100歳になった相対性理論」(福江純著、講談社サイエンティフィク)への反論24

著者 高田敞

(以下{ }内は上記本よりの引用)


     


{出ました、「真空の相転移」!}

 

問題1

水の相転移と、真空の相転移について。

水の相転移は今の科学ですべて解明されている。では真空の相転移は今の科学でどのように解明されているのだろうか。考えてみる。

考察

温度が下がり、水が氷になる。これに対応する真空の相転移について考えてみる。真空の温度が下がり、水の状態(液体)の真空が氷の状態(固体)の真空に相転移するということになる。この氷の真空(固体になった真空)とはどんなものなのだろう。なにも説明がない。今のインフレーション宇宙論者にはなにも分かっていないということだ。水が氷になる場合、相転移する温度と圧力の関係が解明されている。では真空は、何度で氷の真空に相転移するのだろう。圧力は、真空だから、多分ないと思われるから最初から0である。しかし、温度は何度なのだろう。これも、インフレーション宇宙論者には分かっていないだろう。(注;真空に温度なるものがあるのならだが。真空はなにもないのだから、温度を出すものがないはずなのだが。そもそも、物質がなければ温度そのものがないはずなのだが。もし温度があるなら、今の物理学でいう温度とは性質がまるっきり違うもののはずだ。未知なる物理現象である)

同じように、気体になった真空とはどんなものか、それは何度で気体の真空になるのかインフレーション宇宙論者は示さなければならない。

問題2

{高温の水蒸気・常温の水・低温の氷などに分かれるかのように、真空にもそのエルギー状態によって、「高温相の真空」や「低温相の真空」などがあるのだ。}

考察

1 実証

{「高温相の真空」や「低温相の真空」などがあるのだ。}ということは実証されていない。それがどのような状態なのかの理論も存在しない。真空のエネルギーも観測されていない。

2 状態の変化

水の場合は、温度変化だけではなく、個体、液体、気体と、状態が変化している。その状態が変化するときに、エネルギーが放出されたり、吸収されたりする。これが相転移である。単に温度の変化だけではない。

では、真空の状態はどのように変化するのだろうか。この本には高温相と低温相との温度の違いだけである。状態の変化は述べられていない。気体の真空・固体の真空・液体の真空を示さなければならないはずだ。単に温度変化だけでは相転移とはいえない。

問題3

{宇宙のごく初期は、宇宙空間全体は高温相の真空と呼ばれる状態にあり、現在の(低温相)の真空よりも高いエネルギー状態になっていた。その高いエネルギーによって急激な膨張―インフレーション―を引き起こすのだ。さらに宇宙全体の急激な断熱膨張によって温度が下がり、真空は高温相の真空から、現在の低温相の真空に転移したのである。}

考察

1 宇宙のごく初期の真空の大きさ

インフレーション前であるから、宇宙は非常に小さかったと思われる。量子論が出てくることから、量子の世界であったと思われる。{宇宙空間全体}といっても、最小の大きさなのだから、全体というほどの大きさがある真空は存在していなかったはずだ。

また、それまで時空は存在していなくて、突然宇宙が量子の大きさで出現するのだから、宇宙全体といってもまだ点以下の大きさしかなかったのだから、宇宙空間全体という表現は変である。この{宇宙空間全体}はなにを指しているのだろうか。明示しなければならないはずだ。ところがそれがない。

2 {その高いエネルギーによって急激な膨張―インフレーション―を引き起こすのだ。}

 インフレーションは、10の40乗倍の大きさに一瞬でなったという。ミクロの真空が高温であったとしても、そのエネルギーだけでそのような膨張を起こすことができるのだろうか。もしそうだとすると、その真空はどれくらいの温度なのだろうか。こののち、{その高いエネルギーによって急激な膨張―インフレーション―を引き起こすのだ。さらに宇宙全体の急激な断熱膨張によって温度が下がり}と述べている。それでも、ビッグバンが起こり宇宙全体が、火の玉になり、40万年後、宇宙が1億光年の大きさになったとき、やっと宇宙は晴れ上がるほどの温度に下がるといっているのだから、その熱エネルギーだけでも、ミクロの宇宙に詰め込んだらどれほどの温度になることか。それだけではない、その間、ビッグバンで物質まで生み出している。E=mcから考えると、初期宇宙には膨大なエネルギーがあったと考えられる。これも宇宙が生まれたときにはすべてエネルギーだったのだから、生まれたての宇宙のエネルギーはそれこそ天文学的数字になる。そんなものが、ミクロの真空の中にあったというのだ。その時の宇宙の温度は{「高温相の真空」}などという生半可なことではなかったはずだ。

ここにあるように、もし仮にミクロの真空が仮想粒子を生んでそれが相転移したからといっても、量子論ではへそが茶を沸かすほどのこともできないだろう。まかり間違った時にかろうじて0に近いエネルギーを産むことしかできないのだから。

まるっきりつじつまが合わない話だ。

3 真空のエネルギーの大きさ

{仮想粒子は観測こそできないが、瞬間的にはエネルギーを持つために、真空全体にわたって仮想粒子対のエネルギーを足し合わせてみると、ゼロにならないのだ。}ということだそうだ。ところで、真空全体にわたって、というけれど、インフレーション前の宇宙は量子の大きさであったから、仮想粒子はせいぜい1個対か2個対くらいしかできないはずだ。頑張っても100個対だろう。仮想粒子は、あるかないかわからないほど小さなエネルギーしか持たないようだ。そんなものが100個集まっても、1グラムの氷も溶かすことはできないだろう。

 まさか、{真空全体にわたって}というのが、この宇宙より大きな宇宙だと思っているのではないでしょうね。それでは宇宙は、インフレーション前に既にあって、それも、今の宇宙より大きな宇宙になってしまう。それでは定常宇宙論になってしまう。

 それではつじつまが合わない。まあ、つじつまが合うことがないのがインフレーションの特質なのだから仕方がないか。

4 {真空全体にわたって仮想粒子対のエネルギーを足し合わせてみると、ゼロにならないのだ}

宇宙が生まれる前に今と違う宇宙が広がっていて、その中にわれわれの宇宙が生まれたという考え方を見たことがある。われわれの真空が真真空で、それ以前の真空が偽真空とか名付けていた。すると、偽真空が高温相で、その偽真空のエネルギーが足し合わされて、一点からインフレーションが起こったということなのだろうか。そういう意見も見たことがある。

 では、その広大な偽真空の高温相の真空のエネルギーが造り出す仮想粒子対の{真空全体にわたって仮想粒子対のエネルギーを足し合わ}すとしよう。

ア 問題点1 宇宙全体のエネルギーが生まれるか?

すると、{ゼロにならない}エネルギーができるということだ。ゼロにならないというのだから非常に小さなエネルギーを示していると思われる。これでは、インフレーションも起こせないし、その後に続くビッグバンで、全宇宙の物質と、ダークマターと、ヒッグス粒子と、位置エネルギー(たとえば月と地球が衝突したとする。すると巨大な位置エネルギーが、熱エネルギーに変わり、地球も月もドロドロに溶け火の玉になるだろう。宇宙の埃にも満たない地球と月でさえそれくらいの位置エネルギーを持っている。宇宙全体では天文学的数字の位置エネルギーが存在する)を作り出すことなど不可能である。

イ 問題点2 エネルギーの集め方は?

 一歩譲って、それが可能なだけのエネルギーができたとしよう。

 仮想粒子エネルギーは非常に小さいから、宇宙を作り出すためには膨大な仮想粒子からエネルギーを集めなくてはならない。今観測されている宇宙の物質とエネルギーは膨大である。それを観測できない仮想粒子対が作るには、今の宇宙よりはるかに大きな宇宙がいると考えられる。インフレーション宇宙を作るには、その広大な宇宙に発生したエネルギーをミクロな1点に集中させなければならない。そして、この宇宙を生じさせ、インフレーションを起こさせなければならない。

そのミクロな1点に広大な宇宙から仮想粒子対が作るエネルギーを集めるにはかなりの時間が必要であるはずだ。100億光年とか、200億光年とかの彼方からも仮想粒子のエネルギーを運ばなければならないのだから。光速で、運んだとしても、100億年とか200億年とかが必要である。

 どのようなシステムで、全宇宙のエネルギーをミクロの1点に集中させたのだろうか。その仕組みはどのようなものだったのだろうか。えミクロな1点にエネルギーが集中したのだろうか? この本にはそれは書いていない。

ウ 問題点3 エネルギーの保存方法

エネルギーを1点に運ぶことができたとしよう。

先に述べたように、エネルギーを集めるにも、距離による時間差ができる。また、宇宙全体で、ランダムに粒子対が発生するとすると、宇宙全体で時間差が大きくなる。すると、1点に運ばれてくるエネルギーも到着の時間差ができる。

この二つから、ミクロな1点に運ばれてきた、粒子対のエネルギーをほかのが届くまで保存しておかなければならない。やがてこの宇宙ができるはずの場所(どんな所か不明)にそのエネルギーをどのような形で、どのような方法で保存しているのだろう。

5 エネルギーの種類

インフレーションは空間を膨張させたということだ。今の物理学では、空間を膨張させるエネルギーは特定されていない。4つの力にはその力はない。謎のエネルギーである。

するとこの宇宙には4つの力とあと一つ、5つ目の力があるということになる。それは謎だ。ところが、物理学者は5つ目のエネルギーについて何も言っていない。研究すらしていない。宇宙を作り、今も空間を膨張させているエネルギーである。宇宙そのものを支えている根源の力である。なぜ物理学者もインフレーション宇宙論者も研究をしないのだろう。不思議な現象だ。もしかしたら、そんなエネルギーは信じてないのかも。それこそ摩訶不思議なことだ。

 

 

結論

真空の相転移は、今分かっている物理学に当てはまらない未知の現象であるといえる。だから、水の相転移という比喩でしか説明できないのだろう。だが、科学なら、現象があれば、その現象を、そのものの原理で説明しなければならない。比喩は往々にして、真実を隠す。この場合も、真空の相転移について科学的には何一つ分かっていないので、水の相転移でごまかしていると思われる。だから宇宙初期のことは、謎が謎を生む奇想天外な現象でしかなくなっている。

このことから、インフレーション宇宙は、空想の産物であって、科学の産物ではないといえる。