定期的に運動する人や健康に自信がある人は、風邪の症状が軽く回復も早い
最新疫学研究情報No.82
米国のアパラチア州立大学運動研究所のデヴィッド・ニーマン所長らによる研究チームによって、「“定期的に有酸素運動をすること”や“自分が健康だと感じていること”は、風邪(*上気道感染症)の症状を軽減させ、回復を早めるための重要な要素である」との報告がなされました。
この研究は、さまざまな年齢層における風邪の罹患状況を調査し、「運動の頻度・量」や「日常の健康レベルの度合い」が、風邪の症状などに対してどのような影響を与えるかを比較したものです。
研究チームは、18~85歳の健康な男女(*女性が6割を占める)1002人を対象に、秋から冬にかけての期間中(12週間)に発症した風邪の罹患日数や症状(*咳・発熱・喉の痛み・鼻づまりなど)の程度を調査しました。また被験者に対し、有酸素運動の実施状況や日常の健康レベル(*自分の健康状態を10段階でチェックする)についてのアンケート調査(※1)を行い、そのデータに基づき、風邪の発症リスクとの関連性を検討しました。
調査の結果、有酸素運動を週に5日以上行った人は、週に1日以下の人(座っていることが多い人)と比べ、風邪の罹患日数が43%少なかったことが明らかになりました。また、健康レベルが高いと感じている人は低いと感じている人と比べ、風邪の罹患日数が46%も少なかったことが判明しました。さらに、有酸素運動を多く行った人や健康レベルが高いと感じている人は、そうでない人と比べ、風邪の症状が3~4割軽減していたことが確認されました。
研究チームは「今回の研究により、“高齢者”“男性”“既婚者”は、風邪の発生頻度が低かったことが判明した。しかし、それを低減させる最も重要な条件は、“運動の回数・量を増やすこと”と“自分が健康だと感じていること”であることが明らかにされた。運動は、免疫システムを活性化させ、ウイルスを撃退する免疫細胞を増やし免疫力を向上させるが、運動を定期的に行うことでその効果が持続する。どのような有酸素運動であっても、継続することによりその恩恵を得ることができるだろう」と結論づけています。
感染症の専門家であるマーク・シーゲル博士は、「体調に自信を持っている人(*特に男性)は、男らしさを誇示するために病気の日数を少なく報告することが考えられる。“自分は健康である”という自覚は、“調子が悪い”という感情を打ち消す可能性がある。しかし今回の結果は、すべてがこうした心理的な要因による効果ではなく、物理的な要因も組み合わさったことによるものである」と述べています。
※1上記のアンケート以外に、ライフスタイルや食事、ストレスの多い事柄についてなど、免疫システムに影響を与える要素に関する質問もなされました。
出典
- 『British Journal of Sports Medicine online版 2010年11月1日号』Medline plus より