ジャスミンの風
「羌」を訪ねて敦煌へ−中国シルクロード紀行−11
トルファン
敦煌発トルファン経由ウルムチ行きの32人乗りの夜行バスは3
列2段式の寝台席で、ほぼ満席。運転手と助手の二人体制。途中
で給油(約87円/リットル)してから街中をはずれて、畑地→ブッシュ+
砂地→ブッシュ多数→砂地 と順次地勢が変わる中を一時間ほど
進み、現れた集落で一回目のトイレ休憩。しばらく走った所でビス
ケット等を食べ始めるが、隣席のお婆さんが大きな赤いトマトをか
じるのでその臭いが気になる。バスは時速80kmほどのスピードで
細長いポプラ状の並木のある舗装道を、前を行く車を大きな警笛
で追い立てながら疾走する。いつものことながらヒヤヒヤさせられ
る。空は曇っており風が強い。車内は空調が効いて快適。21時頃
に遅い日没があり、いつの間にか寝入る。 |
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[トルファンへのバス]
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[夜明け]
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新疆ウイグル自治区に入り、星星峡,?密(ハミ)を経由して?善(ピチャ
ン)を過ぎると間もなくトルファン。翌朝8時過ぎに下車。他に誰も降
りない。広い舗装道の周りを見渡すと途中バス停という感じで、予
期していたバスセンターではない。乗ってきたバスは180kmほど西
方の自治区首府ウルムチ行きだったので、どうもトルファンのバス
センターには寄らないということだったようだ。高昌北路という南北
方向に延びるだだっ広い通りの端に止まっていたバスの運転手に
地図を見せてバスセンターの位置を示したところ、このバスに乗れ
ばよいとの返答。しばらく待っていると南へ向かって動き出し、10
分ほど走ったモスク(イスラム教寺院)も混じる賑やかな交差点手前
で下車。一緒に降りた一人の乗客が西側すぐの所にあるバスセン
ターまで案内してくれた。早速、帰りのバス切符(20:30発の敦煌行
き)を購入する。 |
バスセンター内のベンチに座ってパンを食べていると、部屋の角に
旅行社のあるのが目に入った。訊ねてみると、一日バスツアーは既に
8:30に出発した後だと言う。仕方なく少々高いとは思ったが、時間も無
かったので約7,400円に値切って車を一日チャーターすることにした。
同乗者は中国人3名で、9時半過ぎに出発。ここトルファンは、西側に
連なるシルクロードの天山南路と天山北路を連絡する要衝だった町
で、イスラム教を信奉する中央アジア特有の風貌と慣習を持ったウイ
グル族の人々が居住している。盆地の中央に位置するため乾燥して
はいるが、夏場は酷暑が続き火州と呼ばれる世界でも有数の低地と
なっている。先ずは西遊記でお馴染の火焔山に向かう。土漠の中に
新しく出来た高速道を走るとすぐに左側に延々と横たわる山地が見え
てくる。15分ほどで芭蕉扇を肩に担いだ孫悟空のモニュメントのある
入口に到着。地殻の褶曲運動で紅砂岩から成るひだの入った山肌が
夏季の陽炎によって燃えているように見えると言われるが、赤っぽくな
った部分は何となくそれらしく見える程度。中には入らないで次に向か
う。
[火焔山の入口]
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[トルファンの街中]
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[ベゼクリク千仏洞にて]
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火焔山山中の一角にある仏教石窟のベゼクリク千仏洞。6世紀
から開削された古代ウイグル人の文化を伝える石窟で、遺跡の
中が自由に見学できるようになっている。内部には色彩豊かな壁
画や天井画が描かれており(撮影は不可)、中でも鮮やかな空色
が印象に残っている。つぎに向かったのが吐峪溝(トルク)。黄土色
の山裾にひっそりとした感じで佇む古くからのイスラム教徒の居
住地で、4本の尖塔が並ぶモスク(イスラム寺院)を中心地区として、
クネクネと曲がりくねった細い坂道の両側には土壁の四角い民
家が立ち並んでいる。乾いた居住区の所々に緑眩しい葡萄畑が
見られる。途中の薄汚れた絨毯を敷いた縁台に座った白髭の老
人が、そばに置いた洗面器に干し葡萄を入れて売っていた。この
時期生の葡萄は無いので、一杯詰まった袋をひとつ買ってみた。
噛むとほんのりと甘くておいしい。のどかな中央アジアの香りが
する。40分ほどでひと周り散策。 |
[吐峪溝(トルク)の集落]
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[葡萄の木陰で出会った吐峪溝の姉弟]
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[干し葡萄を売る老爺(吐峪溝)]
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