双子のパラドクス目次  兄から見ると地球は動くか 兄だけが行う折り返し   メッセージ




タイムトラベルと双子のパラドックスについての疑問4

(Newton7,2017)

2017,9.1

著者 田 敞

(以下{ }内は、上記本よりの引用)


問題

 兄の方が若い

条件設定

ア 20歳の双子

イ 兄が宇宙船に乗る。

ウ 光速の80%の速度の宇宙船

エ 地球から24光年離れた惑星を往復

オ 往復するには60年かかる。

カ 相対性理論によると

・ この宇宙船の時計の進む速さは60%に遅くなっている。

・ 宇宙船は進行方向に対して60%ちぢんで見える。

 

第1の仮説 (弟から見た場合)

 特殊相対性理論で考えると、兄の時間がゆっくりになるため

・ 再会した時の兄は56歳、弟は80歳である。

・ 兄は未来の地球にタイムトラベルしたことになる。

となるという。

考察

西暦2000年に兄が出発したとしよう。再会したとき、相対論なら兄の時計は2056年を指しているはずです。弟の時計は2080年を指しているはずです。時刻が異なるこの二人が同じ時刻に再会しています。問題はないのでしょうか。

 そのときの問題

@ どちらの時刻が正しい時刻なのだろう。

A 普通の場合、

2056年の時刻にいる人と、2080年の時刻にいる人は会うことができません。相対論の場合は、いくら時刻が違っていても会うことができるようです。

1 @の問題

相対性理論ではどちらの時刻も正しいということです。

二人の持っている時計を比べてみます。指している時刻が違います。これでは困るので時計を合わせます。どちらの時計も正しい時刻を指しているというのが相対性理論です。ではどちらの時刻に時計を合わせたらいいのでしょう。

普通、時計は標準時に合わせます。これと違う時刻の時計は間違っているとして、正しい標準時に合わせます。正しい時刻と、間違った時刻があって、間違った時刻の方を正しい方に合わせます。ところが、この場合の兄の時計と、弟の時計はどちらも正しい時刻を指しているはずです。

この解決は、ガモフという人の書いた、特殊相対性理論「不思議の国のトムキンズ」という本にあります。速度によって違う時刻を指している時計の針を指で回して、駅の時計に合わせています。駅の時計は標準時です。それでめでたしめでたしです。狂った時計を合わせるのと同じ方法です。

特殊相対性理論で時間が遅くなったら、指で時計を合わせればいいそうです。速度による時間の遅れと、指で回す時計の針は等価であるということのようです。何のことはない、特殊相対性理論の遅くなる時間とは狂った時計を指でノブを回して針を動かすことと等価なのです。相対論の時間は指で時計の針を動かせば、簡単に速くなったり遅くなったりするもののようです。この場合は時間とは時計の針の問題でそのほかのものは何一つ関係ないことのようです。速く動いたために、遅くなった自分の体の時間は考慮しないでいいようです。

2080年の地球にいる2056年の兄の体はどうすれば時刻が合うのでしょう。まあ、時刻なんて見えないから気にすることはないですか。

2 Aの問題

この本では、兄が未来の地球にタイムトラベルしたということしか書いていないけれど、弟が、帰ってきた宇宙船に入ると、宇宙船の時間は過去なのですから、過去の宇宙船にタイムトラベルしたことになります。過去や未来に簡単に行き来できるということのようです。地球や、宇宙船はタイムマシーンです。

着陸した宇宙船のタラップに足をかけると、片足は2056年にいて、残りの足は地上にあるから2080年にあるということです。宇宙船に出入りするたびに2056年と2080年を行き来することになります。不思議ですね。

空気はどうでしょう。地球の空気は2080年です。宇宙船に乗って帰ってきた空気は2056年です。扉をあけると混ざり合います。2056年の空気と、2080年の空気が混ざって、混とんとします。不思議な現象でしょうね。まあ、空気の時刻なんてレッテル貼ってあるわけじゃないし有って無きが如しだから、気にすることはないですか。

相対論では{兄と弟の時間の対応関係(いつといつが“同時”か)が急激に変わってしまう。}とあるように、時刻が違っても、同時であるということのようです。時計店の時計の針がみんな違った時刻を指していても、みんな時計店の中に同時にあるのと同じようです。まさか同じことだと考えていることはないと思いますが、良く似ていることは間違いないようです。時計店の時計も指で合わせますからね。ガモフとそっくりです。でも、似て非なるもの、なのでしょうね。電池切れで止まった時計と、速度で遅くなった時計とが同じでは、相対論も泣きますからね。

このことから、相対性理論によると、全宇宙の物質の時間の進み方は、速度や重力によって変わるけれど、常に、同時に存在しているということが分かります。相対論効果によって時間の進み方が違って130年3月15日の時刻になった物質も、2017年7月21日の時刻になった物質も、3026年12月31日の時刻になった物質も、今この宇宙に同時に存在しているということなのでしょう。どこに同時に存在しているかというと、速度は0m/sの時刻です。では重力はどれが基準でしょう。やはり重力0のところでしょうか。それともどうせどんなに時間の進み方が違って、時刻が異なっても、同時に存在するのだから、どこでもいいのでしょうか。実際は地球時間に合わせているようですし。地球は動いているし、重力もあるから、時間はそれに合わせて遅くなっているので、地球46億年(地球時間)の間にずいぶんと時間は遅れているはずです。

3 現在時刻と現在同時

この宇宙にあるすべての原子は、できてから今日まで、速度も重力も異なった歴史を持っています。ひとつとして同じものはないでしょう。巨大な星の内部にあった原子、中性子の中にあった原子、ブラックホールの中にあった原子、一度も星の中に取り込まれなかった原子等、重力による時間の進み方は大きく異なっているはずです。超新星で吹き飛ぶ原子、のんびり宇宙を漂っている原子、ブラックホールの周囲を高速で回転する原子など、速度による時間の遅速はすべての原子の時間の進む速度を異ならせているはずです。

宇宙を構成する原子の今の時刻はすべて異なっていると考えられます。それも、何十億年もの差があることでしょう。

相対論によると、それらが、今現在の宇宙に同時に存在しているということです。

 このことから、相対論効果で時間がいくら遅くなっても、いくら早くなっても、物質は今という時間に必ず同時に現れるということになります。

物質がこの瞬間以外には現れないということは、現象としては、ニュートンの、宇宙の時間の進み方は同じである、すべての物質は同一時刻であるという考えと何一つ違わない現象です。

 宇宙の時間は同一速度である。したがって、今宇宙のすべては同一時刻にある、というニュートンの考え方は実際の宇宙と矛盾がありません。しかし、宇宙のすべての物質の時間の進む速度は異なるので、今すべての物質の時刻は異なっている。しかし、今同時にすべての物質は存在しているという相対論では、異時刻の物質が同時に存在していることになります。常識では変な話です。

 同時と同一時刻とはどのように違うのでしょう。時刻が異なっても同時であるというのは不思議な現象です。普通の場合は、1938年3月14日12時29分の時刻にいる人と2019年7月21日10時54分の時刻にいる人は会うことはできません。時刻とはそういうもののはずです。しかし、相対論では、それらが同時に存在するというのです。話もできるし、握手もできるというのです。同時刻と、同時はまるで異なる現象のようです。

宇宙開闢以来、どんなに時間がゆっくりでも速くても、そのためにどんなに時刻が違ってもすべての原子が今われわれと同時に現れている。時間が遅く進んだために、今の世界に間に合わずに過去をうろうろしている原子とか、時間が速く進みすぎて、未来の世界に進んでいって、未来の宇宙をさ迷っているということはないようです。そんなことがあったとしたら、原子はどんどん過去に取り残されたり、未来に進んでいってしまって、今同時にある物質がこの宇宙からどんどん少なくなっていってしまうことになりかねません。もしそうなら、同時刻にある原子は宇宙にたった一つだから宇宙にはたった一つの原子しかなくなってしまいます。2017年8月20日の12時13分24秒の時刻の宇宙には原子がたった1個だけとなってしまいます。他の原子は他の時刻の宇宙に存在してしまいます。

地球だって安泰ではありません。赤道と、北極では速度が違うから、赤道の時間が遅くなって、赤道が過去の時刻に行ってしまうと、地球の現在の時刻から赤道がなくなってしまいます。それでは海の水がそこに流れ落ちてしまうから困ったことになります。船だって赤道がなくなれば赤道祭りができなくなってしまいます。それでは困るから、相対論はどんなに時間の進み方が違っても、同時に存在できることになっているのかもしれません。ありがたいことです。

 ところで、現在、ビッグバン宇宙論では、宇宙は137億歳だということです。これは何を基準にした時刻なのでしょう。地球時刻ということかもしれません。すると、地球が宇宙時刻の基準になってしまいます。ブラックホール時間を基準にすれば、時間はブラックホールになったときから停止しているので、宇宙年齢はずっと若くなります。30億歳ということになるかもしれません。中性子星の時間で計ると、宇宙の年の取り方は、地球時間に比べて非常に遅くなるから、80億歳くらいになるかもしれません。俺の時計では今は宇宙開闢30億年とブラックホールは主張するし、いや、俺の時計は80億年を指していると中性子性は主張するし、地球は、俺の時計は137億年を指していると主張するし、もっと小さな月などは、いや138億年を指していると主張するでしょう。

一体どの時計が本当の今の時刻を指しているのでしょう。物質が停止しているときの時間で計った時刻、ということでしょう。しかし、地球は動いています。小さな違いでも、46億年動いたら、時間は積もり積もってかなり、遅くなっているはずです。それだけではありません。特殊相対論では月から見たり、火星から見たり、金星から見ると、地球の速度は変わります。地球の時間の速度は定まりません。

結論

 同時刻と、同時の違いは明らかにしなければならないはずです。なぜ異なる時刻の人や物が同時に存在することができるのかを相対論は説明する必要があります。説明不足です。それも肝心なことがです。