オメガ3脂肪酸は、歯周炎の発症率を低減させる

最新疫学研究情報No.85

米国のハーバード大学医学部のAsghar Z.Naqvi 博士らによる研究チームによって、「オメガ3脂肪酸(特にDHA)は、歯周炎(※1)の発症率を低減させる」との報告がなされました。

これまでの研究によって、オメガ3脂肪酸による抗炎症作用の効果は明らかにされてきましたが、歯周炎の予防や治療に対する有効性は確認されてきませんでした。

研究チームは、国民健康栄養調査(NHANES)の参加者の中から、1999~2004年に歯科検診を受けた9182人(20歳以上)を選出し、その被験者に対し1日に摂取した食物(*サプリメントを含む)についての面接調査を実施しました。その回答をもとに、オメガ3脂肪酸のDHA、EPA、LNA(*αリノレン酸)の摂取量を算出し、オメガ3脂肪酸と歯周炎の発症率との関連性を検討しました(被験者の歯周炎の発症率は8.2%でした)。

調査の結果、DHAの摂取量が最も多い人は、最も少ない人と比べ、歯周炎の発症率が22%低かったことが判明しました。またEPAにも歯周炎の発症率を低下させる効果があることが明らかになりました。一方、LNAと歯周炎の関連性は見られませんでした。今回の研究では、サプリメントを除いた食事由来のオメガ3脂肪酸と歯周炎との関連性も検討されましたが、サプリメントを摂取した場合と同様の効果がある(*DHA・EPA)ことが確認されました。

研究チームは「オメガ3脂肪酸の中でもDHA、EPAの摂取量が多いと、歯周炎の発症率が低減されることが判明した。今後介入研究によって、歯周炎に対するオメガ3脂肪酸の予防効果を確認する必要がある」と結論づけています。

※1歯周炎は、歯を支える組織(歯肉・セメント質・歯槽骨など)の炎症疾患で、歯周炎になると、歯肉の腫れだけでなく、歯槽骨などが破壊されるようになります。歯周炎の診断は、歯周ポケット(歯と歯肉の間にできる溝)の深さ・付着喪失の程度(歯のエナメル質とセメント質の境界から歯周ポケットの底部までの長さを指し、歯周病の進行度合いを知るために用いられる)・歯槽骨の吸収(破壊)の度合いなどにより決定されます。今回の研究では、歯周ポケットが4mmより深く、付着喪失が3mmより大きい場合を歯周炎と定義づけています。

出典

  • 『Journal of the American Dietetic Association 2010年11月号』
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