以前の電波観測ではFROが使用されていたが、1992年からコミュニティ放送が始まったため、FM放送の全周波数帯域で混信が多くなりFROが衰退した経緯があった。その後、アナログTVが廃局となりローチャネルの周波数帯を2003年からAM放送の補完放送(ワイドFM)として使用することとなった。この周波数帯は、比較的混信が少ないため、FROが再度使用できる可能性がでてきた。
FROの成否はシステムの正常性は当然だが、重要なことは可能な限り低い受信レベル(雑音)を選局することと感度の良いアンテナを使用するかによる。関東平野は電波が良く飛び交うため受信が難しいかもしれないが、アンテナの方向によっては良好な放送局が見つかるかもしれない。
受信を試みた際には、成功の可否を問わず下記のメールアドレス宛てに報告してもらえればありがたい。
HROのように無変調波を受信して観測をするなら受信機をCWやUSBモードに設定をしてHRO画像に表示すれば流星のエコーを確認できるが、FM放送は、200kHzの帯域で周波数変調されているため、従来の方式を使うのには限界がある。
FM放送を従来のHRO画像で確認をするとエコーが現れることがある。これは、無音になったときだけ主搬送波が現れるためである。それを確かめるのには、SDRソフトで最寄りのFM放送を聞くと、話が止まった(無音)時に「Spectrum
Analyzer」で確認すると3本の筋(線)が出現する。中央が主搬送波で、左右の2本が19kHzのパイロット信号ある。無音の時間帯に流星が流れるとエコーとして捕らえることができる。Liveで楽しむことはできるが、実際の流星数の出現とは乖離したデータとなっているので、集計しても意味がない。
そのため、本格的なFROをするなら帯域全体で入力レベルを検出するしかない。この方法は、昔の高級FM受信機に付属していたS
メーターを「ペンレコーダー」で記録したのと同じ原理である。幸いにもSDRの駆動ソフトには受信電界強度の最小値と最大値を一定間隔でCSVファイルに出力をしてくれる機能がある。得られたデータから通常より高いレベルが発生したときだけを流星のエコーとする手法でFROが実現できる。
・アンテナ; 5素子FMアンテナ
周波数によっては市販の5素子でも受信できる。3素子FMアンテナでは、感度が低すぎるので難しいかもしれない
・同軸ケーブル; 5C−FB
ケーブルの片端は、F型コネクタを付ける。
ケーブルとSDRのコネクタのインピーダンスは異なるが、受信だけなので変換コネクタは省略をして、SDRとの間にF型メス-SMAメスの変換アダプタを入れる。
・SDR; RTL-SDR
最も使用されているRTL-SDR系で充分である。NooElec社製が安価(5,000円程度)で入手しやすい。
(1)準備
最新のFM放送局一覧表で下記の作業をするが、入手できなければこちらの一覧表(狩野さん提供)を使うこともできる。
・国内のFM放送局から出力1kw以上の局を選び出す。
・受信地から概ね400km以内の局を削除する。
・アンテナを向ける方向毎にグループ分けをする。例えば関東であれば、北向き(北海道・東北)と西向き(関西より以西)
・それぞれのグループ毎に周波数の低い順にソートしておく。
(2)周波数帯の決定
HDSDR表示画面内の「スペクトラム表示」を見ながら雑音レベルの数値を確認し、方面別に低い周波数帯を選び出す。この際、「スペクトラム表示」の範囲は、3MHzなので2MHzずつ変更すると効率的である。
国内の放送局だと雑音レベルが高すぎる場合、「韓国」の放送局を使う方法もある。国内では使用していない95MHz以上の周波数は、雑音レベルが低いことが多いので選局の対象となる。ただし、95MHz以上の放送局を使うのであれば、専用のアンテナを手配することとなる。
(3)放送局の決定
雑音の低い周波数帯と前(1)項で選局した放送局とを照合して、受信候補を決定する。
(1)基本設定
SDRによる受信をするのであれば、初めはHDSDRのソフトを使用することをお勧めする。
FM放送の受信までの設定作業は、別のページでSDRによる電波観測を解説しているので参考にされたい。
(2)FROの設定
下記の設定でFROをしているので参考にされたい。エコーが受信できるようになつたら最も良好な設定に変更すると良い。
・Sampling Rate; 3.2MSPS
・RF Gain; 49.6dB(最大)
・受信モード; CW
※FMモードだと雑音レベルが上昇して、エコー数が減少する。
・Bandwidth; 96000Hz(Output)
※本来は、200kHzだが96kHzでも75%の電界強度が得られる。隣接FM放送の混信防止のため。
・Tune; 候補周波数(ex. 82,500,000Hz)
・LO; Tuneの数値から200,000Hz下の周波数(ex. 82,300,000Hz)
※LO(局部発信周波数)が受信周波数の帯域内にあると雑音レベルが高くなるため、受信周波数(Tune)と離す必要がある。
(1)HDSDRの設定
各SDR駆動ソフトには、入力レベルをCSV形式で出力する機能があるので、HDSDRを例に説明する。
・HDSDRが起動していることを確認したうえで、キーボードの右上にある「Insert」キーを押下する。
・小窓が表示されるので、記録の間隔を「m秒」で入力して「OK」をクリックする。10秒なら「10000」となる。
データの保存間隔を短くすると短時間に多量なエコーが発生したときに有効であるが、通常のエコーの発生状況から10秒の間隔でデータを保存する。
・「C:\・・・\Documents\HDSDR\CSV」フォルダにCSVファイルが生成される。
・小窓で、記録の間隔を「0」にすると、書き込みが一時停止する。この際、ファイルも開放されるので、ファイルの移動や消去ができる。
(2)CSVファイルからのエコー抽出
エコーの検出は、最小レベルと最大レベルの差が一定以上となったときとする。
最初は、Excelで処理することとして試しながら閾値を決定すると良い。
一日分をグラフ化するとエコー数が「日周変化(朝・多く、夕方・少ない)」をしていることで容易に確認できる。
国内の民放では、日曜日の夜半過ぎ(実際は月曜日)に放送が停止(無音)する時間帯があるかもしれないので要注意である。
(3)エコーカウントの自動化
・1時間毎集計ソフト
前項の仕様をソフトで実現して、その結果として1時間毎のエコーカウントをCSVファイルで出力をする。
・グラフ化ソフト
出力したCSVファイルを1時間毎にグラフ化することで、流星の出現状況がパターン的に把握できる。
複数の観測者が、ソウル(韓国)のFM放送を使ってFROをしているので、最初に受信することをお勧めする。
周波数は 107.700MHzで出力は10kWである。
韓国には同じ周波数で 3kWが2地点もあるので、合計で16kWの電波を受信していることとなる。
国内では使用していない周波数帯なので、一般的にフロアーレベルも低くなっているのが好条件である。
市販のアンテナだと受信の範囲外となっているが、送信出力が大きいので受信できる可能性が十分にある。
前6.(2)項で記載のように「日周変化」が確認できれば成功である。
言い換えれば、「日周変化」が確認できなければ、観測地が環境的に難しそうなのでFROは諦めたほうがよい。
ソウルは1,000kmも離れているので、あまり観測には向いていない。
できれば、国内の400〜900km範囲内のFM放送局を使ってFROをしてもらいたい。
ご質問、ご提案等がありましたら、杉本弘文まで連絡を願います。