インフレーション宇宙目次
インフレーション宇宙論への反論12

インフレーション宇宙論への反論 13

 

田 敞

 

インフレーション宇宙論(佐藤勝彦。BLUEBACKS)を基に考えてみます。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

 

インフレーション宇宙論とマルチバース宇宙論と定状宇宙論の比較

 

インフレーション宇宙論では、「無」の中にこの宇宙が小さくできて、一瞬より短い時間で急激に膨張して宇宙ができたということです。では最初にあった「無」はどこまで広がっていたでしょう。無限に広がる、「無」ということになるでしょう。無限に広がる膨張していない宇宙空間の中に、この宇宙が膨張したということになります。

マルチバース宇宙は、インフレーション宇宙ではわれわれの宇宙しか考えていなかったけれど、同じような宇宙が他にもあるという考えです。無限に広がる、「無」あるいは「真空」の宇宙空間の中に、子宇宙が点々と浮かんでいるということになりそうです。

 では定状宇宙はどうでしょう。

 今は否定されてしまったけれど、定状宇宙も無限の宇宙空間が広がっています。その中に銀河が無数に浮かんでいます。マルチバース理論の、浮かんでいる子宇宙の代わりに銀河が浮かんでいるということです。浮かんでいる物の大きさが極端に違うということと、子宇宙どうしはほとんど作用しないけれど、銀河は、引力や電磁波で密接に関連しあっているということが大きな違いです。

 定状宇宙は、はじめに無限の宇宙空間があります。膨張はしていません。そこに、量子論によるしくみで、量子が生まれます。広大な空間の様々なところに長い時間をかけて、ランダムに生まれます。量子は最初から4つの力を持っています。ランダムに生まれた量子は万有引力で引き合います。離れているので位置エネルギーがあります。引力で加速しながら衝突します。跳ね返って、もとの位置まで離れます。跳ね返る力は、すべて万有引力によっているので、引き寄せる力と跳ね返る力は同じです。引力と、斥力は同じ大きさということです。したがって、宇宙の物質は基本的に1点に収縮しません。

 衝突で加速した運動エネルギーの一部が熱エネルギーになり物質は元の位置には帰れません。しかし、この熱は物質の振動を大きくします。また電磁波となって放出されて、他の物質の熱を高めて振動を大きくします。宇宙全体見ると、どこかで距離が近づけば、どこかでその分離れるので、宇宙全体としては物質は縮まっていません。収縮した物体は熱を持ち、離れようとします。これがエントロピーの増大をもたらします。すべての物質は持っていた位置エネルギーのために、元の距離に離れようとするのです。太陽も、多くの物質を放出し続けています。地球は熱を失いすぎたので、今のところ、収縮したままです。だが長い年月かかれば、他の大きな星に落ちて、その星の超新星のときバラバラに吹き飛ぶかもしれません。ブラックホールだけが、二度とバラバラにならないと言われています。しかし、エントロピーの増大を考えると、その行く末は分かりません。ガンマー線バーストになって吹っ飛ぶかもしれません。ブラックホールについてはまだ謎が多く残っていますから。

 定状宇宙では、基本的に空間は定状ですし、物質も、全体では収縮も膨張もしません。個々の星や銀河は激動していても、全体としては平坦です。今の宇宙の観測に合います。

 

 そこでインフレーション宇宙(マルチバース宇宙は、子宇宙の数が違うだけでほぼ同じと考えます)と、定状宇宙を比較してみます。

 

項目

インフレーション宇宙

定状宇宙

宇宙の状態

最初に「無」の宇宙があり、その中にこの宇宙が点として生まれ、光速の数兆倍の数兆倍の数兆倍以上の速度で「無」の宇宙の中に膨張し、一瞬より短い後に通常の膨張速度に減速した。その後ビッグバンが起こり、真空のエネルギーが働いてハッブル定数で膨張しながら、星や銀河を作った。このとき、空間膨張のため、通常の物質だけでは銀河ができないので、ダークマターの引力が働いた。

最初に無限の空間があった。

 そこに、量子が、長い時間をかけてランダムに生まれた。その量子が長い時間をかけて引力で集まり、星や銀河ができ、現在に至っている。

宇宙の始まり

「無」から量子が生まれ、トンネル効果で山を抜けてこの宇宙の元になり、山をころがり落ちてインフレーションのエネルギーを得て、宇宙が膨張した。

 不明な点は山はどこから現れたのか、無の中に浮いていたのか、山の斜面を宇宙が転がり落ちる重力は何が生みだしていたのかが不明である。

無から量子が生まれるというのは仮説である。

「真空」の中から、量子が生まれた。量子は引力でくっつき、長い時間をかけて、原子になった。

 真空から量子が生まれるというのは仮説である。

インフレーション

宇宙の全物質が1点でできるとブラックホールになる。それを10−45〜10−44秒で137億光年より大きく膨張させた。

 ブラックホールになる重力を振り切ったばかりでなくこの速度で膨張させるエネルギーが「無」から湧いてきた。「無」の1点はこの宇宙の通常の物質とエネルギーの1043倍以上の巨大なエネルギーを持っているということになる。

このエネルギーは空間を膨張させるエネルギーだから、謎のエネルギーである。

インフレーションはない。定状宇宙。膨張のエネルギーはなく、通常の物質と、通常のエネルギーしかない。

 空間は膨張しないから、謎のエネルギーはない。

ビッグバン

インフレーション後宇宙全体が火の玉になり、その後膨張した。

 インフレーションでこの宇宙より大きくなっていた宇宙全体が火の玉になった。

宇宙が火の玉になったことはない。

銀河の光の赤方偏移

 

宇宙が膨張していることの直接の証拠と言われている。

原因

・銀河が遠ざかっているためのドプラー効果、

・空間が膨張しているために光が引き伸ばされている。

両方の意見がある。この本では。ドプラー効果の説を取っている。

銀河の光が、宇宙空間の分子や原子に衝突するために光のエネルギーが奪われるために起こっている。

物質のでき方

トンネル効果により、一瞬より短い時間で巨大なエネルギーが生まれて、宇宙を1000億光年ほどに膨張させた。その後、火の玉になり、宇宙の膨張はハッブル定数の速度に落ちたが現在まで続いている。

 インフレーションの時代に小さな宇宙の中で10−44〜45秒の間ですべての物質とエネルギーとダークマターが生まれたようだ。

 真空から、量子が生まれては消えた、何兆年もかけて、ランダムに量子が生まれては消えした中で、少しづつ量子が残った。宇宙のいたるところに量子が浮かんだ。

 それがやがて引力によって集まり出した。

斥力

インフレーションを起こしたエネルギーと、真空のエネルギーがある。真空のエネルギーはインフレーションを起こしたエネルギーの名残とか、あるいは、空間が膨張すると自然に湧いてくるとか書いてあるが両方なのだろう。定かでない。

真空のエネルギーは、真空が持っているエネルギーで、空間を膨張させる力がある。ダークエネルギーともいわれ、謎のエネルギーである。

 宇宙は最初1点から始まったから、謎のエネギーがなければ、重力のために潰れてしまう。

 位置エネルギー。

量子として生まれた物質は離れて生まれたため、生まれたとたんに、引力のために位置エネルギーを持つことになる。これは、引力によって生まれるエネルギーだから、引力による収縮と、釣り合っているために、宇宙の物質は常に元の距離にバラバラになることになる。物質のエントロピーが増大するのはこのためである。

宇宙の平衡

宇宙が平衡状態になるのは奇跡的なことである。

必ずなる。

 物質がバラバラで生まれたから、引力による位置エネルギーが生まれて、引き寄せる力と、同じ力で、位置エネルギー(斥力)が生まれるから、必ず、平衡状態になる。

 「位置エネルギー(斥力)=万有引力」になる。

宇宙膨張

斥力が必要

 宇宙の73%もの巨大な斥力が必要。これはダークエネルギーという名で、謎だけでできているエネルギーである。

宇宙は定状だから、宇宙を膨張させるエネルギーは必要ない。

ダークマター

物質が集まって銀河や星を作るためには、宇宙膨張に勝つために宇宙の23%のダークマターがいる

通常の物質の引力だけで銀河や星ができる。

 

宇宙の構成

ダークエネルギー73%

ダークマター23%

観測されている物質とエネルギー4%

 宇宙の96%が謎のエネルギーと物質でできている

通常の物質と、エネルギーで100%

 謎のエネルギーと謎の物質はない。

 

 

結論

 このように、インフレーション宇宙では、一瞬より短い時間で宇宙がこの宇宙より大きくなります。その巨大なエネルギーを真空が生みだします。「無」の1点からこの宇宙の全物質とエネルギーとその24倍のダークなエネルギーと物質を生みだします。最終的に、現在の宇宙は96%もの謎の何かがこの宇宙にあるということになります。そのほかに、インフレーションのエネルギーなどを考慮すると、宇宙の99,99%が謎できている宇宙になってしまいます。

定状宇宙では、最初に物質ができる仕組みが検証されていない量子論にたよっている以外は、今証明されている物理学で説明できます。

 

 インフレーション宇宙論は、頭とパソコンの中にある宇宙と言えそうです。地球や、太陽系や、銀河系の周辺で何一つ観測できないことが96%も占めている宇宙ではない宇宙理論を考えるべき時が来ているのではないでしょうか。