インフレーション宇宙目次
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インフレーション宇宙論への反論 7

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

問題

インフレーションは、宇宙ができて、2回目の相転移が起こったときに起こったということです。

考察

 1回目の相転移では重力ができたということです。重力は物質が持つ力ですからこのときにはすでに物質ができていたということでしょう。質量はどうなのでしょう。ヒッグス粒子から物質は質量をもらったということですが、それはいつのことなのでしょう。質量がないと重力も計算できないので、やはりこのときには質量もあったのでしょう。

その後、インフレーションが起こったということです。{生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです。}

この膨張は{10のマイナス35乗秒からマイナス34条秒というほんのわずかな時間で}{10の43乗倍}大きくなったということです。これは{1ナノメートルほどの宇宙でも、私たちの宇宙よりずっと大きくすることができるのです。}

 すごいことです。瞬きする前には「無」しかなかったところに、瞬きが終わった後には、この宇宙より大きな宇宙が広がっていたというのですから。

 とてもすごいことです。見た人がいたなら、宇宙は最初からそっくり出来上がっていたと思うことでしょう。

 このとき、宇宙のすべての物質も吹き飛ばされたようです。質量は「動かしにくさ」だということです。全宇宙の巨大な「動かしにくさ」をものともせずに{10のマイナス35乗秒からマイナス34条秒}で{10の43乗倍}の大きさに加速したのですからすごいことです。それだけではありません。全宇宙の巨大な重力にも簡単に打ち勝っています。{1ナノメートルほどの宇宙}に全宇宙の物質が詰め込まれていたのですからどれほど巨大な重力が集まっていたことでしょう。それを{10の43乗倍}の大きさに膨張させたのですからどれほどのエネルギーか量りしれません。

すごいことですね。地球や太陽を一瞬で100億光年先まで吹き飛ばすエネルギーの10の30乗倍ほどのエネルギーなのですから相転移のエネルギーとは計りしれない力を持っているようです。(え、10の30乗倍というのはどこから出てきたかって。勿論根拠なんかありません。{10の43乗倍}と同じです。これにも何の根拠も実証もないはずです。佐藤氏が自分の理屈に必要と思ったから書いたのと同じです。私の考えに必要だから書いたのです。書くのなんてほとんどエネルギーはいりませんから。ようするに口から、いや手から出まかせです)

 そのインフレーションのエネルギーが、{エネルギー的にいちばん低い基底状態}の真空から生まれたというのですから真空とはすごいですね。一番低くても、宇宙全体の物質を重力に逆らって100億光年以上先まで、10のマイナス34条秒で吹き飛ばすのですから。車だって、時速50キロまで加速するのに、頑張っても数秒はかかります。人工衛星を打ち上げるときも、秒速10キロに加速するまでに、数分かかります。宇宙に比べれば無いに等しい、車や人工衛星だって加速するにはそれなりに時間とかなりのエネルギーがいります。それなのに、全宇宙の物質を10のマイナス34乗秒で、光速の何兆倍もの速度に加速するのですからたいした代物です。これが{エネルギー的にいちばん低い基底状態}なのですから、それより大きなエネルギーがあったらどんなことになったことでしょう。宇宙はできたとたんに破たんしていたでしょうね。

ところで、E=mcとアインシュタインは言っています。ということは、真空より物質の方がはるかに大きなエネルギーを持っているということです。それなら、物質の相転移の方がはるかに大きなエネルギーを出しそうです。

ところがそうはならないんですね。水が氷になる相転移では微々たるエネルギーしか出さないんですよね。なぜでしょう。

水が氷になる相転移は実験でいくらでも確かめられますが、真空の相転移は実験できないですから確かめようがないですからね。

 「言うは易し行うは難し」です。ただ、計算なんてパソコンの中でどうにでもなります。しかし、実際の現象は人の思いどおりにはならないものです。

 

ここでさらに問題が二つ起こります。

 

ひとつはハッブル定数です。

 ビッグバン理論のハッブル定数では、138億年時間を遡ると、宇宙は1点になるということです。そこからハッブル定数で138億年かけてじょじょに膨張してきたという理論です。ところが、インフレーションではまたたきする間より短い時間で、この宇宙より大きな宇宙ができています。ハッブル定数で138億年遡ってもそこにはすでにこの宇宙より大きな宇宙ができています。ハッブルの法則との整合性がありません。

ハッブル定数は、銀河の赤方偏移から計算された銀河の後退速度から計算したものです。宇宙膨張の証拠は、その赤方偏移なのですから、それを基に計算したハッブル定数を否定することは、宇宙膨張を否定することです。

インフレーションで一瞬で広がった宇宙は、どのような観測事実から出てきたのでしょう。インフレーション宇宙の元は、ビッグバン宇宙の問題を解決するために考え出されたということです。それなのに、ビッグバン宇宙の大本である、ハブルの法則を否定しては、元も子もなくなるというものです。

 もうひとつは火の玉です。

 ビッグバン論では、宇宙が1点から始まったなら、高温高圧だったはずだから、火の玉になっていたはずだから火の玉から宇宙が始まったということでした。インフレーションでは、宇宙はすでにこの宇宙より大きくなってから、火の玉になったということです。1点だから高温高圧になったというビッグバン論とは異なる考えです。この宇宙より大きな宇宙全体が火の玉になったということになった原因が相転移の潜熱ということだそうです。高圧だから火の玉になったということと理論に大きな違いがあります。これもビッグバンの否定になります。

インフレーションの相転移の熱(潜熱)

 潜熱は、水が氷になるときに出る熱だという説明です。水が氷になるときに出る熱は水が持っていた熱です。その熱が、奪われることで水の温度が下がり、氷になります。なにもないところから出た熱ではありません。水の熱は、太陽や火などから貰った熱です。勝手に水が持っていた熱ではありません。太陽の熱も火の熱も,もともとは太陽の中の核融合の熱です。水の熱は勝手に湧いてきたのではありません。

 では、真空が相転移したときにでる潜熱はどこから出てきたのでしょう。真空のエネルギーということらしいです。しかし、この本では、真空は、{エネルギー的にいちばん低い基底状態}だということです。低いエネルギーの真空から宇宙全体を巨大な火の玉にするほどの熱が出てくるのでしょうか。出てきた熱は、宇宙最大のエネルギー状態ではないのでしょうか。この宇宙より大きな宇宙全体を火の玉にするのですから、火炎地獄の業火どころではないと思われます。とても{エネルギー的にいちばん低い基底状態、}の、それも元は小さな1点の真空から生まれることができるとは思えません。

 口で火の玉というのは簡単です。とっても小さなエネルギーで済みます。しかし、宇宙全体を火の玉にするにはとてつもないエネルギーがいります。これもやはり、「言うは易し行うは難し」の仲間です。勿論実験のしようがないし、遡って観察することもできないことです。

 

モノポール問題

 インフレーションで、できていたモノポールは宇宙のかなたに飛ばされたということです。地球からは観測できないほど遠くに飛ばされたから、この近辺にはモノポールが観測されないようです。ではその時、すでにあった物質もモノポールとともにはるかかなた、地球から観測できないほど遠くに飛ばされたのではないでしょうか。

 ところが、モノポールはないけれど、物質は普通に地球の周りにたくさんあります。

 どうしてなのでしょう。不思議なことです。

 理論に不都合なものは遠くに吹き飛ばし、理論に必要なものは手元に置いておくということなのでしょうか。