インフレーション宇宙目次
インフレーション宇宙論への反論11
インフレーション宇宙論への反論13

インフレーション宇宙論への反論 12

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

ダークマターとダークエネルギーと通常の物質

問題

 {宇宙の主要な構成要素の正体はまったく不明である}

 構成要素

ダークエネルギー 73%

ダークマター   23%

通常の物質     4%

考察

 なぜ96%もあるのに、何一つ観測されないのでしょう。簡単です。そんなものはないからです。

 ビッグバン宇宙論に必要だから学者が頭の中で作ったエネルギーと、物質だからです。それらを宇宙に見つけようとしても無駄です。探すところを間違っているのです。彼らの机の上とか引き出しの中とか、パソコンの中を捜せばいくらでも出てくることでしょう。

 ようするに机上の空論です。

 では、現実に膨張している宇宙はどうする。ダークマターがなければ銀河も星もできないし、ダークエネルギーがなければ宇宙は膨張できない。だから、ダークマターとダークエネルギーは必ずある。

 そう言うことでしょう。これが今考えられている宇宙です。

 それは、膨張宇宙があるということを前提としているからです。宇宙が膨張していないなら、ダークマターもダークエネルギーもいりません。通常の物質と通常のエネルギーだけで宇宙はできます。じゃ、宇宙膨張の証拠がある。それはどうするのか、ということになります。

 膨張宇宙の証拠は、遠い銀河ほど光が赤方偏移しているというハッブルの観測だけです。そのほかのものは膨張宇宙だからという前提でできた理由です。

 では赤方偏移はどう説明するのかということです。先に書いたように、赤方偏移は、宇宙空間に散らばっている水素を中心とした、分子や原子に銀河の光が衝突したことで起こっているとしても説明できます。光が物質に衝突するとエネルギーを奪われるということは、アインシュタインが実験で証明しています。エネルギーの強い光を物質に当てると、物質の電子をはじきとばします。そのために光はエネルギーを奪われます。エネルギーが減る、すなわち赤方偏移です。

 なにもこんな実験でなくてもわかります。電灯の光は部屋の壁に当たって、赤方偏移して一瞬でマイクロ波になり電波になり飛び出していきます。このとき光のエネルギーをもらった部屋の壁は少し温度を上げます。

 これと同じ原理で、銀河の光は宇宙の水素分子や塵などに衝突して赤方偏移しているとも考えられます。

 

 ビッグバン宇宙の証拠だと言っている宇宙背景放射も同じです。書いたように、その光は宇宙に散らばる塵が出す光です。黒体放射だから、火の玉の名残だと言っている人もいますが、物質は温度に応じた黒体放射をします。黒体放射は、なにもビッグバンの火の玉だけの特権ではありません。

 宇宙膨張の証拠と言われているものは、このように、今まで分かっている物理学の範疇で説明可能です。それだと宇宙は膨張していないことになります。宇宙が膨張していないとなると、今までの物理学で説明できないものが96%もあるというへんてこりんな宇宙を持ち出す必要はありません。

 ついでに、ダークマターも宇宙にある水素分子や水素原子で説明できます。最近観測技術が進歩したために、銀河を取り巻く水素分子や、銀河団を覆っている中性水素が見つかりだしています。これらは、希薄ですが、体積は巨大です。十分ダークマターと言われている謎の重力源になります。銀河の回転や、銀河団の回転はこれで十分説明ができます。これなら、今まで分かっている物理学で説明できます。

 この銀河系も、見えている10倍ほどの直径のハローにうずもれているということが最近観測されています。巨大な楕円銀河の真ん中にある小さく薄っぺらな渦巻が銀河系です。これで銀河の回転はダークマターに頼らなくても十分説明ができます。

今までハローが見つからなかったのは、中性水素の出す光はとても観測しづらかったからです。ビッグバン論者はこれを無視しています。

 

といっても、科学者のほとんどは、インフレーションビッグバンを正しいといっています。 そこでダークマターとダークエネルギーについてもう少し考えてみます。

 

1 ダークマター

 ダークマターは銀河の回転から考えられたということです。銀河の回転から、{少なくとも、見えている星の10倍くらいの質量をもったダークマターが銀河を覆うように存在していると考えられ}たということです。

 近年、観測技術が発達して、今まで観測できなかった、稀薄な中性水素が観測されだしています。銀河系の周りも中性水素が取り巻いているのが観測されています、それはアンドロメダ銀河まで続いているということです。

 渦巻銀河は、すべて、稀薄な水素分子のハローで取り囲まれていると考えられます。稀薄でも、体積は非常に大きいので量は巨大です。

 銀河団も、全体が稀薄なガスに埋もれているのが観測されています。銀河系やアンドロメダ銀河が、その周りの数十の銀河とともに作る局部銀河団も、この稀薄なガスの中に埋もれているということです。

 これが渦巻銀河の外側の回転を速めている原因だと考えることができます。これなら今まで分かっている物理学で説明できないダークなものはいりません。通常の物質で説明できます。

 

{最近では、銀河と銀河の間にも多くのダークマターが存在していて、銀河団、あるいはグレートウォールのような大規模構造作っていることが分かってきました}

とあります。これは最近観測ができるようになってきた、水素原子や分子の稀薄なガスと同じ場所です。宇宙論者は、いまだに、銀河の回転には見える星の10倍ほどの見えない物質がいる、といっています。今まで見えなかった水素などの希薄なガスが見えてきているのにです。

 

 ではなぜ、水素分子ではだめなのでしょう。宇宙論者は、なぜ、必死で未知のダークマターを探しているのでしょう。通常の物質を無視しようとしているのでしょう。

 ダークマターを探すために、重力レンズを使って観測しているということです。重力だけしかないダークマターも、重力で光が曲がる原理を使えば、ダークマターの観測ができるというのです。その結果、{銀河や、銀河団の間に存在しているダークマターの姿が立体的に分かるようになってきたのです}と、銀河団の間にあるダークマターの図が発表されています。

 ただ、光は、物質で屈折します。だから、銀河間の宇宙空間に、銀河間ガスの集まりがあれば、これによっても光は曲がります(屈折)。なにも未知のダークマターの重力で曲がらなくても大丈夫です。銀河間の水素のかたまりは非常に希薄です。光で観測するのが非常に難しいということです。これがダークマターか、水素の集まりかは決定できないはずです。それを、ダークマターの重力が原因だとするのは、科学的ではありません。科学はあらゆる可能性を比較検討しなければなりません。それを最初から、自分たちの理論に都合のいい重力レンズだと決めつけて、他の可能性を排除しているのは科学の方法ではありません。

 ではなぜ、ダークマターは、普通にある物質ではなく、謎の物質だと考えているのでしょう。

 ダークマターをもっとも必要としているのはビッグバン論です。ビッグバン論では、宇宙は膨張しているために、見えている物質だけでは、集まって星や銀河を作ることができないということからです。もっと他に重力源がなければ困るのです。

 初期宇宙のダークマターのゆらぎによって、重力が偏り、通常の物質が集まりそれが星や銀河に発展するというのがビッグバンのシナリオです。だから、謎のダークマターがなければビッグバン論は成立しないのです。ダークマターはビッグバン論に必要だから生まれた理論上の物質なのです。

 そこに、見えている物質だけでは説明できない銀河の回転の観測が現れました。これは、ダークマターの証拠だと、飛び付いたのです。確かにそうかもしれません。しかし、そのころは、宇宙空間に浮かぶ中性水素を観測できなかったのです。中性水素は見えない物質だったのです。

 

問題

(1) ダークマターの星はどこにあるか

 ダークマターは重力だけは持っているということです。すると、重力で集まって、ダークマターの星を作ってもよさそうです。ところがそのような星は観測されていません。通常の物質の約6倍もあるのですから、通常の星の6倍のダークマターの星があってもおかしくはありません。それなのに、ダークマターの星は見つかっていません。見えない物質でできているのだから、あっても見えない、ということかもしれません。しかし、重力があるので見つかります。もし太陽系のどこかにダークマターの星があれば惑星の公転軌道がずれるはずです。ところが今のところそのようなずれは見つかっていません。太陽系にはダークマターの星はないということです。たまたまないのかも知れません。しかし、通常の6倍近い量があるというのですから、太陽系にも6個のダークマターの太陽があってもしかるべきです。ダークマターの重力の影響で、星が生まれたということですから、太陽もダークマターの影響を受けてできたはずですから、太陽系にも影響を与えたダークマターがあってもよさそうなのに影も形もありません。どうしてなのでしょう。

 宇宙では、たまに、見えない重力源が見つかっています。しかし、それは、銀河の中心のブラックホールです。未知の物質でできたダークマタ―ではありません。

 少なくとも近くの宇宙では、ダークマターの星は見つかっていません。銀河系の中にもダークマターの星は見つかっていません。

 また、星や銀河ができるとき、ダークマターと通常の物質が引き合ってできるということですから、ダークマターと通常の物質が混ざった星ができても不思議ではありません。その星も見つかっていません。

 ダークマターは、通常の物質や通常のエネルギーの6倍もあって、その重力で星や銀河で光輝く宇宙を作ったのに、完全な黒子に徹しているようです。とても奥ゆかしい存在です。

(2) ダークマター候補の一つがニュートラリーのという未知のなにかです。

 これを始めとしたダークマター候補は、重力はあるけれど、発見されないのだから、見えないという性質を持っているということです。これは、電磁波を出さないということです。

 星が生まれるときに、電磁波が重要な役目を果たします。物質が離れて浮かんでいると、万有引力で引き付け合って、やがて衝突します。衝突すると跳ね返ります。そして元の距離まで離れます。最初持っていた位置エネルギーが引力で接近するとき運動エネルギーに変換されます。衝突で跳ね返った物質の運動エネルギーは引力で速度を落とし位置エネルギーに変わります。元の距離まで離れたときに運動エネルギーは0になり、もとの位置エネルギーを持ちます。エネルギー不変則です。

 これでは物質はくっつきません。実際に星雲や星や銀河や銀河団があるのはこのほかのエネルギーの移動があるからです。

衝突で、運動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されます。その熱エネルギーは電磁波として放出されます。運動エネルギーが減ったので、物質は元の距離まで離れることができません。そのためこれが繰り返されると物質はくっつきます。ボールを落とすと、何度か跳ね返ってやがて地面にくっつくのはこの原理です。ボールが持っていた位置エネルギーは最終的には地面を温め熱エネルギーになります。

 だから、宇宙に漂っている分子が集まって、星間雲になり、星になることができるのです。

 ではダークマターを考えてみます。

 ダークマターは重力を持っています。したがって、ダークマターどうしは引き合って必ず衝突します。すると跳ね返ります。(ダークマターが跳ね返る何かを持っているとは限りませんが)すると、もとの距離まで離れます。電磁波を出さないということは衝突してもダークマターは熱を持たないということなのでしょう。電磁波を出さないので運動エネルギーを放出できないので位置エネルギーから変わった運動エネルギーを放出することができないからです。

 これは跳ね返るなにかがなくて、通り抜ける場合でも同じです。ダークマターどうしの互いの距離は最初にあった距離と変わりません。位置が変わるだけです。

 したがって、ダークマターは集まることができません。星になれないどころか、ダークマターの雲もできません。

 銀河の間に、ダークマターが集まって雲になっているのが重力レンズで見つかったと言っていますが、そのためには、ダークマターに電磁波以外の位置エネルギーの放出の仕組みが必要です。今のところその仕組みは謎です。宇宙論者得意のダークです。

 ところが、ビッグバン宇宙論ではダークマターは集合して重力のむらを作り、通常の物質を引きつけて、銀河や星を作っています。どのようにして集合できたのでしょう。

 ダークマターが水素分子なら、電磁波を出して集まり、星になれます。ダークマターが水素分子であるなら、実際の宇宙と矛盾は生じません。ただ、これはビッグバン宇宙ではできないことだといっています。水素分子だけの重力ではビッグバンの膨張に勝てないから困るということでダークマターを登場させたのだから、ダークマターが水素分子では困るのです。しかし、ビッグバンがなかったなら、水素だけで星や銀河ができることになります。宇宙創成のシステムそのものを1から考え直せばいいのです。なにも「光あれ」の「ビッグバン」にいつまでもこだわる必要はないのです。

 

2 ダークエネルギー

(1)ダークエネルギーと地球

 ダークエネルギーは宇宙を膨張させているエネルギーだそうです。今分かっているエネルギーと違って、空間を膨張させるという、今分かっている物理学では説明できない不思議なエネルギーです。

 発見されたのは、超新星の観測から、宇宙は今、「第2のインフレーション」とも呼べる加速膨張を起こしているのがわかったからと佐藤氏は述べています。この加速膨張を起こしているエネルギーがダークエネルギーだということです。それ以前から、ビッグバン論では、宇宙膨張のエネルギーとしてダークエネルギーは登場していました。

 どちらにしろ、全宇宙の銀河を加速させているのだから、すごいエネルギーです。

 でも、このエネルギーは太陽系を膨張させてはいません。それどころか、何一つ影響していないと言えるでしょう。銀河系も出来てから130億年の間膨張はしていないようです。銀河系とアンドロメダ銀河は接近しているということですから。230万光年離れた宇宙空間にも、ダークエネルギーの影響はありません。また、アンドロメダ銀河と、一緒に銀河系は、遠いグレートアトラクターの方向に引き寄せられているということです。ここにもダークエネルギーの影響はありません。

このように、地球に近いところではダークエネルギーは働いていないようです。これは、{第2のインフレーションによる宇宙の膨張は、100億年程度で倍になるといったごく穏やかなものです。}とあるように、微々たる影響であるからかもしれません。

 それにしても、太陽系ができてから46億年たっています。46%膨張しているはずです。しかし、その膨張が太陽系の惑星の軌道に影響したということはないようです。また銀河系が出来てから130億年ということです。すると銀河系は倍に膨らんで、渦巻きの直径が約20万光年になっていてもいいのですが、それはないようです。銀河系と、アンドロメダ銀河の間の空間も、倍に広がって460万光年になっているはずですが、その様子はありません。今のところ、太陽系のできる仕組みや、銀河のできる仕組みにダークエネルギーの影響は考慮されていないようです。

考慮しない理由は、観測と、実証を中心に理論を組み立てているからでしょう。観測できなくても、理論に必要だからといって、想像の物質やエネルギーを持ってきていないからです。

 これを見ると、ダークエネルギーは、宇宙空間は広げても、星や銀河は広げないようです。

 どうしてでしょう。

 ビッグバン論者は、重力が強いからといっているようですが、重力に比べ、ダークエネルギーは宇宙の73%も占めています。そのうえ重力は残りの4%しかない中のごく一部しかありません。大きさがまるで違います。それなのに、地球近辺数百万光年の宇宙では小さな重力の方が強烈なダークエネルギーに完全に勝っています。勝っているどころかダークエネルギーの影響は0です。100対0の、しかも完全試合です。

 ダークエネルギーの証拠として、2枚の金属板を1マイクロメートル以下に近づけると{距離が近づくほど金属板は強く引き合うことがわかりました。}という現象が書かれてあります。ダークエネルギーが実験で確かめられたということです。

ダークエネルギーは、遠い銀河団や銀河には現れて、マイクロメートルの単位の小さな距離にも現れるけれど、地球や太陽系や銀河系の周りには片鱗さえ見せないということのようです。このことから、ダークエネルギーは、観測が普通にできるところには現れなくて、遠すぎて観測が難しい所や、あまりに小さすぎて実験が難しいところにははっきり現れるようです。

 不思議なことです。

 なぜなのでしょう。次に考えてみます。

 

(2)ダークエネルギーの証拠

宇宙膨張の速度はTa型超新星の赤方偏移で測っています。その赤方偏移の大きさから、離れていく速度を決めています。

赤方偏移の原因は、速度によるドプラー効果だとこの本では述べています。しかし、科学者によっては、それは間違いで、本当は、空間が膨張しているために光が引き伸ばされるから起こっていると言っています。

どちらが本当なのでしょう。

速度を計っているのだから地球に対する後退速度が赤方偏移の原因なのでしょう。しかし、すべての銀河が地球から後退していっているとすると地球が宇宙の中心になってしまいます。天動説の再来になります。これでは困ります。それを解決したのが、空間膨張によって光が引き伸ばされるという解釈です。それで、赤方偏移の原因が、後退速度から、空間膨張に変わったのです。

しかし、そうは簡単にはいきません。後退速度によるドプラー効果は実証されているけれど、空間膨張によって光が引き伸ばされるという現象は、まだ理論もはっきりしていないし、実証もされていません。赤方偏移による空間膨張がその証拠というかもしれませんが、空間膨張が直接確認されたわけではないので仮説です。遠い銀河ほど赤方偏移が強いという観測からの類推でしかありません。銀河の光の赤方偏移は先に書いたように、宇宙に浮かぶ、水素を中心とした原子や分子に光が当たることで、光がエネルギーを失うことから起きる可能性があります。

今の宇宙論者はこのことを完全無視しています。なぜなら、取り上げたら、その現象を否定することはできないからです。そうなると、ビッグバン宇宙の根拠となった、光の赤方偏移は銀河の後退速度が原因であるとか、空間膨張が原因であるとかいうことが言えなくなるからです。すると、インフレーション宇宙論や、ビッグバン宇宙論が成立しなくなるからです。

 

(3)ダークエネルギーの問題点

問題1

{ダークエネルギーは空間自体が持つ真空のエネルギーですから、宇宙が膨張しても密度が薄まることはありません。・・宇宙の膨張に比例して、宇宙が10倍になればエネルギーの量も10倍に、100倍になれば100倍に増えていきます。}

考察

 便利なエネルギーですね。エネルギー不変則はここにはありません。なにもないところからどんどんエネルギーが湧きだしてくるというのです。無尽蔵に湧きだしてくるエネルギー相手では、エネルギー不変則に支配されている通常の世界はあっさり凌駕されてしまうのは当然です。

 真空は便利なものです。なにもないから調べようがありません。それをいいことに何でも真空に入れてしまいます。昔はエーテル。今は、ヒッグス場だの、真空のエネルギーだの、謎の斥力だの、膨張するだの、歪むだの、自分の理論に必要なら何でも入れてしまいます。真空は、ドラエモンのポケットのように、持っている人の望むものは何でも出してくれるようです。

 

問題2 偶然性問題

{なぜ、約60億年前というこの時期に、第2のインフレーションが始まったのか、という問題です。}

 第2のインフレーションが早く始まったら。宇宙には天体が形成されなかった。そしたら当然人間も生まれなかった。ありがたい偶然だということだそうです。

 また、第1のインフレーションの後に、真空のエネルギーの密度が10倍なら、第2のインフレーションの開始が早すぎて、やはり人類は生まれなかったということです。

 今の真空のエネルギーは人類が生まれるためにぴったりの値だということです。なぜこのようになったのかが不思議だそうです。

 この偶然性を説明するのは「人間原理」とう考え方だそうです。

 ワインバーグは{「われわれは知的生命体が生まれるべき宇宙に住んでいるからそういう値になるのだ」}と言っているということです。

 「マルチバース」という宇宙観が出てきました。宇宙には多数の宇宙があり、その中で、この宇宙が知的生命体が存在するのに都合のいい宇宙だった、という説です。

 今人類がいるのは地球です。いろいろな星が無数にある中で、この地球が生命を生み、生きていける環境にあったから人間がいるということに似ています。

 今観測されている宇宙は、宇宙空間の中に、星や銀河が散らばっているという宇宙です。マルチバース宇宙は、宇宙空間の中に、巨大な宇宙が散らばっているという考えです。銀河の代わりに宇宙が散らばっているのです。まあ、宇宙は無限だから、どんな大きなものもいくらでも入れることは可能かもしれません。まあ、これは観測しようがないから、実際の観測から肯定も否定もできないことです。でも似てはいます。まず宇宙空間があって、そこにこの宇宙を含もいろいろな子宇宙が浮かんでいる。その子宇宙は膨張したり収縮したり変動している。親宇宙は無限の広がりを持った定状空間です。この、子宇宙の代わりに銀河を置くと、定状宇宙論の宇宙になります。

 マルチバース宇宙は、無限の宇宙の中に、無から生まれて膨張している数千億の宇宙が浮かんでいる。インフレーション宇宙は、「無」の広がりの中に、膨張しているこの宇宙が浮かんでいる。定状宇宙論は、無限の空間の中に、何千億という銀河が浮かんでいる。

 一番外はどの宇宙論でも、無限に広がる定状空間になります。そこに浮かんでいるものが数千億の宇宙か、1個の宇宙か、数千億の銀河かの違いです。

結論

 このように、奇跡に近い偶然や、宇宙がいっぱいあるという理屈まででてくるというのは、真空のエネルギーがどこか間違っているのではということを考える必要があるということです。