ジャスミンの風

                                         
                                           
「羌」を訪ねて敦煌へ−中国シルクロード紀行−8

敦 煌



  バスは定刻の14:30に嘉峪関バスターミナルを、400km先の敦
煌へ向けて出発。中型バスで運転手一人,助手一人。座席はほ
ぼ満席で、当方は左側の一番前の寝台席。エアコンは効いてい
るけれども陽が当って暑い。街中の街路樹の間を走っている時
には、綿毛のような白いものが空中を飛び交っていた。高速道
に入ると左側が土漠,右側がブッシュというような荒地に変わっ
た中を時速80〜100kmという猛スピードで飛ばすが、それがど
こまでも続くという具合い(ゴビ灘;タン=砂漠)。中国は広い!! 途
中でペシャンコになった事故車を見掛ける。2時間半ほど走っ
た所でトイレ休憩(トイレはあるが水は出ない)。そこから少し走
った所で忽然と大きな池が左手に見えてくる。片端に堤防のよ
うなものが見えていたので人造池なのだろうか? 更に30分ほ
ど走って瓜州(カシュウ=安西)の街中に入るが、小さな街でアッと
いう間に通り抜けてすぐにまた土漠とブッシュの荒地になる。こ
のゴビ灘を4時間ぐらい走った所で、ようやく前方に緑の木々が
見え始めた。看板の文字から判断するとこの辺りは植樹帯とな
っている模様。まさにオアシスである。「敦煌……」と表示された
工場や広告が目につくようになる。
  [敦煌行きのバス]

               


[土漠=ゴビ灘=の中での事故車)]



[敦煌のユースホステル(胡同形式)]
 19時過ぎに街はずれの敦煌バスターミナルに到着。30分遅れである。周
りの様子がおかしいので切符売り場の係員に訊いてみると、バスターミナル
の場所は4月に街中からここに移ったらしい。言い寄ってくるタクシーの運
転手を振り切って歩き始めたが、場所と方角の見当がつかない。途中で歩
いていた女性に訊ねたところ、携帯で日本語の話せる中国人に繋いでくれ
たので話してみると、目的のYH方面へ行く市バスは今日は無い、という。仕
方なくタクシーで向かうことにした。鳴沙山(メイサザン)のすぐ近くにあるYHま
で5kmほどの距離だった(後から聴いたところによると、市バスは未だあっ
たらしい)。20時前後にチェックインしたYH(一泊約560円)は、年季の入った
古い中国独特の胡同(フートン)形式で四合院(シゴウイン)造りの建物である。右
側から「月泉山荘」という大きな看板のかかった跳ね上がった屋根を持つ
門(横の壁には「敦煌華僑之家」とも書かれている)を入ると、門の両脇を含
めて四方に部屋があり、真ん中は屋根が無くテーブルと椅子が置いてあっ
て旅人たちの交流の場となっている。また中国様式の種々の模様が描か
れた欄干からは干したトウモロコシが吊り下がっていたり、壁には様々な姿
勢で琵琶を奏でる天女たちの色鮮やかな絵が貼られていたりする中国の
伝統的な家屋様式をそのまま利用しているようだ。

 中年の夫婦で切盛りしている様子であるが、あいにく英語が話せない
ため(トルコ人他の外国人も泊っているのに)要領を得ないので筆談に
切り替える。取りあえず薦められるままに敦煌ラーメンの夕食を摂る(約
140円)。かなりの量があり満腹になる。果たして無事トルファンまで行
けるのだろうか? 不安が募ってくる。


[ユースホステルの中庭(四合院造り)]




                                         
                                           


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