インフレーション宇宙論への反論４

インフレーション宇宙論への反論　３

 

��田　敞

 

インフレーション宇宙論（佐藤勝彦。BLUEBACKS）を基に考えてみます。

（以下｛　｝内は上記本よりの引用）

 

 

問題１　火の玉宇宙と、マイクロ波宇宙背景放射

｛宇宙は火の球から始まった｝

「宇宙が火の玉であったならば、そのころにはものすごい光が満ちあふれていたはずだから、その「名残り」がいまでも見える（観測できる）のではないかと考えました。」

｛実際、その予言通りにマイクロ波の電波は１９６４年に発見されました｝

問題１｛宇宙は火の球から始まった｝

考察

ビッグバン論では、宇宙が始まったとき、今ある全宇宙の全物質と、ダークマターが１点にあったということです。

地球も、１センチ弱に縮めるとブラックホールになるということです。全宇宙の物質を直径１センチの中に入れると、完全にブラックホールになるはずです。火の玉にはなれません。

銀河系の大きさ、直径１０万光年でも、そこに、数千億の銀河とその６倍近くあるダークマターを詰め込むのだからブラックホールになるでしょう。

なぜ、宇宙の始まりのときは、ブラックホールにならずに火の玉だったのでしょう。現在の法則とはまるで異なる法則なのですから、宇宙開闢のときにはなぜブラックホールにならなかったのかの理論をしめさなければなりません。

自分たちの理論のために現在分かっている法則を無視しては本当のことはわからないでしょう。法則が間違っていると考えるなら、それを主張する必要があります。異なる法則があるなら、それを言わなければなりません。不都合だから無視するのでは科学ではありません。

問題２

｛宇宙が火の玉であったならば、そのころにはものすごい光が満ちあふれていたはずだから、その「名残り」がいまでも見える（観測できる）のではないかと考えました。｝

考察

ア　｛ものすごい光が満ちあふれていた｝ら過去の光でも見えるか、という問題です。

　例えば、４６億年前地球ができたころ地球はドロドロの火の玉だったということです。この光を望遠鏡で見ることができるでしょうか。できません。どんなに素晴らしい望遠鏡でも見ることはできません。光が弱いからでしょうか。もっと強い光なら見えるでしょうか。いいえ、どんなに強い光だったとしても見えません。自分の過去を見ることはできないからです。

　１光年先の銀河を見るということは、１年昔の銀河を見ていることだ。１０億光年先の銀河を見るということは１０億年過去の銀河を見ていることになる。同じ論理で、１３８億光年先の光を見るということは１３８億年過去の宇宙を見ることになる、といっています。この論理では、４６億光年遠くの宇宙を探せば地球ができたてで、火の玉になっているのを見ることができそうです。できたての太陽も見えそうです。光が弱すぎて今の技術では見ることができない、ということでしょう。

　遠すぎるなら、１日光年先の宇宙なら見ることができるでしょう。１日光年先の宇宙に１日前の地球は見えるでしょうか。見えません。光が弱いから。いえそうではありません。１日光年先に１日前の太陽が見えるでしょうか。見えません。なぜでしょう。望遠鏡の問題ではありません。そこに太陽も地球もないからです。１光年先の宇宙を探せばそこに１年過去の太陽が見えるでしょうか。見えません。そこに太陽はないからです。

　４光年先に地球に一番近い恒星があるということです。４光年先になると４年前の星が見えるということです。１日光年ではだめで、１光年でもだめなのに、４光年では４年過去の恒星が見えるのはどうしてでしょう。太陽でないからです。それは４年前にその星から出た光が地球に届いたときに、距離が４光年あったからです。

　太陽との距離は約８分光年しかありません。だから、８分過去の太陽しか見ることはできないのです。９分前の太陽も、５分過去の太陽も、現在の太陽も見ることはできません。その星も４年前の星を見ることはできても、５年前のその星も、１年前のその星も見ることはできません。

　もちろん、地球は現在の地球しか見られません。地球から出た光は一瞬で届いて通り過ぎていくからです。

　だから、できたての地球や太陽を見ることができるのは、４６億年前に地球から４６億光年離れた所にあった星からだけです。今その星に、できたての太陽や地球から出た光が到達しているでしょう。よほど素晴らしい望遠鏡でなければだめでしょうが。

遠い宇宙を見るということは過去の宇宙を見るということになるというのは本当です。しかし、遠い宇宙を見るとすべての過去が見えるということではありません。今ぴったり光が地球にとどいている星だけです。１億年過去の星を見ることができるのは，地球とその星がぴったり１億光年離れていることが必要なのです。１億年前にその星から出た光が、１億光年の距離を１億年かけて現在の地球に届く必要があるのです。

１億光年離れた宇宙のどこを探しても過去の地球が見えないのは、一億年前に地球から出た光は、すでにすべて地球を通り過ぎて１億光年先の宇宙を飛んでいるからです。だから過去の地球は地球からでは見えないのです。

　では、宇宙ができたころの火の玉を見ることができるか考えてみます。火の玉を見るためには、宇宙が火の玉であった時地球がそこから１３８億光年離れている必要があります。ところが、その時地球の前駆物質（宇宙の物質はすべて火の玉からできたことになっているので、地球の前駆物質も火の玉の中にあったはずです）は火の玉の中にあって、光を発していたはずです。その光は、宇宙の晴れ上がりで光が直進できるようになったらあっという間に地球を通りこして行ったでしょう。他の物質が出した光はどうでしょう。火の玉の直径が１光年なら、宇宙の晴れ上がりの１年後には火の玉の光はすべて地球を通りこして宇宙のかなたに飛んでいったはずです。直径１０億光年の火の玉としても、最長１０億光年後には火の玉の光は地球を通りこしていきます。可能性は、地球の前駆物質と４６億年前にそれからできた地球が光の速度を超える速度で火の球から離れたときです。それなら、１３８億年前の火の玉の光が地球を通り過ぎることができないので、速度を落とした現在の地球に届くことになります。しかし、４６億年前に地球ができたときから現在まで、地球はせいぜい秒速数１００キロです。秒速３０万kmで追いかけてくる光から逃げ切れる速度ではありません。

　すると、地球からは火の玉時代の光を見ることはできないということになります。

　これは自分の過去を見ることができないということとも一致します。火の玉の時代の光は地球も出していたのですから。その光を見るということは、１３８億年前の地球を見るということです。１日前の地球も、１年前の地球も見ることができないのに、１３８億年前になると見えるというのは矛盾があります。

　それなのにビッグバン宇宙では火の玉の光が今見えるということです。不思議な現象です。

イ　火の玉の大きさ

　背景放射（火の玉の光）は全方向からやってきているのが観測されています。人工衛星からも全天からの背景放射が撮影されています。

　背景放射は１３８億光年の距離を、１３８億年かけて地球にたどり着いたということがわかります。ということは、宇宙は、１３８億年前にすでに地球を中心として、半径１３８億光年の大きさの火の玉に広がっていたということです。地球は宇宙の中心ではないので、火の玉時代の宇宙（全体が火の玉）はそれよりはるかに大きく広がっていたということです。これはハッブル定数に反します。ハッブルの法則では、１３８億年前には宇宙は１点に縮まるという法則ですから矛盾があります。

ウ　光はいつまで見ることができるか

　花火の光を考えてみます。空に大きく花火の光が広がって、すぐ見えなくなってしまいます。いつまでも見えることはありません。それは、花火の光が通り過ぎていくからです。１分光年先で宇宙船に乗っている人は、１分後花火の光を見るでしょう。しかし、それもすぐ消えてしまいます。８分光年先（太陽の距離）の宇宙船では８分後花火の光を見るでしょう。しかし、それもすぐ消えてしまいます。見えるのは花火の継続時間だけです。これは１万光年先の宇宙船でも同じです。１万年後花火を見ても、見えているのは花火の継続時間が１０秒間なら、見えるのも１０秒間だけです。離れたからといって花火がいつまでも見え続けるということはありません。

では、宇宙背景放射はどうでしょう。何でも、火の玉は４０万年ほど続いたということですから、４０万年間は見え続けている可能性があるということになります。その４０万年間がちょうど今の地球に当たっているということなのでしょうか。すごい偶然です。ビッグバン論では宇宙は１３８億年の歴史があるということです。そのうちの４０万年がちょうど現在の地球に当たっているというのですから、すごい偶然です。しかし、やがて宇宙背景放射の光はすべて地球を通り過ぎていくことでしょう。１０秒間光っていた花火が宇宙のどこにいても１０秒間しか見えないように、４０万年間光り続けた火の玉は宇宙のどこにいても４０万年間しか見続けることができないはずですから。

エ　マイクロ波宇宙背景放射はどこから出ているか

　マイクロ波宇宙背景放射は実際に観測されている。これはどう説明するのか、ということになります。それは、ビッグバン論者が無視している考えにあるのです。

それは、マイクロ波宇宙背景放射の光は宇宙の塵の出す光であるという説です。この考えは、ビッグバン論が出る前に、宇宙を観測している科学者からだされていました。

物質はその温度に応じた光を出します。宇宙の塵の温度に応じて出ている光がマイクロ波なのです。これが宇宙の平均温度です。この光なら、上に書いたア、イ、ウの問題はなくなります。光は塵から出続けているから、地球に次々にやってきます。宇宙に塵がある限り地球からいつでも観測できます。また、塵は全宇宙に広がっていますから、全天から降り注いでいても問題はありません。

塵は、光を放出することで温度を下げて、光が出なくなる可能性があります。しかし、塵は、他からの光を受けて温度を上げます。塵は、互いに光でエネルギーをやり取りしているので、宇宙の平均温度になります。これがマイクロ波宇宙背景放射です。

　これなら、今証明されている物理学の法則で、矛盾なく、不思議な部分もなく説明がつきます。しかも単純明快です。シンプルイズビューティフルです。

（補足：背景放射が黒体放射であるから、ビッグバン名残の光であるという意見もあります。しかし、塵も黒体放射をします。塵でも矛盾はありません。）

 

結論

このマイクロ波背景放射の観測によって｛初期宇宙が火の玉だったという理論は、観測からも支持されたのです。｝とのべています。この観測をした人はノーベル賞をもらっています。しかし、上に書いた矛盾は払拭されていません。

｛地上で確かめられた物理学の法則だけを使って、はるか昔の宇宙の始まりについて予言したら、本当にその予言通りだった｝というけれど、上に書いたア、イ、ウのことは｛地上で確かめられた物理学の法則｝でどのように説明するのでしょう。矛盾だらけであるのは否めないのではないでしょうか。その点、背景放射は宇宙の塵が出す光だとしたら、それこそ｛地上で確かめられた物理学の法則｝だけで簡単に説明できます。それも高校程度の物理で十分です。このことを宇宙論者はなぜ無視しているのでしょう。

科学の方法論に、自分の理論の一番不利になることを真っ先に取り上げなくてはならない、というのがあります。不利になることを真っ先に無視しているのはどうしてでしょう。