インフレーション宇宙への疑問目次
インフレーション宇宙論への疑問3
インフレーション宇宙論への疑問5
インフレーション宇宙論への疑問W
宇宙が火の玉になる仕組み
著者 田 敞
(以下{ }内は「インフレーション宇宙論」佐藤勝彦著、BLUEBACKSから)の引用)
問題
{真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こります。このとき、まさに水が氷になるときに潜熱が発生するのと同じように落差のエネルギーは熱のエネルギーになります。}{真空のエネルギーが、熱エネルギーに変わるということです。しかも、水ならば周辺の空間に熱を奪われることで氷になりますが、宇宙空間ではその潜熱が空間内に出てくるため、宇宙全体が火の玉になるほどのエネルギーになるのです}
問題1
{真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こります。}
考察1
物質が膨張すると温度が下がるのは、エネルギー量は変わらないのに、体積が大きくなるから単位体積当たりのエネルギーが減少するためです。
インフレーションの場合は、{真空のエネルギーは不思議なことに、宇宙がどんなに大きく膨張しても、密度が小さくなることがないのです。}とあります。空間が広がっても真空のエネルギー密度は変わらないということです。このことから、単位体積当たりのエネルギー密度は変化しないはずです。したがって空間の温度が下がることはないはずです。論理に矛盾があります。
このことから、空間の膨張により温度が急激に下がるのは、物質が膨張することで温度が下がるのとは異なる現象といえます。空間が膨張すると温度が下がるシステムそのものを説明する必要があります。それがありません。
{真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、}ということは、空間の中の、物質密度が下がるということなのかもしれません。このあたりはあいまいです。問題が多いのでしょう。宇宙全体の物質が集中しているのを、10のマイナス44乗秒で1000億光年に膨張させる真空のエネルギーは、不可能だからでしょう。火星探査ロケットでさえ、音速に加速するのに30秒かかっています。慣性質量を持っている物質を加速するのは大変なのです。また、それを急停止させなければなりません。それも大変なエネルギーがいります。加速に使ったのと同じ大きさのエネルギーがいります。それを10のマイナス44乗秒内で加速し減速してほぼ停止させるのですから、宇宙の全物質があっては困るのでしょう。
考察2
温度は物質の振動です。なにもない真空は何が温度なのでしょう。なにもなければ温度もないはずです。本には書いてはいないのですが、この温度を担っているのが粒子だとします。これも明確にしなければならないはずなのに、うやむやです。
水の相転移は水の分子の振動が小さくなるために水の構造が変わることで起こります。ところが、真空の中にある物質の振動が小さくなると、物質の構造が変わるのではなく、真空が相転移を起こすというのです。水で考えれば、水の分子の振動が下がると、その周りの空間が相転移を起こすということです。実際の水の相転移ではそんなことは起こっていません。物質の温度が下がると、周りの真空が相転移を起こすシステムを述べなければならないはずです。水の相転移とはまるで異なる現象なのですから。
考察3
佐藤氏の他の本「宇宙論入門」では、宇宙が誕生したときの宇宙の温度は1019GeVだったということです。真空とはエネルギーが最小だということも言っています。宇宙が誕生したとき、真空は最小のエネルギーしか持っていないのに宇宙は何故こんなに高温になれたのでしょう。ビッグバン論では、現在の宇宙の物質が137億年前に小さな空間に押し縮められていたから高温になったという発想です。星間ガスが収縮して星になると、高温になるということからの類推でした。インフレーション論では、ビッグバンの火の玉はインフレーションの真空が相転移してエネルギーを出したためだと述べています。これでビッグバンが火の玉で始まった原因が分かったということです。では、インフレーションの最初の高温は何のエネルギーなのでしょう。インフレーションの前に、前インフレーションでも起こしますか。
インフレーション宇宙は、旧ビッグバン論と同じように、無から、突然空間と物質とが生まれて火の玉になったということです。不思議に、ビッグバンと同じなのです。するとやはり特異点問題が生じそうなのですが、それについては言及はありません。
モノポールは、インフレーションで吹き飛ばされるので、インフレーションが起こる前にすでにできていたということです。インフレーション前だから、宇宙空間はまだミクロな大きさです。その中に、モノポールは詰め込まれていたということになります。モノポールの大きさは分からないけれど、ミクロな宇宙に詰め込んだら、どんなに小さくても大した量は詰め込めないでしょう。100個でしょうか、200個でしょうか。とにかくぎゅう詰めであったとはいえそうです。この他に、宇宙が高温であったということですから、物質も存在していたと考えられます。温度は物質の振動ですから。
すると、ミクロな宇宙空間に、モノポールだけではなく、全宇宙の物質も詰め込まれていたということになります。これは大変です。詰め込めるわけはありません。
重力が他の力から分離したのが10−44のときで、温度は1019GeVだと述べています。重力が存在したということです。すると、全宇宙の物質の重力が1点に集まっているのだからブラックホールになってしまって、膨張できません。これではビッグバンと同じように特異点になってしまいます。
ブラックホールの脱出速度をはるかに超える速度で空間が膨張したら宇宙は膨張できるということかもしれません。その仕組みは書いてありませんが、10のマイナス44乗秒で1000億光年に膨張するのですからブックラホールの膨張も可能かもしれません。それがインフレーションの膨張だとします。すると、空間が膨張すると、真空は増えます。しかし物質は増えないので、単位体積当たりの物質の割合は小さくなり、宇宙の温度は下がります。これなら宇宙が膨張すると真空のエネルギーは増えるけれど、宇宙の温度は下がります。
しかし、問題が消えたわけではありません。問題の一つは、この宇宙を造った「無」が、小さな1点に全宇宙の物質を一瞬で作るエネルギーがあるかということです。第2は、その物質を10のマイナス44乗秒で1000億光年先まで吹き飛ばすエネルギーがあるかということです。第3は、全宇宙の物質が1点に集まっているときにその中に真空が存在できるのかということです。第4は、全宇宙の物質(ダークマターはこの時点であるのかないのか分かりませんが)が1点に集まれば、特異点まで収縮してしまわないかということです。第5は、先に書いたようにそれらの物質がモノポールのようにインフレーションによって1000億光年先にまで吹き飛ばされてしまわないかということです。
真空は最小のエネルギーだと述べています。実際、現在の真空は、地球の公転にさえ何一つ影響していません。その真空が、どうして全宇宙の物質やモノポールの収縮した塊を吹き飛ばすことができるでしょう。
(参考:「宇宙論入門」では、インフレーションが起こるのは、重力が他の力と別れた後の相転移で起こるということです。全物質が重力を持った後に宇宙は膨張しているということです)
問題2
{このとき、まさに水が氷になるときに潜熱が発生するのと同じように落差のエネルギーは熱のエネルギーになります。}
考察
水が氷になるのは物質の現象です。真空は物質ではありません。同じ現象が起こるとはいえないはずです。同じだというには、それを証明する必要があります。
真空の相転移については、佐藤勝彦氏の「宇宙論入門」に〔ワインバーグ・サラム理論の真空の相転移は、超伝導のアナロジーである。物質が低温で、電気抵抗を持たない特異な「超伝導状態」へと変わるのが超伝導の相転移である。力の分岐は、真空の「常伝導状態」と「超伝導状態」とで、力の到達距離が変わるために起こる。〕とあります。また、〔ワインバーグとサラムは、私たちの現在の真空が、弱い力に対して「超伝導状態」になっていると考えた。〕ともあります。
ここでも、〔物質が低温で、電気抵抗を持たない特異な「超伝導状態」へと変わるのが超伝導の相転移である〕と、物質の相転移については書いていますが、真空の相転移そのものについては書いていません。たんに物質の超電導とアナロジーと書いているだけです。どこがどのように似ているのかは書いてありません。勿論、真空の常伝導状態の真空の構造と超電導状態の時の真空の構造の変化についても書いてありません。〔超伝導という相転移によって、力を媒介する素粒子の性質ががらっと変わってしまったのである。〕と素粒子については書いてあっても、真空そのものの性質や構造がどのように変化したのかは書いてありません。そして、真空の相転移によって、空間が膨張したり、熱を出したりする仕組みも書いてありません。一番肝心なことが抜けています。
このことからわかることは、超伝導のアナロジーということですから、真空の相転移とは真空が常伝導から、超伝導になることということだけです。真空が相転移すると超伝導になるということですが、潜熱が出るということではありません。物質の超電導には周りを熱くするような大きな潜熱は出ていません。アナロジーなら、真空の相転移でも、大きな潜熱は出ないはずです。ところが真空の相転移は巨大な潜熱が出ているのです。それも、全宇宙を吹き飛ばしたり、全宇宙を火の玉にするほどの、巨大な潜熱です。物質の超電導では起こらない現象です。アナロジーとはとても言えません。
これについては{落差のエネルギーは熱のエネルギーになります。}とありますが、これは物質の超電導とも、水の相転移の潜熱とも似ていません。温度が下がると落差の熱は、どこかに移ります。水の温度が下がる時の落差の熱は、周りの物質、空気とか、他の物質に移動します。これは80度から40度になるときでも、50度から30度になるときでも同じです。潜熱ではありません。水の潜熱は、水分子の結合の構造の変化による熱です。温度の落差ではありません。したがって、落差のエネルギーは潜熱とはいえません。
また、最初に空間が持っていた、1019GeVという温度の出所が不明です。どのような仕組みで、宇宙はこの温度で生まれたのでしょう。なにもない真空から、突然この温度で宇宙が生まれたというのですが、そのエネルギーはどこから湧いたのでしょう。これも不明です。超新星が1万個爆発しても、宇宙の温度を0.01度も上げられないでしょう。それを真空が突然宇宙全体を1019GeVの温度にするのです。その仕組みを明確にしなければならないはずです。
問題3
真空の相転移の回数
考察
佐藤氏のインフレーションでは真空の相転移は3回起こっています。1度目は重力が枝分かれしたとき。2度目がインフレーションを起こしたとき。3度目が真空のエネルギーが熱になったとき。このとき宇宙は火の玉になったと言っています。
インフレーションに伴う現象がなぜこんなに違うのでしょう。その説明もありません。
一度相転移で超電導状態になった真空はどのようにしてまた相転移を起こすのでしょう。超伝導状態からもう一度超電導状態になることなのでしょうか。まあ、水も、気体から液体そして固体と、2度相転移しているので、真空が何度相転移してもいいのかもしれません。その時の真空の変化はどのようになっているのでしょう。気体から液体になったときの水の変化は解明されています。水から氷になったときの変化も明らかになっています。では真空が、相転移した時の変化はどのようになっているのでしょう。3度の相転移で真空の構造はどのように変化したのでしょう。それぞれで、現れる現象が異なるのは何が原因なのでしょう。それらが述べられていません。物質の相転移についての説明はあります。しかし、真空の相転移によって起こる真空の構造の変化についてはありません。わからないからなのでしょう。真空はなにもありません。なにもないものが変化して、何もないものになるのです。なにもないものの構造の変化はあるのでしょうか。わからないから、水や、金属の相転移に逃げているのではないでしょうか。
これは相対論にも見られます。相対論でも空間が歪むといっていますが、その構造の変化については何も説明していません。トランポリンに鉄球を乗せるとかいう、物質の変化で説明しています。物質となにもない空間とはまるで異なるものです。同じ変化をするとはいえません。それでも平気でそれで説明できたと述べています。真空や空間は科学者にとってとても便利な代物のようです。陶芸家の粘土のように、科学者の意のままに、何にでも変化します。
3度おこった相転移はそれぞれ現象が異なります。真空の相転移は種類があるということのようです。1度目はなぜ、真空に対してなにも起こさなかったのでしょう。2度目は、なぜ、宇宙を急膨張させたのでしょう。3度目はなぜ真空のエネルギーを熱に変えたのでしょう。
もちろんその仕組みの説明はありません。入門書なのだから難しいことは抜きにしたのでしょうか。それとも、わからないからなのでしょうか。
したがって、真空が相転移することでインフレーションが起こるという理論も、科学的証明は存在しないことになります。
結論
インフレーションがあり得ない膨張をするのは、科学としての根拠がない現象を土台としているからではないでしょうか。実際の現象からの理論ではなく、架空の現象(幻想)から組み立てられているから、10のマイナス44秒で、宇宙が1000億光年も膨張するのではないでしょうか。そして、10のマイナス44乗秒の最後に、光速の数兆倍の数兆倍の数兆倍で膨張していた宇宙が急停止します。幻想が幻想を生む、ただの誇大妄想の気がします。
問題
{真空のエネルギー}
考察1
真空のエネルギーは最小のエネルギーということです。すると、水1立方メートルが持っているエネルギーと、真空1立方メートルが持っているエネルギーは、水の方が大きいということです。その水が、相転移して氷になったときには、潜熱は、氷を溶かすことをしません。ところが、真空が相転移すると、宇宙全体を火の玉にしたり、10のマイナス44乗秒で1000億光年にも膨張させます。巨大なエネルギーが湧いてきます。火星探査機でも、打ち上げから、音速にまで加速するのに30秒かかっています。宇宙全体を10のマイナス45乗秒で光速の何兆倍の何兆倍の何兆倍の何兆倍の何兆倍以上にまで加速するのです。すごいことです。真空の相転移はとてもすごい相転移だということが分かります。水の相転移や、金属の相転移では説明できない現象です。それが水の持つエネルギーよりはるかに小さい真空のエネルギーで(最小のエネルギー)で行われるのです。不可思議の10の44乗倍くらいの不可思議ですね。
ところで、真空のエネルギーとはなんなのでしょう。宇宙を広げたり、熱になって火の玉を造ったりするということですが、それは何なのでしょう。真空のエネルギーの作用については書いてありますが、真空のエネルギーそのものについてはなにも記述がありません。わからないからなのでしょう。実際物理で解明されている力は4つの力だけです。まだ、真空の力を入れて、5つの力とされていません。真空の力は謎の力です。
問題
真空のエネルギーが観測されたところ
考察
では、考えてみます。
地球上で、真空のエネルギーそのもの、あるいはその作用は観測されているでしょうか。されていません。では太陽系で真空のエネルギーあるいはその作用は観測されているでしょうか。されていません。では銀河系で真空のエネルギーは観測されているでしょうか。されていません。アンドロメダまでの半径260万光年(230万光年と書いてある本もあります)の宇宙空間で真空のエネルギーの作用は観測されているでしょうか。されていません。アンドロメダ銀河はかえって近づいてさえいます。
観測が正確にできる、あるいはかなり正確に観測できるところでは真空のエネルギーの作用は一つも観測されていません。これは、少なくとも地球を中心とした半径260万光年以内の宇宙空間には真空のエネルギーはないということの実証になります。
いやそれは重力の方が強いから真空のエネルギーの膨張の影響が現れないだけだ、と言っています。そうでしょうか。その実証はあるのでしょうか。10のマイナス44秒で小さな1点に詰まっている全宇宙を小さな1点にしかすぎなかった真空の持つエネルギーで直径1000億光年の距離吹きとばすのです。目に見えないほど小さな真空にさえそれほどのエネルギーがあるというのがインフレーション論です。その真空が満ちているというのに、なぜ地球の公転に何一つ影響できないのでしょう。全宇宙を吹き飛ばしたというエネルギーです。地球を太陽の引力から吹き飛ばすことぐらいたやすいはずです。でも太陽の重力の方が強いから、というのが、宇宙論者の意見です。せめて公転軌道を1ミリくらいは動かしてもよさそうに思うのですが。太陽系ができて46億年も立っているのです。銀河系も、100億年もたっているのです。ビッグバン論では、宇宙ができて37億年しか経っていないときにできています。37億年で他の銀河からかなり離れたところまで吹き飛ばされているのに(アンドロメダだって、ビッグバンの始まりのときは、銀河系と同じ1点にあったのに、37億年で260万光年も離れてしまっています)、その後100億年もあったのに何一つ、膨張していないのはどうしてでしょう。少しは銀河系の膨張に影響していてもおかしくないのではないでしょうか。その後も宇宙は再度インフレーションで膨張しているといっているのですからなおさらでしょう。
昔の真空は大きなエネルギーを持っていたが、今の真空はほとんど持っていないということなのでしょうか。
しかし、銀河の赤方偏移から、銀河は、今も離れていっているということです。遠い宇宙では、銀河団を動かしているということです。それも加速しているというのです。
遠くなればなるほど、銀河や銀河団が離れる速度は大きくなるということです。
近くでは現れない真空のエネルギーは、遠くなるほどに、大きくあらわれているというのです。銀河や、銀河団を動かす真空のエネルギーが、銀河団に比べて塵にもならない小さな地球の公転に何の作用もしないのう。
遠い宇宙や、遠い過去には真空のエネルギーは目覚ましい活躍をしています。しかし、近いところや近い時間では片鱗も見せません。真空のエネルギーは不思議な作用をします。昔は日本中の沼や川に生息していた河童が今はどこを探してもいないようなものです。
赤方偏移という観測事実がある、ということでしょう。しかし、光は物質に当たっても赤方偏移します。これは観測されています。しかし、光が、空間膨張で伸ばされるということは実証されていません。ドプラー効果といっている人もいますが、銀河の赤方偏移がドプラー効果であるという証拠はありません。銀河団は膨張しないということだけれど、ハッブルの観測した銀河は、銀河系と同じ銀河団に属しているのに赤方偏移しています。
問題
今の真空と昔の真空はどう違うのでしょう。インフレーションの最後で、全宇宙を火の玉にしたエネルギーはどこに行ってしまったのでしょう。その熱は今はどうなっているのでしょう。
考察
今の宇宙は火の玉ではないので、どこかに消えてしまったのでしょう。宇宙が膨張するから温度が下がったということでしょうか。真空は、膨張してもエネルギー密度は変わらないということから、膨張と共にエネルギーの総量は増えるというのがインフレーション論です。ビッグバン後も宇宙は膨張しているということですが、エネルギー密度は変わらないはずですから、火の玉は消えないはずです。火の玉はどこに消えたのでしょう。
膨張で温度が下がって、その結果、真空の相転移が起こったということですから、今膨張している宇宙も温度が下がりインフレーションを再度起こすのでしょうか。昔は起こっても今は起こらないのでしょうか。
結論
インフレーション論者のご都合次第で現れたり消えたりするのが真空のエネルギーということのようです。真空とは、インフレーション論者の良き僕です。とても働き物で、言うとおりに何でもこなすようです。
問題
{宇宙全体が火の玉になるほどのエネルギーになるのです}ということです。
考察
インフレーションが終わったときには、宇宙全体が火の玉になったということです。
インフレーション論ではビッグバンが生じる前にすでに、宇宙は半径1000億光年以上の巨大な宇宙になっています。この宇宙全体が火の玉になったということのようです。ビッグバン論では、宇宙は最初1点から始まって火の玉になって、膨張することになっています。インフレーションからはビッグバンにつながりません。共通項は火の玉ということだけです。
ビッグバンがなくて、インフレーション宇宙だけで今の宇宙ができたということでしょうか。それでは、銀河の赤方偏移から考えたハッブルの法則は間違いだということになります。宇宙が膨張しているということの否定になります。インフレーションの考えは、ビッグバンの問題を解決するために考え出された理論なので、ビッグバンがなければ、インフレーションの必要もなくなります。また、インフレーションは銀河の赤方偏移とは無関係ですから、インフレーションの直接の存在の証拠はありません。ビッグバンと無関係ではインフレーション宇宙は存在できないということです。
そこで、インフレーション論にはありませんが、インフレーションでできた1000億光年以上に広がった宇宙の中のどこかの1点からビッグバンが始まるとします。これなら、ビッグバンにつながります。そのときには、1000億光年に広がる宇宙のその1点だけが火の玉になる理由がいります。宇宙全体を火の玉にするエネルギーが生じているのだから、小さな1点が火の玉になるにはエネルギーが余りすぎます。また、その1点だけが火の玉になるにはそこだけ火の玉にするエネルギーの偏在が必要です。他の空間からの真空のエネルギーをもらったとします。1000億光年にも広がった宇宙のエネルギーを1点に集中させるためには、エネルギーを伝達しなければなりません。1光年離れたところのエネルギーは光速で伝えても、伝わるのに1年かかります。1万光年離れたところのエネルギーは光速で伝えても1万年かかります。100億光年離れたところのエネルギーは、伝わるにも早くて100億年かかります。137億光年離れたところのエネルギーは光速で伝えても、137億年かかります。光速で伝わってもそうです。1000億光年にも広がった宇宙のエネルギーをどうやって1点に集中させるのでしょう。ビッグバンの瞬間にはとても間に合いません
また、1000億光年にも広がった宇宙のどこが火の玉になる1点かを決めるのも大変です。宇宙のあちらこちらで小さな火の玉ができる可能性もあります。
結論
最初巨大な無の空間に突然火の玉が現れて、膨張してこの宇宙になったという説がビッグバンです。
インフレーションでは、最初の巨大な無の空間に突然高温の宇宙が現れて、それが、10のマイナス44秒後には1000億光年以上の宇宙に広がったということです。ビッグバン宇宙は、1点から137億年かけて今の宇宙に膨張したという理論です。ハッブルの法則です。1000億光年にも広がったインフレーション宇宙が、どのようにしてビッグバン宇宙につながったのかの説明がありません。
問題4
インフレーション宇宙とビッグバン宇宙の関係について
考察
最初に「無」の空間があって、その「無」の空間の中に新たな空間が火の玉になって現れるのはビッグバン論もインフレーション論も同じです。最初の「無」の空間に超高温の点より小さな宇宙が現れインフレーションを起こすのか、ビッグバンを起こすのかの違いです。違いは膨張速度が違うことです。かたや、10のマイナス44乗秒で、1000億光年の宇宙を造り、かたや、137億年をかけて、数100億光年の宇宙を造ります。
インフレーション宇宙論の場合、インフレーションでできた宇宙の真空の中にビッグバンの火の玉ができます。元からあった真空にインフレーションが作った真空が広がり、その真空の中にビッグバンで始まるこの宇宙があるというのが、インフレーション論です。宇宙は3重構造になっているということです。エネルギーでみると、最初からあった真空がまずインフレーションのエネルギーを産み、インフレーションが真空の相転移を生んでそのエネルギーでビッグバンの火の玉を造るというのです。最初の空間が直接ビッグバンのエネルギーを生むわけではありません。直接ビッグバンの火の玉を造って宇宙を造るのは無理があるから、インフレーションをやってから、ビッグバンにしようということです。そのインフレーションは、ビッグバンの10の34乗倍ほどの強力なエネルギーを持って生まれています。ビッグバンの不合理を解決するために、さらにすごいエネルギーを持たせています。矛盾を解決するためにさらなる矛盾を生むのとよく似ています。
どちらも高温お1点で始まっているのだから、2重手間を省いて、直接ビッグバンにすればよさそうなのにそうはしないようです。無駄なことを宇宙はやる必要はあるのでしょうか。
問題
平坦性問題
{「地球が丸い」ということを直感的に認識するのはなかなか難しいはずです。}{実は宇宙も同様なのです。初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば、人間には曲がっていることが分からなくなってしまうのです。}
考察
1 {直感的に認識するのはなかなか難しいはずです。}
人間に分かろうが分かるまいが、宇宙が曲がっているなら曲がっているし、平坦なら平坦です。人間の認識とは関係がありません。平坦性は人間の認識の問題でしょうか。
2 {初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば}
初期の宇宙が1000億光年に引き伸ばされたというのがインフレーション宇宙論です。それだけ引き延ばされたら、物質も希薄になり、今の宇宙のような、銀河や星ができることもなくなるのではないでしょうか。モノポールは、1000億光年先の宇宙に飛ばされて、観測不可能だということです。物質もそのように吹きとばされてしまいそうです。
。
問題
{宇宙構造の起源}
{初期宇宙には非常に小さな揺らぎしかなかったのですが、これをインフレーションという急激な膨張によって大きく引き伸ばしてやることで、後に星や銀河や銀河団を構成するたねを造れることが分かっています。これによってまた一つビッグバン理論の困難、宇宙構造の起源が説明できないという問題を解決したことになります}
考察
{初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば、人間には曲がっていることが分からなくなってしまう}ということです。初期宇宙の非常に小さな揺らぎなどは、インフレーションで引き伸ばされて、揺らぎが分からなくなるのではないでしょうか。
ちなみに、ビッグバン論では、宇宙の構造の種は、ダークマターだという理論です。インフレーションとは関係ない理論です。ダークマターの揺らぎが宇宙構造の種ということですが、ダークマターもインフレーションで吹き飛ばされたら、揺らぎどころではなくなるのではないでしょうか。
結論
あちらを立てればこちらが立たずです。インフレーション論はそういうものです。なんせ、10のマイナス44乗秒で、宇宙を造り、それを1000億光年先まで吹き飛ばし、その間に3回の真空の相転移を起こし、最後にその超光速の膨張を瞬時に止めて、真空の膨張エネルギーを熱に変えて宇宙全体を火の玉にする熱を生み、ビッグバンにつなげるという離れ業をやってのけるのです。
できるわけはないでしょう。言うは易し行うは難し、です。