ジャスミンの風

                                         
                                           
「羌」を訪ねて敦煌へ−中国シルクロード紀行−6


嘉峪関(カヨクカン)


 6月3日(木)。朝から曇り空で風はあるが蒸し暑い(気温約25℃)。YH
をチェックアウトして、車と車,バイク,人等が急接近で鉢合わせし、ヒヤ
ヒヤし通しの市バスに乗って西安駅に向かう。10分ほどで着いた駅前
は相変わらず人,人,人の洪水で、切符売り場は長蛇の列。売店でせん
べい状のおかきを買ってから、あらかじめ上海で入手していたK-591
便の切符を見せて(X線に拠る持ち物検査あり)構内へ入る。「K-591
敦煌」の札のかかっている待合室の細長いベンチに座って待つこと一
時間余りで呼び出しがありホームへ。列車はすでに待機しており乗
車。嘉峪関まで約18時間の硬臥-2等寝台席-の旅である。車内はほ
ぼ満席で蒸し暑い。早速女性の車掌が切符と交換にプラスチック製の
票を手渡してくれる。11時少し前に定時発車。席は3段の最下段で、し
ばらくは窓からの景色を眺めながら過ごす。


嘉峪関への列車



硬臥席
 ほどなくしてトマト,きゅうり等の車内販売(買った乗客はそれらを丸か
じりしている)ややかんに入れた湯のサービス等が始まる。茶葉の入っ
た湯のみやカップ麺を用意していて、それらに湯を入れてもらって飲食
している人たちも結構居る。昼食時になると弁当の販売もあり、時には
何故か'筋肉もみほぐし器'等も売りにくる。何でも有りである。各車両に
あるトイレも特に問題無く水も出る。窓外の景色を見るのにも飽きて退
屈になると、席を立って若い母親に抱かれた赤ん坊の写真を撮ったりし
て過ごす。車窓から見える風景はやがて急峻な山肌や黄土色に濁って
重そうに流れる川に変わっていく。鉄路は甘粛省に入り、優美な天女の
絵が描かれた天水駅を過ぎると北西に針路を変えてひた走る。隴西駅
を越えると右手に水で浸食された崖面の上に平らな畑地、という風景が
続く。17:25に定西駅を過ぎても同じような風景がいつまでも続き、国土
の広さを思い知らされる。

 車内は空調が効いて涼しい。快適である。通路に付いている小
さな椅子に腰かけて大声でしゃべっていた3人連れの男性が女性
車掌に注意されて、以降小さな声で話すようになった。18時少し前
に車内弁当を買う。卵焼きに炊いた野菜,肉団子等それにライス
が付いて約380円。ピリ辛でおいしかったが、量が多くて満腹オー
バー。向い席の男性は持っていたカップ麺に湯を入れてきて夕食
としていた。おかずにしていた大きなラッキョウを4,5ケもらった。
19時過ぎに省都の蘭州駅を過ぎると右手に黄河の濁流が見えて
きた。ここは青海省に発した黄河が初めて通過する大都市なの
である。黄河はここから北上して、やがて東に向かい渤海に流出
することになる。


黄河の濁流



窓外に広がる黄土高原
 腕が寒くなってきたので長袖を羽折る。19:30に寝入るが、間もなく車掌に起
こされてパスポートの提示を求められる。窓の両側には黄土色の山々(黄土
高原?)が延々と連なっている。ここからの黄砂も日本へと飛んで行くのだろう
か? 海抜1,500mほどの平らな台地が連なる河西回廊に入っていく。武威(ブ
イ),張掖(チョウエキ)と通り過ぎて翌早朝4時半頃、酒泉駅を過ぎたあたりで車掌
がプラスチック票を集めに来て、切符と再交換してくれる(乗り越さないかと不
安だったが、これで一安心)。5時少し前に10分遅れで嘉峪関駅着。だだっ広
い駅前はまだ薄暗く、左右には門を閉じた数軒の食堂が見られるだけ。見上
げる空には右半分が欠けた半月と、またたいている明けの明星(金星)が見え
る。数人の人たちがコンクリート製の細長い階段に座って、夜の明けるのを待
っている様子。寒かったのでセーターを着込む。




                                         
                                           


http://www5f.biglobe.ne.jp/~jasumin/