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「宇宙物理学者がどうしても解きたい12の謎」(スティーブン・ウエップ、松浦俊輔訳、青土社)5

 


著者 田 敞


(以下{ }内は上記本よりの引用)



問題

ビッグバン3分後から20分後

{ビッグバンから3分後から20分後のあいだに、この宇宙の温度はわずか10億Kにまで下がる。}

{この温度になると、陽子と中性子が結合して原子核を形成できるようになる。陽子のうちおよそ75パーセントは単独で残り、そのまま水素原子核となるが、重水素原子核(陽子1個と中性子1個)、さらにヘリウム原子核(陽子2個と中性子2個)もでき、リチウムのようなもっと重い原子核もごく微量ながらできる。}

 

考察1

宇宙の温度が下がったのは、空間が膨張したためだと推測できます。では、この膨張は何の膨張なのでしょう。

このとき、インフレーションはすでに終わっています。すると、この膨張はビッグバンの膨張だということになります。ビッグバンは、銀河の赤方偏移から考えだされた理論です。したがって、ハッブルの法則による膨張になります。

ハッブルの法則を考えてみます。ハッブルの法則は、距離に比例して速度が上がります。この時期の宇宙は小さかったので、膨張速度はとても遅いはずです。260万光年先のアンドロメダ銀河でも膨張せずに近づいているくらいです。膨張するなら、宇宙は260万光年より大きくなくてはなりません。すると、3分から20分で260万光年以上に大きくならなければならないのですから、大変です。

インフレーションでこれ以上に大きくなったということなのでしょうか。

 で、宇宙は無事に、ハッブルの法則で膨張しているということなのでしょうか。

 もうひとつ問題があります。

 今の宇宙もハッブルの法則どおりに膨張しているということです。ビッグバン開始から3分から20分の間の宇宙は物質が詰まっています。核融合でヘリウムなどができるのですから少なくとも太陽の中くらいには物質が詰まっていたと考えられます。

 現在太陽は膨張していません。ビッグバン論の人が言うには、空間膨張より重力が強いから膨張しないということです。では、この、3分から20分の間の物質がしっかりと詰まった宇宙はどうして膨張できたのでしょう。全宇宙の物質がぎゅうぎゅうに詰まった宇宙は太陽より巨大な重力があったはずです。当然ハッブルの法則では膨張でできません。それが膨張しているというのです。ハッブルの法則以外の膨張力が働いていたということなのでしょうか。今のところその理論はないようです。やはり「謎」なのでしょうか。「謎」なのでしょうね。

考察2

これによると、宇宙ができて3分から20分後の間に、水素原子核、重水素原子核、ヘリウム原子核、リチウム原子核もできていたということです。

 このときの宇宙の大きさはどれくらいだったのでしょう。

 インフレーションを考えると、かなり大きくなっていたと考えられます。インフレーションの大きさは人によって様々で判断できません。ただ、ハッブルの法則では、138億年前には宇宙は1点であったということですから。そんなに大きくはなかったということです。

 光速で宇宙が広がったとして、宇宙は半径3光分から20光分の大きさです。光速の100倍で、半径300光分(5光時)から、2000光分(33光時)です。光速の1万倍で、3万(20.8日)光分から、200000(138,9日)光分です。

 銀河系は円盤部で半径5万光年あるということです。ハローは半径約50万光年です。これを20.8光日に詰め込むとどうなるでしょう。

 このような銀河が宇宙には2兆個あるという意見もあります。これを20.8光日にすべて詰め込むとどうなるでしょう。そのほかにも広大な宇宙空間にはガスがあります。どうなるでしょう。それでさえ、物質が光速の1万倍で飛んだときのことです。

 光速なら3光分です。そこに全宇宙の物質を詰め込んだらどうなるでしょう。

 そのとき宇宙はなぜブラックホールにならないのでしょう。

 この中で、{陽子と中性子が結合して原子核を形成できるようになる}でしょうか。{ヘリウム原子核(陽子2個と中性子2個)もでき}るのでしょうか。

 これでは、普通の恒星の内部と変わりがありません。光速で膨張したとして半径3光分から20光分、光速の1万倍の速度で膨張したとして3万(20.8日)光分から、200000(138,9日)光分の球です。その中に普通の星と同じ密度で物質がつまっていて、それが爆発して、宇宙全体に広がって、これだけの銀河ができるのでしょうか。できるわけはありません。銀河系一つだってできないでしょう。

 ビッグバン論者はそのあたりをどのように考えているのでしょうか。

 この本では、インフレーションは、超光速で膨張した。空間は超光速でもいいが、物質は、特殊相対性理論の制約を受けると書いているので、物質宇宙はそんなに大きくはなれなかったようですし。もちろん超光速の速度を特定はできていないから、何とも言えないし。(空間膨張だから、物質もそれに伴っているのだから、超光速でもいいという人もいるようです。まあ、ビッグバン論ですから、ビッグバンに都合のいいことは何でもありです。)

 インフレーションにしろ、ビッグバンにしろ、宇宙を膨らませるエネルギーや仕組みの、科学的な理論はないようなのですし(空間膨張の仕組みとエネルギーは謎です)。

 

結論

 宇宙誕生後、3分から20分の間の宇宙の大きさと、密度は「謎」です。まあ、この宇宙全体の実際の質量も大きさも分かっていないのですから考えようがないということでもありますし。それにしても、このときの宇宙が、ブラックホールにならずに、普通の恒星の中と同じ反応をしているのはどうしてなのでしょう。不思議なことです。「謎」なんでしょうね。