カフェインは子供の睡眠時間に悪影響を及ぼす
最新疫学研究情報No.84
米国のネブラスカ大学医療センターのWilliam J. Warzak博士らの研究チームによって、「ソーダなどの飲み物に含まれるカフェインの摂取は、子供の睡眠時間に悪影響を及ぼす」との報告がなされました。
これまでの米国におけるカフェインの摂取量についての研究のほとんどは、青年や成人を対象とし、子供については約10年前の研究以来、データは報告されてきませんでした。カナダでは、子供の1日あたりのカフェイン摂取の上限値が、ガイドライン(※1)で示されていますが、米国では、アメリカ食品医療品局(FDA)(※2)による規制はなされていません。今回の研究は、米国の子供のカフェイン摂取量の現状を調査し、それが体にどのような影響を与えるかを明らかにするために実施されたものです。
研究チームは、都市の小児科外来に通っている5~12歳の子供201人を対象に、1日に摂取した飲み物・スナックの種類や量についてのアンケート調査(*親が子供の受診時に毎回報告する)を行いました。飲み物などに含まれるカフェインの量の集計データに基づき、 子供のおねしょの頻度や睡眠時間との関連性(*夜尿症や睡眠障害と診断されたことがある子供は対象から除外)を調査しました。
その結果、被験者の約75%が、カフェインが多く含まれる飲み物(*スナックには、カフェインがほとんど含まれていなかった)を定期的に摂取していたことが明らかになりました。5~7歳児では1日平均約52㎎、8~12歳児は約109㎎もカフェインを摂取していたことが判明しました。またカフェインの摂取量が多い子供は、睡眠時間が9時間(*疾病管理予防センターによる最低推奨時間)以下であったことが確認されました。
一方、カフェインとおねしょとの関連性は見られませんでした。今回の研究では、カフェインが含まれる飲み物を摂取していた子供は、摂取していなかった子供よりもおねしょをする回数が少なかったことが明らかにされました(*研究チームは、「おねしょの原因は多数あり、カフェインの利尿作用だけがそれに影響を与えているわけではないことを今回の結果は示している」と述べています)。
Warzak博士らは、子供のカフェイン摂取に対する認識の重要性を強調し、「親は、子供の睡眠の質など日常生活に支障をきたすカフェインの潜在的な影響に注意を払わなければならない。プライマリーケア(※3)を行う小児科医なら、子供がカフェインを多く摂取しているかどうかを診断し、親に対しカフェインの有害な影響について教育することによって、子供を守ることができるかもしれない」と提案しています。
※1カナダのガイドラインでは子供の1日あたりのカフェイン摂取量を、4~6歳は45 ㎎(約350ml入りコーラ1缶に相当する)、7~9歳は62.5 ㎎、10~12歳の子供は85mgを超えないようにすることを勧めています。
※2アメリカ食品医療品局(Food and Drug Administration)は、食品・医薬品・化粧品・医療機器・動物薬・玩具などの製品について、その許可や違反品の取締りなどの行政を専門的に行う米国の政府機関です。
※3プライマリーケアとは、何かあったときに真っ先に相談することができる身近な医師(一般医・家庭医など)により、適切な診断処置と療養の方向について正確な指導を行うことを重視する総合的な医療のことを指します。
出典
- 『The Journal of Pediatrics 2011年3月号 Vol.158』