インフレーション宇宙目次
インフレーション宇宙論への反論4
インフレーション宇宙論への反論6

インフレーション宇宙論への反論 5

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

問題

{ビッグバン理論が解けない難問}

 ビッグバン論には解けないことがあるということです。

1 {宇宙が特異点から始まった}

{宇宙の始まりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。}

2 {宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、なにも答えていない。}

3 {現在の宇宙構造の起源を説明できない}

{宇宙の初期に、銀河や銀河団の種になるような濃淡をつくることが理論的に難しい}

4 {宇宙の構造は遠いところまですべて一様なのはなぜか}

 {遠く離れた銀河どうしは宇宙の始まりから現在まで一度も因果関係を持ったことはありません。・・・これまで全く関わりを持たず相談もできないような遠方の銀河どうしが、同じような構造をしているのはなぜなのか}・・「一様性問題」

5 平坦性問題

 膨張宇宙に関して平坦になるのは、神業以上に困難である。

 

考察

 これらを解決できるのがインフレーションであるということです。

 考え方としてはもっともです。理論の欠陥を補って、理論を補強するということです。しかし、違った考え方もあります。こんなに問題があるのは、理論に根本的な間違いがあるからなのではないだろうか、という考え方です。

 また、問題点はこのほかにもあります。これはインフレーションで解決できる問題だけに絞っている可能性があります。たとえば、特異点でなく、直径1光年に成長した宇宙でも、できたてのこの宇宙のすべての物質がその中にあるはずですから、重力崩壊を起こし確実にブラックホールになるはずですから、膨張はできないことになります。他にも1点から全宇宙が出現するというのですから、真空の1点に全宇宙を創るエネルギーがあるということです。これも、ちょっと荒唐無稽なことです。また、ハッブル定数では、宇宙が直径100万光年に成長していても、膨張は無きに等しいくらいです。230万光年離れた銀河系とアンドロメダ銀河が、宇宙膨張より、経った二つの銀河の重力が強くて接近しているのですから、直径100万光年くらいでは、その中に宇宙の全物質が詰まっているのですからとても膨張できるわけはありません。

 問題は山積しているのです。

 この場合、理論を横に置いておいて、1から考え直すという方法もあるのではないでしょうか。ビッグバン宇宙ではない形での宇宙の創生です。

 今では完全否定されているけれど、もう一度定状宇宙論を考えてみるのも一つの方法ではないでしょうか。ビッグバン宇宙論は正しい、定状宇宙論は否定された過去の遺物だ、それは天動説を蒸し返すようなものだ、というのももっともですけれど、考えることは必要なことではないでしょうか。天動説は、様々な観測から否定されたけれど、定状宇宙論は遠い銀河ほど赤方偏移が大きいという観測からだけです。これは解釈の違いが考えられますから、実証されたとはいえません。天動説の間違いが観測から実証されたのとは異なります。

例えば、最初に空間だけの宇宙があって、そこに、真空からランダムに量子が現れ、それが何千億年、あるいは何千兆年かけて宇宙全体に増えていきます。物質が宇宙に現れたら、引力で物資は引き合い集まっていきます。量子はランダムにできるのだから、むらがあるのは当然です。

 4についても、同じです。宇宙が数千兆年の時間をかけて少しずつ物質を蓄積させていったとしたら、光や引力は数千億光年の距離くらいかるく届きます。無限の過去から宇宙が続いているとしたら時間は無限にあるのですから。また、真空から物質が生まれる仕組みは宇宙のどこでも同じだから、もともと違いはそんなにないから、一様になるのはそんなに困難なことではないはずです。5の平坦性についても、万有引力と位置エネルギー(位置エネルギーそのものはありません。万有引力がすべて作り出しているエネルギーです。そして斥力です)の関係から、平坦になるのが当然になります。不安定になることが不可能になります。

 このように上の5つの問題は、定状宇宙論なら簡単に解決できることです。このような解決方法も考えられます。なにもビッグバンにこだわる必要はないはずです。ビッグバンが矛盾だらけだったら、それが間違いであると考えることも一つの解決方法です。

 佐藤氏の述べているように、インフレーションは一つの解決方法かもしれません。それを検討することも必要です。ただ、定状宇宙論がひとつの仮説であるように、インフレーション宇宙論も一つの仮説です。本当に正しいかどうかを検討することが必要です。

 特に、インフレーションは、ビッグバン同様、今の物理学では解けない現象ばかりでできているのですから、しっかり検討しなければならないはずです。

 もちろん定状宇宙論にも問題はあります。宇宙はどこまで広がっているのか、とか、真空から物質はどのようにして生まれたのかとか、分かっていないことはあります。この問題はインフレーション論でも、同じです。無限に大きいものとか無限に小さいものとか、時間とはとか、なにもないところから物質が生まれるとかいう、無とか無限がかかわっていることについては今の物理学では仮説しかできていません。この問題は、ビッグバンであろうが、インフレーションであろうが、定状宇宙論であろうが解けていない問題として共通です。

 次回から、インフレーションについて考えていきます。そして定状宇宙についても考えていきます。