朝、ゴーゴーと言う風の音で目が覚めた 吐く息が白い 

テントの内側に、びっしり雪の結晶のようなものが張り付いている
外が寒いので、住宅なら結露になるものが、細かい氷になったようだ
ちょっと触れるとパラパラ落ちる、テントの中が濡れて困った


八ケ岳は風で有名だが、今日はことにひどい、
こんなに寒い雪山は初めてだという

夕べは寒くてよく眠れなかったと言う
知っていれば私のホカロンあげたのに・・

空を見ると降りだしそうな曇り空 
夕べ遅くまで飲んでいた2人は、この空でますます起きたくなさそうだった

天狗岳は短時間で登れるよ、
と言うのでもう少し様子を見ることになった
私もかなり身体がだるかったので、喜んでシュラフに潜り込んでしまった

うとうとしたり、オシャベリしたりしながら、9時頃まで寝ていた

中山峠までは、昨年展望台に行くので歩いた道 凄い寒さだが、樹林地帯ではあるし、昨年の早朝の夜明け前の寒さとはまるで違った
中山峠を越しても樹林地帯のうちは風も強いとはいえ歩くのに支障はなかった

しかし、ソコを越したとたん、身体が飛ばされそうなんていうものではなく、真っ直ぐ立っていたら飛ばされてしまう風になった 身をかがめ、一歩一歩這うように進む 

ゴ〜〜〜!と特に大風の吹く時は、滞空姿勢!とリーダーが叫ぶ
腰を折って背を丸め、風に背中を向け、ピッケルに掴まって一時をやり過ごす これの繰り返しをしながら進んだ

10時頃、重かった雲に動きが出来て私たちは天狗岳に向かい出発した 
今日は、八ツ特有と言われる強風が特に強いようだった

苦しくて、休みたくて仕方なかった でも、風の陰になるような場所がない この道は大きな岩を超えながら歩く道で
私の苦手とする道だった いつもの年なら、この道はもっと雪があり歩きやすいそうだ アイゼンで岩の上に乗るのはとても怖い 私はこういう道ではいつも遅れるが、今日は一歩一歩なので付いて行けた事は幸いかも知れない

そんな状態でも、雲が切れてきて遠くに山が見え始めると嬉しかった やっと、大きな岩のあるところで少し休憩する こことて、ノンキに立ていたら身体を持って行かれそうだった 今日初めての写真を撮った 身体が揺れて肘を岩につけないとカメラがぶれる


だんだん、晴れ間が見えた来たのだが、どんどん寒くなる そのうえ、風に雪が混じり出した 強風に乗ってくる雪は、頬に当たると実に痛い

そして、私たちはドジなことに、目だし帽をテントに忘れたのだった もう降りてくる人たちもいたが、目だし帽を被っていない人は一人もいない テントにあることが悔しい 私には経験がないから仕方がないが、とリーダーは自分自身を嘆いていた

仕方がないので、なるべくフードで被いながら歩く 顔が凍りそうなだけでなく痛いことが辛かった 風と寒さは体力を奪う

風が強く、必死にピッケルにしがみ付いている
気を許したら、後ろの崖から真ッ逆さまに転げ落ちそうだった

雪煙は見るとキレイだが、それが身体に当たっているのは辛かった


まさに360度の展望だった
何も遮るものない風は、立っていられないほどに吹き付けた

この季節にはなかなか見えないという、
南アルプス・甲斐駒も見えた
こういう所から自分の歩いた山を見ることは幸福だった

左から、硫黄岳・横岳・赤岳 遠くに南アルプス

強風に煽られそうで、アイゼンでは怖くて
東天狗岳の標識の岩に立てなかった(−−;

標識
 ↓

あれは苗場、あちらは何とかだろうと話している、私には分からない
いつか私も2人の歩いた山を歩きたいと思った

11:17

11:38

11:24

西天狗岳

12:02

少しの時間の違いで高度が上がってのが分かる   多分、右手の方が谷川岳方面

強風で後ろの崖から転がり落ちそうだ
怖くてしゃがみ込む

やった〜〜〜!

苦しいのは、いつもは余裕のあるリーダーもだった もう、あそこが東天狗岳、下るかい?と聞かれる

私はここまで来たのだから、八ケ岳一の展望言う東天狗岳には、是非の登って見たかった

最後の登り終えて、東天狗岳頂上へ着いた・・・

寒さも怖さも忘れて山々に見とれた これほどの展望に初めて出合った 嬉しくて写真撮っていたら、昨日渋の湯からの道で出合った外国人男性が登って来た お互いのカメラのシャツターを押す こちらの写真お送りしましょうか?とたずねたら、「一期一会」です、今日の出会いで良いです、と美しい言葉を残し下って行った


突然雲が切れ、「ぱあ〜!」と陽が射した 西天狗岳の雪が輝いた なんと言う見事さだろう・・・

私は、初めて見る雪の美しさに息をのんだ

このキレイなところで、えみさんの好きな甲斐駒バックに写真撮ろう、と言われる 甲斐駒を背にしようとした時、登って来た一人の男性が私の傍にザックを下ろした この景色に感動している所から少し待とうね、と 

しかし・・・私たちの会話が耳には言っているはずで、またカメラを構えていた私たちを見ているのに、彼はデン!と座り込み動こうとはしなかった 物凄い寒さなので、のんびり座るような所ではない 意地悪としか思えなかった 

揉め事も、お願いも嫌いなリーダーに、良いから少し横に行って撮りなさいと言われる 

この風では西天狗岳は諦めて下ろうと言うリーダーの判断で、私たちは黒百合平に向かった もう、疲れていたので、この景色を見れば下ることは嬉しかった

来た道と違うコースがあったが、そこは尾根道なので、今日の風では危ないと、スッカリ同じ道を下った

黒百合平に2泊する人はいない、私がもっと体力あれば立見石に周れるのにと、何回かリーダーに言われる 私が黙っていると、分かっていて来たのでしょうとたしなめられていた

その人のザック





翌日は、暗い4時起きして降りることになった 起きたら、雪が舞っていた 

今回の山、私には体力が伴っていなかったこと痛感する 元々朝の食事が食べられないのに、朝から残り物ごたごたのおじやを、残しては困るからと強要されたのは辛かった そして、朝から怒られていた 

氷点下の闇、雪舞う中でのテント撤収は大変だ 私はテントには慣れているので、身体がきついだけでドンドン仕事は出来た 知らないことは、言われるまで出来ず失敗はするしで、それまでリーダーを苛立たせていた 暗いことは忘れ物・落し物に気づかない 皆でライトでしっかり忘れ物の確認した


まだ、暗い中渋の湯に向かって下った  私には、トレースのない雪の山道とはどこが道だか全くに分からない 先頭を歩くとは、ラッセル以外に道を見つけるという大変なことがあること初めて知った やっと明るくなって来ても、緊張と疲れが激しくて美しさ感じる余裕はなかった

あまりに岩のゴロゴロした道が続き、本当にこんな道登ったのかしら、となった 地図を見ると、渋の湯と唐沢鉱泉とに分かれる地点で、道標を見誤ったようだ しかし、、唐沢鉱泉から渋辰野館に出られるからとそのまま進んだ 最後の最後で道が分からずに、25000/1地図も調べたらすぐに分かった 以前にも25000/1の地図には助けられているので、地図やコンパスの有難さを実感する


唐沢鉱泉の建物が見えた時には、本当に嬉しかった 駐車場には、帰宅する客を送る宿の人らしき人がいた 聞く所によると、ココまでタクシーが来てくれると言う タクシー待つ間に温泉に入れますよ、と勧められる

リーダーは、1時間も歩けば渋辰野館に着くとタクシーに反対する 私は見栄も外聞もなく、私がタクシー代持つからタクシーを呼ぼうと頼んだが、却下 言い出したら聞かないリーダーなので、泣き泣き歩き出した 

私たちが歩いている横に、先ほど唐沢鉱泉で帰宅支度していたにいた車が止まった 「狭いですが、茅野駅まで乗って行きませんか?」と・・ 私たちは嬉しいが、本当に良いのかと心配になる狭さだった それでも、好意に甘えて荷物をぎゅうぎゅうと押し込んで、どうにか乗せて貰った 6人とも冬山支度なので荷物が多い お聞きすれば、九州から車で来て、千葉の友だちと待ち合わせて登ったと言う 温泉泊まりは楽で楽しいですよ、と宿の骨酒の話などしてくれたので、テント泊した私たちには羨ましい限りだった 私たちはバスで茅野駅に行く予定だったのだから、せめて3人のバス代をと差し出したが、いらないと断られた

私たちは駅の前で荷物の整理して、駅に着いたら特急が出たところだった 駅ホームで先ほどの千葉の方と会う 私たちを乗せねば前の電車に乗れたのに、嫌な顔は一つもせずにニッコリ挨拶を返してくれた 

道を間違えた時には、バスが一本遅れるから遅くなると覚悟していたのに、車に乗せてもらったお陰で、予定より早い帰宅となった 

12:38

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私たちのリーダーは、山はいつも最高の日とは限らない 悪い天気にも困ったことにも、慣れておくのが大切だと言う 知っていることは良い事だと言うので、私はどんなことも終われば苦にはならない 

それにしても、この山は行っていた間中「辛い」と言っていた気がする それも、思い出になれば、あの輝く雪しか思いださない
帰宅した後、
よく遊びに行く「おひるねの森の掲示板」見ていたら 
「天狗岳山頂」の写真があった 

私たちが渋の湯から歩いていた日に登った人の写真だった 
一日違いでのその空の色に驚いた