ジャスミンの風

                                         
                                           
「羌」を訪ねて敦煌へ−中国シルクロード紀行−3

西 安



  翌朝5時に起床。YHをチェックアウトし、地下鉄・磁浮を乗り継いで上海浦東国際空
港第2ターミナルへ。9:25発のCA1216便で西安へ向かう。2時間40分ほどで着陸し
た西安咸陽空港は西安市街の北西約50kmの所にあり、空港前からリムジンバスに
乗車。周りが畑地の中をしばらく走ると高速道に入る。バスの中の中国人はところ
構わず大声で携帯で長電話する人が多く、ハタ迷惑限り無い。やがて古い民家の密
集地の中に高層ビルの立ち並ぶ地区が現れて、一時間ほどで大きな城壁門を通り
抜けると巨大な鐘楼の近くに到着。地下をくぐり抜けて中央郵便局横にあるYHにチ
ェックイン(一泊約500円)。荷物をロッカーに押し込んで早速散策に出掛ける。



[西安駅]
 陝西省の省都である古都西安は、肥沃な土地であることから紀元前11世紀
から2,000年もの間 それぞれの王朝の都が置かれていた所で、古来 絹,茶,陶
磁器等の中央アジアさらにはヨーロッパとの交易路であったシルクロードの起
点「長安」としても知られている。最盛期は人口100万人を擁する世界最大の
国際都市であったと言う。中心街は周囲を14kmあまりの長方形状の城壁に
囲まれていて、城内の道路は唐代の長安時代の名残りでほぼ東西と南北の
碁盤目状になっている。途中の屋台で低い椅子に座り込んで昼食(ナスやジャガ
イモ等の野菜や肉を煮込んだものに卵,白飯付きで85円ぐらい)。気温は23℃
前後で空気は乾燥している。古びた民家の間を通り抜けて、一時間近くかけて
北東端部にある鉄道の「西安站(駅)」に到達。ここは鉄道の基点の一つなの
だろう、頭上はるか上に大きく「西安」と柿色の看板の架かった長大な駅舎で、
大勢の中国人たちが列を作って切符を買い求めたり、喧騒の真っただ中の駅
前の広場で重そうな大きい荷物の上に座り込んだりしているお馴染の光景が
目に入ってくる(漢人だけでなく、頭にスカーフを付けた回=ウイグル=族の女性の
姿も見られる)。

 つぎの移動はこの駅からということで、大体の様子は掴めたので引き返
して、鐘楼の辺りを見回しながらYHに帰る。クーラーの効いた部屋の同宿
者はスペインやチリ,フランス等からのバックパッカーだった(女性も同部
屋)。ロビーでは世界一周を目指しているという若い日本人女性とも出会
った。羨ましいほどの元気さである。


[駅前広場の背後に見える城壁]



[居並ぶ兵馬俑]
 翌日は一日ツアーに参加。9:30の迎えのマイクロバスで出発。同行者
はオーストラリア人の熟年夫婦,エクアドル人の若い男性2人、それに韓
国人女性とメキシコ人男性というカップルだった。午前中は今回旅行の
ハイライトのひとつ 「秦始皇兵馬俑博物館」を訪れる。1974年、井戸を掘
っていた農民が5mの深さの所から偶然にその一部を発見したという兵
馬俑が1〜3号坑に保管されている(1987年に世界文化遺産に登録)。入
場料(約1,250円)を支払ってかまぼこ型の広大なドーム1号坑内に入る
と、5mほど下前方の掘り下げられた坑道に東を向いて居並ぶ兵馬俑群
が目に飛び込んでくる。その数2,000体ともいわれる等身大の種々の表
情を持つ陶製の兵士や馬である。中には首から上の無い兵士俑もある
が、何よりも四列縦隊に並んで立つ兵士俑の数の多さに圧倒される。一
段高い土の上には修復を待つ兵俑や馬俑が整然と並べられている。そ
の数もまた莫大なものである。

 隣に位置する2号坑の坑道には、弓を持った歩兵隊や戦車隊
等と共に、2,200余年前の赤や紫,青に彩色された発掘当時の兵
俑の写真が展示されている。現在保管・展示されている兵馬俑
はどれも既に土色に褪せてしまっているが、何千という兵馬俑が
このように鮮やかに彩色されて並んでいた、と想像するだけでも
壮大なロマンを掻き立てられる。最も小さい3号坑は兵馬俑最
高指揮部隊が置かれていたと言われる場所で、未発掘部分も多
く残されている。少し離れた文物陳列庁には武器等の出土物が
展示されていて、兵馬俑の歴史的背景や発見・発掘の経緯等が
説明されている。始皇帝の権勢の大きさを思わずにはいられな
い。1時間半ほど滞在してから、1.5kmほど西側にある秦始皇帝
陵には昼食後に向かったが、現在工事中で行けないとのことで、
陳列館でその規模や形を想像するのみだった。


[修復を待つ兵馬俑群]



[兵俑の彩色写真]
 帰途、6,000年前の母系氏族社会の村落遺跡である半坡(ハンパ)
博物館に立ち寄って、17時半頃YHに帰着。かつての玄宗皇帝と
楊貴妃の保養温泉地であった「華清池」がツアーに入ってなかっ
たのは残念だった。午後からは小雨模様で気温22〜25℃の蒸し
暑い一日だった。鐘楼近くの露店で、西安市のバス路線等の入っ
た地図を購入する。







                                         
                                           


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