ジャスミンの風

                                         
                                           
「羌」を訪ねて敦煌へ−中国シルクロード紀行−5




 翌日は良い天気で青空が覗いていた。地下道を通って高さ36mの「鐘楼」に向
かう。重櫓複屋造りと呼ばれる楼閣に登ってぐるっと一周すると、この建物は東西
南北各大街の4つの大通りが交わる心臓部に位置し、それぞれの通用門に真っ
すぐ繋がっていることがよく分かる。一番近くには城壁の南門(永寧門)が見通せ
る。楼閣は石の土台の上に建てられているという。西北隅には重さ5トンの鐘が
陳列されている(往時には時間の告知をしていたようだ)。10:30から楼閣内で10
分間ほどの楽器(中国琴,笛,太鼓,二胡,小さな幾つかの吊るした鐘それに木琴の
ような楽器)の合奏があったのでしばし鑑賞。





[鐘楼から南門を臨む]


[ライトアップされた鐘楼]



 一時間半余りで退出して、南門の近くにある「碑林博物館」を訪ねる。もと
もと孔子廟だった所で、最奥にある碑林の7つの陳列室には漢代からの大
書家による石碑や墓碑文等数多くの文章や絵が石面に彫られて展示され
ている。博物館の周りには書や絵(掛け軸等)を扱ういかにも中国然とした
屋台や売店が林立している。


[碑林博物館の玄奘三蔵刻図]





[城壁の上]
 そば状の黒い麺の昼食後、南門から城壁に登る(入場料約560
円)。この城壁は唐の長安城を元にして旧市街を囲むべく明代にレ
ンガを積み重ねて築かれたもので、高さ12m,上幅12〜14m,東西に
長い方形の総延長は約14kmとなっている。思っていた以上に幅広
い城壁の上端には四角い石が無数に貼りめぐらされており、北を向
くとすぐ近くに市街の中心部に位置する鐘楼が見えるが、東西を眺
めると端の方は霞んで見えないくらいである。上がった所にはレン
タサイクルがあり、借りることにする(一人乗り100分間で約300円,保
障金約1,400円)。時計周りに走り始める。石貼り道は欠けている箇
所もあって凸凹が多くて走り難い。城壁の内側には古い造りの家並
みが続いている。西南端で北へ向かうとやがて西門(安定門)に到
達。ここはシルクロードを臨む最大の城門で、古来 多くの人たちが
西方を目指して旅だった所。今は大きな街路樹に遮られて直接西
側の道路は見渡せないが、往時を思いやると感慨深い場所であ
る。
 さらに鐘楼からははるか彼方に見えていた北門(安遠門)を通り過
ぎてしばらく進むと、外側眼下に先日街路内を歩いて行った西安駅
が見えてくる。ここまでで70分ばかりかかり、東側の城壁を南門へと
急ぐ。凸凹があって走り難い上に、途中には緩いながらも登り坂も
あって足もかなり疲れてきたので、前へ進むのがかなり苦痛にな
る。必死でペダルを踏んで東門を越し、東南端を曲がってやっとの
思いでスタート地点に辿り着いたのが制限時間の5分前だった。自
転車を返して、大砲の展示してある涼しい南門の近くの城壁上でし
ばし休憩。足が疲れて立っているのもやっとという状態だった。徒
歩で競争している欧米人の若者グループや、歩いて一周している人
も何人か居た。が、何とか城壁を一周するという思いは果たせた。

 そこから今度は女性ドライバーのタクシー(市バスの女性ドライバー
も結構見かける)を拾って、10kmあまり西側に離れた所にある旧シ
ルクロードの起点地に向かった。唐代に開遠門というシルクロード
への出発地のあった場所である。公園になっている中には、西域商
人がラクダに乗ったキャラバン隊等の巨大な石像彫刻(絲綢之路起
点群像=シルクロード起点の群像=)が建造されていて、当時の面影を偲
ぶことが出来る。ちょうど、中国の歴史を知って旧友たちに教えてあ
げるんだ と写真を熱心に撮っている学生カップルが居た。市バスで
鐘楼へ帰着したのが18時ちょうど。


[絲綢之路起点群像]

 夕食は西安名物の餃子定食。小さな三角形をした真珠餃子を入れて煮込んだスープ等はおいしかったけれど、他の餃子の味は
期待していたほどではなかった。結局量が多くて食べきれずに、残った分はお持ち帰りにしてもらう。20:15 YHに帰着。この日は晴
れていたため暑くてその上乾燥していたので、のどがすごく乾いた(ペットボトルの水が欠かせない)。腕や首筋が真っ赤に焼けてヒリ
ヒリする。






                                         
                                           


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