インフレーション宇宙への疑問目次
インフレーション宇宙論への疑問4
インフレーション宇宙論への疑問X
真空のエネルギー
著者 田 敞
(以下{ }内は「インフレーション宇宙論」佐藤勝彦著、BLUEBACKSから)の引用)
問題
{インフレーション理論は素粒子のような小さな宇宙を巨大な「火の玉宇宙」にすることができるという理論です}
{きわめて小さかった初期の宇宙は、エネルギー的にも真空のエネルギーはあったものの、ほとんどゼロでした。ところが、インフレーションが終わった直後の宇宙は、相転移によって真空のエネルギーが熱エネルギーに変わり、火の玉になる状態です。熱エネルギーがあるということは、膨大な素粒子が生まれて、ものすごく高速で動いているということでもあります}
考察
宇宙が誕生したときの宇宙の温度は1019GeVだったとも述べています。インフレーションは小さな火の玉で始まっているということです。その後、膨張により急激に温度が下がり、真空の相転移で10のマイナス44乗秒後に、また火の玉になったということのようです。たったそれくらいの時間では、火が消える時間はなかったでしょう。残像だってそれよりはるかに残ります。
ところで、{相転移によって真空のエネルギーが熱エネルギーに変わり、火の玉になる}ということですが、インフレーションの始まりの火の玉は何の理由も書いてありません。分からないのでしょう。最低のエネルギーの真空から突然生まれた小さな宇宙が、火の玉である原因は存在しないのでしょう。直径1ナノメートルか、1ミリメートルか、1キロメートルかは分からない宇宙がポッと生まれて、その中にすばやく全宇宙分の粒子が生まれたら、強い重力のために高温になるということかもしれません。しかし、そのときは宇宙の物質はブラックホールになってしまうはずです。物質はすべてブラックホールになって、空間だけが1000億光年以上に膨張するということになります。
始まりの火の玉の理由は何なのでしょう。それはほったらかしにして、終わりの火の玉は、理由がこじつけられるから、理由を述べただけなのでしょか。
もうひとつの問題は、最初の宇宙も高温だったということは、{熱エネルギーがあるということは、膨大な素粒子が生まれて、ものすごく高速で動いているということでもあります}ということです。インフレーションの最初から素粒子があったということです。できたての小さな宇宙に、やがて、星や銀河を造る元になった素粒子が詰まっていたということです。ということは、やはりモノポールと共に素粒子も、1000億光年先まで吹き飛ばされたということになります。宇宙はやはり空っぽです。
問題
{熱エネルギーがあるということは、膨大な素粒子が生まれて、ものすごく高速で動いているということでもあります}
考察
{膨大な素粒子が生まれて}ということから、インフレーションの途中で物質が生まれたかのようです。しかし、上に書いたように、宇宙は最初から高温だから、最初から素粒子があったと考えられます。そして、モノポールと違って、宇宙の最果てに吹き飛ばされるのではなく、宇宙全域に、ほぼ均等に散らばったようです。理由は書いてありませんので分かりませんが。このあたりはかなりあいまいです。
いつの間にか素粒子が登場していますが、素粒子は、いつ、どのようにして生まれたのでしょう。書かれていません。なにもない宇宙に、物質が生まれるということは非常に重要なことです。それなのに、何でもないことのようにすりぬけています。
この1000億光年にも広がった宇宙に散らばった素粒子の一部は、今観測できる範囲の宇宙にある全物質の元になった素粒子と思われます。膨大な量です。それが10のマイナス44乗秒とか、33乗秒とかの間に生まれたのです。かなり常識はずれな現象です。常識というより、今の物理学では解けない問題だと考えます。だから、その仕組みを述べる必要があります。もう少し考えてみます。
(1)素粒子を生んだエネルギーの謎
素粒子を生んだエネルギーはどこから来たのでしょう。E=mc2と云われています。m=E÷c2です。粒子を造るには巨大なエネルギーが必要です。インフレーションの真空は、どこからこのエネルギーを造ったのでしょう。不明です。
(2)量子論による粒子誕生の仕組み
問題はもうひとつあります。量子論では真空から対になって粒子が生まれ、衝突して、消えるということです。そのうちの、10億個に1個の割合で粒子が残るということです。すると、{膨大な素粒子が生まれて、}宇宙に満ちるためにはその10億倍の素粒子が生まれて消える必要があります。それが、10のマイナス44乗秒以内で行われたということです。とてつもない早技です。こんなことが起こるのでしょうか。それについては記述がありません。
真空のエネルギーがいかに大きくても、宇宙の全物質(1000億光年の大きさの宇宙に広がっている素粒子)+10億倍の粒子を一瞬で作るほど大きくはないのではないでしょうか。そのうえそれ(1000億光年の宇宙)を火の玉にするほどのエネルギーも必要です。
(3)宇宙の全物質
インフレーション宇宙は1000億光年以上に広がっているということです。今ある宇宙は見えるところだけで半径120億光年くらいです。
(インフレーションで、1000億光年に広がったということですが、これは半径か、直径か不明です。違いは半径500億光年か、1000億光年かで、500億光年もの違いがあります。大きな違いです。違いがわたしたちが観測できている宇宙よりはるかに大きいのですから、はっきりと示すべきです。でも大丈夫です。インフレーションが、10のマイナス45乗秒長ければ、500億光年は1000億光年になるのですからたいした時間はかかりません。もしその後10のマイナス45乗秒長ければ1000億光年は2000億光年になるのですから、500億光年なんて、時間から考えれば誤差の範囲にもならないということです。インフレーションがいかにすごいかこれだけでもわかります。人間が100億光年先の銀河が見えたとか、120億光年先の銀河が見えたなどと騒いでいるのは、ちいちゃなことです)
この見える範囲に、無数の銀河があります。銀河間物質などを考えると、膨大な物質があります。これがインフレーションの始まりのときに、空間に詰まっていたとしたら、ブラックホールになるのは必然です。ところが、インフレーションで広がった1000億光年の宇宙に素粒子が同じように均等に散らばったとしたら、この1000倍近くの物質が宇宙にはあるということです。これが宇宙の始まりの小さな宇宙に集中したとしたら、完全にブラックホールになるでしょう。そのうえ、粒子が生まれるには、その10億倍の粒子が生まれて消えなければならないとういうのですから、いかに膨大な粒子が生まれたか、想像を絶します。実に天文学的数字です。いやその1兆倍です。
インフレーションの中で、順に素粒子が生まれたとしても、10の44乗秒で、これだけの物質を生んだということです。裏山を10のマイナス44乗秒で出せるでしょうか。富士山を10のマイナス44乗秒で出せるでしょうか。地球を10のマイナス44乗秒で出せるでしょうか。不可能でしょう。全宇宙の物質を10のマイナス44乗秒で出すことはもちろん不可能でしょう。いくら137億年前の「無」が巨大な力を持っていたとしても。
問題
火の玉のエネルギーはどこから来たか。
考察
量子論では真空とはエネルギーの一番低い状態ということです。またインフレーションでは、空間が膨張してもエネルギー密度は変わらないということから、真空のエネルギーは増えていくということですが、全体としてのエネルギーは増えても、真空自体のエネルギー密度は一番低い状態であることには変わりがありません。
真空のエネルギー密度が変わらないということから、1立方センチの真空のエネルギーは一番低い状態のままですから、1立方センチの真空が持つエネルギーで1立方センチの真空の中にある粒子を高速で動かして火の玉にすることはできないはずです。これが1立方キロでも同じです。エネルギー密度は同じですから、やはり1立方キロの真空の持つエネルギーで1立方キロの真空の中にある粒子を高速で動かして火の玉にすることはできないはずです。同じことで宇宙全体を火の玉にすることはできないはずです。宇宙全体が膨張してそれに伴ってエネルギー全体が増えても、密度は変わらないのですから、全体を火の玉にすることはできないはずです。
実際、太陽系の真空は太陽系の温度を上げていません。何一つ影響はありません。太陽系には真空のエネルギーはないということです。これは、太陽系ができた46億年前も同じです。太陽は引力により収縮して、その位置エネルギーが熱となり、核融合によりさらに熱を出して火の玉になったので、真空のエネルギーで火の玉になったわけではありません。真空のエネルギーが寄与したといことは言われていません。真空のエネルギーではなく、真空の相転移がそのエネルギーの源と云っています。しかし、水を過冷却して相転移させたとしても、氷が解けることはありません。潜熱で熱湯になることはありません。真空の相転移だって、過冷却(エネルギー密度が変わらないのにどのように過冷却するのかは不明です)で潜熱が出ても、真空が氷になっただけで、火の玉にはならないはずです。真空はどうして火の玉になったのでしょう。水の相転移で真空の相転移を説明するならこの違いを説明しなくてはなりません。
水の潜熱は外部に奪われるけれど、宇宙の潜熱は宇宙の中に発散されるということかもしれません。それにしても、宇宙が冷やされることで真空が相転移するとしたら、下がった温度の分の熱はどこに行ったかという問題が出てきます。真空は膨張してもエネルギー密度は変わらないというのですから、どこかに熱が逃げない限り温度は下がらないはずです。何に熱は奪われたのでしょう。
熱は粒子の運動だということですから、粒子の密度が下がったために温度が下がったと考えられます。すると、先に書いたように、粒子はインフレーションで、モノポールと共に、1000億光年の彼方に吹き飛ばされてしまう可能性があります。モノポールは吹きとばされたのに、粒子は吹きとばされずにほぼ均等に散らばった違いの説明がいります。その説明がありません。粒子を均等に宇宙にばらまくには、インフレーションの始まりからそんなに離れない粒子から、1000億光年先まで飛ぶ粒子まであるので、粒子の速度をそれぞれに変えなくてはなりません。真空が、10のマイナス44乗秒で、粒子を、秒速数ミリから光速の10の30乗倍の速度にまで振り分けて加速するシステムも必要です。また、真空の膨張がどのようにして粒子に作用して、超光速に加速するのかも、仕組みを明確にする必要があります。
説明は倍々ゲームで膨張すると簡単に1000億光年の宇宙に広がるということだけです。なに一つ具体的な説明はありません。
問題
{初期の宇宙は、エネルギー的にも真空のエネルギーはあったものの、ほとんどゼロでした。}
考察
初期の宇宙というけれど、インフレーションは、10のマイナス、数10秒で終わっています。初期もなにも、区別がつかない短い時間です。
その、初期の宇宙は、インフレーションを起こしたということです。インフレーションは、10のマイナス44秒でほとんどミクロな宇宙を1000億光年以上に広げています。ほとんどゼロのエネルギーでこのようなことができたというのです。ローソク1本の炎で地球を灼熱の火の玉にするよりはるかにすごい手品です。
空間が膨張すると真空のエネルギーもそれに伴って増える、とか、真空の相転移、とか、実証されていないエネルギーを持ちだして説明しているけれど、ドラエモンのポケットより10の35乗倍ほどすごい「真空」という、インフレーション学者の必要なものは何でも出すことができる打ち出の小槌を振り回しているだけです。水が相転移したって、氷を溶かすこともできないくらいの熱しか出ません。真空が相転移すると、宇宙を光速の10の300乗倍(10のマイナス44乗秒と並ぶ適当な数です)で吹きとばしたり、宇宙全体を灼熱の玉にするのですから、その巨大なエネルギーを生みだす真空の相転移の構造の変化と潜熱が生まれる仕組みくらいは示すべきです。できないでしょう。真空に構造なんてないからです。
ビッグバンの解けない問題を解くのに、なにも、インフレーションに頼る必要はありません。定状宇宙でもあっさり解けます。定状宇宙なら、0,000000・・と0が44個も続くような短い時間で1000億光年という巨大な宇宙を無から作るという奇想天外の10の56乗倍もある、想像を絶する現象はまったく必要ありません。