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ビッグバンの難問を解決する方法


著者 田 敞

 

(以下{ }内は佐藤氏の「インフレーション宇宙論」からの引用)

 

 佐藤氏は、ビッグバンの難問を解決するために、インフレーションという超膨張するという宇宙を考えました。これだと、ビッグバンの難問を解決することができるということです。

 ところがそのためのインフレーションは、今まで書いてきたようにビッグバン以上に難問を持っています。

 例えば、インフレーションの根幹、指数関数的膨張、倍々ゲームです。書いたように、倍々に膨張すると、大変なことが起こります。1000億光年で膨張が止まったからいいようなもので、後、10のマイナス45乗秒膨張が長引けば、1000億光年の宇宙が2000億光年の宇宙に膨張してしまいます。その後また10の45乗秒長引けば、今度は、4000億光年の宇宙に膨張しなければならなくなります。10の45乗秒で2000億光年膨張するのです。これはちょっとやそっとでは解けない難問です。1000億光年で止まったとしても、それでも最後の10の45乗秒で、500億光年から1000億光年に膨張しています。10のマイナス45乗秒で、500億光年も膨張しているのです。そのためには、全宇宙を光速の45乗倍のさらに500億倍(これは適当な数です。1年で500億光年の膨張でも、光速の500億倍の速度です。それを0,000・・と0が45個も並ぶ秒ですから、たんなる数字遊びです)の速度に加速しなければならないのです。まあ、ちょっと不可能な速度ですよね。

 他にも、これまで書いてきたいろいろな問題が起きます。

 それに対して、簡単に問題が解決する考え方があります。

 宇宙は膨張していない、とすればいいのです。ビッグバンはなかった、という考え方です。ビッグバンがあったのは定説だ。それを否定するのは問題外だ、何も知らないから言えるのだということでしょう。そうでしょうか。

 ビッグバンの証拠は銀河の赤方偏移と、宇宙背景放射です。この二つが宇宙膨張の確固たる証拠だというのですが、そうでしょうか。

 これまでに書いたように、銀河の赤方偏移は、宇宙の粒子に光が衝突して起こっている、宇宙背景放射は宇宙の塵の出す光だ、ということでも説明ができます。宇宙にはどこにも、粒子が漂ってるのが観測されています。銀河の中にも、銀河間にも、銀河団の中や外にもです。また、物質に衝突することによる光の赤方偏移や、物質が温度に応じて黒体放射することも観測されています。これらは、日常的に普通の現象としていろいろな場面で地球上で見られる現象です。ビッグバン論者はこれ知らないわけはありません。科学者なのですから。もし知らないなら、それこそ、ないも知らないからビッグバンがあるといえるのだ、ということになります。このことをなぜ無視しているのでしょう。事実だから否定できないからです。

 ビッグバン論者の中では、赤方偏移の原因は、光のドプラー効果という考えと、空間が膨張していることで光が引き伸ばされているという二通りの考えがあります。ビッグバン論者の中でも統一されていません。問題に応じて都合のいい方を持ちだせるからなのでしょう。

空間膨張で光が引き伸ばされているとすると、問題が生じます。宇宙空間が光を引き延ばすシステムが不明だということが一つです。もうひとつは、ビッグバン論では宇宙空間は3次元で膨張していることになります。ところが光は前後の1次元でしか引き伸ばされていません。他の2次元はどうして引き延ばされないのかということの説明がありません。たとえば、光が上下に引き伸ばされると光の振幅が大きくなります。これは光の強さが増すということになります。遠い銀河の光ほど明るくなるという現実に反する結果になります。横や斜めに引き伸ばされるとどうなるのでしょう。太い光になってしまいます。これでは困ります。そこで、進行方向にだけ引き伸ばしたのでしょう。これではビッグバン論者の都合のいいことだけが起こっていることになります。

ドプラー効果も問題があります。ビッグバン宇宙は空間膨張だから、どこも均等に膨張しているということです。ドプラー効果では銀河は地球を中心にして遠ざかっていきます。地球が宇宙の中心になってしまいます。また、光が膨張する宇宙空間の中を何億光年も通かしているのに引き伸ばされていないということです。空間膨張によって光は引き延ばされるというビッグバン論者の考えを否定してしまうことです。

宇宙背景放射も、137億年前の光がなぜ全方向から今地球に降り注ぎ続けているのかという問題があります。何の問題もないということでしょうが、そうでしょうか。

 上に書いたように、これらの二つは、宇宙に漂う粒子が原因であるとすると、何も問題は出てきません。すると宇宙は膨張していないことになります。ビッグバンも無くなります。定状宇宙です。これは太陽系や銀河系や、アンドロメダまでの宇宙空間は銀河系ができてから、100億年の間ビッグバン論では膨張しているはずなのに、その影響が何一つ観測されないこともあっさり説明できます。銀河系の空間は膨張していない、ということです。

 そこで、宇宙は膨張していないとして宇宙を考えてみます。宇宙膨張は決まっているということでしょうが、ちょっとだけ違うことも考えるのもいいことだと思います。科学はいろいろな観点から考え直すということも重要なことですから。もちろん疑問の目で見ることは必要ですから、以下のこと、私の考えも疑問の目で見ることを望みます。(言わなくても疑問の目で見ることでしょう。実際は見る前から否定してみないでしょうけれど)私も、インフレーション論を疑問の目で見ました。科学の方法として、何事も疑って見よ、というのは重要な一つですから。定説を疑っても時間の無駄だという考えもあります。しかし、定説を疑ったからこそ、今の科学に至ったことも大いにあるというのも科学の歴史です。今の定説は確定している、ということでしょう。しかし昔だって、その当事者は、定説は確定しているといっていたのです。事情は今も昔も同じです。疑ったっていいのです。いえ、今も、疑うべきなのです。

 

参考(高田式定状宇宙論とインフレーション宇宙論との比較)

 

田式定状宇宙論

最初に、無の宇宙空間があった(これはインフレーション宇宙論でも、ビッグバン宇宙論でも同じである)。そこに、ランダムに粒子対が生まれては消えを繰り返していた。生まれた粒子対の10億分の1くらいの割合で、粒子が残り、果てしない時間の経過の中で次第に粒子が宇宙に満ちていった。(量子論ではそのようなのだが、現実には真空から量子対が生まれては消えている現象は観測されていないので、実証はされていない。インフレーション宇宙論やビッグバン宇宙論では、一瞬で今宇宙にある物質の20億倍の粒子が生まれて消えたはずなのだが、そのことについては、曖昧である)

 

 粒子は、4つの力を持って生まれた。粒子は、宇宙空間で離れて生まれたために、粒子の持つ引力によって生まれたとたんに位置エネルギーを持つことになった。位置エネルギーは物質の斥力になった。粒子は、やがて引力で引き合い、粒子は分子になりやがてガス雲になり、銀河へと収縮していった。この収縮によって放出された位置エネルギーは他の物質を動かし、他の物質の位置エネルギーや運動エネルギーや熱エネルギーになって消滅せずに残った。

位置エネルギーは引力から生まれたので、引力と等価のエネルギーを持っている。斥力と引力が等価になり、宇宙はつぶれも、膨張もしない現在の平坦な宇宙ができた。(引力と斥力が等価であるから平坦な宇宙しかできない。ビッグバン宇宙が平坦になるには奇跡しかないという問題はこれで解決する)

1 最初からあった宇宙空間は膨張も収縮もしない。

 定状宇宙の空間は膨張も収縮もしない。これは、インフレーション宇宙論やビッグバン宇宙論でも同じである。それらが生まれた場所の空間は膨張も収縮もしないで、定状である。これは最初からある無限の膨張しない宇宙空間に、粒子が直接生まれたか、ビッグバン宇宙が生まれて膨張し中に粒子ができたか、インフレーショ宇宙が生まれて膨張し中にビッグバン宇宙が生まれて、その中に粒子ができたか、の違いである。1重構造か、2重構造か、3重構造かの違いであるが、3つとも、最初からある空間は膨張しない定状宇宙である。その宇宙空間の中で、物質が収散を繰り返しているのが高田式定状宇宙で、新たな宇宙空間ができて膨張しているのがインフレーション宇宙でありビッグバン宇宙である。また、マルチバース宇宙は、いろいろな宇宙が最初からある膨張しない無限の宇宙空間に新たな宇宙空間が複数できて浮かんでいるというのだから、定状宇宙の銀河や星が点々と浮かんでいる代わりに、巨大な宇宙が点々と浮かんでいるということである。やはり、こちらも、最初にある容れ物としての空間は定状であるのは同じである。

2 斥力

 離れた物質は、その物質の持つ引力によって位置エネルギーを持つ。したがって、位置エネルギーは引力と同じ大きさの反対の力の斥力になる。

高田式定状宇宙では、宇宙空間にランダムに物質が生まれるから、引力と位置エネルギーを自然に持つことになる。位置エネルギーは引力から生まれるので、引力と同じ値を持つ斥力になる。引力と斥力が同じなのだから、宇宙の物質は全体としては収縮も膨張もしない平坦な宇宙になる。(引力も位置エネルギーも空間とは作用しない)

 (例)

 離れた二つの物質は引力で引き合い、加速しながら接近し、衝突する。そして、跳ね返り、引力による減速を受けながら離れていく。位置エネルギーの他への移動がなければ、元の距離に戻って停止する。そして、また引力で接近し衝突して跳ね返る。これを繰り返す。したがって物質は離れもせず、くっつきもしない。常に元の位置を保っていることになるので、平衡宇宙になる。

これは、ボールを離すと、地球の引力とボールの引力で引き合い、加速して落下し、減速しながら跳ね上がるのと同じ原理である。実際は、ボールは元の高さに戻らない。ボールが元の高さに戻らないのは、ボールの持つ位置エネルギーが、空気や、地面との衝突で奪われるからである。

 もし失われるエネルギーがなければ、ボールも元の高さに戻る。エネルギー不変則である。

 この奪われたエネルギーは、空気や地面を動かす。また熱になり分子を振動させる。ボールの持っていた位置エネルギーは他の物質を動かし、その物質の運動エネルギーや位置エネルギーになったり熱エネルギーになったりする。熱は、物質の振動であるから、熱が大きくなると、分子同士の距離が大きくなる。離れることは、位置エネルギーが増えることであるから、ボールの持っていた位置エネルギーはすべて他の物質の位置エネルギーに移動したことになる。位置エネルギーは失われないということである。

(エントロピー:エントロピーが増大するのはこのためである。最初に宇宙空間にランダムに生まれた物質は、位置エネルギーのために元の距離に戻ろうとする。位置エネルギーは物質から物質へ移動しても、全体としての位置エネルギーは変わらない。したがって、その位置エネルギーの斥力で物質は常に離れようとする。粒子が生まれたときのバラバラの状態に戻ろうとするのがエントロピーの増大である。1点から始まったビッグバンでは、元に戻ると1点になる。エントロピーは増大しない。代わりに、真空のエネルギーという斥力があるということだが、真空のエネルギーは地球の物質に作用していないし、物質の分子に作用していないので、エントロピーとは関係ない)

3 星や銀河が生まれる仕組み

 宇宙空間にランダムに生まれた粒子は引力で引き合う。衝突すると、跳ね返るが、その時、粒子は振動し熱が生まれる。これは位置エネルギーが熱エネルギーに変化したものだ。熱は電磁波として宇宙空間に飛び去る。位置エネルギーがその分失われる。粒子は元の位置まで跳ね返れないので接近する。

 この繰り返しにより、粒子は集まり、分子雲になる。分子雲は引力で収縮し衝突することで熱を生み、電磁波として位置エネルギーを放出しながら収縮して星になる。このとき飛び出した電磁波は、他の星間雲を飛び散らせる。収縮して星になった星間雲の位置エネルギーの減少は、他の星間雲の位置エネルギーや運動エネルギーや熱エネルギーの増加になる。

 これは暗黒星雲の中で星ができる仕組みに見られる。できた星からの紫外線などの電磁波や、ジェットなどで、星雲が吹き飛ばされていることが観測されている。

 「引力の大きさ=位置エネルギー(斥力)の大きさ」であるから。宇宙の物質は、一部が星や銀河になり、収縮し、位置エネルギーを失ったら、その分は他の物質を動かし、距離を大きくするから、他の物質の位置エネルギーや運動エネルギーや、熱エネルギーを大きくする。したがって、宇宙全体の物質を考えると収縮も膨張もしないことになる。定状宇宙ができる。

4 ビッグバン宇宙論から生じる問題解決と定状宇宙

 ビッグバン宇宙から生じる問題は、インフレーションでなくても定状宇宙でも解決する。それもあっさりと解決する。

(1)特異点問題

ビッグバンの膨張宇宙を逆にたどると宇宙は小さくなる。{宇宙の始まりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。}

{特異点とは、物理学の法則が破たんする「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです}{つまり、宇宙の始まりは物理学が破たんした点だったと考えざるを得ないのです}

○ 高田式定状宇宙では、粒子が宇宙空間の中にバラバラに生まれるので、特異点は生じない。

(2){ビッグバン宇宙論では宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、なにも答えていないことです}

○ 定状宇宙では火の玉にはならない。冷たい粒子がバラバラに生まれるだけ。

 火の玉にする謎の巨大なエネルギーは必要ない。その巨大なエネルギーがなにもない真空から生まれる必要もない。ましてインフレーションの真空のエネルギーのように、10のマイナス44乗秒で、ほとんどないに等しいくらい小さな宇宙を半径1000億光年、体積で1000億光年の3乗倍にまで巨大(巨大では言い表せないくらい大きい)な宇宙にする謎のエネルギーも必要ない。勿論、宇宙空間を膨張させるシステムも、巨大な宇宙を火の玉にするシステムも必要ない、これらはすべて今分かっている物理学では説明できていないシステムである。

 インフレーション宇宙もできたときは火の玉から出発している。ビッグバンと同じである。それが膨張で温度が下がるのも同じである。違いは、インフレーションはビッグバンと違い最後にもう一度火の玉になっていることである。

(3) {ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できない}

○ 定状宇宙なら、粒子がランダムに生まれ、引力で引き付けあい、位置エネルギーで離れるのだから、時間をかければ今の宇宙ができる。ビッグバン理論では宇宙は137億年しかたっていないが、定状宇宙ではもっとはるかに長い時間が経過したと考えられる。今の宇宙の構造を作るには十分な時間があっただろう。だからできたのだ。

また、インフレーションビッグバン論では宇宙構造の原因がダークマターであると云っている。ダークマターが通常の物質(銀河など)の5倍以上あるということだが、いまだに、太陽系でも、銀河系でもダークマターの直接の観測はできていない。謎しかない物質である。謎しかない未知の物質が通常の物質の5倍もなければ成り立たない宇宙論である。定状宇宙では通常の物質だけで宇宙の構造ができる。謎の物質は必要ない。

(4) 一様性

{宇宙の構造は遠いところまですべて一様なのはなぜか}{これまで全く関わりを持たず相談もできないような遠方の領域どうしが、同じような構造をしているのはなぜか}

○ 定状宇宙では時間はたっぷりあるので、光による関係は十分可能である。また、空間から生まれる粒子が同じ原理で生まれるなら、同じものが生まれるということが考えられる。

(5)平坦性

 {私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げなくてはなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると現在の私たちは存在できないのです。}

○ 定状宇宙論では神様の力は必要ない。最初からある宇宙空間に、ランダムに粒子が生まれて、それが引力を持っていることと、離れて粒子が生まれることによって引力による位置エネルギー(斥力になる)が生まれるのだから、引力と位置エネルギー(斥力)の値は等価になるから、必然的に平坦になる。曲がりようがない。

(このときの引力は、物質同士の作用である。インフレーション論や、ビッグバン論のように空間には作用しない)(インフレーション論でも、インフレーション宇宙が生まれる前から「無」と名付けられた宇宙空間がありその空間の中にこの宇宙が膨張しているという理論だ。したがってインフレーション宇宙空間は膨張しているけれど、インフレーションを生んだ宇宙空間は膨張していないと考えられる。膨張宇宙論者はインフレーショの前にしろ、ビッグバンの前にしろ、この宇宙を生んだ宇宙については触れないことにしているようだ。定状宇宙になってしまうからだろう。特にキリスト教ではそこは神の住む場所だから人間が触れるのは恐れ多いことなのだろう。中世、そのことに抵触したブルーノという人は火あぶりになったということだ)

(6) その他の問題

・ 真空から物質が生まれる仕組み

 量子論では、真空から、プラスとマイナスの粒子が対になって生まれて、すぐに対消滅する。ところが、10億対に1つくらいの粒子が、消滅しないで、残るということだ。その残った粒子がこの宇宙を造ったということだ。

 すると、ビッグバンにしろ、インフレーションにしろ、宇宙ができた瞬間に、今宇宙にあるすべての物質の20億倍の粒子が一瞬で生まれて一瞬で消えたということになる。特に、インフレーション論では、その時間が、インフレーションが起こった10のマイナス44乗秒間に起こっているのだから、すごいことだ。

 粒子ができた始まりはまだ宇宙は小さいはずである。その空間が一瞬で、全宇宙の物質の20億倍の粒子を作ったのである。その小さな真空は巨大なエネルギーを持っていたことになる。しかし、この本では真空はとても小さなエネルギーしか持っていないと述べている。宇宙全体の20億倍もの粒子を1点の真空が10のマイナス44乗秒で生み、その瞬間に消滅させたというインフレーションは量子論では説明できない現象である。

 定状宇宙なら無限に広がる宇宙の別々の1点で、別々の時間に粒子が生まれては消えるを繰り返すことができる。量子論で説明ができる。時間は無限にある。真空も無限にある。ひとつの粒子を造るための10億対の粒子を造るのに10億年かかっても、100億年かかっても大丈夫である。同じ場所で作る必要もないから、宇宙空間のいろいろなところで、最小のエネルギーで1対ずつ作ればいい。この宇宙の全物質を造るのに、10の44乗年かかっても大丈夫である。インフレーション宇宙のように、ミクロな1点に、宇宙の全物質(インフレーション宇宙では1000億光年以上に広がった全物質)の20億倍の粒子を10のマイナス44乗秒で作って消す必要はない。また、この宇宙を光速の10の44乗倍の数百兆倍で膨張させる必要もない。また、新たな空間を造る必要もない。

 

5 宇宙の膨張の証拠を検討する

(1)銀河の赤方偏移(ビッグバンの証拠と云われている)の原因について

 ハッブルが見つけた、銀河の赤方偏移が、ビッグバン宇宙の証拠と云われている。しかし、インフレーション宇宙は銀河の赤方偏移とは無関係である。インフレーションが終わった後の宇宙が火の玉になりビッグバンが起こり、その後の膨張が、銀河の赤方偏移を起こしているということである。インフレーションの、一瞬で、1000億光年に膨張することの根拠となる現象は何一つ観測されていない。

 ビッグバン論者によると、銀河の赤方偏移は、銀河が後退していることで起こるドプラー効果である、ということだ。しかし、ビッグバン論者には他の考えもある。それは宇宙空間が膨張しているために、光が引き伸ばされたために赤方偏移しているという考えだ。

 このように、ビッグバン論者にも銀河の赤方偏移の原因について二つの考えがある。

 高田式定状宇宙では、銀河の赤方偏移は、銀河の光が宇宙にある水素やヘリウムや塵の分子などに衝突することでエネルギーを奪われることで起こっていると考える。

 この現象は日常的に観測できる。たとえば、部屋の電気のスイッチを切ると、一瞬で暗くなる。この現象の原因は、窓から光が飛び去ったからだけではない。閉め切った部屋でも同じである。原因は、光が壁やその他の物質に衝突して、その分子を動かすことでエネルギーを奪われることから起こっている。エネルギーの下がった光は赤方偏移することになる。光速の光は一瞬で数十万回以上壁に衝突するのでエネルギーを一瞬で奪われる。電波領域にまで赤方偏移した光は壁を通りぬけて飛び去る。だから部屋は一瞬で暗くなる。そのときに奪われた光のエネルギーは壁の温度を少し上げる。

宇宙空間には、水素イオンや分子が浮かんでいるので、銀河の光は必ずこれらに衝突してエネルギーを減じて赤方偏移するはずである。距離に応じて衝突回数が増えるから、遠い銀河ほど赤方偏移する。観測事実とも一致する。

 ビッグバン論者の云う、後退速度によるドプラー効果や、空間膨張による光の赤方偏移があったとしても、宇宙に浮かぶ物質に衝突して銀河の光が赤方偏移する現象は必ず存在する。宇宙には塵があるのだから、銀河が後退していなくても、空間が膨張していなくても、宇宙空間に浮かぶ物質に衝突して銀河の光が赤方偏移する現象は必ず存在する。ドプラー効果や、空間膨張がなくても銀河の光は赤方偏移するのだから、これだけで、銀河の赤方偏移は説明できる。

 

〈宇宙空間膨張について〉

 空間が膨張する仕組みは解明されていない。今のところ空間がなにか実態のあるものだという直接的な観測はない。また、空間の膨張は、空間の何がどのようになることかの理論もない。水や空気の膨張が解明されているのとは大きな違いがある。

 宇宙空間が膨張しているという考えは、銀河の光が遠い銀河ほど赤方偏移しているという観測から生まれている。観測されたのは銀河の赤方偏移だけで、空間膨張が直接観測されたわけではない。銀河の光の赤方偏移は、先に書いたように、宇宙空間に浮かぶ水素やヘリウムなどでも起こるのだから、銀河の光の赤方偏移=空間膨張とはいえない。

 

(2) 宇宙背景放射

ビッグバン論では、宇宙背景放射は、137億年前、できたての宇宙が晴れ上がったときの光が今地球に降り注いでいるという解釈である。

その時の火の玉の光が宇宙空間の膨張によって引き延ばされて2,4kの電磁波になったということだ(ここではドプラー効果は出てこない)。では、なぜ137億年前の火の玉の光が、全方向から今地球に届いているのだろう。その説明に次のようなことがある。

雲の中にいる飛行機は周りが見えない。その飛行機が、雲から飛び出し振り返ると雲が見える。これと同じように、光の球の中にいた地球が雲から飛び出すように、火の玉から飛び出して振り返ると、火の玉が見えるという説明だ。

これには二つの問題がある。

ひとつは、飛行機は雲から飛び出すことができるけれど、地球は火の玉から飛び出すことはできない、ということだ。雲も雲の外も空だから、飛行機は自由に雲から飛び出すことができる。ではビッグバンの火の玉の外は何なのだろう。ビッグバン論では宇宙のすべてが火の玉である。火の玉の外はこの宇宙ではないはずだ。この宇宙の外に地球だけ飛び出すことはできないのだから、火の玉から飛び出して振り返ることはできない。

火の玉の温度が下がり、その中にあった物質が集まって銀河や星を造ったというのがビッグバン論だから、地球が火の玉の外に出たら、集まって地球を造ることができなくなる。したがって、この飛行機のたとえは間違いであるといえるから、これで宇宙晴れ上がりの光が地球に降り注いでいるという説明にはならないことが言える。

二つ目は、雲の光は飛び出した飛行機の後ろからきている。振り返らなければ見えない。ところが宇宙背景放射は全方向から地球に降り注いでいる。前方からも来ているということだ。飛行機の話とは状態が異なっている。

この他に、宇宙の温度が下がって、火の玉の光が直進できるようになったから、宇宙が見渡せるようになった、という説明もある。

すると、そのときから火の玉の光は光速で直進していくことになる。地球は(その時、約90億年後地球になる全物質も存在していたはずだ。まだ水素の原子だっただろうけれど)今約300km/sくらいの速度だ。宇宙の晴れ上がりの後、光は光速度(30万km/s)で直進する。アッと言う間に光は地球を追い越して行くことだろう。その時の宇宙が、ビッグバン後30万年では光速で広がっても直径60万光年だ。直径60万光年とすると(※補足)地球の前駆物質に対して、一番離れたところの光でも、最大60万光年になる。すると、およそ、60万年で一番離れたところの光も地球を通り過ぎてしまうことになる。ビッグバンから137億年後の今、宇宙の全方向から地球に降り注いでいる光は、宇宙の晴れ上がりの光ではないということになる。

宇宙空間が光速で膨張していると、光は地球に対して、実質的に遅くなるので、いつまでも地球を追い越せないことになるかもしれない。しかし、ハッブルの法則では小さな宇宙は光速では膨張できない。アンドロメダと地球は250万光年離れているが、その間の空間は光速では膨張していない。アンドロメダの光は250万光年の距離を250万年で到達していることになっている。このことから昔の宇宙の大きさが直径250万光年以内では宇宙膨張の影響にかかわらず光は光速で地球に到達していたということが言える。また、1億光年先の銀河の光も、1億光年の距離を1億年かけて到達していると考えられているから、1億光年の距離でも光は光速で地球に到達しているといえる。したがって、1億光年の直径の火の玉宇宙でも光は光速で地球を追いかけて1億年以内にすべての光は地球を追い越すといえる。晴れ上がりのときの宇宙は、それまでの宇宙が光速で広がったとしても最大直径60万光年だから、その後の宇宙の膨張がハッブルの法則どおりに広がったとすると、宇宙空間の膨張は無視できる速度であるといえる。(最初からハブルの法則で膨張したとすると、宇宙は今でも点のままである。太陽系でさえ46億年で少しも膨張していないのだから。それがいつの間にか暴騰したということは、ハッブルの法則以外の冒頭の仕方があったということなのだろうが、その点は誰もなにも言っていない。それがインフレーションであるということも言っていない)

また、光は光源が光っている間だけしか見ることができない。後は見えない。花火は数秒で見えなくなる。たき火は燃えている間しか光らない。花火の光も焚火の光も見ている人を通り過ぎて宇宙の彼方に光速で飛び去るからだ。ビッグバンの火の玉も、見えるとしたら、火の玉になっていた間だけのはずだ。火の玉の光が最初に届いてから、最後に通り過ぎるまでの時間は、火の玉が燃えている時間に一致するはずだ。その後は見えなくなるはずだ。花火がいつまでも見えることがないのと同じだ。それがいつまでも(137億年間)地球に届いているのはどうしてだろう。誰もそれを説明しない。

(3) 宇宙の大きさ

火の玉の光は全方向から地球に降り注いでいるということだから、その光源は、地球から見て全方向にあるということになる。その光は137億年前の火の玉の光だということだから、火の玉は地球から見て全方向にあるということになる。このことから、137億年前には、宇宙はすでに地球を中心として、137億光年の半径の球面で光っていたということになる。その光が137億年かけて今地球に届いたということになる。宇宙はできて30万年ですでに半径137億光年以上に広がったということだ。もしこれがインフレーションの1000億光年の宇宙が火の玉になっていたという理論に一致するとしたら。直径(あるいは半径)1000億光年の巨大な火の玉だ。その中に、電子と光が、詰め込まれて、衝突を繰り返し光が直進できなかったというほどぎゅうぎゅうだったということだ。すごい宇宙だ。どこからそんな光と物質が湧いてきたのだろう。その後ビッグバンが起き、ハッブル定数でのろのろと膨張して今に至っていることになる。それではとても重力で膨張はできないだろう。太陽系だって重力で膨張できないのに。ビッグバン論の否定になる。

なぜこんな矛盾が起きるのだろう。それは、宇宙背景放射を、宇宙晴れ上がりの光としたからだ。

では宇宙背景放射は、何の光だろうということになる。

それは宇宙に漂う塵や分子の出す光である。

 物質は、その温度に応じた電磁波を出して冷えていく。黒対放射という。同時に、他の粒子からの電磁波を受けて温度が上がる。宇宙全体の塵はエネルギーを受け渡してほぼ同じ温度になる。その塵から出る電磁波が宇宙の中を飛びかっている。それが地球にも降り注いでいる。この光が2.4kであるという研究がビッグバン論が出る以前に発表されていた。今は無視されている。これなら、いつも全方向から地球に降り注いでいてもなんの矛盾もない。

これが宇宙の平均温度である。粒子が収縮して位置エネルギーが熱エネルギーに変わったためにできた熱である。