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真空のエネルギーの働き


著者 田 敞


(以下{ }内は「インフレーション宇宙論」佐藤勝彦著、BLUEBACKSから)の引用)


問題

{真空のエネルギーは空間そのものに対しては押し広げる力を持っています。しかし、空間内の物質に対してはマイナスの圧力を持っていて、収縮しようとする力が働きます。他にちょっと例のない特殊なエネルギーなのです。}


考察

 真空のエネルギーは空間を押し広げ、物質を収縮させるように働くということです。すると、宇宙空間は膨張するけれど、物質は押し縮められることになります。これだと宇宙は空間だけが膨張し、物質はどんどん収縮していくことになります。物質は生まれたとたんに、1点に収縮していきます。ところが、{真空のエネルギーが、相転移で熱エネルギーに変わることによって宇宙は火の玉になるのです}{火の玉になる状態です。熱エネルギーがあるということは、膨大な素粒子が生まれて、ものすごく高速で動いているということでもあります}ということですから、宇宙は空間の中に物質粒子が充満しています。この宇宙は1000億光年の巨大な宇宙です。真空のエネルギーが1000億光年に空間を広げるのは分かります。しかし、物質は収縮するはずだから、宇宙空間の1点に縮まっているはずです。なぜ広がったのでしょう。

真空のエネルギー以外にも、物質はインフレーション宇宙が生まれてすぐ最初に別れた重力による引力を持っています。引力でも縮みます。

宇宙全体の物質が小さなところに集まっているのだから、引力だけでもブラックホールになるはずです。それプラス、真空のエネルギーのマイナスの圧力で縮みます。それに対して物質を広げる力は存在しません。物質は収縮することはあっても広がることはありません。ところが、インフレーションの最後は、宇宙全体が火の玉になる、すなわち宇宙全体の粒子が高速で運動しているというのです。理屈が合いません。

 

 モノポールはインフレーションで1000億光年まで吹き飛ばされたということです。これも、真空のエネルギーが物質に対してマイナスのエネルギーを持っているのなら、宇宙の彼方まで吹き飛ばすのではなく宇宙の中心に押し縮めることになるのではないでしょうか。これではインフレーションで物質を吹き飛ばすエネルギーが不明です。

また、現在、全宇宙に物質は散らばっています。ビッグバン論によると、宇宙は137億年前1点で始まって現在までに膨張して物質は散らばって宇宙ができたということになっています。ビッグバンの真空のエネルギーは、インフレーションとは反対に、物質に対してプラスの圧力を持っていたのでしょうか。そのときには、真空のエネルギーが物質に対してマイナスからプラスに転じた理由が必要です。佐藤氏の必要性に応じてでは困ります。

 

問題

{真空のエネルギーがある宇宙を、ゴムのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。ゴムが引き伸ばされると、ゴムの中の縮もうとするエネルギーが増加しますね。これと同じように、宇宙が引き伸ばされる(膨張)と、宇宙の中の真空のエネルギーも収縮しようとして増加するのです。つまり、宇宙が膨張すること自体が真空のエネルギーを増加させるのです。}

考察

ゴムを引き延ばすように宇宙を引き延ばすというのは、宇宙を外からなにかが引っ張っているということです。なにが引っ張っているのでしょう。ゴムなら、手とか、機械とかが引っ張ることができます。宇宙を引っ張るものとはなんでしょう。

{真空のエネルギーは空間そのものに対しては押し広げる力を持っています。しかし、空間内の物質に対してはマイナスの圧力を持っていて、収縮しようとする力が働きます}ということでした。ひっぱるのではなく、真空自らの力で内部から押し広げているということのようです。ゴムは自身のエネルギーで内部から圧力をかけているのではありません。他のエネルギーで伸びています。宇宙は自らの力で膨張することが自らの収縮する力を増やすということです。永久機関のようですね。いやそれ以上ですね。エネルギーを使うとエネルギーがそれ以上に増えていくということです。

ゴムの場合は他から力が加わっています。他からエネルギーが補給されているので、永久機関ではありません。真空は他からのエネルギー供給はありません。真空というなにもないものからエネルギーを出して、エネルギーを増やしているというのです。

ゴムは自力で膨張したり収縮したりできません。物質であって、それ自体は温度のエネルギーしかありません。真空は物質ではありません。なにもないなにかです。なにもない(最小のエネルギーを持っているということですが)それが、それ自体で膨張したり収縮したりする巨大なエネルギーを持っているということです。物質と空間はまるで異なる質のものです。真空はゴムで説明できることではありません。まるで違うシステムなのですから。

結論

空間が縮む原理がわからないから、ゴムでごまかそうとしているだけです。真空が膨張したり縮んだりする現象を、真空を使って説明しなくてはなりません。できないでしょう。なぜなら、なにもない真空がインフレーションを起こす巨大なエネルギーを生むシステムがわかっていないからです。真空は真の空です。だから、ゴムという物質で説明するしかないのです。しかし、物質はものがあります、真空とは完全に違うものです。

何もない真空が、膨張したり収縮したりするという考えが間違った考えなのです。なにもないものが膨張するわけはないのです。

ゴムの比喩で逃げては何の説明にもならないし、ごまかしていると、そこから先には進めません。ごまかしはごまかしなのですから、真実を見つけるためには邪魔以外の何ものにもなりません。

また、{宇宙が膨張すること自体が真空のエネルギーを増加させるのです。}とありますが、ゴムと同じ仕組みならエネルギーは増えません。ゴムの伸び縮みは、エネルギー不変則にのっとっています。なんとしても、真空のエネルギーが増える仕組みが欲しいのでしょうが、勝手にエネルギーを増やしてはなりません。まあ、インフレーション理論にはそれが必要なのでしょうけれど、必要だからといって何の証明もなくエネルギー不変則を簡単に壊してはだめだと思います。真空のエネルギーは、今の物理では謎以外の何ものでもないのです。だからといってそれで今までの物理学の原則を根拠もなく壊してはだめだと考えます。謎が謎を生み、果てしなく謎が増えていきます。

実際、インフレーションは、謎のエネルギーで謎の空間膨張をし、それも、光速の10の数十乗倍の速度で膨張しています。できた宇宙は巨大な火の玉になっています。なにもない小さな宇宙が10のマイナス44乗秒後には、1000億光年以上の巨大な火の玉になるのです。物質を生むだけでなくそれを超高温にするエネルギーも生んでいます。魔法使いだってびっくらこくでしょう。これができるのは机上の空論だけです。現実には不可能です。実際、それほどのすごいことが起こったとしたら、現在の宇宙にもその痕跡が少しは現れても不思議ではありません。それがまったくないということは、インフレーションがなかったということの証拠です。