルギーと膨張エネルギー

太陽の近くに置いた粒子{実はポテンシャルエネルギーの量はこのとき最大です。}

 落下するにつれて、ポテンシャルエネルギーが小さくなり、代わりに運動エネルギーが大きくなっていきます。{実は粒子が太陽に引っ張られるエネルギー、つまり粒子のポテンシャルエネルギーが、運動エネルギーに転化されたのです。}

{膨張とは、ポテンシャルエネルギーで見れば落下しているのと同じ状態なのです。最初に生まれたときは、宇宙空間のポテンシャルエネルギーは最大です。ところが、落下するように膨張することでポテンシャルエネルギーは小さくなり、かわりに、まるで”無”から生まれたように真空のエネルギーがどんどん大きくなります。}

 

問題1{膨張とは、ポテンシャルエネルギーで見れば落下しているのと同じ状態なのです}

{膨張とは、ポテンシャルエネルギーで見れば落下しているのと同じ状態なのです。最初に生まれたときは、宇宙空間のポテンシャルエネルギーは最大です。ところが、落下するように膨張することでポテンシャルエネルギーは小さくなり、かわりに、まるで”無”から生まれたように真空のエネルギーがどんどん大きくなります。}

考察

 落下は、物質と物質が引力で引き合って接近していく状態です。膨張は、何らかのエネルギーで物質と物質が離れていく現象です。

 現象は正反対です。したがってポテンシャルエネルギーから見れば正反対になります。

 落下はポテンシャルエネルギーが運動エネルギーになり、ポテンシャルエネルギーは減少します。膨張は運動エネルギーがポテンシャルエネルギーになるので、ポテンシャルエネルギーが増加します。実際の現象では、膨張と落下ではポテンシャルエネルギーにかんして正反対のことが起こります。佐藤氏は、膨張でもポテンシャルエネルギーが減少すると述べています。現実の現象とは反対です。{膨張とは、ポテンシャルエネルギーで見れば落下しているのと同じ状態なのです。}という考えが間違っています。実際は、「膨張とは、ポテンシャルエネルギーでみれば落下しているのと正反対の状態です」

 佐藤氏は間違っています。

問題2

{最初に生まれたときは、宇宙空間のポテンシャルエネルギーは最大です。}

考察

「ポテンシャルエネルギー=mgh」が式です。ポテンシャルエネルギーには高さ「h」がいります。

最初の宇宙は1点だといっていますから「h」はありません。したがって、宇宙が最初に生まれたときは、宇宙のポテンシャルエネルギーは0です。(「ポテンシャルエネルギ=mg×0=0」)

 このことについて説明する必要はないと思いますが、一応説明しておきます。

ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)は、引力によって生まれます。たとえばガリレオの鉄球を考えてみます。マストの上から落とした鉄球は加速しながら落ちていきます。なぜ落ちるかというと、地球の引力と鉄球の引力が引き合っているからです。落下している最中は引力が作用し続けているので、引力のエネルギーが鉄球に働き続けて鉄球の速度が速くなり続けます。この鉄球の運動エネルギーを、位置エネルギーが運動エネルギーに変化したと考えます。この加速させているエネルギーは地球の引力ですから、「位置エネルギー=万有引力」と言えます。

鉄球が甲板に着いたとき落下は止まります。このとき位置エネルギーは0になったと考えます。鉄球が最初に持っていた位置エネルギーはどこに行ったかというと、位置エネルギーはすべて運動エネルギーに変化し、その運動エネルギーは甲板を歪めたり、鉄球や甲板の温度を上げたりすることに変化しています。運動エネルギーはなくなったので鉄球は止まります。

 膨張は物質同士の距離が離れることですからこの反対の現象です。甲板にある鉄球がマストの上に上がることです。そのためには人間がそれを背負ってマストを登ります。このときの重い鉄球を持ち上げる人間の運動エネルギーがポテンシャルエネルギーになります。このとき感じる重さは引力のために起こっています。引力の力を超えて持ち上げて行くので、形としては破った引力に見合うポテンシャルエネルギーが蓄積されていきます。高く昇るにつれて、打ち破った力が鉄球に蓄積されていきます。これがポテンシャルエネルギーです。(本当はエネルギーが蓄積されているわけではありませんが)

 接近していた物質が離れていくのですから、物質が膨張する現象もこれと同じことです。そのためには物質の持っている引力に打ち勝つエネルギーが必要です。打ち上げ花火は火薬の爆発力で広がります。超新星の爆発は、核融合の熱で膨張します。実際はかなり複雑な過程を経て超新星になるのですが、基本的には、核融合の熱が回りまわって爆発を起こしています。

(超新星:核融合の熱で膨れていた星が核融合の熱が無くなったとき膨れていた星の物質が急激に落ちて、中心で跳ね返って起こると言われています。これは熱による膨張(ポテンシャルエネルギーの増加)と、落下(ポテンシャルエネルギーの減少、運動エネルギーの増加)と、跳ね返りの膨張(運動エネルギーの減少と、ポテンシャルエネルギーの増加)です。)

 物質が膨張するには、マストの上に鉄球を持ち上げるのにエネルギーがいるように、何らかのエネルギーを加える必要があります。そのエネルギーがポテンシャルエネルギーに変化します。膨張すると、ポテンシャルエネルギーが増加します。減少はしません。

結論

{最初に生まれたときは、宇宙空間のポテンシャルエネルギーは最大で}はなく最低です。甲板上にある鉄球にポテンシャルエネルギーガないのと同じです。接触している物質同士にはポテンシャルエネルギーは存在しません。

 (注:甲板上の鉄球にもポテンシャルエネルギーはあります。それは地球中心に落ちていくエネルギーです。そして、太陽中心に落ちていくエネルギーなどです)

問題3

{落下するように膨張することでポテンシャルエネルギーは小さくなり、かわりに、まるで”無”から生まれたように真空のエネルギーがどんどん大きくなります。}

考察

 書いたように、現実の物質は、膨張するときはポテンシャルエネルギーは増大します。そのためには他からエネルギーをもらう必要があります。ポテンシャルエネルギーが小さくなりソrが運動エネルギーの増加になるのは落下のときです。落下は、物質どうしが接近する現象です。膨張とは正反対の現象です。

 {落下するように膨張すること}とはどのような現象なのでしょうか。これは地上の物質の幻想とは異なる現象ですから、その現象の理論による説明が必要です。ところがそれがありません。そんな現象は実際にあるのでしょうか。示してほしいものです。言葉の中だけの現象ではないのでしょうか。理論に必要だからといって、都合のいい現象を作り上げただけのような気がします。

この本でも宇宙を膨張させたのは、真空の相転移によって生まれた真空のエネルギーといっています。宇宙が膨張するときの物質のポテンシャルエネルギーの増大の元は真空の相転移のときに出た真空の潜熱のエネルギーのはずです。そのため宇宙が膨張することで真空のエネルギーが小さくなると書いてありました。ここでは膨張すると{真空のエネルギーがどんどん大きくなります。}とあります。理屈がまるっきり逆です。

また、真空のエネルギーは空間が膨張しても薄まらないから増えると書いてありました。ここではポテンシャルエネルギーが減るから、真空のエネルギーが増えると書いてあります。理屈が一貫していません。

 都合次第で理屈が変わるのは何を信じていいのか困りものです。

真空の相転移と、ポテンシャルエネルギーは異なる現象です。

 地球上の場合、ポテンシャルエネルギーは地球の引力で起こります。水が氷になる相転移の潜熱は、水が太陽や火からもらった熱エネルギーです。相転移で出る熱は、ポテンシャルエネルギーからではありません。

 水が貰った熱は、水を膨張させます。水どうしが引き合う力は弱すぎて地球の引力で現れませんが、水は水の持っている引力で引き寄せ合っていますから、膨張した水はポテンシャルエネルギーが増えています。熱エネルギーが水の引力に勝って膨張させてポテンシャルエネルギーを増やしたのです。相転移でない場合は、熱エネルギーはポテンシャルエネルギーに変わります。

 

問題4

この本に書いてある、最初にポテンシャルエネルギーを持った理由

{原点(“無”の状態の場所)にボールがあり、その隣に山があるとすると、通常ボールは山に阻まれて右側に行くことはできないため、永遠に原点でじっとしていると考えられます。量子論に従うとボールは揺らいでいます。}

{原点は“無”の状態ですからボールはエネルギーも持たない点のはずですが、量子論では点にも揺らぎがあるのです。}

{量子論には「トンネル効果」という現象があって、ボールがあたかも自分で山の中にトンネルを掘ったかのように、山の向こう側にポッと現れることがあるのです。・・そして、もしトンネル効果によっていったん山の右側に現れれば、ボールは斜面を急激に転げ落ちていきます。ビレンケンはこれと同じことを宇宙に当てはめたのです。}

考察

ボールの代わりに“無”の宇宙の原点に量子があって、「トンネル効果」で、山を通りぬけて、転がり落ちて、その量子がこの宇宙になったということのようです。転がり落ちるから、ポテンシャルエネルギーがインフレーションのエネルギーに変わったということなのでしょう。

(1) “無”と量子

 量子論では真空から量子が現れるということが言われています。真空にはエネルギーがあるからということです。ところがここでは“無”から量子が現れています。“無”にもエネルギーがあるようです。なんだってありなのが宇宙誕生の時のようです。誰も見てないからといって何でもありというのでは本当のことはわからないのではないでしょうか。

(2)“無”と山

 山があるということです。“無”の中に山があると言っています。この山は何からできているのでしょうか。大きさは?高さは?何もかも不明です。”無”の中に山があるわけはないでしょう。山は“無”ではありません。“有”です。

 このことから、“無”はただの“無”ではなく、量子を生んだり、山を含んだりしているということがわかります。ということは“無”は巨大な宇宙になれる量子と、その隣に宇宙全体を吹き飛ばす巨大なエネルギーを生み出す山を作ることができるということになります。とても、素晴らしい“無”です。これを“無”と言えるのでしょうか。

(3){ボールは斜面を急激に転げ落ちていきます。}

 ボールが山の斜面を転げ落ちていくのは地球の引力のためです。

 では、量子はどうでしょう。トンネル効果で山を越えたとします。ではどうやって転げ落ちるのでしょう。まだ宇宙はできたてで、山のトンネルを抜けたばかりで量子のままですから地球はありません。そのほかの物質もありません。だから、転がり落とす引力はありません。引力がなければ上も下もないのですから。宇宙ステーションの中の映像を見ると、人が浮いています。落ちないのです。

引力がなければ、山を越えても量子は転げ落ちることはできません。引力があるから落ちるのですから。

 もうひとつは、トンネル効果で出てきた量子はそれがすべての宇宙です。その外には宇宙はありません。この本では“無”しか書いてありません。山の向こうにも“無”しかないはずです。

{斜面を急激に転げ落ちていきます}と書いてあるけれど、トンネルを抜けたからといって、引っ張る力がない以上、量子は“無”の中の山を転げ落ちることはできないはずです。量子が、“無”の中の山を転げ落ちるためには、この世界のボールが転げ落ちるのとはまるで違った理論が必要です。この果てが見えないほど巨大な宇宙を作るエネルギーを生むのですから巨大な山と、巨大な引力が必要です。エベレストをボールが転がり落ちることくらいではとてもそんなエネルギーは出てきません。

結論

 ボールを山から転げ落とすのは誰でも出来ます。赤ん坊には無理か。しかし、“無”の中の山でボールを転げ落とすのは“無”の中の幽霊か神様にしかできないでしょう。

  “無”の中の山や、転がり落とす力を説明できないから、地球上の普通の現象を比喩として使ってごまかしています。“無”の中の山や、宇宙を転げ落とすすごい力について、そのものを説明する必要があります。比喩ではごまかしにしかなりません。