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タイムトラベルと双子のパラドックスについての疑問6

(「Newton7,2017」ニュートンプレス記事より)

著者 田 敞

(以下{ }内は、上記本よりの引用)

 

問題

{兄弟でメールを送り合って時間の経過を伝える}P44

条件

飛んでいる兄の乗った宇宙船に6年ごとに地球からメールを送る。

{1通目のメールは宇宙船が目的地について折り返す18年目にようやく届きます}

 上の条件からわかること

・ 兄の宇宙船は目的地へ18年で到達している。

(相対論の距離は14.4光年とある)

・ メールは24年(6+18=24)で到達している。

問題1

宇宙船は18年で目的地に到達している。メールは24年で目的地に到達している。

どちらが速いでしょう。

考察

「もちろん短い時間で着いている宇宙船です」

「いや、メールは光速です。宇宙船は光速の80%の速度です。メールの方が速いに決まっています」

「6年後出発したメールが24光年先の目的地で追いついているからやっぱりメールが速い」

結論

速度ではメールの方が速いのに、速度の遅い宇宙船の方が短い時間で目的地に着きます。不思議な逆転現象が起こっています。これもパラドックスです。

問題2

このパラドックスに対する本の答え。

{相対性理論によれば、動いているものは進行方向に対して長さがちぢみます。}

{宇宙船の兄から見ると,地球を含む周囲の宇宙全体が光速の80%で動いているわけですから,宇宙全体が進行方向に対して60%に縮むのです。}

すると,目的地の惑星までの距離も60%に縮み14.4光年(=24光年×0.6)になります。

{距離が短くなるため,宇宙船は目的地に18年で到着することができます。}

考察

{宇宙船の兄から見ると,地球を含む周囲の宇宙全体が光速の80%で動いている}について。

(1) 実際の観測との比較

 このような現象は観測されていません。そればかりではなく、反証となる現象が観測されています。

反証例

 小柴氏の観測したニュートリノ。

 このニュートリノは超新星からやってきました。距離は15万光年です。その距離を15万年でやってきたということです。ほぼ同時に超新星からやってきた光は数時間遅れています。光が超新星を出たのが数時間遅れていたからということです。すなわち光もニュートリノも、15万光年を15万年かけて到達しています。

 光速の光は15万光年を15万年かけてやってくるのは問題ありません。この本でも、光は惑星までの24光年の距離を24年かけて到達すると書いてあります。しかし、ニュートリノは質量のある物質です。相対論効果が出るはずです。すなわち、ニュートリノから見ると、宇宙は縮まらなくてはなりません。ほぼ光速ですから、99%以上は縮んでいるはずです。ところが、実際は、ニュートリノは地球にやってくるのに15万年かかっています。15万光年は15万光年のままということです。1mmも縮んでいません。

 光速で飛んでも宇宙は縮まず、時間も短縮できないということの実証です。

 いやそれは地球から見たからだ。ニュートリノから見ると縮んでいる、ということかもしれません。すると、その時のニュートリノは、1年以内に地球に到達していることになります。しかしそんな現象は観測されていません。

 この場合、1年以内に到達するニュートリノと、15万年かかって到達する二つのニュートリノが出現します。ニュートリノは二つに分裂します。エネルギーが倍になります。エネルギー不変則に反します。これも事実ならパラドックスです。しかし、そんな現象は観測されていません。現実には、宇宙がちぢんでいないことの証拠です。

(2)情報の伝達

{宇宙船の兄から見ると}ということだが、兄は停止しているという設定ですので、兄に到達する光は光速です。すると、目的地に到達する18年間に兄が見られる宇宙は一番遠いところで18光年先です。{周囲の宇宙全体が光速の80%で動いている}ことを知る手段はありません。

 また、反対に、兄の宇宙船が光速の80%で動いているということを、宇宙全体に知らせる手段もありません。光速で伝えたとしても、24光年先の惑星に知らせるのに24年かかってしまいます。惑星がそれを知って動きだしたときには18年が過ぎています。惑星が宇宙船に向かって動き出したときには、24年も経過しているので、手遅れです。とても18年では、宇宙船に到達できません。

 反対に、兄から見て、その惑星が動きだしたのが確認できるのは48年後です(=24+24)。18年以上たっています。手遅れです。

 今、約120億光年先の銀河まで観測されています。そこまで兄の情報が届くのに120億年かかります。その銀河からの情報が来るのに、やはり120億年かかります。

 兄が見られる順に近いところから順次光速の80%に宇宙がなって行き、120億年後に、やっと、120億年先の銀河も動き出すのでしょうか。

 兄が見ることができる範囲は光速で広がって行きます。地球が見えてから太陽が見えるまで8分かかります。その間地球は光速の80%で動きだしています。その後8分経って太陽も動きだします。すると、地球は8分光年太陽から離れています。大変です、太陽系はバラバラになります。

 また、動きだした宇宙と、まだ動かない宇宙の境目では、光速の80%の速度差ができます。星間ガスは猛烈な摩擦熱を生じるでしょう。宇宙に球状の光る壁が出現し、光速度で広がっていくことでしょう。

 この本では、兄から見るとすぐ全宇宙が動きだすということですが、そのシステムが書いてありません。書けないからでしょう。

(3)宇宙がちぢむ速度

 兄から見ると宇宙がちぢむということです。何事にも、状態が変化するときには、時間がかかります。

 兄から見ると、24光年の距離が、14.4光年に縮んだということです。縮んだ距離は9.6光年です。惑星が宇宙船に9.6光年近寄ったということになります。この距離を、どれだけの速度で惑星は移動したのでしょう。光速だと、9.6年かかります。

宇宙全体がちぢむということです。すると、10億光年先の銀河も宇宙船に近づいてきたということです。その距離は4億光年です。銀河を4億光年移動させるには、どれくらいの時間がかかるでしょう。またどれくらいのエネルギーがいるでしょう。

(4)エネルギー

 宇宙全体を動かすエネルギーが不明です。物質が速度を変えるには新たなエネルギーが加わらなくてはならないというのがニュートンの慣性の法則です。

 兄から見ると宇宙全体が動くということだけれど、宇宙の速度を変える新たなエネルギーは存在しません。それでも宇宙が動くということは、慣性の法則の否定です。新たな速度になるということは、運動エネルギーを新たに持つということです。このエネルギーはどこから湧いて来たのでしょう。エネルギー不変則の否定でもあります。

(5)言葉の問題

{距離が短くなるため,宇宙船は目的地に18年で到着することができます。}について。

{相対性理論によれば、動いているものは進行方向に対して長さがちぢみます。}とあります。

 このとき、兄は停止していて、宇宙が動いている設定です。したがって、宇宙船が惑星に到着するのではなく、惑星が動いてきて宇宙船に到着するのです。日本語が間違っています。言葉くらいということではありません。

 宇宙船がエンジンを動かすと、宇宙船は動かずに、惑星が動いてきて18年で宇宙船に到着するというのは常識ではありえないことです。また、上に書いたように相対論以外の物理法則にも反しています。もし、それをごまかすために、宇宙船が到着する、という言葉を選んだとしたなら、問題です。科学の言葉は正確でなくてはなりません。ごまかしはだめです。

(5)地球の問題

 {宇宙全体が進行方向に対して60%に縮むのです。}

 このとき地球も60%進行方向に縮むということです。すると地球は40%ちぢんで、楕円球になります。巨大な地殻変動が起こっています。地震、津波、火山の爆発も引き起こすでしょう。天変地異です。

 この宇宙には、様々な物質が高速で飛んでいます。相対論では、その物質から見ると地球はつぶれています。その物質から見ると、地球は大変な災害に見舞われているでしょう。困ったことです。

 そんなことはありません。いくら光速の物質が宇宙にあっても、地球はつぶれたりしていません。相対論効果で地球がちぢむ、ということがないということが実証されているということです。

 高速の物質には人間が乗っていないから、観測できないから大丈夫、ということですか。それでは、人間が観測したものしか存在しないことになってしまいます。人間の目が宇宙の中心であるということになります。それはないでしょう。

結論

相対論効果で宇宙がちぢむということはないということです。相対論以外の物理法則と、実際の現象からそれが言えます。したがって、宇宙船は惑星まで30年かかります(=24÷0.8)。速度が遅い方が時間がかかるという、普通の現象です。