相対論の二つの土台について目次  「相対論の二つの土台について 1  相対論の二つの土台3


「相対論の二つの土台」(Newton2017,5)について2

著者 田 敞

(以下{ }内は上記本からの引用)

 

光速度不変の原理

{光の速度はどんなに勢いをつけても変化しない!アインシュタインが明らかにした驚愕の事実}

考察

この本では光速度不変の原理は一つのものとして書いてあります。しかし、本当は二つの光速度不変が書いてあります。

一つは、上に書いた「光の速度はどんなに勢いをつけても変化しない!(光源の速度が加算、あるいは引き算されない)」。

もうひとつは、「光は観測者に対して光速度である」です。

この二つを同一の{光速度不変の原理}としてこの本は取り扱っています。しかし、この二つは、普通の計算(四則算法・一般的な物質の現象を計算できる)で考えると互いに否定し合う関係にあります。

 そのことを考えてみます。

問題1 この本の思考実験の設定

ボールの代わりに光を発射する実験です。やはり3つの場合が想定されています。

Aは光を発射する人も、観測する人も動きません。(光速度に影響しない)

Bは光を発射する人だけが前進し、観測者は動きません。(光の速度はどんなに勢いをつけても変化しない!「光速度不変の原理B」)

Cは観測する人だけが前進します。(光は観測者に対して光速度「光速度不変の原理C)

 この本ではこれらのどの観測者に対しても、光速度は299,792.458km/sになると述べています。

考察

 この実験はアインシュタインが発明した有名な思考実験の踏襲です。しかし机上の想定ですから、本当は実験ではありません。考えただけです。考えだけですから実証実験にはならないので仮説です。あるいは机上の空論の可能性さえあります。そこでそれが事実であるか考えてみます。

 

考察の1{光速度不変の原理を確認した実験}

 この実証例が書いてあります。

 {実験では,光速の99.975%で飛ぶ「パイ中間子」という粒子から放出される光の速度が測定されました。ほぼ光速の光源から放たれた光の速度は,光速の2倍にならずに,やはり光速(秒速30万キロメートル)のままでした。光源がどんなに速く動こうとも,その速度が足し算されることはなかったのです。}

 これは、上の思考実験例のBの場合(光源が動く場合)の実証例です。光源が動かないA(共に動かない)や、C(光源は動かないで、観測者が動く)の場合のことではありません。異なる条件ですからAやCの実証にはなりません。

残念なのはそのことが断っていないことです。3つの場合について分けているのに、パイ中間子の実験が、3つを証明しているかのように錯覚させます。それでは3つに分けた意味がありません。そこでそれぞれの場合について考えてみます。

・ Aの場合

 観測者も光源もその場で停止しています。

(注:ただその場にいたって動いているのは確実です。この本の後に書いてあるように、地表は地球の自転公転その他の宇宙空間での動きがあるので、かなりの速度で動いています。それも複雑な回転運動の組み合わせです。ただこれでは、仮定のBとCの組み合わせになってしまうので、光の速度に比べて、地球の速度は小さすぎるので、観測誤差の範囲になるので一応停止とします。この本でもそういう想定なのでしょう。また、相対性原理では停止は存在しないので困るのですが、この本でもそれは何故か考慮していないので、私もそういうことにします。ただニュートンでは絶対静止があるので、そこからすべての物質と光の速度は測れます)

すると、光は光速で発射されて、光速で観測者に届きます。光源、観測者とも速度がないので光の速度に影響しません。

(注:厳密には、これはニュートンがいう絶対空間がある場合のみに成立します。絶対静止空間の中で、絶対静止している光源と観測者の場合のみにいえることです。相対性原理では、{速度は見る立場によって、簡単に変化する}のですから。たとえばパイ中間子から見たら、パイ中間子は止まります。光速の99.975%で飛ぶとはいえなくなります。かわりに加速機が光速の99.975%でパイ中間子と反対方向に飛ぶことになります。これが相対性原理で起こる驚愕の現象です)

・ Bの場合の光速度不変

 光源が前進しながら光を出します。しかし、光の速度は光速のままで、光源の速度は足し算されないということです。これは、上に書いたパイ中間子から出る光が光速の2倍にならなかったことから証明されたということです。{光の速度はどんなに勢いをつけても変化しない!}ということです。

 これは、別に目新しいことではありませんし、「!」をつけるほどのことでもないし、{驚愕の事実}というほどのことでもありません。

ニュートンの慣性の法則では、ボールの速度は投げた人の速度が足し算されますが、光源の速度は光の速度には足し算されません。理由は、ボールは慣性質量を持っているから投げた人の速度(運動エネルギー)をボールは保存しますが、光は慣性質量を持たないので光源の速度(運動エネルギー)を保存できないから、光源の速度は光の速度に足し算されないのです。真新しいことでもないし、{!}をつけるほどのことでもないし、{驚愕}するほどのことでもありません。特殊相対性理論とは関係のない普通のことです。

したがって、パイ中間子から出た光は、パイ中間子の速度は足し算されずに、光独自の速度になります。

このとき光源の速度が足し算されないので、光は光源から光速度では遠ざかりません。光と光源は相対速度を持ちます。パイ中間子とそこから出た光がそれを証明しています。

慣性質量を持つか持たないかの問題なのでこれは相対性理論とは関係ない現象です。

このときの光は何に対しての光速度なのかが問題です。ニュートンなら、宇宙空間(絶対静止)に対しての光速度です。特殊相対性理論では観測者に対する光速度です。ここが、ニュートンと、相対性理論の大きな分かれ目です。

 この問題が現れるのが、Cの場合の光速度不変です。これが特殊相対性理論の根幹です。これが事実ならば、それこそ「!」であり、{驚愕の事実}といえます。

・ Cの場合

 動いている観測者に対して光の相対速度が光速になっています。ボールの場合、ボールとキャッチャー(観測者)の相対速度が、キャッチャーの速度によって変化します。(注:1に書いたように、変化するのは相対速度であって、ボールの速度ではありません)

光の場合は、観測者の速度にかかわらず光は常に光速度で観測者に届き、観測者に対する相対速度は変化しないというのです。観測者が光速で光に向かって進んでも、光との相対速度は光速で、2倍の光速にはならないというのです。また、観測者が、光速で光と同じ向きに進む時も光は観測者に対して光速で追いつくというのです。同じ速度(光速)なのに、光はあっさり光速で追いつくというのです。同じ速度で走る車なら決して追い付けません。これがアインシュタインの光速度不変の驚愕の理論です。光速で逃げる悪党のロケットを光線銃で撃つと、レーザー光は光速でロケットに当たるというのです。ミサイルならこうはいきません。光速のミサイルでも追いつくことはできません。それが光なら相手が止まっているときと同じように光速で当たるというのですから、悪党はどんな速度で逃げても逃げないのと同じということになります。無敵の光線銃です。

これはアインシュタインが、鏡を持って光速で飛んだら、前の鏡に顔は映るだろうか、と考えたことから始っているということです。アインシュタインは、映らないのは変だと考えたということです。光速で飛んでもそこから出た光は光速で鏡に当たって光速で跳ね返ってくると考えたようです。

この考えの間違いは「映らないのは変だ」と考えたことです。たとえば、音は、超音速で飛ぶジェット機から空に出ると、ジェット機においてきぼりにされて、ジェット機には聞こえません。(機体を伝わってくる音は別ですが)顔から出た光も、おいてけぼりにされて、顔は鏡には映りません。別に変ではありません。

 この場合の証明は載っていません。この本にある実証はパイ中間子の現象だけです。そこで、パイ中間子の現象がこのCの場合にもあてはまるか考えてみます。

 パイ中間子から出た光は光速で飛んでいます。2倍の光速にはなっていないということです。すると、パイ中間子に対して光は光速にはなっていません。どのような速度の物に対しても光は光速で進むということを否定している現象です。

 このことから、パイ中間子の現象は、Bは肯定しているけれど、Cは否定しているということになります。

 

・ Cの場合の実証について

この本に載っている{アインシュタインは、1905年6月に発表した相対性理論の論文の中で,「光を放出した物体が止まっていようと動いていようと,光は一定の速度で進む」と述べています。光速度不変の原理はアインシュタインのたんなる仮定であると誤解されることも多いのですが,今や数多くの実験によって,高い精度で確認されています}です。これが光速度不変の原理だということなのでしょうが、{「光を放出した物体が止まっていようと動いていようと}ということなので、これは本の例のBの場合です。Cの場合ではありません。Bの場合は普通の現象で、書いたように驚愕の事実ではありません。{驚愕の事実}はCの場合なのですから、Cを証明する事実を示さなければなりません。ところが、示しているパイ中間子の現象は、Cを否定する現象です。困ったものです。

{今や数多くの実験によって,高い精度で確認されています}といっていますが、パイ中間子の実験以外に数多くの実験があるはずなのに一つも載っていません。それも、肝心な、Cの、観測者が動いている場合の証明が載っていません。パイ中間子の実験でCの場合が証明できたかのように書いてあるのはどうしてなのでしょう。科学なのですから、光源が動く場合と観測者が動く場合はちゃんと分けなければなりません。A、B、Cとわざわざわけたのですから、実証もそれぞれに分けなければならないはずです。

結論

 おなじ光速度不変の原理でも、光源が動く場合と、観測者が動く場合では異なった現象ですから、違う実験で証明しなければなりません。この本にはC(観測者が動くとき)の証明は載っていません。おそらく、Cの証明ができないので、おなじ光速度不変という名をつけたBの実験で代用しているのでしょう。けれど、違いくらい科学者ならわかるでしょう。Bの場合は、ニュートンの絶対空間絶対時間の中の現象です。Cの場合が特殊相対性理論の世界です。時間が伸び縮みし、空間が伸び縮みする、驚愕の世界です。その肝心のCの場合の証明を、知らんふりをして関係ないBの場合の実証で代用しているのはどうしてなのでしょう。まさかごまかそうとしているというわけではないでしょうが。

特殊相対性理論がこの世界の法則なら、地球上の現象に一つ残らず特殊相対性理論の現象が現れているはずです。実証には事欠かないはずです。ところがそれが一つもありません。あるのは、相対論効果は通常の世界では現れない、という言い訳と、思考実験という空想だけです。

この本に、「光速度不変の原理」のうちの、光は観測者に対して常に光速度であるという特殊相対性理論の土台である方の実際の例が示されていないのは、そのような事例が存在しないから載せられないのです。この現象はニュートンの法則が地球上のすべての運動、蟻の散歩から、銀河の回転までなにからなにまでひとつ残らず現れているのと、非常に対照的です。どうして特殊相対性理論の現象は、蟻の散歩にも、銀河の回転にも、その他のあらゆる実際の動きに現れないのでしょう。簡単です、特殊相対性理論は実際の物質の動きを表していないからです。思考実験という空想の世界の中の空想の光と空想の物質の理論だからです。あの世のルールなんでしょう。

補足

 二つの光速度不変、B(光は光源の速度に影響されない)とC(光は観測者に対して常に光速度である)と特殊相対性理論の関係について。

Bの場合とCの場合についてもう少し考えてみます。

Bの場合{光は光源の速度に影響されない}

パイ中間子から出た光は2倍の光速にはならず光速のままだということです。光は慣性質量を持たないから光源の速度に影響されないという、光速度不変の原理に一致しています。理論と実際の現象に矛盾はありません。ところがこの現象は相対性理論とは矛盾します。以下それを考えてみます。

Cの場合{観測者に対して光速度}

この場合の実際の現象はこの本には載っていません。そこで、思考実験で考えてみます。{観測者が前進(C)すると,前進した分の速度が足されて,光はより速く進みそうですが、実際は常に一定(秒速約30万キロメートル)であり,光源側から見ても観測者側から見ても,その速度は変化しません。}とあります。この二つの場合(光源側と観測者側)について考えてみます。

問題1 光源側から見て光速度

{宇宙船に乗って,ぐんぐんと速度を上げながら,ときどき宇宙船から前方に光を放つことを想像してみてください。その光を宇宙船の中から観測すると、「光速度不変の原理」のとおり,光は常に光速(秒速約30万キロメートル)で前方に進んでいくはずです。}と述べています。

考察1 条件の確定

宇宙船から見ると光は宇宙船から光速で離れていっている、と解釈します。

(非常にあいまいな表現です。光が、宇宙船に対して光速なのか、宇宙空間に対して光速なのか、両方に取れる書き方です。科学の書き方ではありません。ここでは、宇宙空間に対して光速なら、絶対静止に対しての光速で、ニュートンの考え方になるので省きます。相対論では、何ものに対しても光速ということなので、宇宙船に対して光は光速という相対論を想定します)

考察2 内容の是非

宇宙船が光速の99.975%の速度で飛んでいるとします。特殊相対性理論では、そこから発射された光は宇宙船に対して光速度で離れていきます。

これについて考えてみます。

光が宇宙船から、光速で離れるには二つの場合が考えれられます。

一つは光の速度が光速の199.975%のときです。

このとき、両者の速度差は光速の100%になり、光は光速で宇宙船から離れていきます。単純な引き算です。ところが、この場合は、もうひとつの光速度不変の原則、「光は光源の速度に影響されない」というBの原則に反します。光は、明らかに光源(宇宙船)の速度を何らかの形で反映しています。

このように、Bの「光は光源の速度に影響されない」、とCの「光は何ものにも光速度である」、という二つの光速度不変の原則は、観測者が光源であるときは相反する原則になってしまいます。

パイ中間子の観測では、光はパイ中間子に対して光速では離れていってはいません。Bの原則には当てはまるけれど、Cの原則には当てはまっていません。Cの光速度不変を否定している現象です。

もうひとつの可能性を考えてみます。宇宙船が光を発した後、停止する場合です。宇宙船の速度は0なので、光は光速度で離れていきます。しかし、これでは、宇宙船が飛んでいるとう条件に反しますし、光はどのような速度のものに対しても光速度であるという原理を証明することにはなりません。

このように、何ものにも光は光速度であるという考えは普通の考えでは成り立たない現象です。

しかし、特殊相対性理論では可能かもしれません。驚愕の理論なのですから。

特殊相対性理論では、物体は速度に応じて時間の進み方が遅くなるという理論です。光速に近づくほどそれは顕著になるということです。この考えだと、光速に近い速度の宇宙船の時間の進み方は極端に遅くなります。たとえば、宇宙船の時間の進み方が極端に遅くなり、普通の時間の進み方より100分の1になったとします。すると、普通の人の1秒間に、宇宙船の時間は100分の1秒しか進みません。すると宇宙船が進む距離は、普通の人の1秒の間に100分の1秒分しか進みません。宇宙船は、それを外から見ている人にとって、光速の99.975%ではなく、その100分の1の、光速の9.9975%の速度になります。ゆっくりです。それでも速度が0になることはありません。宇宙船から出た光は光速では宇宙船から離れていけません。

相対論の計算は四則算法ではなく高度で複雑でうまくいくのでしょう。しかし、パイ中間子の実験では、パイ中間子は、速度を変えていません。時間が遅くなったということも観測されていません。

相対論効果は観測されていないということですから、相対論を否定している実証ということです。

またこのときの光は何に対しての光速度なのでしょう。光が絶対速度で物質が速度に応じて、時間や空間が伸び縮みするというのが特殊相対性理論です。光は絶対速度を持っています。この速度は何に対しての光速度なのでしょう。宇宙空間の中を絶対速度の光速度で飛ぶなら、その光に対して、宇宙空間は絶対速度0メートルになります。絶対静止の宇宙空間ができてしまいます。するとすべての物質の速度はこの宇宙空間から測れてしまいます。ニュートンの絶対空間になってしまいます。

結論

 二つの光速度不変の原理があります。そのうち、「光は光源の速度に影響されない」という原理は、理論も実証もあります。しかし、もうひとつの光速度不変の原理である「光は何ものにも光速度である」という原理は、理屈も実証もされていないということです。

パイ中間子の観測では、「光は光源の速度に影響されない」のとおりに動いているけれど、「光は何ものにも光速度である」というのとは反する動きをしているということです。

このことから、「光は何ものにも光速度である」という原理は、間違いであるということがいえます。