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田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

問題

{つじつま合わせだった「宇宙論」}

{ニュートンの重力定数(万有引力定数)というものをご覧になったことがあると思います。これは「引き合う力」のみについて表したものです。アインシュタインの理論もまた「引力」の理論であり、「引き合う力」のみについて示したもので「反発し合う力」(斥力)は含まれていません。これでは、どうしても互いが引き付け合い、やがて、宇宙は収縮してしまうことになるのです。}

 

考察

ニュートンの万有引力には斥力に相当する力があります。それは位置エネルギーです。これは反発力ではありませんが、宇宙が潰れることを本質的に防いでいます。

 離れた所にある物質は引力で互いに加速しながら近づきます。これを位置エネルギーが、引力によって運動エネルギーに変化するといいます。衝突すると跳ね返ります。すると、引力で速度を落としながら元の場所に戻ります。このとき運動エネルギーが位置エネルギーに変わったと言います。この両方のエネルギーを作っているのは万有引力です。物質は、この位置エネルギーが他に移動しない限り元あった距離に戻ります。エネルギー不変則です。したがって宇宙は{互いが引き付け合い、やがて、宇宙は収縮してしまうことになるのです}ということにはならないのです。

 位置エネルギーは物質そのものから生じているのではなく、万有引力が働きかけることから生じている力ですから、位置エネルギーは万有引力と同じ大きさを持った斥力になるのです。

 しかし、実際の現象はそうはなっていないように見えます。手から落としたボールは、弾みながら、やがて地面に止まってしまいます。地球上で落とした物質はみんなそうなります。元の高さには戻りません。

理由は、衝突したとき、エネルギーの一部が熱エネルギーに変化して、物質の運動エネルギーが一部失われるからです。しかし、このときの熱エネルギーは物質を動かします。熱は分子の振動だからです。

 最初の物質が持っていた位置エネルギーは、運動エネルギーから熱エネルギーに変わって、他の物質を離れさせます。分子を温めることで、分子の振動を大きくしています。最初に持っていた、位置エネルギーと、ボールが停止したときの熱エネルギーの総量は同じです。ただ、一部が電磁波として放出されるので、その場のエネルギーは少なくなります。しかし、その電磁波もどこかで物質の熱を上げます。熱を上げる、すなわち分子の運動を大きくするということです。したがって、物質同士が離れている距離は、同じになります。

 宇宙全体で、くっつくものがあればそのエネルギーで他のものが離れます。全体としての位置は同じです。位置が変わるだけです。したがって、物質が万有引力によって生じている位置エネルギーを持っている限り宇宙が潰れることはありません。そして、星や銀河や星間雲は巨大な位置エネルギーを持っています。

 具体的に考えてみます。

 宇宙で、星ができるとき、まず離れ離れに漂っていた星間物質が引力で収縮します。収縮するということは、位置エネルギーが運動エネルギーに変わっていっているということです。星間物質は速度を上げながら衝突します。跳ね返りますが、運動エネルギーが熱エネルギーに変わる部分もあります。この衝突で星間物質は熱を持ちます。それを電磁波として放出します。位置エネルギー→運動エネルギー→熱エネルギー→電磁波というエネルギーの流れです。最初に持っていた位置エネルギーの一部が、電磁波として宇宙空間に放出されることで、星間物質は元の位置に戻れなくなり、収縮を続けます。落としたボールがやがて地面にとまるのと同じ原理です。

 最終段階になると、衝突が激しくなり、物質の温度が急激に上がります。そのために、ジェットが噴出します。これで位置エネルギーを宇宙空間に激しく放出します。位置エネルギーから変わった運動エネルギーを放出したので、物質は跳ね返ることができなくなり星ができます。このとき、ジェットはかなりの物質を遠くまで放出します。

 最初に持っていた位置エネルギーは、星として収縮した分、電磁波やジェットとして、宇宙空間に飛び出します。電磁波も、他の物質にエネルギーを与えて、動かします。

最初と最後のエネルギーはエネルギー不変則で同じですから、形が変わっただけで、他の物質を離れ離れにさせて変わらず残ります。

 最初に、物質が離れて存在した場合、万有引力によって位置エネルギーが生まれるので、最初の位置はいつまでも変わりません。ただ、エネルギーが移動するので、離れている物質が変わるだけです。

 引力があれば{どうしても互いが引き付け合い、やがて、宇宙は収縮してしまうことになるのです}ということにはなりません。アインシュタインは勘違いしています。離れた物質は位置エネルギーという引力から生まれたために引力と同じ力の斥力を持っているのです。

 しかし、これは、ビッグバン宇宙論では不可能です。なぜなら、ビッグバン宇宙論では物資は最初1点にすべてがあったからです。離れていないから、物質は位置エネルギーを持って生まれなかったのですから、もとに戻るエネルギーがなく、1点に収縮してしまいます。これは次のことによく現れています。

 

アインシュタインは、引力と斥力をつりあわせることで静止宇宙モデルを作ったということです。しかし、これでは{現実には、ほんの少しの「ゆらぎ」によってバランスが崩れても、加速度的な膨張をするか、あるいは急激な収縮をするという宇宙}になってしまうということです。今の宇宙があるのは奇跡に近い偶然だというのです。

 しかし、最初に、物質が離れて生まれた場合、位置エネルギーは、万有引力からできているので、引力と位置エネルギーによる斥力は必ず一致することになります。最初に、宇宙の中でバラバラに物質が生まれたとしたら,必ず安定した静止宇宙になることになります。これが成立するのは、最初から物質がバラバラで生まれたという定状宇宙の中だけです。

 インフレーションビッグバン宇宙では奇跡に近い偶然と、謎のエネルギー(相転移のエネルギー―と、ダークエネルギー)がなければ今の宇宙ができないのに対して、定状宇宙では、万有引力だけで今の安定した宇宙が必ずできます。

 いや、宇宙は膨張している、というのが観測事実だというでしょう。考えてみます。

膨張宇宙

 宇宙は膨張しているということです。

問題1 膨張の仕組み

 地球から見て、どの銀河も距離に比例して離れていっている。このことから、宇宙空間が膨張しているということだそうです。

 そこで、宇宙膨張の仕組みを考えてみます。

(1) 膨張エネルギー

 これはとてつもなく巨大なエネルギーです。直径10キロメートルほどの隕石が地球に衝突しても、恐竜が滅びるほどの影響があるといいます。微惑星が衝突して、地球ができたとき、その衝突のエネルギーで地球はドロドロになっていたと言います。位置エルギーです。銀河どうしを離れさせるのには、どれくらいのエネルギーがいるでしょう。天文学的数字です。その銀河が何千億もあるというのです。そのすべてを離れ離れにしているというのです。そのエネルギーはダークエネルギーという名です。すべて謎だけでできているエネルギーです。

 なぜ謎なのでしょう。そんな巨大なエネルギーがなぜ見つからないのでしょう。しかも宇宙の73%も占めているというのに、なぜ影も形もないのでしょう。

イ エネルギーの種類

 このエネルギーは空間を膨張させているということです。空間に作用するエネルギーはどのようなものなのでしょう。空間のどこにどのように作用して空間を膨張させているのでしょう。これももちろん不明です。

ウ 空間膨張の仕組み

 空間というのは今のところなにもありません。空間はエーテルでできていると言われていましたが、今は否定されています。ヒッグス場があるとか、電磁場があるとか、重力場があるとか言われていますが、それは空間の中にあるもので、空間そのものではありません。

たとえば、風船の中に空気があります。しかし、空気は風船の中の空間ではありません。空気を抜くと風船はしぼんでしまいます。空気とともに空間も出てきたから風船がしぼんだのではありません。空間は風船がしぼんだり膨らんだりすることとなんの関係もありません。元々空間はなにか実質のあるものでできていないからです。空間は物質になんの作用もしません。空間は何にもないから、物質になにもできないのです。

 ところが、ビッグバン宇宙論では、空間は銀河を動かします。巨大な銀河団をやすやすと動かします。空間は風船を膨らますことはできないけれど、銀河や銀河団は動かせるのです。それもやすやすと。不思議な能力を持っているのが、インフレーションビッグバン論の空間です。

 動かせないのは風船だけではありません。空間膨張は惑星の公転になんの影響もしません。月も動かせません。銀河系を公転している恒星の運動にも何一つ影響しません。大小マゼラン星雲にも、アンドロメダ銀河にもなんの影響もしていないそうです。動かせるのは、遠すぎて、観測が正確にはできない所にある銀河団と、138億年前の、やはり観測などできないできたての小さな宇宙を、一瞬で巨大な宇宙にしたというインフレーションだけです。

 観測が正確にできるところには現れないけれど、観測が不正確なところにはしっかり現れるという不思議な性質を持っているのが宇宙空間の膨張といえそうです。

 もちろん、インフレーションビッグバン論の人はちゃんとその理由も述べています。その理由は、空間膨張より、星の重力の力の方が強いから離れていっていないという説明です。そのとおりです、風船は空気の圧力で膨らみますが、空間の圧力では膨らみません。微動だにしません。風船さえ膨らませられないのですから、地球を動かすことなどできるわけはありません。

 また、銀河団の中の銀河どうしは離れていっていないというのが、ビッグバン論の定説のようです。

 地球と同じ銀河団に所属している銀河は、赤方偏移していても、離れていってはいません。実際に、銀河系と、アンドロメダ銀河は、そのそれぞれの伴銀河とともに接近しているのが観測されています。このような銀河団の中の銀河どうしは重力でしっかり結びついて離れないというのが定説です。

 太陽系の惑星も、銀河系の中の恒星も、この近辺の銀河も、動きを支配しているのは万有引力だけということです。空間膨張は何一つ影響していません。風船を膨らませるのに空間がなに一つ影響していないのと同じです。地球から、銀河系の属する銀河群まで、観測が正確にできるところからほぼ正確にできるところでは空間膨張の影響は何一つ見当たりません。

 ビッグバン論者の言うには、離れていっているのは、銀河団と銀河団の間ということだそうです。といっても、空間膨張によって離れていている現象が直接観測されたわけではありません。中には、衝突している銀河団も見つかっています。まあ、例外はあるものですから。

 このように、空間膨張はどこにでもあると言っているわりには、観測では、実際に離れていっているものは観測されていないということです。

 では何が宇宙膨張を示しているのでしょう。

 ハッブルの観測です。

 ハッブルは、距離に比例して、銀河の光が赤方偏移しているのを観測しました。このことから、銀河は、距離に比例して離れる速度が増す、という考えになったようです。この本でも、ハッブルの法則と言っていますが、ハッブルはこの原因を速度によるとするのは良く考えてからにしろと言っています。ところが、ルメートルや、ガモフがこれに飛びついて、宇宙は膨張していると唱えたのです。

 このように、宇宙膨張説の根拠は、銀河の光の赤方偏移です。赤方偏移を、速度によるドプラー効果だと考えたからです。すると、赤方偏移しているのだから、地球から離れていっているということになります。この本でもその説を採用しています。

 しかし、これにはビッグバン論者から異論も提出されています。赤方偏移の原因は、ドプラー効果ではなく、空間膨張によって光が引き伸ばされているためだというのです。

 膨張宇宙論者の中でも意見が分かれています。もうひとつ、他に、宇宙論者が取り合わない意見もあります。

 赤方偏移の原因はもうひとつあります。光が、物質に当たるとエネルギーが減ることです。エネルギーが減るということは光が赤方偏移するということです。

 宇宙にはガスや塵があります。銀河系の中でこのことが原因で赤化現象を起こしている星が多数観測されています。

 宇宙を見ても、遠い銀河ほど、間にある塵や水素分子が増えて、光が衝突する頻度が増えます。遠い銀河ほど光のエネルギーが減るということです。赤方偏移するということです。これだと、仕組みの分かっていない宇宙空間を膨張させなくて済みます。空間に作用して空間を膨張させる謎のエネルギーも必要ありません。今まで分かっている物理理論や現象だけで説明ができます。

ビッグバン論では、空間が膨張しなければなりません。空間を膨張させるエネルギーは不明です。空間が膨張する仕組みは不明です。ないもない空間が銀河団を押す仕組みも不明です。空間どうしが押し合って広がっていく仕組みも不明です。分かっていることは何一つなく、あるのは「不明」と「謎」だけです。

(よく、ぶどうパンが膨らむ仕組みを例に空間が膨張する仕組みを述べているのを見かけます。しかし、これは説明になりません。ひとつは、ぶどうパンは物質です。物質は押し合うことができます。しかし、空間はなにもありません。なにもないものが膨らむという仕組みは不明です。また、なにもないものが押し合う仕組みも不明です。普通の場合、なにもないものが押し合うことはできません。二つ目は大きさです。ぶどうパンは小さいから膨らみます。地球ほどのぶどうパンを膨らませるのは至難の業でしょう。これが太陽系の大きさになったらどうでしょう。膨らませるのは無理でしょう。太陽系など、宇宙の大きさに比べればケシ粒ほどにもなりません。宇宙全体をどうやって膨らませるのでしょう。地球の周りの空間が膨張します。月の周りの空間も膨張します。間で衝突します。空間はどうやって押し合うのでしょう。火星や金星や、様々なところで空間は膨張しています、それらがぶつかりあって押し合いへしあいしているはずです。どちらの方向にどのようにして膨張するのでしょう。ぶどうパンは小さいから、押し合いへしあいしながら外に向かって膨らみます。巨大な宇宙空間はどちらに動くのでしょう。地球の周りの空間の膨張は、どのようにして、10光年先の宇宙をあちらに押しやっているのでしょう。100万光年先の宇宙を押しやっているのでしょう。その伝播速度はどれくらいの速度なのでしょう。光速だとしても、1億光年先の宇宙には1億年先でなくては伝わりません。そして、1億光年先の宇宙で起こった空間膨張が1億年昔にこちらに向かって出発して今地球を押しやっているということになります。100億光年先の宇宙で100億年前に起こった空間の膨張が今地球を押しやっているということです。さまざまなところの空間膨張が今、次々と、あるいは、同時に、地球を押しやっています。そのすべての空間膨張を地球は受けなくてはなりません。大変です。

 また、北の空間の膨張と、南の空間の膨張が押し寄せてきて、地球を挟み撃ちにしています。それどころではありません。東も西も、あらゆる方向から空間膨張が押し寄せてきて、地球を全方向から押しています。地球は押しつぶされてしまいそうです。なんせ、空間膨張は巨大な銀河団も押し流してしまうほど強烈な力を持っているのですから大変です。でも地球では何事も起こっていません。不思議なことです。宇宙の果てでは、銀河団を光速を超える速度で押し流しているというのにです。

結論

このように、赤方偏移を、宇宙に漂う、水素や塵の分子に光が衝突するために起こっているという考えなら、空間は膨張しなくて済みます。すべてが、今分かっている物理理論で説明がつきます。しかし、赤方偏移を、ドプラー効果による、あるいは、空間膨張による赤方偏移とすると、ほぼすべての現象が、今分かっている物理理論では説明がつかない現象でできていることになります。

そもそも、空間とは何かがわかっていないのです。なにでできていて、どのような構造をしているのかが分かっていないのです。だから空間膨張は空間の何がどのようになるのかも分かっていません。空間膨張がどのように伝わって行くのかも分かっていません。勿論、空間が銀河団を押す仕組みも分かっていません。

ビッグバン論は{宇宙創生について、物理学の言葉で語ることのできる時代になっていると考えています}ということとは程遠い理論だと言えます。