インフレーション宇宙目次
インフレーション宇宙論への反論5
インフレーション宇宙論への反論7

インフレーション宇宙論への反論 6

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

 

{「真空の相転移」とはなにか}

 

問題1

{普通、真空とはなにもない空っぽの状態と考えられています。その「真空」が、水が氷になるような相転移を起こすとはどういうことだろう。}

考察

 真空は量子論の考えでは、{粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです。}という考えが元になっているようです。

 この現象は観測されたのでしょうか。科学は仮説ができたら、それを証明しなければなりません。実証ができていないので、これは仮説のままです。

 特に、インフレーション理論では、この理論を応用して、真空の1点に現れた量子がトンネル効果の後、真空の相転移を起こし、この宇宙のすべてを創ったということす。インフレーション論では、小さな量子しかつくれない量子論とは違って、宇宙全体を一瞬で作り出すのですと述べています。真空はかなりの現象を起こすということです。

量子論では真空はあちこちで量子を対で生んですぐに対消滅しているといっています。広い宇宙が真空で満ちているのですからかなりの数真空から量子が生まれては消えているということです。すると、同じように、宇宙も広い宇宙のあちこちで生まれているということになります。量子と違って、宇宙は超巨大ですから、遠い宇宙で起こっても銀河の見える範囲で起こったなら必ず見えるはずです。インフレーションは、一周より短い時間でこの宇宙より巨大に膨張するということですから、今観測されている宇宙の範囲、地球から直径120億光年の範囲内で起これば、一瞬で地球を巻き込むはずです。光が100億年かかってインフレーションの光を届けるより先に爆発が届くということです。ところが観測されていません。量子の対生成・対消滅(これはあまりに小さいようですので、観測はできないでしょう。電子顕微鏡の範疇でしょうから)はたくさん起こっていても、インフレーションになることはめったにないということなのでしょうか。まあ、そうなのでしょう。そうでなかったら都合が悪いですからね。

問題2

{真空の空間とは、本当になにもない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。真空にも物理的な実態があるということになります。}

{とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。}

考察

真空は{エネルギー的にいちばん低い基底状態}ということです。真空に物質がある状態よりもはるかに低いエネルギーだということです。そのエネルギーでどうしてこの宇宙のすべての物質とエネルギーを作ることができたのでしょう。その秘密が、真空の相転移だということです。真空が相転移すると、{エネルギー的にいちばん低い基底状態}の「真空」でも宇宙のすべてを生むことができるエネルギーを生むことができるようです。

もし真空にそれができるなら、はるかにエネルギーが高い物質(アインシュタインによるとE=mc)が、満ちているこの宇宙が相転移してインフレーションが起こってもよさそうです。実際、この本には水の相転移が書かれてあります。水は、真空より比べ物にならないくらい、はるかにエネルギーが高い状態です。ところが水が氷に相転移するときにはたいしたエネルギーは出てきません。相転移しても最初に水が持っていた熱の一部が出てくるだけのようです。水の相転移ではインフレーションがなぜ起こらないのでしょう。

 まあ、いろいろな理由があるのでしょう。しかし、真空の相転移と、水の相転移は、似て非なる現象であるということはいえそうです。

 地球は真空の中を(一部様々な分子や塵もありますが、真空もあります)公転しています。宇宙を作るほどのエネルギーを蓄えた真空を掻き分けかき分け飛んでいて、危険はないのでしょうか。その刺激で、真空の一点が突然インフレーションを起こしたりしないのでしょうか。超新星爆発なんかもかなりのエネルギーが出ています。これが引き金になってインフレーションが起こらないのでしょうか。ガンマー線バーストはもっと巨大なエネルギーが出ているということです。それでも真空にはなにも起こりません。ブラックホールの強い重力で極端に歪んでいると言われている空間の真空では、その歪みで、インフレーションが誘発されたりしないのでしょうか。

 このことから、インフレーション宇宙でも、真空はかなり安定しているということがいえそうです。それとも、他の一切のエネルギーは真空に関与しない特殊な構造をしているのが真空ということなのでしょうか。

真空はなにもないのに、粒子を生んだり消したり、トンネル効果を起こしたり、相転移を起こしたり、宇宙を生んだりしているのですから、かなり特殊な構造をしていることは間違いないですが。

 まあ、真空は、インフレーション宇宙を生みだすために存在しているようなので、かなり特殊なのでしょう。あるいは、インフレーション理論のために存在している都合のいいなにかであるとも言えますが。